皮に包まれメイド喫茶で働くことになった少年の話 6
Added 2021-07-03 08:00:56 +0000 UTC店長の言う通りだった。メイド服なんて初めて着るのに関わらず、着慣れた服であるかのようにスムースに着ることが出来た。まるで身体覚えているみたいだ。自力でだって着れたのかも知れないけど、メイド服の構造を確認しなきゃならなかったりでもっと時間がかかったはずだ。それに調整だって上手く出来なかったかも知れない。 「はい可愛い。どうです? 初めてメイド服を着てみた感想は。あ、ひょっとして初めてじゃなかったりしますかね。」 「初めてに決まってるじゃないですかぁ。」 改めて鏡の前に立たされる。映っているのはとても自分とは思えない奇麗なメイドだ。裸の時はおっぱいで腰が隠れていたから太っているように感じられた。それなのにこのメイド服はおっぱいを立体的に包み込んで正面へと突き出させている。おかげで細く絞られた腰を僅かに見ることが出来た。そのおかげで太っているってイメージは多少軽減されてるみたいだ。 スカートはやっぱり短くて、股間をギリギリで隠せる程度の丈しかない。垂れ下がった名札は全く隠れておらず、膝の辺りで揺れている。下着を穿けば名札を垂らしたままなんて出来ないよな。そんな期待はあっさりと裏切られた。名札の邪魔をしないためか、用意された下着は真ん中がぱっくりと割ているものだった。名札はその割れ目を通して下へと垂らすことになっている。普通に考えればこんな下着をを穿いているのなんて痴女とか変態くらいだ。メイド喫茶とは言え、一応は喫茶店の従業員が穿くような下着とはとても思えなかった。 下着と言えば、用意されていたのは下に履いている割れ目の入った下着だけだった。そのせいでシャツの下には何もつけていない。いや、別にブラジャーを付けたかったってわけじゃない。ただ女性用のパンツが用意されてる位だからてっきり上にも、と思っただけだ。 実際にこうして用意されたメイド服一式を身に着けてみれば違和感は無い。シャツが立体的に作られているおかげか、おっぱいを下から支えているみたいだ。シャツに入ったヒダのおかげで乳首が透けたりもしていない。 「それでは、早速ですけれどお店の方に出て貰いましょうか。」 「はぁい、頑張りまぁす。」 く。なんだ今の。腋を締めて肘を曲げ、手首は外に向かって逸らして軽く握った拳を上に向ける。言ってしまえばブリッこなアイドルがするようなもの凄くあざといポーズだ。口調だけじゃなくて行動までおかしくなってきている? 「あれぇ? 働くのってここじゃないんですかぁ?」 店内へと続く扉をスルーし、店長はそのまま奥へと歩いていく。 「そうですよ。だってそんな格好で表に出させるわけにいかないじゃないですか。」 「それはぁ、そうですけどぉ。」 とても人前に出せるような姿じゃないと言われた様でちょっと凹む。とは言えこんな体型で、しかも股間から名札をぶら下げたまま人前に出るのは確かに抵抗もあった。人前に出なくて済むのならそれはそれで嬉しい。 でも表じゃないってことは裏方の仕事をするってことなのかな。喫茶店で裏方と言えば調理とかだろうけど、今までまともに料理なんてしたことはない。皮がサポートしてくれて何とかなるのかな。 「アナタに働いてもらうのはこちらです。」 「あれ? ここって……」 扉の先にはテーブルが並び、コーヒーを飲んだりケーキを食べたりする達がいる。更にはそこかしこをメイド服の女の子たちが歩き回っている。どう見てもメイド喫茶のフロアだった。 少し違うのはメイドたちの格好だ。見学で見た時よりもセクシー、というかちょっと色っぽい格好になっている。バニーガールっぽい格好にレースで作られたスカートやエプロンを付けてメイドっぽくしているとか、背中が大きく開いてお尻が半分近く見えているだとか、逆にお腹周りが丸出しになっているとか。一斉に見れば共通点からメイド服っぽいな、と思えるけれど1人でいるところを見たらとてもメイド服だとは思えない様な子もいた。 「あのぉ。どういうことですかぁ?」 改めて考えると見学したフロアは建物に対して狭かったような気がする。てっきり調理場なんかが広く取られているのだと思ったけれど、客席が2か所に分かれて作られてたってことなのか? 「あら、知りませんでした? うちの喫茶店、会員限定の特別エリアがあるんですよ。アナタに働いてもらうのはこちらの特別エリアです。ちゃんと契約書にも書いてあったんですけどね。」 「あうぅ。すみませぇん。読んでませんでしたぁ。」 それならそうと先に説明してくれれば良かったのに。 「見ての通り、こちらのエリアでは公序良俗に反する……とまではいかなくても不特定多数の目に晒すのは少々ためらわれる格好をしたメイドたちが働いています。さ、入ってお客様にご挨拶して下さい。」 「はぁい、わかりましたぁ。」 尻ごみする俺の心に反して、身体は勝手にフロアへと足を進めてしまう。 「おはようございまぁす。慕生魅瑠玖でぇす。みんな、ミルクちゃんって呼んで下さいねぇ。」 両手を腰の前で併せてお辞儀をする。両腕に挟まれたおっぱいが更に押し出されてしまう。そんな状態で勢いよく身体を傾けたものだから危うく倒れそうになってしまった。 ひょっとしたら倒れそうだと思ったのは俺だけで、実際には皮に操られた身体はそんなことはなかったのかも知れない。ていうか、時間が経つにつれて皮の力が強くなっていないか? 「じゃあしっかりと働いて下さいね。分からないことがあれば周りのセンパイに聞いてもいいですし、皮に身体を委ねればちゃんとフォローしてくれますから。」 後ろに立っていた店長が耳元でささやく。もうこうなったら開き直って働くしかない。 「ミルクでぇす。ご主人様ぁ、よろしくお願いしまぁす。」 一先ず皮に身体に任せた結果、最初に行ったのは客席を回りお客さんに挨拶をすることだった。 そこで気付いたのはどうやらこっちの特別エリアに居るのは全員が女性客だということ。表の方はほとんどが男性、言っては悪いけれどちょっとオタクっぽいヤツが多かったからこの客層は意外だ。 とは言え気持ち悪い視線を送られながら媚を売るのもあまりいい気がするものでもないしこっちの方が有難かったかもしれない。 「あれ、ミルクちゃん。また働き始めたのね。またよろしくね。」 「はぁい、武田さん。こちらこそよろしくお願いしますぅ。」 それと驚いたのは『俺』を知っている客がいたこと。とは言え考えてみれば不思議ってわけでもない。以前にもこの皮を着て働いた人が居たんだろう。お客さんからすれば皮を着こんで働いているだなんて考えもしないだろうし、慕生魅瑠玖というメイドがしばらく休みを取った後に再び働き始めたように感じられているんだと思う。 皮自体も相手のことをちゃんと覚えていて、俺が知らない相手をちゃんと名前で呼んでいる。 「じゃあ久しぶりに注文しちゃおうかな。」 「え? ひゃんっ!?」 いきなり名札を掴まれ、引っ張られる。身体の中から無理やり引きずり出される感覚に変な声を出してしまった。動きには制限をかけているくせに、ここは止めてくれないのかよ。 「うんメニューは変わってないのね。じゃあコレ。『新鮮搾りたてミルクの特製ミルクティ』をお願い。」 引き出された名刺をテーブル上で押さえつけられている。さっき見た時は顔写真の入った名札だったはずだけど、違うことが書かれている? あ、これって裏返しにされているのか。名札の裏なんてただの白紙だと思っていたから確認していなかったけれど、こっちにも印刷されていたみたいだ。 ティポットとティカップの写真に添えられた文字。今注文された『新鮮搾りたてミルクの特製ミルクティ』とその値段らしき数字が書かれている。 「はぁい、ご主人様ぁ。少々お待ちくださいねぇ。」 「うん。別に急がないからね。」 名札から手が放されると、引き出された名札が元へと戻ってくる。ゆっくりと、名札の揺れを感じながら入り込んでくる違和感に思わずおかしな声が出た。 「あうぅん。」 「あはは。相変わらず可愛いね。そんなに気持ちいい?」 は? 気持ちいい? こんなの気持ち悪さしか……いやでも、何だろう。さっきも思ったけど気持ち悪さとか違和感、不快感の他に何だか妙な感じがしてたけど……まさか気持ちいだなんて感じてるのか?