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一之瀬栞梨の尋問 3/3

──気を失っていたようだった。

 長い悪夢を見ていたような気がする。それは幻などではなく、全て現実なのだった。

「潜入の 目的は 何ですか」

 極度の疲労からぼうとしている私に、合成音声は変わらぬ調子で問いてくる。

 ……潜入の……目的……。

 私が協会から来たと……バレてはいけない……。

 でも……もうホント無理だから……。

 ……云っちゃおうかな……。

 そうすればあんな思い、二度としなくていい。

 また泣かされずに済む。


「わ、私は──」


 云いかけて、言葉が続かない。

──でも。

 この組織へ潜入した今までの努力やコスト、協会の方々の協力、そして今もドレインをされている罪なき女の子たち……。

 もう少し。もう少しでその全てが報われる。協会がここへ来てくれさえすれば……!

 頑張らなきゃ。どれだけ辛くても苦しくても、一生懸命耐えなきゃ。


「私は──あなた達みたいなクズとは違って、強いんだから!」


「──尋問フェーズを『全身』へと移行します」







「ぐぅ、────ッッ!! ッ、ああああっっ!!?!」


 機械の内壁から数え切れぬ程の器具が現れて、私の身体中へ張り付いた。先程と同じく脇はもちろん、普段は人目から隠しているような恥ずかしい場所にまで器具の魔の手が侵食してくる。自分自身ですらあまり触れないような秘所へ得体のしれない装置が用意されるのは大変な恐怖だ。しかし拘束から抜けられるわけもなく、黙ってそれを受け容れるしかない。

 全てがくすぐりに特化した機能を持っていた。すなわち私は、全身でくすぐったさを浴び続けなくてはならないのだった。


 まずは脇。ついさっき盛大に敗北させられたじゅくじゅくに熟れた脇へ──ペアン鉗子のような器具が当てられた。先端部を肌の溝に差し込んで、ハサミを開くようにぐいっと広げられる。すると私の脇の深い部分がピンと張るように晒されてしまう。溜まっていた汗がタラリと落ちていくのを感じる。

その状態を維持されたまま、今度は耳かき棒によく似た器具が接近してくる。先端の鈎状を、無防備にされた脇の奥へ──、


 かりかりかりかりかりかり──


「ぐ、ふぅ……っ!! ふ、ぐ……ッッ!!」


 重点的に擦られる。開発され切ったいわば急所の部分を、無理矢理外気へと突き出され、そこをずーっと掻かれてしまう。電気の破壊的な刺激とは違って、一点を掘り進められるような尖った刺激は、別種のくすぐったさを生んで私を苛んだ。


「ふぐぅぅぅ、っ! そこ、もうやだ……っ!!」


 そんな耳かき棒は胸の横──スペンス乳腺の部分も責めていた。細かく前後に往復しながら、丸みを沿うように動いている。小さな器具にカリカリされるだけで、胸全体へぞわぞわと浮遊感にも似たくすぐったさが広がった。私の胸が大きいだけ、くすぐりを受ける面積も広かった。

 胸の頂上では乳首が責められている。戦闘スーツを下へズラされると、陥没から勃起した乳首が粘液と霊力にまみれてぬらぬらと光っているのが分かった。機械はそこへ搾乳機をあてがい、強い吸引を始めた。


「っあ……!」


 顔をしかめて背を弓なりにしてしまう。乳首が引っ張り上げられて、小さなその身を凝らせた。触手に散々なぶられたためか、吸引だけで軽くイってしまっていた。霊力がぷつぷつと溢れては、コードへと滑り込んで機械に食べられていく。私の大切な霊力が、こんな、掃除機みたいに……!

 やがて吸引具の内部では、細長くてしなる棒が何本か展開した。まるで小さなタコが乳首を捕まえようとして、多脚を全て降ろしたみたいだった。その中心にいる乳首は、集まってくる脚を避けることもできず、全方位からの引っ掻きを受けることになってしまう。


 ゾワリ、ゾワリ、ゾワリ、ゾワリ───


「ぅあああっっ……! あああ……っ!!」


 上下に往復して乳首の全体が責め立てられる。強い快感とくすぐったさがぐちゃぐちゃに合わさって、右乳と左乳を犯してくる。一掻き毎にどぷりと霊力が迸り、たちまち吸引されて乳房の内側から次々と引きずり出されていく。スペンス乳腺の耳かき棒が、カリカリカリと搾乳を急かすようだった。それぞれが違う周期でなぞってくるときは休む暇なく歯を食いしばり、周期が同じときは「っあ! …ッ、あ!?」と断続的に喘がされた。霊力の絞られすぎで意識が朦朧としてきても、機械は責めの激しさを止めてはくれず、乳首と乳房をくすぐり続けた。チューブの残り滓を圧搾して取り出すように、徹底的な搾乳に苦しみ続けた。


「も、もうや゛め゛……っ゛!! で゛な゛い゛っ゛っ゛……! おっぱい出ないから……ぁ゛!!」


 搾り取られる度に背中を反らしてしまい、脇腹をくねくねと扇情的に動かしてしまう。しかし装置はしっかりと張り付いたまま、くすぐりを与え続けてくる。

 それはブラシであった。浴槽にこびりついた垢を落とすために用いるような、明らかに人体へ当てていいものではない大きさを持っている。黒板消しのように長方形で、ツヤツヤのナイロン毛をびっしりと蓄えている。柔らかくてコシがあるため、脇腹を荒々しくくすぐるのには最適なのだろう。

 薄皮スーツがピタピタと覆っている脇腹へ、両側から挟むようにしてブラシが当てられる。左右どちらへ逃げてもどちらかのブラシへ自分から弱点を差し出してしまう。そんな状態で、私の細くくびれたウエストが──責め立てられる。


 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ──


「ッああああーーーっ?! わ、わきば、ら……っ、あ……っ!? ああっ!」


毛の密集が肌の上を擦りまくる。数多の毛先が神経の上をなぞっていき、方向を変える度にずりゅんと回転をかけてくる。感覚を弄ばれているようだ。それが高速で行われるため、訳の分からないくすぐったさだけが爆発していた。


「そんなとこ、ゴシゴシ……っ、するなあ、っ! うぐ、……っ!」


 腹筋が痙攣したままピクピクと攣っている。引きちぎれそうだった。笑いすぎたときと同じ痛みがじくじくと起こっている。くすぐったさに身体が勝手に跳ね回り、それに合わせて腹筋が曲がるので痛かった。ブラシの責めに合わせて私のお腹の内側がびくんびくんと反応し、内蔵まで混ぜられているようだった。

戦闘スーツは耐久と伸縮性に富んでおり、これだけ無茶苦茶に擦られても破れることはない。だが触感だけは克明に伝えてくる。本来ならばチクチクするような毛先さえ、水着のような布を隔てることで柔らかくなり、くすぐったさだけが際立って感じられる。

 それはお腹とお臍も同じことである。

 お臍には振動棒が2本突き立てられて、掃除でもするかのように丁寧にほじくっていた。じゅぶじゅぶとスーツの裏から汗が染み出していて、辺りへ飛散している。振動はスーツの膜を伝播してお腹全体を震わせていた。スピーカーみたいな細やかさは丁度こそばゆいくらいの強さで、更なる責めといて機能してしまっている。

 その上を、人間の手を模した形状の機械が這い回っている。五指をわきわきと嫌らしく動かして、指先で柔肌を引っ掻いてくる。まさしく”くすぐり”の動きであった。他の器具とは違って動きがランダムなため、耐えることが非常に難しかった。あちこちをコチョコチョコチョコチョとされながら、「ひゃぁっ!」とか「う、っ!」とか「あ゛、ぅ」とか新鮮な声を上げさせられてしまう。幾つもの人の手が蠢く様子は、意思のない人形に辱められている気にさせた。

 かくん、かくん、と腹を折るように痙攣を繰り返してしまう。腰の拘束具が食い込むので止めたいけれど、身体が勝手にそうなってしまうのだ。そんな限界の様相を呈するお腹を抑えつけるように、振動棒はお臍を穿ってはぐじゅぐじゅと弄り回してくる。機械の手は筋肉ごと巻き込むみたいにスーツの上から指を擦り付けてくる。


「ふぐぅぅぅぅっっっ! うぐううううううっ!!」


 手は下半身にも追加されていった。

 戦闘スーツはえぐれるようなハイレグカットとなり、狭い道を股間へ走らせている。認めたくないことだが、勃起した陰核が横向きに倒されて小さく盛り上がっていた。その周囲は愛液が滴っており大変不快である。今すぐシャワーを浴びて粘液もくすぐったさも何もかも拭い去ってしまいたい。

臀部の方では、何度も暴れたためスーツが丸まって隙間に食い込んでしまった。こぼれた尻肉が、私のもがきに合わせてぶるぶると波打っている。

ハイレグの両側では、秘所へ筋を伸ばす鼠径部が露出している。その素肌の露わになった部分を、無機質な指先が責め立ててくる。溝へ爪を引っ掛けるように、コショコショコショコショ──


「ひいいいいいっ! ひいいいいっっ!!」


 手はそのまま降下していき、脚の方へもくすぐりを与えてくる。ニーソックスの黒い締め付けに乗っかった、太腿の膨らみ。──それは鍛え上げた筋肉と女性らしい脂肪が合わさることで、たっぷりと豊満であった。普段は滑るような自慢の肌触りであるのに、今は愛液と汗の被害を受けてべたついている。機械の手は内側へと回り込み、内腿のラインを擦りだした。自身ですらあまり触れないような場所への攻撃は、感じたことのない感覚をもたらして、どう耐えれば良いのか分からなかった。意識の外からつつかれているみたいで、ただ混乱して涎を飛ばしながら顔を左右に振り乱した。肌の表面をかすったり、太ももの弾力へ指を沈ませてからえぐってみたり、指の腹でずりずりと擦ってみたり──。手は、私が決して慣れないように様々な方法でくすぐってきた。


「──ひっ、ひっ、ひっ、ぐ、……っ! 終わり、終わりにして、……早く! 終わりに……っ」


 身体中をあらゆる装置でくすぐられ続けていると、すぐに呼吸困難に陥ってしまう。くすぐりの反応として筋肉が攣り、身体を強張らせ、肺から息が「かは、っ」と漏れ出す。更に我慢できなくて全身を捩らせるよう暴れているため、疲労も溜まっていく。全力疾走した後みたいに息が切れる。汗がだくだくと吹き出る。機械の内部で熱気が溜まって酸素が薄くなる。だから足りない。舌を突き出して犬のように喘いでしまう。空気が眼にしみて痛い。喉の奥が塩辛くて張り付く。落ち着いて呼吸を整えれば何とか楽になるかもしれないけど、大量の責め具達がそれを許してくれない。規則的な駆動音だけを鳴らして、ひたすら尋問という作業を行っている。私が人間だってことを忘れているみたいだ。こんなに強烈な刺激を休み無く与えて良い訳がない。肉体のキャパシティを超えている。

 やばい、これ──死んじゃう。

 いや──死ぬ前に発狂しちゃう。脳が過剰反応のしすぎで暴走している。もう自分が何て叫んでいるかも、どう動いているかも認識できていないもの。くすぐったいという苦痛だけが感覚として残り、私を延々と苛んでいる。まるでこの身体の所有権が奪われたようだ。機械達の冷たい暴力に、拒否も抵抗もできないまま蹂躙されている。

 そうやって本気の危機感を覚えた瞬間に、足裏への責めが開始されたのだ。


 指の根本に紐がくくられ、足首の拘束具へと拡散している。そうして大きく開かれた指の股へと、歯ブラシをより細くしたような器具があてがわれた。左右で計8本のブラシが、各々違う速度で擦り上げてくる。

土踏まずの凹んだ辺りには、3本のブラシがセットされた。しつこい汚れをこそげ落とすような荒々しさで、足裏を念入りに削ってくる


カシュカシュカシュカシュカシュカシュカシュ──


「……──あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛っ゛!?! だめだめだめだめ絶対だ゛め゛っ゛っ゛!! 足の裏だ゛め゛だ゛か゛ら゛ぁ゛っ゛!!」


 一際甲高い悲鳴を上げさせられた。それほどまでに、全身への機械姦と足裏責めの重なりは酸鼻を極めるものだった。全身の敏感な部分が強烈なくすぐったさに晒され続けている。身体は熱く、乳房からは霊力を搾乳される。拘束のせいで一切の逃げが許されないため、既に開発され切った弱点を差し出さなくてはいけない。疲れと容赦を知らぬ機械は淡々と責めを続けて、30分、1時間、そして2時間と虐め抜いてくる。どんなに嫌でも終わらない。地下深くの狭い部屋に置かれた箱のなかで一人、誰にも知られず悶絶し続けるのだ。

 ブラシは足裏を泡立てるように、丁寧かつ大胆な摩擦を繰り返してくる。指の間を何度も払って、土踏まずを執拗に磨き上げて、くすぐってくる。じくじくと音を立てるように足全体がふやかされていて、晒された最深の神経が刺々しい感覚を爆発させている。

 けたたましい音がすると思ったら、私の足首を拘束する金属の輪が鳴る音だった。両足が凄い勢いで跳ね回っているのだ。強すぎる刺激を受け止めきれなくてのたうち回るも、ブラシはピタリとあてられたまま擦り続けている。足裏を更に追い込んでいく。


「ああああああああもう!! これいつまで続くのっ!!?」


 閾値を超えたくすぐりの苦痛に、私は混乱して叫んだ。


「くすぐり嫌なのにっ! なんで、なんでずっとくすぐられなきゃいけないんですか!? なんで私が、こんな目に合わないと──」


黙らせるようにブラシの速度が上がる。


 カシュカシュカシュカシュカシュカシュカシュ──


「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛っ゛!?!」


 脇の奥を勝手に開かれて、カリカリと擦られ続けている。

 陥没していた乳首を強く吸引されて、全体をぞわりぞわりと引っ掻かれている。そして霊力がどくどくとドレインされていく。

 お臍へはスーツ越しに金属棒が挿し込まれ、ぐちゅぐちゅとかき混ぜられる。

 お腹全体を機械の手がこちょこちょとくすぐり、鼠径部の溝へ指を引っ掛け、内腿を嫌らしく責め立てる。

 足裏は余すところ無くカシュカシュと摩擦されている。


 それら全ての感覚が途切れることなく身体中を駆け巡っている。


「~~~~~ッッッ!!」


奥歯をガチガチと鳴らしながら、声にならない悲鳴に喉を絞った。横たわっているのにも関わらずバランス感覚を失ってしまい、前後深くに陥る。くすぐられているという認識とツラさだけが確かにあって、私を地獄に閉じ込めている。


「だ──誰かいないんですか!? ねぇっ!! 誰かいないの!?」


 もしかしたらこのまま一生機械のなかでくすぐられ続けるんじゃ──。

 そんな馬鹿らしい不安を本気で信じて、心の底から恐怖を覚える。


「誰でもいいからっ! 早くこれ止めて! 止めなさいよっっ!! 早くうううううっっ!!」


 ──何で私がこんな目に合わなきゃいけないんだろう。

 皆を助けたかっただけなのに。淫魔どもを捕らえたかっただけなのに。

 なんで──こんなに苦しいの。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛!!」


 その後も私は、機械による執拗なくすぐり責めを受け続けた。退魔師としての矜持は粉々に砕け、涙を流しながら絶叫と痙攣を繰り返す時間──それは永遠とも思える体感で、快感による苦痛が緩まることはなかった。






 ──気がつけば責めは止まっていた。

 気絶していたのか、ただ呆けていたのか、それすら分からない。目はぼぅっとアクリル板を見つめて、開いたままの口から涎が垂れている。過酷な責めはそれだけ私の肉体を追い込んで、精神的なショックを刻んだのである。

「……ぅう」

 不意にじわっと涙が溢れた。悔しくて悔しくて仕方なかった。女の子としての大切なものをぐちゃぐちゃに踏み潰されたような屈辱感が、重たく心にのしかかっていた。

 絶対に許さない。

「潜入の 目的は 何ですか」

 うんざりする合成音声が響いた。

 私は話す気力もなくて無視していた。

「潜入の 目的は 何ですか」

 調子の変わらぬ声にふつふつと怒りが湧いてきて、短絡的な激昂へと走ってしまう。

「……──うるさいですねっ! 誰があなた達なんかに教えますか! こ、このクズ! 外道!」

 怒鳴り声はアクリル板にむなしく反響し、後にはポタポタと雫の落ちる音だけが静寂を演出していた。

叫んでからハッと我に返る。

「しまっ──」

しかし、もう遅い。


「──尋問フェーズを『全身』へ移行します。継続時間は72時間です」


 機械の内壁が開き、洗浄が済んで綺麗になった責め具達が再び現れた。ずらりと浮かび、鈎状だのブラシだの指だのを鈍く光らせている。

「そ、そんな……。なんでよ……。そんなの無理に決まってるでしょ……? 頭おかしいんじゃないの……? ねぇ……っ!!」

恐怖と絶望で顔をひきつらせる私の──とっくに犯され尽くしてぐったりと疲労する身体。弱点という弱点が責められ過ぎて赤くなっている。筋肉の痙攣がまだ止んでおらず、透明な虫が肌の上を歩いているような後遺症もある。

 そこへ無慈悲にも器具があてがわれる。


「もう一度だけ訊きます ──潜入の 目的は 何ですか」


「も、目的は……」


 身体中が悲鳴を上げている。張り付いた機械がくすぐり地獄を想起させる。

 それは喉元にナイフを突きつけるような、強烈な脅迫だった。


「私は──」


 私は──退魔師。

 あなた達淫魔を捕まえに来た。


 だから──、


「──い、”言わない”ッ!!」


 私は渾身の勇気を振り絞り、そう宣言した。

 まだ心の奥に残ったなけなしの正義が、屈服を許してくれないのだ。


「──では 尋問を再開します」


 機械は怒りや悔しさを浮かべることなく、私のギリギリの覚悟すら何でもないという風に、ただ事務的にそう述べた。

そして容赦の無いくすぐりが、再び始まったのだった──。



「い゛や゛ぁ゛──────っ゛!!」




Comments

相変わらずの文章。最高です。 機械拘束からの容赦ない責めと耐え続けるメンタリティが良いですね。

ガリタル


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