~ザ・ファブル~「……さと……う……くん……?」 清水ミサキ 完 サンプル
Added 2025-07-05 04:25:53 +0000 UTC『ザ・ファブル』 同人作品です。 忠実な再現はしてませんが、ネタバレが苦手な方は避けてください。 前作 ~ザ・ファブル~「小島の狙いは清水ミサキ」 ~ザ・ファブル~「清水ミサキの契約書」 ~ザ・ファブル~「清水ミサキが欲しい似顔絵…」 ~ザ・ファブル~「擦り減っていく心…清水ミサキ」 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23422904 上記も併せてお読みください。 ~本編~ ……場所は変わって、一階の仄暗い工場事務所。 ガラス窓には埃がこびりつき、蛍光灯の明かりもどこか黄ばんで見えた。 その中央、金属脚のテーブルを挟んで、小島と砂川が向かい合っていた。 小島は椅子にもたれながら、煙草を口にくわえたまま。 指先で灰皿の縁をコツコツと弾き、どこか余裕のある表情を浮かべている。 一方の砂川は、組の幹部としての貫禄を漂わせつつも、視線の奥には探るような光を宿していた。 長年、表も裏も見てきた男特有の勘が、微かに警鐘を鳴らしているようだった。 「――で?」 砂川が、静かに問いを切り出す。 「もし、あの女が使いもんにならんかったら……どうするつもりや? どう見ても、あの子……自分の意思で来たとは思えへんぞ?」 語調は柔らかい。だが、言葉の裏には確かな圧があった。 小島は一瞬だけ眉を動かしたが、すぐに口角を上げて笑い返す。 「……さすがですわ、砂川さん。そういうとこ、よう見とる」 煙を吐き出しながら、肩をすくめて続けた。 「せやけど……“使えるかどうか”ってのは、本人の意思や覚悟で決まるモンちゃいます。 この世界でモノになるかどうかは、“結果”だけで測るもんやと俺は思てますけどなぁ」 砂川は黙って聞いていたが、その眼差しは鋭さを増していた。 「つまり、最初から無理やり引っ張ってきたと。──違うか?」 小島は笑いを消さずに、静かに煙草を灰皿へ押しつける。 「俺のやり方がどうであれ、組としては――結果さえ良ければ、納得でしょう? 女が不本意かどうかなんて、俺らが気にする義理あります?」 そして、少しだけ身を乗り出すと、低い声で囁いた。 「ヤクザが“道理”を気にして商売できるような世の中なら、とうの昔に堅気になっとりますわ」 砂川の口元がわずかに歪む。 それが皮肉か、納得か、あるいは見過ごすという合図なのか――判然としなかった。 「なるほどな。そっちタイプの考えなワケか……」 その瞬間だった。 静かな空気を破るように―― 上の階から、女の声が響いた。 「……っあ……ん、んっ……くぅ……っ……!」 断続的な喘ぎ声。 それは、抑えていたものが堰を切ったように、時折壁を越えて一階まで届いてくる。 一拍置いて、小島が笑った。 ニヤリと、口の端を持ち上げて。 「……まぁ、結果が物語ってますやん。 “気持ちええ”かどうかなんて、本人の口が証明してくれとる」 砂川は視線をわずかに上に向けたまま、表情を崩さずに煙草をくゆらせていた。 「不本意でも……気持ちよぉなっとるなら、ええってか」 小島は肩をすくめる。 「結果オーライっちゅうやつですわ、砂川さん」 コンクリートの天井越しに響く声。 そして、それを下で聞きながら交わされる、無感情な会話。 それは、彼らが生きる世界の“冷たさ”そのものだった。 ・・・・・・・・・・。 続きは応援プラン限定