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克浦
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バーコード2

「あ、みっちゃん。ちょっと待っててね。」 「え? あ。ちょっと。」  唐突に足を止め、ユウカがコンビニへと向かう。いつもなら寄り道なんてしないのに。  『待ってて』って言われたけどこれも命令なのかな? えっと……あ、普通に動ける。だったら私も入ろう。 「はい、コレ。」 「コレって……」  既にレジを済ませていたユウカから渡されたのはマスクだった。 「だってほら、みっちゃんのバーコードってほっぺたに出ちゃってるから皆に見えちゃうでしょ? 命令の優先権が私にあるって言ったって他の人の命令を全部キャンセル出来るわけじゃないし、出来れば隠しておいた方がいいでしょ。」 「うん、まああんまり命令出来る人は増えて欲しくはないけど……」  ……あれ? ほっぺたに出てるから? 「そう言えばこのバーコードって必ず頬に出るわけじゃないの?」 「うん、そうだよ。身体のどこに出るかは決まってないみたい。ネットで見た限りだと身体に出てる人の方が多いかな。みっちゃんも足の裏とかに出たならばれにくかったのにねぇ。」  うぅ。それなのに顔に出るだなんて一番目立つところじゃない。運が悪すぎる。 「で。だからマスク。まぁご飯食べる時とかは隠せないけど少しでも、ね。」 「うん。ねえ、そもそもこのバーコードのことってそんなに有名なの?」  少なくとも私は知らなかったけど、ユウカは既にアプリを入れてたみたいだしそれなりに知られてるのかな。 「う~ん、それはどれくらい知られてるかは分かんないなぁ。」 「……そっか。」  出来るだけ知られてないことを願いつつ、渡されたマスクを付ける。 「さ、今度こそ学校にいそごっか。本当に遅刻しちゃいそう。」 「うん。」  花粉症の季節ということもあってマスクをしてても目立つことはなかった。せいぜいが昨日までしていなかったマスクをしていることで花粉症になったのかと聞かれた程度だ。  休み時間、ユウカに気付かれないようにトイレへと向かう。 『おトイレに行くときは私に許可を取ること。勝手におトイレに入っても一滴もおしっこは出せないからそのつもりでね。』  登校中に言われたことが本当なのか、確かめるためだ。奥の個室へと入りカギをかける。そこまで高まっていないけど、いつもだったら力を抜けば出せる程度には尿意もある。 「……んっ。」  いくら力を抜いてもおしっこが全く出てこない。ううん、それどころか力を入れても一滴だって漏れだす気配すらない。 「……ユウカの言ってたこと、本当なんだ……」  勝手にバンザイをさせられた時に分かったつもりだったけど、ひょっとしたらって期待もなかったわけじゃない。  でも本当にユウカに許可を貰わないとおしっこが出せない身体にされちゃったんだ…… 「うぅ……」  だからって落ち込んでばかりもいられない。トイレからはすっかり人の気配もなくなっている。そろそろ授業が始まる時間だし教室に戻らないと。次の休み時間にはユウカに言ってからトイレに来ればいいだけだ。いくらなんだって許可しないなんて言うわけがッ 「ッ!?」  ちょっと待って。何、今の。  一歩廊下に出た瞬間、おしっこが溢れ出す感覚があった。慌ててトイレに戻ったけど、今のって…… 『おトイレ以外で服を着たままならおしっこを出すことを許可してあげる。』  確か許可を貰わないでおしっこを出す方法としてユウカがそんなことを言ってたはず。でも別に今はおしっこを出そうと力を抜いてなんていなかったはずなのに。  ともあれ一旦個室に戻って確認。 「うぅ。ちょっと濡れてる……」  気のせいであって欲しかったけど、本当におしっこを漏らしてしまっていたみたいだ。すぐにトイレに戻ったおかげか湿ってる程度で済んではいるけれど…… 「もう一回試すにはリスクが高い、よね。」  これ以上ショーツを汚したくはない。だからってなにも履かずに廊下に出るわけにもいかないし…… 「よし。」  ショーツの中に折りたたんだトイレットペーパーを挟む。ナプキンを持ってきていればよかったんだけど生憎今は手元にないので苦肉の策だ。 「すぐに戻れるように、一歩だけ……ひんっ!?」  やっぱり。漏らさないように力を入れていたはずなのに、廊下に踏み出した途端におしっこがあふれ出した。これじゃトイレから出られないじゃない。  勝手にトイレに来たからユウカが怒った? でも新しい命令なんてされてないのに。どうしよう、このままじゃ授業が始まっちゃう。 「み~っちゃん。やっぱりここに居た。」 「え、ユウカ? なんでここに?」 「そろそろ授業が始まるのに姿が見えなかったからね。てっきりおトイレに行ってるのかと思って。」  うぅ。ばれてたんだ。 「それで? どうだった?」 「どうって……何が?」 「分かるでしょ? ちゃんとおしっこが出なかったか、ってこと。私だってこのアプリを実際に使うのは初めてなんだもの。ちゃんと効果が出てるかどうか知りたいじゃない。」  スマホを見せびらかすようなしぐさをしてるってことは、もし答えなかったりしたら……。 「……うん。出せるかどうか試そうと思ってトイレに来たんだけど、一滴も出せなくて……」 「うんうん。ちゃんと効果は出てたんだねー。」  嬉しそうにしてるユウカにちょっと腹が立ったけど、今はもう一つの重要なことを確認しなくちゃ。 「それよりもさ。廊下に出た時におしっこが漏れそうになるんだけど、これもユウカの仕業なの?」 「ん~? そんな命令をした覚えはないけど……あっ。ひょっとしたらトイレでおしっこを出そうとした分の指示を身体が覚えちゃってるのかな?」  ?? 「どうこうこと?」 「だからさ。みっちゃんはトイレでおしっこを出そうとしたけど、アプリの命令で出せなかったわけでしょ? 脳からはおしっこを出そうっていう命令だけは出ていて、アプリの妨害がなくなったことで身体に指令が届いちゃったんじゃないかな、って。」 「え……じゃあどうすればいいの?」  廊下に出るたびにおしっこが漏れちゃうんじゃトイレから出られないじゃない。 「う~ん。おしっこを出そうとしても出せない様に、先に出し切っちゃえばいいんじゃないかな。」 「先にって……」 「トイレでおしっこを出すための方法、覚えてるでしょ?」  それってつまり……ユウカに許可を取っておしっこをしろってことだよね。 「嫌? 嫌ならそれでもいいよ。私もそろそろ教室戻んなきゃだし。」 「ま、待って。お願い、おしっこする許可をちょうだい。」  恥ずかしいけど漏らすくらいなら……どっちにしろ次の休み時間には頼むつもりだったんだし。 「折角ならもうちょっと可愛らしくおねだりしてほしいなぁ。」 「なっ。」  何よそれ。 「お外で漏らしたい?」 「……分かったわよ。ユウカ、お願い。私におしっこを出させて。」  普段なら決して出さないような媚びた声。クラスの子の真似をしたつもりだけど、可愛らしくってこういうことだよね? 「ん~。ちょっと物足りないけど、これからの努力に期待しよっか。じゃあほら、おトイレに座って。」 「え、ちょっと待って。」  今のも命令だったの? 身体が勝手に便座に腰かけてしまう。おまけにショーツまで下ろして…… 「ねえ……そこに居られると戸が閉められないんだけど……。」  戸を開けたままでなんて格好をさせるのよ。他に人が居ないのがせめてもの救いだけど。 「そうだね~。」 「待って。待って待って。なんで一緒に中に入ってきたの。」  まさか……まさかだけどこのまま? 「じゃあみっちゃん。おしっこ出してもいいよ。」 「やっ……うそ。うそでしょ!? 見ないで、聞かないでよぉ。」  勢いよくおしっこが流れ出し、個室内に水音が響く。  アプリの恐ろしさをこの上なく味わわされ、『アプリを通した命令』以前に『ユウカの言うこと』そのものに逆らうわけにいかなくなってしまったことを実感させられてしまった。

Comments

これすっごい好きです。

はつめ

反響が薄かったのでフェイドアウトしてましたが、気に入って頂けたようですので今進めているのが終わったらこっちも再開してみます。

克浦

素晴らしい小説ですね! 顔にあるバーコードを読み取るという、とても簡単な操作で、心は今まで通りなのに、突然誰からでも容易に操られちゃう状態にされてしまうのが、ドキドキします。続きを期待しております!

ヒヨコ


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