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金貨と触手の夜

『金貨と触手の夜』  その港町は、活気と混沌に満ちた場所だった。広大な海に面し、巨大な桟橋が何本も突き出し、日に何度も船が行き来する。帆船の白い帆が風に膨らみ、商船の甲板には異国の品々が積み上げられ、漁船からは網に絡まった魚が跳ねる音が響く。船員たちの荒々しい掛け声や、波が石壁に打ち寄せる音が絶えず、町全体が潮の香りと海風に包まれていた。  市場は港のすぐそばに広がり、色鮮やかなテントや露店が軒を連ねる。新鮮な魚介類が山積みにされ、銀鱗の魚、エビ、カニ、時には深海から引き揚げられた奇妙な生き物までが並ぶ。商人たちは大声で客を呼び込み、値切り交渉の怒鳴り声と笑い声が混ざり合い、市場は昼夜問わず喧騒に満ちていた。  この町の住民は多種多様だ。人間が商売や航海術で中心を担い、獣人は鋭い爪や俊敏さを活かして漁業や荷運びに汗を流す。オークはその屈強な体で船の修理や重労働を支え、エルフやドワーフもそれぞれの技術で町に貢献していた。種族間の軋轢はゼロではないが、海と港がもたらす豊かさを共有することで、ある程度の調和が保たれている。町並みは石畳の道と木造の建物が特徴で、海沿いには倉庫や酒場が立ち並び、内陸側には住宅や工房が広がる。夕暮れになると、船乗りたちが酒場に集まり、異国の歌や荒々しい笑い声が響き、町はさらに賑やかさを増した。  その港町で、アッシュは生まれ育った虎獣人だった。身長は2メートルを超え、筋骨隆々とした体躯に灰色の縞模様が走る毛皮が特徴的で、名前もその「灰」からきている。黄金色の瞳と鋭い牙、太い尾が彼の獣人らしい存在感を際立たせていた。港での荷卸しや積み込みの仕事では誰よりも頼りになり、重い木箱を軽々と持ち上げる姿は市場の子供たちにも人気だった。ケンカとなればその腕っぷしで相手を瞬時にねじ伏せ、アッシュの豪快な笑い声は市場の喧騒の中でもよく響いた。町の住人からは一目置かれる存在であり、彼自身もその役割に誇りを持っていた。  だが、ここ数日は港町にとって試練の時だった。連日の大時化で海が荒れ狂い、波が桟橋を叩き、船を出すどころか近づくことさえ危険な状況が続いていた。荷卸しの仕事も途絶え、アッシュの手元には金がほとんど残っていなかった。酒場で安いエールをちびちび飲む日々が続き、普段は豪快な彼も苛立ちを隠せなくなっていた。毛皮に染みついた潮の匂いと、汗でべたつく体が彼の気分をさらに悪くしていた。  そんなある晩、いつものように酒場で仲間と愚痴をこぼしていると、仕事仲間のドワーフのガルムが近づいてきた。ガルムは赤銅色の髭を撫でながら、酒臭い息で声を潜めて言った。「知ってるか?」アッシュが怪訝な顔で「何だ?」と聞き返すと、ガルムはさらに声を落とし、こう続けた。「噂なんだが、丘の上にあるあの古い邸宅の離れだ。夜中に行けば、良い金になる話があるらしい。詳しくは知らんが… 興味があれば今夜、様子を見に行ったらどうだ?」  丘の上の邸宅といえば、港町を見下ろす高台に建つ、半ば朽ちかけた屋敷のことだ。かつては裕福な商人が住んでいたらしいが、今では主の姿はなく、窓から漏れる光も見えない。不気味な噂が絶えず、子供たちは「幽霊が出る」と囁き、船乗りたちは「何か怪しい取引が行われている」と酒場で語り合っていた。アッシュは眉をひそめ、「なんだそりゃ? そんな胡散臭い話… 」と一蹴しかけたが、金欠の現実に背中を押され、内心では興味を抑えきれなかった。エールを一気に飲み干し、「まぁ、見に行くだけなら… 」と立ち上がった。ガルムはニヤリと笑い、「気をつけろよ、アッシュ」とだけ言い残した。  夜の闇が港町を包む中、アッシュは丘へと続く石段を上り始めた。風が唸り、遠くで波が打ち寄せる音が聞こえる。石段は苔むし、ところどころ欠けた部分が足元を悪くしていた。得体の知れない噂話に不安はあったが、金と冒険への好奇心が彼を前へと突き動かしていた。丘の頂に近づくにつれ、木々の間から古びた邸宅のシルエットが見えてきた。本邸は廃墟のように静まり返り、蔦が壁を這っている。だが、その横に立つ離れからは、かすかに灯りが漏れていた。  アッシュが丘の頂にたどり着くと、目の前に広がる邸宅の離れが目に入った。夜風が彼の毛皮を揺らし、カンテラの灯りが薄暗い光を投げかけている。誘蛾灯のようにゆらゆらと揺れるその明かりは、どこか不気味で、近づく者を引き寄せるような魔力を持っているようだった。離れは石造りで、窓一つない頑丈な造りだ。唯一の出入り口と思われる木製の扉は、年季が入りながらも分厚く、鉄の補強が施されており、簡単には壊せそうにない。周囲を見ると、草は刈られ、足元の小石は整然と並べられており、人の手が入っている形跡が明らかだった。「人が住んでるのか…? 」とアッシュは首をかしげ、鼻を鳴らして空気を嗅いだ。潮の匂いに混じって、微かに何か甘いような臭いを感じた。  怪しい雰囲気が漂う中、アッシュの心は揺れた。獣人の本能が危険を警告し、背筋が逆立つ。普段ならケンカも恐れず突っ込む彼だが、この状況は何か違う感じがする。ガルムの言葉が頭をよぎる――「良い金になる」。金欠の現実と好奇心が彼をここまで連れてきたが、目の前の扉が放つ得体の知れない気配に、一瞬足がすくんだ。それでも、アッシュは深呼吸をして気持ちを落ち着けた。「見に来ただけだ、様子を見て帰る、それで十分だろ」と自分に言い聞かせ、慎重に離れに近づいた。カンテラの灯りが彼の影を長く伸ばし、石壁に映し出す。  扉の前まで来ると、彼は耳を澄ませた。風の音以外に何か聞こえるか――微かに、だが確かに、扉の向こうから気配を感じる。アッシュの尾がピンと立ち、反射的に爪を立てる構えを取った。好奇心と危険がせめぎ合う中、彼は意を決して拳を握り、木製の扉を二度叩いた。鈍い音が夜の静寂に響き、少し間をおいて、扉が軋みながらゆっくりと開いた。  現れたのは、眼鏡をかけた小太りの男だった。男は扉の隙間から顔を出し、アッシュを見上げると、その巨大な体躯に一瞬たじろいだようだった。しかしすぐに表情を整え、値踏みするような視線で彼を頭から爪先までじろじろと眺めた。「ふむ…」と小さく唸り、男は無言で顎をしゃくって中へと促した。  促されるまま、アッシュが一歩踏み入れると、意外な光景が広がっていた。外の不気味な雰囲気とは裏腹に、離れの内部は明るく、受付のような整然とした内装が目に入った。壁には木製の棚が並び、書類や小さなガラス瓶が几帳面に置かれている。中央には頑丈な木製のカウンターがあり、その向こうに男が立った。カンテラの灯りは外からの演出に過ぎず、ここでは複数の燭台が部屋を温かい光で満たしていた。アッシュは一瞬拍子抜けしたが、すぐに警戒心を取り戻した。  男はカウンターの後ろから帳簿らしきものを取り出し、ペンを手に持つと、アッシュを見上げて口を開いた。「ここに来たってことは、誰かに聞いたんだろ? 誰からだ? 」声は低く、感情があまり込められていない。アッシュは少し考え、「港の酒場で、ドワーフからだ」と正直に答えた。隠す理由もないし、嘘はついていない。男は「ドワーフね… 」と呟き、帳簿に何かを書き込むと、再びアッシュを見た。「で、お前、金が欲しいのか? 見たところ、体力はありそうだな。名前は? 」  アッシュは「アッシュだ」と短く名乗り、男の態度に少し苛立ちを覚えながらも続けた。「金になるって聞いた、それだけだ。怪しい仕事なら帰る。」男は眼鏡の奥で目を細め、かすかに笑った。「怪しいかどうかはお前が決めるさ。まあ、座れよ、話はそれからだ」と、カウンター脇の椅子を指した。アッシュはまだ疑いを捨てきれなかったが、金と好奇心に背中を押され、ゆっくりと腰を下ろした。  アッシュは苛立ちつつも、金の誘惑に抗えず、渋々話を聞くことにした。男はカウンターに肘をつき、低い声で説明を始めた。「簡単に言うと、ここは『陰獣』の飼育場だ。触手みたいな見た目のモンスターで、名前は言えねえが、ある大層な大金持ちの道楽コレクションで、その陰獣の餌が何かっていうと… 男の精子だ」アッシュは一瞬耳を疑い、呆れと怒りが混じった表情で立ち上がろうとした。「バカバカしい。こんな話に付き合ってる暇はねえ」その瞬間、男がカウンターに革袋をドサリと置いた。中からこぼれた金貨が鈍く光り、アッシュの動きがピタリと止まる。「一回で金貨十二枚だ。どうだ? 」男の眼鏡の奥で目が細まり、にやりと笑った。  金貨の輝きがアッシュの黄金色の瞳に映り、彼の心が揺れた。連日の大時化で仕事がなく、酒場で安酒をかろうじて飲む日々。目の前の金貨はその何倍もの価値があり、しばらく暮らせる額だ。獣人の本能が「逃げろ」と叫ぶ一方、金欠の現実が彼を椅子に引き戻した。「…で、どうすりゃいいんだ? 」と睨みつけると、男は満足げに頷き、「簡単だ。下の部屋で『採取』するだけ。痛くもなんともねえ。誰にも言わなきゃ、ただの秘密の小遣い稼ぎさ」と言い、カウンターの奥の扉を指した。アッシュは嫌悪感を押し殺し、金貨を手に取って頷いた。「わかった。一回だけだ。」  男に導かれ、アッシュは奥の扉をくぐった。扉の先には石造りの階段が地下へと続き、足を踏み入れるたびにひんやりとした空気が毛皮を撫でた。階段は苔むし、湿気で滑りやすく、壁には古びた燭台がまばらに灯りを投げかけている。進むにつれ、空気に混じる独特な甘い臭いが鼻をつく。花の蜜のような誘惑的な香りだが、どこか生臭く、獣人の鋭い嗅覚に不快感を与えた。アッシュの顔に不安がよぎると、男は振り返り、「大丈夫、ちゃんと調教されてるから、噛みついたり、卵を産み付けられたりなんてことはねえ」と笑った。その軽い口調が逆に警戒心を煽ったが、金貨の重みが彼を前へと進ませた。  地下に到着すると、幾つも並んだ扉の一つに案内される。そこは薄暗く、天井から吊るされた小さなランプがわずかな光を投げかけていた。石壁は冷たく湿り、床には水滴がぽたりと落ちる音が響く。部屋の中央には粗末な木製のベンチが一台ぽつんと置かれ、他には何もない。男は、「ここで裸になって、そのベンチで待ってろ。すぐ終わるからな」と言い残して扉を閉めた。鈍い音が響き、アッシュは一人取り残された。甘い臭いがさらに濃くなり、彼は服を脱ぎながら内心の不安を振り払った。筋肉質な体が薄暗い光に照らされ、服をベンチの端に放り投げると、彼は深呼吸して腰を下ろした。冷たい木の感触が背中に伝わり、遠くからかすかな水音が聞こえてくる。  アッシュがベンチに腰を下ろした瞬間、部屋の薄暗い隅で何かが蠢き始める。それは最初からそこに潜んでいた。目を凝らすと、暗闇から現れたのは、黒く不定形な塊――太い蛸の触手のようなものが何本も絡み合い、うねうねと動いている。表面はぬめり、光を不気味に反射し、全体がまるで生きる影のように脈打っていた。アッシュの喉から「うわっ」と嫌悪感混じりの声が漏れ、毛が逆立ち、反射的に立ち上がろうとした。だが、金貨の重みが脳裏をよぎり、なんとかその場に踏みとどまった。扉の外から男の声が響く。「じゃあ、頑張ってくれ。しばらくしたら様子を見に来るからな」  触手が這いずりながらゆっくりと近づいてくると、甘い臭いがさらに強くなり、アッシュの鼻腔を支配した。彼は歯を食いしばり、目を細めてそれを見つめた。触手の一本が彼の足元に触れ、冷たくぬるりとした感触が伝わる。嫌悪感で体が震えたが、「金のためだ」と自分に言い聞かせ、目を閉じて耐えた。陰獣の触手は一本、また一本と増え、太ももを這い、腹部にまで達した。その動きは緩慢だが、まるで彼の反応を確かめるように執拗だった。  だが、その嫌悪感とは裏腹に、アッシュの体は予想外の反応を示し始めた。股間の雄が熱く滾り、意に反して硬く膨張していくのを感じたのだ。頭が混乱し、理性が揺らぐ。部屋を満たす甘い臭いがさらに濃密になり、アッシュの鼻腔を支配していく。それは花の蜜のような誘惑的な香りでありながら、どこか獣じみた生臭さを帯びており、彼の意識を奇妙に掻き乱した。  触手の一本が男根を包み込むと、ぬめりとした冷たい感触が一転、柔らかく締め付ける圧力に変わり、今まで味わったことのない刺激が全身を駆け巡った。アッシュの顔がだらしなく弛み、口から低いうめき声が漏れ、黄金色の瞳が虚ろに揺れた。  この得体の知れない生き物が何かを放ち、彼の本能を操っているのか、それとも単に金のために我慢している自分への言い訳なのか、アッシュには判断がつかなかった。ただ一つ確かなのは、この地下の部屋で彼が予想もしなかった試練に直面しているということだった。男が戻ってくるまでの時間が永遠に感じられ、アッシュは混乱と欲望の狭間で喘ぐしかなかった。  陰獣はまるで意思を持っているかのように動いた。触手が太ももを締め付け、腹部を撫で、胸元にまで伸び、彼の体を巧みに這い回る。その動きは無秩序に見えて、どこか計算尽くされており、アッシュの弱点を的確に見抜いていた。甘い臭いが濃密になり、彼の理性を溶かし、頭をぼんやりとさせた。「こんな…こんなはずじゃ…」と呟きながらも、体は熱を帯び、触手の執拗な愛撫に反応してしまう。男根を包む触手がリズミカルに締め上げ、擦り上げるたび、息が荒くなる。触手の先が敏感な部分を擦り、締め付けが強まると、アッシュは耐えきれず、声を震わせながら一発目を吐き出した。  勢いよく迸る白濁が陰獣に降りかかると、触手がびちびちと跳ねるように蠢き、それを吸収していく。白種が表面に染み込むように消え、アッシュは虚ろな目で「口は…無いのか?」とぼんやりと思った。陰獣は一瞬動きを止め、吸収を終えると、再び触手を蠢かせ始めた。今度は動きが速くなり、彼の体に絡みつく力が強まった。「ま、待て…まだ…!」と抗議の声も弱々しく、触手が再び男根を包み、執拗に擦り上げ、3度、4度と果てさせた。流石のアッシュも体力的に限界に近づき、吐き出される雄種は極端に量を減らし、汗と熱で毛皮がぐっしょりと濡れていた。  すると、陰獣の触手が新たな動きを見せた。アッシュの尻へと伸び、使い込まれていないその部分に一本、また一本と侵入してきた。「何!?」と驚きと痛みに声を上げ、体をよじって抵抗したが、触手の力は強く、ぬめりで押さえつける。尻の穴を抉じ開けられる異物感に尾がピンと立ち、ベンチに爪が食い込む。だが、触手の新たな刺激に萎えかけていた男根が腹に反り返り、再び硬さを取り戻す。尻への侵入と同時に触手が男根を締め上げると、アッシュは耐えきれず、1度目と変わらぬ量を勢いよく吹き上げた。その瞬間、体が限界を超え、意識が飛んだ。彼の視界が暗転し、力尽きた体がベンチにぐったりと倒れ込んだ。  朝日が港町の丘を染め、空に淡いオレンジが広がっている。アッシュが目を覚ますと、地下の部屋に陰獣の姿はなく、眼鏡の男が立っていた。男は帳簿を片手に彼を見下ろし、薄い笑みを浮かべている。アッシュはベンチに横たわったまま、体の重さと疲労感にうめき声を上げた。頭がぼんやりとし、昨夜の異常な出来事が現実だったのか夢だったのか、一瞬判断がつかなかった。尻の違和感と全身の倦怠感が、彼にその夜の記憶を否応なく思い出させた。  男は眼鏡を押し上げ、「お前、すごいな。一番強い個体を相手に最後まで耐えたんだ。さすがだよ」と感心したように言った。アッシュは渋い顔で睨みつけ、「もう勘弁してくれ… 二度とこんな目は御免だ」と吐き捨てた。男は笑い声を抑え、「まあ、そう言うなよ」と肩をすくめ、革袋をアッシュの横に放り投げた。金貨がこぼれ、その鈍い光が目に映る。アッシュは金貨を手に取り、しばらく見つめた後、立ち上がって服を拾った。体が軋むが、金を手に入れた安堵感がわずかに彼を落ち着かせた。  男は帳簿に何かを書き込みながら、ちらりと見て言った。「また金が欲しくなったら来なよ。お前ならもっと凄い奴を相手にできるかもしれないぜ」アッシュは背を向け、「冗談じゃねえ」と呟きながら階段を上り始めた。朝の冷たい空気が毛皮を撫で、港町の喧騒が遠くから聞こえてくる。丘を下りながら、金貨の入った袋を握り潰さんばかりに力を込めた。もう二度と戻らないと心に誓いつつも、異常な夜の記憶と金への誘惑が頭に残り続けていた。再びこの離れに足を踏み入れる日が来るのか、それはアッシュ自身にもわからない。今は港に戻り、酒場で一杯飲んでこの夜を忘れようと思うだけだった。朝日が背中を照らし、アッシュの新たな一日はこうして始まった。


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