ある勇者のハーレム物語2
Added 2020-06-08 10:51:07 +0000 UTC雄大な国 Case2 王女マリーの場合 魔王討伐の知らせが大陸中を駆け回ってから、1週間が経過していた。 王城に戻っていた英雄の一人『天剣』と称された彼女もまた、その報に人並みに喜び、そして 「……勇者君……」 人並みに、失った哀しみに浸っていた。 英雄として募った人間の頂点たる王族、貴族達だったが、異なる権力を持つ者たちが一つのグループとして(ある程度秩序だって)魔王討伐という偉業に漕ぎ着けた理由はただ一つ。 誰しもが逆らう気も起きないほどに「勇者」が規格外に強かったからだ。 彼の「手」が足りないから、英雄は駆り出されたのだ。 彼の影武者として傍に控えていたフードの少女一人がいれば、きっと「魔王討伐」は為されていたのではないかとも思える程に彼は強く、ただ彼の信条に乗っかる形で──国から"英雄"を輩出するという箔付けの為にも英雄は集まり、そしてその大半が…… 「君だけが、君さえ生きてくれさえすれば、良かったのに……。」 自覚、無自覚問わずに彼《勇者》に惚れていた。 素朴で温和、分け隔てなく優しい人柄と、人類最強という実力、顔も悪くはなく、厳しい旅路の中で共に同じ方向を向いて生活をする異性となると、まだ社交界で本格的に異性と付き合う事もなかった少女たちの想いは凡そ同様に収束した。勿論、好意の大小はあるものの、旅路の始め、勇者が旅立ってから最初の1週間から今日までを共にして、戦場でも剣士として勇者と最も多く肩を並べた彼女の好意は相当に膨れ上がっていて、いまやマリーは欠かさずに行ってきた日課の鍛錬さえおぼつかなく、ただただ自室に籠っていた。 心にぽっかりと大きく穴が開いたような無気力感に、食事ものどを通らなくなり始めて、遂には先日の「女勇者の帰還」の報を知ってからは文字通り一歩も動かずにベッドの中で寝たきりでいた。ドアの外から聞こえる「マリー様、お客様がお見えです」というメイド長の言葉にも、誰にも会う気にもなれず、より深く思索に耽った。 旅の始まりは、本当にあっさりとしたものだった。 『勇者だ、これから宜しく頼む。』 父に呼ばれて談話室に足を運ぶと、入ったことに気付いた同い年ぐらいの少年はくるりと顔をこちらに向け、出し抜けにそういった。 私は、父が私を紹介する前に発現するような"無礼者"も、そもそも私に気後れなく、緊張もせずに差し出された手をどうすればいいか分からずにポカンとしていると、彼は出した手を引っ込めて頭をかいて照れ笑いを見せた。 『悪い、急にそう言われても納得出来ないよな。』 納得以前に唐突かつ意味不明の行動に適切な対応を考え付けないのだが「勇者」は顎に手を置いて、父が口を挟むタイミングを見計らうようにまた唐突に口を開いた。 『王女様は剣士だよな?』 「そうだけど…。」 このそうだけど、は「そうだけど、もっというべきことがあるよね?」のそうだけど。だったが、「勇者」はそうだよな。と聞くべきもなかったかのように入ってきた扉を開けて、 『王様、少し娘さんと中庭をお借りします。』 といって出て行ってしまった。 部屋には、普段の様に王様の護衛もなく王様と私の二人きりだったのだけれど、嵐のように去っていった──私を待って中庭にいるのだろうけど──勇者に父と二人してポカンとして見送って、 『色々と説明することはあるが、今は良いか。』 普段眉間にしわを寄せっぱなしの父がどこか愉し気に笑って私を送り出したのをよく覚えている。 『彼がどういう人間か、よく確認しておきなさい。』 とも言われて、もしや成人した時の社交界デビューの「パートナー」にでもされるのだろうか。と浮ついた気持ちで中庭に行ったのも懐かしい話だった。 『何を聞くにしても、これから俺が強いってことを分かって貰えないと納得できないと思うんだ。』 そうしてやってきた中庭で、彼は私に──当時、既に大の大人騎士ですら無傷で下した鼻っ柱は人一倍強い──王女に向かって何でもないように告げた。 私はそれに対して色々な罵倒を思い付き、それを口にせず「この無礼な男を何秒かけてぼこぼこにするべきか」を検討していた。 『俺は寸止めも回復魔法も苦手だけど、木刀を使うから安心してくれ。』 とまで言われたあたりで、「どういう形なら自然にこいつの頭に向けて「手を滑らせる」事が出来るか」みたいなことを考えていた。 『じゃあ、好きにそっちから来てくれ。』 無防備に構えもせずにそう言われたところから、記憶が曖昧だ。 侮辱された怒りに身を任せて、鋭く打ち込んだ。それを躱され、小癪なと乱暴に振り回すがそれも躱され、あれやこれやと覚えている限りの技と、思いつく限りの事を試したが、覚えている事と言えば全身汗だくになるまで攻め立ててなお傷一つ与えられずにあしらわれて、足をがくがくさせているところに 『……まいったな、剣で英雄に勝てるって証明する為に挑んだけど、無理そうだ。』 そんなことを言って、彼は杖もなく何かの魔術を私に向けて放ち、私も避けるだけの体力もなく直撃して昏倒した。 それが彼との、勇者との出会いの話。 "魔王暗殺"の任務を受けた彼が、旅の供を求めての旅を始めたばかりの話で、つまり私はその候補であり、しかし当時の実態は「唯一の供」予定の女の自尊心を満たすための当て馬であり、諸々の事情が分かった私はそれはもう怒りに怒り、是非勇者様の旅についていきたいと名乗り出た。 勇者は後に「あいつ(ティアナ)が『私が認めるだけの腕前を見せろ』というので、噂に聞く英雄と戦いに来たが、旅の連れを増やす予定はないから、わざと嫌われるぐらいのつもりだったんだけど、良く着いてきてくれたよ。お前が居なかったら──」 みたいに色々言って私はあーだこーだとソレっぽい事を言った覚えがあるが、要するにプライドを傷つけられた腹いせにこいつ等が大失敗する様を絶対に見てやるという酷く浅ましい理由だった。 それから、色々と──本当に色々あって、助けられたり、助けたり、いい雰囲気になったり、悪い雰囲気になったり。 それでも、それでも彼が魔王を倒す瞬間を─── 『ティアナ、マリー、アリスフィア、ローザ、アヤメ。』 ───肉体が崩壊し、「魔の国」と呼ばれる異世界に消えゆく間際の悪あがきを、自ら魔の国側に踏み込んで殿を務めた彼の姿を─── 『後はクロに任せる。皆、これまで着いてきてくれてありがとう。』 ───最後の最期まで、皆で見届けた。 ……そうして、気が付けば静かな場所を探している内に城の外どころか、町の外にまで出てきてしまった事にマリーは遅まきながらに気が付いた。 「……駄目だな、思ったより参ってるのかも……。少しだけ歩いたら、お父様たちに心配かける前に戻らなきゃ。」 ぼんやりしているにしろ、外出手続きまでする『うっかり』なんて相当に拙い。人攫いにでもあっておかしくないような精神状態だ。(竜と個人で戦える人間をやりこめる在野の人間がいるかは疑問だが) ともあれこれは散歩だと自分に言い聞かせながら、冒険者たちがキャンプ場代わりに使う綺麗な泉にまで足を伸ばす。 それは無意識のうちに、勇者との旅を思い返していたのかもしれない。 初めて、城の人間を誰も供とせずに外で過ごした思い出の場所で─── 「……あれっ? マリー。なんで王女様が外にいるんだよ。」 「……勇者君?」 川魚を串焼きにしている見覚えのある男に出会って、ぴしりとマリーは固まった。 「……ちょ、ちょっと待って。なんで、あれ…っ?ゆ、勇者君なの?本当に?だって、あの時魔王領に───」 動揺して言葉もないマリーに、しかし勇者は普段通りに、旅をしていた頃のように酷く落ち着いた様子で頭を掻いて立ち上がって 「あー、その。………色々あったが、戻ってこれたんだ。話したいことも、紹介したい奴もいるんだけど…… ……いや、とにかく、ようやく会えたんだ。だから、お前にずっと言いたかったことを言おうと思う。」 「────!! そ、それって……」 勇者は初めて自らを勇者だと名乗り、供に旅することを提案してきた時の様に、もしくはそれ以上に真剣な瞳をマリーに向けていた。 かれこれ2年は旅をして、時に背中を預け合った仲である。身分故に"致した"ことはなくとも、やることはやったことのある濃密な仲である。 返事を求めない言葉を預けた事もあったし、期待しなかったかと言えば夢にまで見た程で、はしたなくも生唾を飲み込んで居住まいを正し──── 「俺のぽっちゃりハーレムの一員として入ってくれないか」 「なんて?」 聞き返してしまった。 聞き返されても、勇者は怯まずに朗々と語ってみせる。 この男の最も高いステータスは精神力。Brave《勇気》である。 「マリー、お前はもう俺の生まれがおかしい事は知っていると思う。」 「おかしい、っていうか……別の世界から来た、のよね?」 「そうだ。この世界を救うという使命を俺の世界…かは分からないが、神様から力を授かって俺はこの世界にやってきた。」 「そこは勇者君も分からないのね。」 「神、というのも仮称だからな……。だが、この国の神話を考えるに神であると俺は確信している。それはそうと、そうして俺は魔王を倒したわけだ。」 「ものすっごい端折ったわね。」 「色々ありすぎて長くなりすぎるからな……。」 「……そうだ、そうよ。あの時最後に貴方は魔王領に押し留めて消えたと思っていたけど、どういう絡繰りなの?」 「詳しく語れば長くなるから結論だけ話すと、魔王領に俺の元の世界の親友がいて、助けてくれたんだ。」 「それは、また……凄い偶然ね。」 「まぁ、それは本題ではないから今度話すよ。それで、それでだ。俺は生きていて、こっちに戻ってこれたんだが既に勇者は前々の打合せ通りクロが凱旋と報告をしてしまった。」 「クロ?あぁ、あの影武者役の……前々の打合せ通り、っていうのは?」 「もし俺が相打ちになったり、魔王寸での所で負けたらクロに勇者として役目を果たしてもらう、っていう打合せだ。多分、直ぐ動いてくれたろ?」 「勇者君が魔王領に消えた瞬間、懐から紙を取り出してすらすらと読み上げだしたのはビックリしたけどね。」 「……そうか、紙に書いてたのか……。いや、クロはあれであがり症だから、よく頑張ったとほめてやらなくちゃな。あ、いやすまない。そうじゃなくてだな。それでクロには王家からの褒賞は断って貰っていたと思う。」 「そうね。まぁ、王家の人たちも勇者君が男っていうのは知ってるし、影武者が褒賞貰う訳にもいかないわよね。」 「────でもまぁ、俺は生きていたので褒賞が欲しかった。」 「微妙にそういうところ、俗よね。」 「そして、俺はハーレムっていうのを作ってみたかった。」 「………………。 ………そう。」 「ハーレムは、自分好みの女の子を集めたもの──だろう?」 「夢を壊すようで悪いけど、そういうものじゃないわ。世継ぎを残すためのものだもの。」 「そ、そうか……。 ……いや、そうだとしても!俺は自分好みのハーレムを作りたかった!!」 「っていうことは、つまり……。」 「俺の目からすると、この世界の女子は痩せすぎている。」 「…………。」 「俺の世界の基準でいうと、もうガリガリだ。」 「ガリガリ。」 「だが、磨けば輝く最上級の原石たちを俺は幸運にも知っていた。」 「……で、最初の変態宣言に繋がると。」 「俺は地位も、金も要らない。だけど、皆との旅は本当に楽しかった。俺を慕ってくれる人がいる事が誇りになった。だから、俺とこれからも──魔王が居なくなった後の世界でも着いてきてくれる人が居るのなら、絶対に手放したくないし────ついでに俺の好きな体型になって欲しい。」 その宣言を「馬鹿だなあ。」と思いながらマリーは反芻し「馬鹿だなあ。」と思いながら勇者の首に手を回して抱き着いた。 「……この馬鹿。」 「絶対に生活に不満は覚えさせないって約束する。」 「馬鹿。『私だけを愛して』って言ったら、どうするつもりよ。」 「それは……その……すまん。」 「……馬鹿。」 『天剣』王女マリーが仲間に加わった。 王女マリー Lv78 剣士 156cm 44kg 80/56/82 HP 450 SP 200 力A 技SSS 速SS 魔B 精A 秘剣「天蓋割」 -SP30 全体に空・斬の極大ダメージ 人数が少なければダメージアップ 奥義「開闢」 -EX 全体に斬・突の極大ダメージをそれぞれランダムに10回 歩法「隼」 -パッシブ 速度補正を極大アップ 確率で2回行動 確率で3回行動 蒼天流剣術免許皆伝 -Class3以下の全ての剣士スキルを使う事が出来る