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~ザ・ファブル~「清水ミサキが欲しい似顔絵…」

『ザ・ファブル』 同人作品です。 忠実な再現はしてませんが、ネタバレが苦手な方は避けてください。 前作 ~ザ・ファブル~「小島の狙いは清水ミサキ」 ~ザ・ファブル~「清水ミサキの契約書」 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23422904 上記も併せてお読みください。 ~本編~ その夜、小島は組の事務所ではなく、自分の根城である古びたマンションの一室に高橋を呼び出していた。部屋はタバコと古い畳の匂いが混じり合い、外の冷気とは別の意味で息苦しい。 「……ええか、タカハシ。来週や。砂川のハゲと二人で話す。」 そう言いながら、小島はテーブルに肘をつき、煙草をふかした。 「商売の話かなんかっすか?」 高橋が恐る恐る尋ねると、小島はニヤリと笑って煙を吐き出した。 「せや。風俗のな。あいつのシノギにちょっかい出してるみたいやけど……って、周りは思っとる。まぁ、実際そうやけどな?」 「……あかんのちゃいますん?」 「せやから、調整するんやがな。こう見えてワシも義理は通すタイプや。でな──今回の話は、一発で砂川の気ぃ変えさせるもん用意してる。」 小島は足を組み直し、ニヤついた顔で高橋を見た。 「……あの女ですか?」 「そうや。ミサキちゃんや。」 「……ほんまに渡すんすか? あの人……けっこう限界っぽい感じでしたけど……」 「アホかお前。渡す言うても、タダでくれてやるわけちゃう。使い方はこっちで決める。せやけど“極上の素材”があるだけで交渉カードになるんや。あの女は“売れる”んやで?」 小島は煙草を灰皿に押しつけながら続けた。 「こっちが仕切る“別店舗”に一時的に貸し出すいう話でもええし、砂川に"共用"させるだけでも価値ある。なぁ? 一発やっただけで、あの娘がどんなレベルか、お前がよう知っとるやろ?」 高橋は気まずそうに視線をそらし、曖昧に頷く。 「……たしかに、ヤバかったっす……」 「やろ? 砂川のハゲも、あの手の顔立ちとカラダにゃ弱い。うまくいきゃ、“今後の取り分”も柔うなるやろしなァ。」 窓の外では風が唸っていた。小島は立ち上がり、寒さをものともせずに窓を開けた。冷気が部屋に入り込むが、それも気にならない様子で空を見上げる。 「なぁ、タカハシ。組の中っちゅうのはな、正論じゃ回らへん。損得とタイミング。それだけや。」 「……でも、砂川さんは……怒ってますよ?前の件もあるし、あっちの縄張りで動いたの、小島さんっすよね?」 「せやけど、“極上の女”を連れてきたやつに、誰が口きける?──あいつの言う“品格”ってのはな、カネの匂いがする方へ引っ張られるんや。」 小島は笑いながら背を向け、再び椅子に腰を下ろした。 「砂川とは来週、会う。場所はあいつの指定したとこ。俺の口で、直接話つける。」 「……ミサキさんには?」 高橋が躊躇いがちに口にした名前に、小島は一瞬、意味深な沈黙を挟んだ。 そして、ニヤニヤと口元を歪めながら、低く笑う。 「詳細が決まった前日にでも連絡しときゃええ。なぁに、そんなもん簡単な話や。『マンコしっかり洗うて、ヌラして待っとけ』っちゅうてなァ。」 指を軽く振りながら空中をなぞるような仕草をし、舌で唇を湿らせる。 「どんなプレイが好みか、どこが感じるか──砂川の前で“披露”させるのもおもろいかもな。まぁ、あの娘の体なら、黙って腰振るだけで営業になるやろうけどなぁ。」 言葉の節々ににじむ悪意と下品さに、高橋は思わず視線を落とした。冷笑が部屋にまとわりつくように滲み、空気がねっとりと重たくなる。 「……は、はぁ……」 返す言葉を失った高橋の頬には、わずかに引きつった笑み。だが、それすらも本心ではなかった。小島の目には、従順な部下の演技としてしか映っていない。 「ええか? “商品”は鮮度が命や。いまのミサキは、心も体も追い詰められて擦り減っとる。──せやけど、そこがええ。“壊れかけ”の女ってのは、客がいちばん欲しがる素材や。まるで自分で調教できるみたいやからなァ。」 満足そうに鼻で笑いながら、小島は煙草に火をつけた。紫煙がゆっくりと天井へ昇っていく。その煙の向こう側には、彼が思い描く“商売の未来”が、まるで揺らめく幻のように浮かんでいる。 高橋はその様子を黙って見つめながら、無言で頷いた。 けれども──その胸の奥には、言葉にできない不快感が、じっとりと張り付いていた。 ・・・・・・・・・・。 薄暗い部屋の中、カーテンは閉められたまま、空気は重く、動きのない時間がそこに沈殿していた。ミサキはソファにもたれかかるようにして、無言で天井を見つめている。 テレビも音楽もつけていない。 ただ、自分の呼吸音だけが、静かに部屋に響いていた。 この数日、小島からの連絡は途絶えたままだった。 あの夜、唇を噛みながら部屋に戻り、それから時間が止まったように、世界がどこか遠くに感じられていた。 (……このまま、全部夢だったことに……なってくれへんかな……) 考えても仕方のないことを、何度も繰り返す。 何もない日々が続くことで、どこか希望のような錯覚すら生まれていた。 (もしかしたら、小島は飽きたんやろか……忘れてくれたらええのに……) そんな妄想にも似た期待に、必死で縋ろうとしていた――そのときだった。 ――ブゥゥ……ブゥゥ…… ソファの傍らに置いていた携帯が、無機質な振動音を立てて震えた。 一瞬、心臓が跳ねる。 ミサキは固まったまま、携帯の画面を見つめた。 《非通知》 だが、彼女にはすぐにわかった。 (……来た……) 指先が凍りついたように動かない。 画面の振動が止まりそうになった、その瞬間、意を決したようにミサキは震える指で通話ボタンを押した。 「…………はい……」 沈んだ声に応えるように、聞き覚えのある、あの薄ら笑い混じりの声が耳元に広がる。 「おう、ミサキちゃん。元気しとったかぁ~?」 その言葉だけで、背筋に冷たい汗が滲んだ。心臓が乱れて跳ね、指先が痺れる。 「……何の用ですか……」 精一杯の平静を装った声。でも、小島にはすべて見透かされていた。 「ん~まぁ、そろそろ仕事の準備してもろか思てな。明後日の火曜、夜の11時に迎えに行くわ。」 淡々とした口調に混じる軽さが、かえって背筋を冷たく撫でる。何の場所かも言わず、ただ一方的な“指示”として告げられる。 「……どこに……行くんですか……?」 震える声が漏れた瞬間、小島はくすくすと笑い声を上げた。 「そんなん聞いてどうすんねん。デートちゃうねんぞ? 言うたところで、お前の選択肢なんか一つしかあらへんやろ。」 その言葉に、ミサキの喉が詰まり、息が浅くなる。返事ができないまま沈黙が続いた。 「それとなァ……服やけどな。ちゃんと、色っぽいの着て来いや? ジーパンとか履いてきたら……、そん時はその場で全部脱いでもらうからな?」 わざとらしく甘く言葉を伸ばす。耳元で囁かれているような錯覚に、ミサキはゾッとした。 「なぁんも難しいことあらへん。ただ、“ちゃんと見せもんになれる格好”してきたらええんや。それだけや。」 その“だけ”という一言の重さに、心が沈み込む。小島は満足げに続けた。 「じゃあ、当日は楽しみにしとるわ。オマエの“働き”で今後の関係が決まるからなぁ~?ガンバレヨ~」 ぷつり。 通話は一方的に切られた。まるでその瞬間、現実が背後から襲いかかってきたかのような圧迫感。 ミサキはスマホを握りしめたまま、ソファにもたれた体を起こすことができなかった。 静まり返った部屋の中に、かすかに彼女の吐息だけが響いていた。 ・・・・・・・・・・。 場面は変わり、夜の静けさが部屋を包むなか、佐藤アキラは一人、黙々と作業に没頭していた。 薄い蛍光灯の下、テーブルの上には分解された拳銃のパーツと、彼の手で改造された数発の弾丸。愛用のナイトホークはフレームだけの姿で置かれており、アキラは細かな部品をやすりで削っていた。 「……ん~……はたして、真っすぐ飛ぶのかコレ……」 つぶやいた声は、部屋の静けさにかき消される。火薬の匂いと金属の粉塵がわずかに漂うなか、彼の目は研ぎ澄まされていた。 そのとき、携帯が控えめに震えた。 着信画面に表示された名前を見て、アキラの手が止まる。 「……ミサキちゃん…?」 少しの間を置いて、彼は通話ボタンを押した。 「もしもし」 「……あっ、佐藤くん、ごめんね、こんな時間に……寝てた?」 「んー……いや、大丈夫。布団でゴロゴロしてたとこ(ウソ)」 「……そっか。よかった。」 会話が途切れた。微かな沈黙が、どちらからともなく続く。 アキラが先に口を開いた。 「……どうした?」 「……うん、ちょっと体調悪くて……明日、社長戻ったら……休むって伝えといてもらえるかな、と思って。」 「……そっか。わかった。」 しばしの間、アキラは何かを考えるように口をつぐんだが、やがて静かに言葉を継いだ。 「……ミサキちゃんには、色々お世話になっとる。仕事も紹介してもらったし……大阪も、今んとこ、楽しく暮らせてる。」 「……え? ううん、そんな、全然……」 「絵も、描かせてもらった。そのおかげで時給も、100円上がった。次、給料入ったら……今度は俺が、飯でも奢る。」 「……なにそれ~、急に……そんなのええよォ。私にオゴってたら、100円上がった分ぜんぶ消えるやん!」 「それでもええ。気持ちの問題や。感謝と、お礼。」 アキラの不器用な言葉に、ミサキの声がわずかに揺れる。 「……じゃあ、ひとつだけお願いしてもいい?」 「ん?」 「……アタシの似顔絵、描いてくれへん?あのときの佐藤くんの絵、すごい好きやったんよ」 アキラは少しだけ、笑ったような気配を見せた。 「……わかった。明日の晩、持っていく。」 「え……明日……」 ミサキの声に、ふっと影が落ちた。 「……ごめん、明日の夜はちょっと……用事があって……朝まで、帰られへんかも……」 その声には、明らかな不安と悲しみが滲んでいた。 受話器越しに伝わる沈黙の気配。アキラは視線をテーブルに置かれたナイトホークへと向け、しばらくその鉄の塊を見つめた。 「……ミサキちゃん」 「……ん?」 「大丈夫。すぐ帰れるよ。絵は……明日、ちゃんと渡せるよ」 「……え……?」 「大丈夫。明日、渡せるよ」 言葉にするにはあまりに不器用で、まっすぐすぎる響き。それでもミサキの胸に、なにか温かいものが広がっていった。 「……うん……ありがとう……佐藤くん……」 かすれた声で、ミサキはそう返した。電話の向こうで、泣いているのがわかった。 アキラは何も言わず、静かに通話を終えた。携帯をそっと伏せ、再びナイトホークを手に取り、ゆっくりと組み上げていく。 その瞳には、冷たい鋼のような決意が宿っていた。 ・・・・・・・・・・。 火曜、午後10時57分。 ミサキはアパートの前に立っていた。夜風が肌を撫でるたびに、むき出しの膝がわずかに震える。 羽織ったコートの裾から覗くのは、膝上丈の黒いタイトスカート。トップスは淡いグレーのニットで、鎖骨が見えるくらいの首元がわずかに開いていた。 ストッキングは穿かなかった。 穿きたくなかった、というより……小島の言葉が、それを許さなかった。 “生足で来い”とまでは言われていない。けれど“ストッキング越しじゃ映えん”――そんな意味を、あの男の声色ははっきりと含んでいた。 ミサキは自分の足元を見下ろす。艶のないヒールに、むき出しの脚。 この姿を鏡で見たとき、何度も着替えようとした。でも、何を着たって“同じ”だと思い知らされるだけだった。 (……どうせ、なに着ても脱がされる。) 唇をかみしめた瞬間──黒いセダンのヘッドライトが遠くから迫ってくる。 ゆっくりと、いやらしいほど滑らかにアパートの前へ止まった。運転席の窓が下がる。 中から顔を出したのは、あの――小島だった。 「……おぉ、ええやんええやん。なにそのカッコ、やらしすぎるわぁ~。生足やんけ、最高やな。」 眼つきはいやらしさに満ち、唇はだらしなく吊り上がる。 「よう似合っとるわ。“お嬢さん”っちゅうより、“稼げるオンナ”やな。こりゃええ。立派な娼婦になれそうやわ、ほんま……」 鼻で笑いながら、まるで品定めするように彼女を舐めるように見つめたあと、低く吐き捨てた。 「──乗れよ。」 その一言に、全てが詰まっていた。 ミサキは一瞬だけ動けずにいたが、次の瞬間、俯いたまま無言で助手席のドアを開ける。 静かに、しかし重く、ドアが閉じる音だけが夜に響いた。 車は何も言わずに、闇の中へと走り出した。 その移動が、これから自分が踏み込む“場所”を決定づけている――ミサキは、そう感じていた。 ・・・・・・・・・・。 車内はしばらく沈黙に包まれていた。夜の国道をゆっくりと滑るように走る黒いセダン。運転席にはタカハシが無言でハンドルを握り、助手席には小島が足を組んで座っている。 後部座席、ミサキは身を縮めるように座り、窓の外を見つめていた。街灯の光が時折その頬を照らしては、また闇に戻す。 「……なぁ、ミサキちゃんよぉ。」 不意に、小島が振り向かずに話しかけてきた。 「これから自分がどこ行って、何されるか……なんとなく分かっとるんやろ?」 その声は薄笑いを含み、軽く鼻を鳴らしてから続ける。 「せやからやろ? そんな色っぽいカッコしてきたん。見せつけに来たんちゃうんか?」 ミサキは口を閉ざしたまま、何も言わなかった。 だが、わずかに伏せられた視線の奥に、悔しさと怒りがじっとにじんでいた。 何も言い返せないことが、彼女自身をさらに追い込む。 小島は振り返り、ニヤリと笑ってミサキの足元をじろじろと眺めた。 「おお、生足ええやん。脚もピンとしてて……よう男釘付けにするでぇ。なぁ? その脚でどんだけ稼げる思とんのや?」 言葉の端に、あからさまな下劣さと見下しが絡みつく。 「せやけどや、外見ばっかやない。──中身もちゃんと出来とるんか?」 その言葉に、ミサキは顔を上げた。思わず睨みつけそうになるが、歯を食いしばってこらえる。 小島は、そんな反応を楽しむように笑いながら続けた。 「どうや? マンコ、ちゃんと湿ってきとるか? ……いまのうちから、ぐちょぐちょにしとけや。乾いとったら相手に失礼やろがァ。」 言い終えると、助手席で肩を揺らして笑った。 「ほんま……お前みたいな女見てると、ホンマ商売っちゅうのは才能やなぁって思うで……天性や。いやぁ、うらやましいわ!」 ミサキはその言葉を背中に浴びながら、膝に置いた手をギュッと握りしめた。 指先が白くなるほど力が入っている。喉の奥で、言葉にならないものがくすぶっていた。 (……こんな奴らに、くやしぃ……) 車内の空気は、窓の外を流れる夜の冷気とは対照的に、ねっとりとした湿度を帯びていた。 小島の声が止んだ後も、低く濁った笑いだけが残響のように車内を漂っている。 ミサキは視線を伏せたまま、胸の奥に沸き起こるものを必死で押し殺していた。怒り。嫌悪。そして、逃げ場のない恐怖。 車は一定の速度で、まるで時間の感覚を奪うかのように静かに進んでいた。窓に映る自分の顔が、どこか他人のように感じられる――それが、現実を受け入れきれない彼女の今の心情を物語っていた。 助手席の小島は、ふと鼻を鳴らすと、背もたれに体を預けたまま呟くように言った。 「なぁ……ちょっと見せてみいや。中身の仕上がり具合。」 声は抑えられていたが、そこに込められた意図はあまりにも露骨だった。 ミサキの肩が、わずかに震える。 「……な、何をですか……?」 問い返す声は小さく、震えていた。 「見せるもんは一つやろ。脚開いて、“具合”を見せてくれ言うとるんや。」 小島はあくまで軽口のような調子で、しかし決して冗談ではないという圧を含ませながら続ける。 「服の上からやと分からんのや。今日は大事な日やしな?品定めっちゅうもんがあるやろ。なぁ、ミサキちゃん?」 ミサキはうつむいたまま、唇をかみしめた。後部座席の沈黙が、車のエンジン音と混じり合い、やけに生々しい鼓動のように響いてくる。 「……そんなことしなくても……だ、大丈夫です……」 消え入りそうな声が、車内に漏れた。 小島はニヤリと笑いながら、振り向きもせず前を向いたまま言い返す。 「“大丈夫”かどうかは、俺が決めることや。お前が言うても、信用にはならんのや。ほんなら、脱いで確認するしかないやろ?」 一拍の沈黙。 「さっさと見せや。そんなんでビビってて、客に晒せるか? お披露目の前にチェックしといたるっちゅう親切やろが。ボケ!」 ミサキはぐっと目を閉じた。呼吸が浅くなり、吐く息が熱を帯びていく。 (……いっそ、どこかでこのまま飛び降りてしまえたら……) そんな衝動が頭をかすめるが、すぐに思考を押し戻した。今、ここで反抗しても、きっと状況は悪化するだけだ。まだ、“ギリギリ”の段階。 震える指が、ゆっくりとスカートの裾にかかる。 身体を少しずつシートに沈ませ、両脚をゆっくりと開いていく。 座席の上でM字に開かれた脚が、肌寒い車内の空気に晒され、露出の生々しさを際立たせていく。太腿が緊張に小さく震え、その間にある小さな布がひどく無防備に浮かび上がる。 「おお……ええやん。」 小島の声が湿った笑いとともに漏れる。 「その体勢……ええな。そのまま、もっと見えるようにしてみ?」 ミサキは目を閉じたまま、唇を引き結ぶ。そして、覚悟を決めたように両手をゆっくりと下着の上に添え、布地を指先で摘まんだ。 「……っ……」 小さな吐息とともに、布がずらされる。硬く張った太腿の間、湿りを帯びた柔肌が露わになっていく。陰影が浮かび、僅かに乱れた陰毛の奥、中心部の皺が、わずかに開いてその存在を主張する。 「うわ……えっっぐ……ほんま、商売道具やな。使い込まれてる感と、素人臭さのバランスがエグいわ。」 小島の声が、薄ら笑いの奥で欲望をむき出しにする。 「そんで、その下着な……もっと奥に食い込ませてみいや。割れ目のカーブが、よう見えるようにな?」 ミサキの瞳が揺れる。けれど、反論の言葉はもう出てこなかった。 彼女は言われるままに指を動かす。布をきつく引き、敏感な部位にぴたりと張りつかせると、そこに刻まれた柔らかい線と肉の隆起が、まるで鑑賞物のように形を明らかにしていく。 布地がねっとりと貼りつき、中心のスリットをくっきりと浮かび上がらせる。汗ばむような湿り気と、強張った筋肉が織りなす微かな震えが、むしろ性的な緊張を高めていた。 「うん、完璧やな……まさに、“金になるマンコ”って感じや……」 ミサキは、自分がただ“見られるための存在”になっていく感覚に、体の芯が凍るような冷たさを感じていた。 けれどその一方で、怒りが、確かに――胸の奥で芽を出していた。 (……私、壊されてたまるか……) 車は、さらに深い闇の中へと滑っていった。 自分でも驚くほど、内側の奥深くに熱い感情がわずかに灯っている。恐怖に押しつぶされかけていた心の隙間に、それは静かに、確かに膨らんでいた。 だが、その小さな炎を踏みにじるように、小島の声がまた車内に響く。 「おいおい……そのマンコ、たまらんなァ。こう、パックリと割れ目に汗にじんでてな……ええ艶しとるわ。やっぱ生が一番やなァ……なぁ、タカハシ?」 運転席の高橋が、ぎこちなく肩を揺らすようにして苦笑した。 「は、はい……」 声は上ずり、わかりやすく動揺していた。だがその目は、バックミラー越しに何度も後部座席を盗み見ている。ミサキの太腿の間に広がる露わな陰影を捉えようと、焦点が微妙に定まっていない。 その視線を、ミサキは感じ取っていた。ミラー越しに、男の目が確かに自分をなぞっているのを。 小島はそれに気づいているのか、気づいた上で遊んでいるのか――舌なめずりするような口調で言葉を重ねた。 「なァ、タカハシよ。ミラーから見えるやろ? この女のツラじゃなくて、下の“口”が笑ってるって感じやなァ……ぴっちり締まってるのに、欲しがっとる顔しとるでコレ。」 ミサキの手が小さく震える。だが下着はまだ、きつく食い込んだまま。わずかに開いた割れ目の奥に、湿気が溜まっているのが自分でもわかる。 小島がニヤついたまま、腕を肘掛けに乗せて振り返る。 「お前、気づいとるか? さっきからタカハシ、ミラー見て前見て、また見て……忙しなぁ。」 高橋は「す、すんませんっ!」と焦ったように反応し、思わず前を向き直す。 だが、小島は続けた。 「いやええねん。男やったら当然や。むしろ見とけや、目ぇかっ開いて。なァ?そのための席やろ。……お前が見てるうちに、この女、もっとえげつないカッコになるんやから。」 車内の空気が、生暖かくよどんでいく。 ミサキは堪えていた。怒りも、悔しさも、全部飲み込んでいた。けれど、自分が“見世物”として扱われていることだけは、脳の奥に焼きついていた。 小島が、なおも手を止める気配なく煽り続ける。 「なぁミサキちゃん、自分から開いたんやし、もうちょいええ角度でやってくれへん? そないに奥まってると、タカハシがよく見えんやろ?」 「…………」 「もっかいだけ言うわ。下着ずらすだけやと足りへん。自分でな、マンコの形がはっきり分かるように、広げてみ? 指で。」 その言葉に、ミサキの肩がぴくりと動く。 (……やっぱりこいつ、壊す気なんや……) けれど―― その瞬間、バックミラーの向こうで、明らかに目を奪われている高橋の顔が目に入った。唇がわずかに開き、何かを呑み込むように喉が動く。ハンドルを握る手が、妙に強張っていた。 (見られてる……) 羞恥と怒り、そして「こんな奴らに心まで奪われるか」という叫びが、ミサキの奥底でせめぎ合っていた。 ――だが、それでも今は、逆らえない。 彼女は静かに、ゆっくりと太腿の内側に手を伸ばした。小さく震える指先が、下着を再び摘まむ。そして――その両脇を、左右に広げるように引く。 ぴんと張った布の間から、濡れた肉の割れ目がはっきりと現れた。湿り気を帯びて赤くなった内側。わずかに光を反射し、陰毛の間から、その中心が艶やかに浮かび上がっていた。 「うわ……!最高やん……」 小島の吐息が、むせ返るような熱を帯びて車内に広がる。 「なぁ見たか、タカハシ。これが“売れるカラダ”っちゅうやつやで……」 高橋は口を開けたまま、返事を失っていた。ミラー越しの視線は完全にロックされている。 小島はくすくすと笑いながら、さらに言葉を重ねる。 「こうして広げさせたままな、写真撮ったろか思てたんや。けどなぁ……こうやって“直に見せられる”っちゅうのは、ええもんやで。生の臨場感っちゅうやつやなぁ~」 ミサキは声を出さなかった。すでに、言葉では何も守れないことを理解していた。けれど、何も考えていないわけじゃない――ただ、沈めていた。 見られている、という現実。感じている羞恥。勝手に上がる声、舐めるような視線。 ミサキは視線を落としたまま、口をきつく結んでいた。車内に漂う湿った空気が、服の隙間から肌に絡みつくような感覚。けれど、それすらももう、何もかもが遠くなっていく。 自分が何をしているのか――いや、させられているのか。わかっているはずなのに、頭がそれを拒んでいる。 (……なんで、こんな……どうして私が……) 指先に伝わるぬめりと布の感触。その奥にある、もう自分のものじゃないような肉体。 彼女は、ただただ――絶望していた。 自分の意思で動いているわけじゃない。立ち止まったら、終わる。それがわかっているからこそ、動かざるを得ない。ただの人形のように。 (……いや。違う。止まったら、終わらされるのは……私だけじゃない) 小島の声、あの笑い。思い出すだけで、背筋が凍る。 “何かあったら、困るやろ?” 何気なく放たれたその一言が、ずっと頭にこびりついて離れない。 (……私が逆らったら、あの人たちに……) オクトパスの店長も、ヨウコも、佐藤も。あの場所で、自分を優しく受け入れてくれた人たち。 (……お願い……見ないで。知らないで……) ミサキは、誰にも気づかれないように、こっそりと自分の爪が手のひらに食い込むほど握りしめていた。痛みで意識を保っていた。 「おい、そのまま固まっとらんと、ちゃんと広げとけや」 小島の声が、まるで催眠のように彼女の意識を引き戻す。 「タカハシも見たいやろ? なぁ、言うてみ」 「……っ……」 高橋は戸惑ったように口を開きかけ、言葉に詰まった。だがミラー越しの目は、ミサキから離れていなかった。 その視線が刺さるたびに、彼女の心が削れていく。自分の身体が、商品としてただ“価値を測られる対象”でしかないと、嫌でも実感させられる。 (……もう、全部どうでもいい) そう思った瞬間、ミサキの両手が、ほとんど機械的に動いた。まだわずかにずれていた下着の布地をさらに押し広げ、柔らかく濡れた部位を外気にさらす。 ほんの少しでも隠れていた陰毛の奥、割れ目の中――その全てが、車内の二人に向けて“見せつける”ように、無様に、あらわになった。 何も感じたくなかった。羞恥も、悔しさも、怒りも――全部、感じたら壊れてしまう。 自分の中から何かが抜けていくような感覚。それが何なのかは、もう考えたくもなかった。 (……お願いだから……誰も……見つけないで……) ただ静かに、震えながら、ミサキは脚を開いたまま、息を殺して耐えていた。 ミサキは、膝を開いたまま動けずにいた。 車内の空気が肌にまとわりつく。恥ずかしげもなく広げられた布地の奥。そこは、緊張と羞恥と――何より、強く握りしめた拳でさえ止められない、身体の本能が、静かに、しかし確実に反応を起こしていた。 内腿の奥、じわじわと滲み出す湿り。下着の布が、ぴたりと張り付いているのが自分でもわかる。呼吸を抑えても、熱を帯びた身体はそれを隠してくれなかった。 (……なんで……やめて……こんなときに……) ミサキの目には、羞恥の色が濃く浮かぶ。だが、どれだけ心が拒絶していても、体は言うことを聞いてくれなかった。じわり、と滲んだ湿り気が、肌と布の間にいやらしい膜を作っていく。 そんな彼女をじっと見つめていた小島が、くっくっと喉を鳴らして笑った。 「おいおい……よう濡れとるやんけ。びっくりするわぁ。こんな反応されたら、こっちのほうが照れるやんか」 振り返りもせず、助手席からそのまま声を投げる。声の調子は軽いが、その奥にあるのは底知れぬ悪意と嗜虐の悦びだった。 「……はぁ、やっぱお前は使えるわ。ええ素材や。文句なし」 そう言って、ゆっくりと笑みを深めたあと、軽く手を振った。 「もうええ。よう見せてもろたわ。今はここまでや。……本番はこれからやしな」 ミサキは、ようやく指先の力を抜いた。だがその瞬間、脚の内側にひやりとした湿りが広がり、自分がどれほど“見せてしまっていたか”を突きつけられるようで、また震えた。 「ほんなら……いったん脚閉じてええけど、気ぃ抜くなよ?今日のこれは、ほんの序章やからなァ~?」 小島はニヤニヤとしたまま、タカハシに目を向ける。 「おい、興奮して事故るなヨ。」 高橋はこくりと頷き、緊張した手つき運転を続ける。 ミサキはそっと太腿を閉じ、下着を戻しながら、まだ何も言えずにいた。口を開けば、嗚咽が出てしまいそうで。 ただ一つ、確かだったのは――これが終わりではない、ということだった。 そして、これからが本当の地獄だということも。 ・・・・・・・・・・。 冷えた空気の中、黒いセダンが静かにハンドルを切り、古びた工場の前に滑り込んだ。外観は既に廃墟同然。屋根の一部はめくれ、壁にはスプレーの落書きが雑然と広がっている。 車のエンジンが止まると、しばしの沈黙のあと、小島がゆっくりとドアを開けた。 「着いたで」 助手席のタカハシも無言で続く。後部座席のミサキはわずかに躊躇いながらも、コートの裾を押さえて外に出た。冷たい夜風が素肌の脚を撫でるたび、肌が小さく粟立つ。 続いて、もう一台の車も停車し、タカハシの舎弟二人が降りてきた。一人は見るからにチンピラ然とした男で、銀のチェーンをぶら下げたオラついた格好。もう一人は、ニット帽を目深にかぶった長髪の男。全身を黒でまとめ、どこか肉体の動きに柔らかさを感じさせる。鍛え抜かれた肉体が、服の下からでもわかる。 五人がゆっくりと工場の前に立つと、奥のシャッターが軋むような音を立てて開いた。 中から現れたのは、砂川だった。 黒のロングコートに細身のスーツ。手には煙草を挟み、薄く笑みを浮かべていた。その後ろには二人。片方は丸坊主にサングラスをかけ、肩で風を切るように歩く若い男。もう一人は、金髪の短髪、オールバック風。背は高く、分厚い首と肩幅。動きは少ないが、立っているだけで周囲に威圧感を与えていた。 砂川は歩み寄りながら、ゆっくりと笑った。 「ずいぶんとゾロゾロ連れてきたもんやなー、小島ァ」 小島は笑い返しながら、肩をすくめて返す。 「あー。簡単に殺られへんためや。ほら、アンタ、昔からちょっと油断できへんタイプやろ?」 砂川はクツクツと笑い、煙草を口元に運んだ。 「オイオイ、ビジネスの話やろォ~。物騒な事考えるなや、怖いなぁ~」 「ビジネスやからこそや。今どき、誠意だけじゃ話にならへんやろ?」 しばらく睨み合いのような空気が流れたが、やがて砂川が顎で合図を送る。後ろにいた二人が前へ出てきて、ゆっくりと小島たちに近づいた。 「念のため、ボディチェックさせてもらうで」 無表情のオールバックが短くそう言うと、坊主の方が軽く笑いながら手を鳴らす。 「ちょいと失礼しますわ。最近の取引相手はみんな、何かと隠し持っとるからなァ~」 舎弟たちは手慣れた様子で小島とタカハシを調べる。ポケットの中、腰、靴の中まで迷いなく。小島はニヤニヤしながらも、文句を言わずにされるがままにしていた。 そして―― 「そんで、このお姉ちゃんは……?」 坊主の男がミサキの前に立ち、下から上まで舐めるように視線を這わせた。 「女もなァ、けっこうモノ隠してることあるんよ。特に――“柔らかいとこ”に。」 その言葉にミサキの身体がわずかに反応した。背筋がぴんと伸びる。 「ちょっと、何するつもり……?」 口調こそ冷静だったが、声には明らかな緊張が滲んでいた。 「んー、身体検査やて。何度も言うけどなァ、女は隠すとこが多いんやって。しゃーないやろ?」 そう言いながら坊主は、わざとらしく手のひらをこすり合わせ、ゆっくりとミサキに近づいていく。 「まずは、ここら辺から……」 ミサキの肩に手が置かれ、そこから徐々に背中、腰へと滑っていく。そのまま手は遠慮もなくお尻へ――そして、軽く揉み込むような動き。 「やわらか……うん、これ隠せるな。下に何か仕込めるわ、うんうん」 「……やめてって言ってるでしょ!」 ミサキが声を上げるが、男は意に介さず、笑って手をさらに滑らせる。 「おっと……反応ええな。緊張してる?まあ、当然やなァ~。でもな、俺はキッチリ仕事しとるだけや。なぁ、小島さん?」 小島は横で腕を組んだまま、軽く笑った。 「気にせんでええ。こっちはなんも仕込んどらん。“素材”を見てもろたら、それで十分やろ?」 坊主の手は、腰から太腿、そして内腿にまで及びそうになったところで、オールバックが咳払いして止めた。 「……そのへんでええ。問題ない」 無表情の男のひと言で、坊主は仕方なさそうに手を離す。 「ま、異常なしってことで」 ミサキは震える息を押し殺しながら、コートの裾を整えた。視線は足元から離れなかったが、その頬にはうっすらと怒りの熱が滲んでいた。 一方、砂川は煙草を指先で弾きながら言った。 「さて……品定めも済んだようやな? ほな、本題に入るかァ」 薄暗い工場の中へと、二つの“陣営”がゆっくりと足を踏み入れていく。 その中に立つミサキの姿は、まるで闇に飲まれていくように見えた。 ・・・・・・・・・・。 工場内は暗く、吹き抜けの天井に響く足音が冷たく反響していた。かつて機械の音で満ちていたであろう空間は、今ではただの空洞。鉄と油の匂いがかすかに残り、空気そのものが重く感じられる。 砂川が足を止め、片手を上げる。 「ここでええわ」 そう言って、片隅に仕切られた一階の部屋を指差した。古いオフィスのようなスペース。かろうじてドアがついているが、音も視線も遮るには心もとない。 「俺は小島と二人で話がある。他のもんは全員、二階で待機しとけや」 そして、ミサキに目を向けると、薄く笑いながら続けた。 「……お前は、この女が“使えるかどうか”試しとけ」 その言葉に、坊主の舎弟が顔を綻ばせた。 「へへ……了解っす。お預かりしますわぁ~。しっかり“確認”しときますんでぇ」 スケベな笑みを浮かべながら、すでに二階への階段に向かい始めていた。 ミサキはその後ろ姿を見ながら、小さく息を呑む。震えそうになる膝を、無理やり前へと進めた。 だが、その前に小島の声が飛ぶ。 「……おい、ミサキ。ちょっと待て」 彼女が立ち止まると、小島は手を差し出した。 「カバンとコート、渡せや。中に携帯とか入ってるやろ? 余計なもん持ってると、仕事に集中できん」 言われるまま、ミサキはゆっくりと肩からコートを脱ぎ、脇に抱えていたバッグを差し出す。コートの下に現れた薄手のニットとタイトスカートが、空気の冷たさとともに肌を刺した。 小島はそれらを受け取ると、すぐにタカハシの方へ差し出した。 「お前、預かっとけ。あとやな――コッチの交渉中、お前をつけるわ。俺ひとりやと心細い。なんせここはアウェーやからなァ……話の途中で背後から“ズドン”はごめんやからな?」 少し大袈裟に言いながらも、目には警戒の色がにじんでいた。 砂川はニヤリと笑いながら煙草をくわえ直す。 「……ふふっ、まぁ、ええやろォ。こっちもそういうのは歓迎や。無茶はせぇへん」 そうして、一階の部屋へと小島、タカハシ、そして砂川が足を踏み入れた。ドアが軋む音を立てて閉まり、工場内は再び静けさを取り戻す。 ミサキは残された数人と共に階段を上がる。鈍い鉄の段が足元に重たく響く。舎弟たちは無言だったが、視線だけが彼女の背中をねっとりとなぞっていた。 二階は、いくつかの仕切られた部屋と、狭い通路があるだけの簡素な構造だった。その一つの個室前で、威圧感ある短髪オールバックの男、長髪の男とチンピラ風の舎弟が三人が立ち止まる。 「ここや」 坊主が鍵のかかっていないドアを開け、中を覗きながらミサキに顎をしゃくる。 「入ってや。話は中でするわ。──なあに、怖ないって」 ミサキは小さく頷き、無言のまま部屋の中へ足を踏み入れた。 扉が閉まる音が、まるで何かの“区切り”のように聞こえた。 一階の部屋では、テーブルを囲むようにして三人が座っていた。小島はコートを椅子に掛けながら、タバコを取り出す。火をつけると、深く吸い込んで煙を吐いた。 「……さぁて、話といこか」 砂川は肘をつきながら、ゆったりとした動きで足を組む。そして、目を細めた。 「リラックスせぇよ。今日はそう堅苦しい話やあらへん。ただ……」 口元を歪めながら、煙を吐いた。 「ええ女、連れてきたなァ。──確かに、アレなら金になるわ。肌も艶っぽいし、あの目……あれは、客が欲しがるやつや」 小島は笑いながらも、視線は崩さない。 「そうやろ。素質がある。──ええ素材ちゅうのは、磨けば輝く。そやけど、扱い方ひとつ間違えば、割れてまうからなァ……」 タカハシは隣で黙って話を聞いていたが、指先がわずかに落ち着きなく動いていた。 ・・・・・・・・・・続


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