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五冊目 第二話 おしゃべりの

第二話 おしゃべりのお仕置き

授業中、硬い木の座面がお尻に堪える。座りはじめの一瞬はヒヤッとして心地よかったのだけれど、すぐに体温に馴染んでしまうと、このシンプルな木の椅子は、腫れて強張ったお尻を圧迫するだけの厄介な代物になるのだった。


(痛……)


遅刻したせいで朝にお尻百叩きを受けた私は、その日、何度も余韻に耐えかねて身じろぎしては、独特のジクジクとした疼きに顔を顰めていた。


とりわけ辛いのが授業終わりの起立と礼である。それまで曲がっていた太腿が伸ばされると、当然、お尻の形もダイナミックに変化し、改めてお尻が負ったダメージの大きさを意識させられると同時に、下着の生地にガサッと擦れて思わずゾクリとした感覚が背筋を走るのだ。例えるなら、うっかり治りかけの傷口に触れてしまった時にのアレである。


「お尻が気になる方が、かえって授業に集中できるでしょう?」

「あ、はい……」


今日ばかりは、もうお仕置きをもらうわけにはいかないものね。しきりにお尻を気にする私の様子を見た先生がそう言うと、教室にクスクス笑いが起き、私は座ったまま耳まで真っ赤になって縮こまるしかなかった。


そんな風に私を一番笑っていた前の二人が、程なくして私語で揃ってお尻ペンペンを貰ったのが、今回ばかりはいい気味だった。


「そこ。三回目よ、立ちなさい!」


先生の声とともにズルズルと椅子が擦れる音がして、目の前の二人、浜崎さんと石川くんが立ち上がる。お仕置きだ……という、いつもの教室の空気の中で、みんなの視線を集めた二人が恥ずかしそうに下着を下ろす。


おずおずとした手付きで石川くんはズボンごと、浜崎さんはスカートを捲り上げてから、それぞれ膝小僧までしっかりとパンツを下げ、机に伏すように軽く前のめりになった。


すぐ目の前に他人のお尻がある状況。そして、それが真っ赤に染められる光景は、いつの間にか、私にとってもクラスの子にとっても日常になってしまっていた。


「十発ずつよ」


バチン! バチン!


まずは浜崎さんの方。冬とはいえ、体育の授業などで少しは日に焼けていた腿とは対照的に、生白くて滑らかなままのお尻。その二つに分かれたそれぞれの膨らみの頂点に、右、左、右、左、と交互に先生の手形が重なっていく。


指の一本一本の形までがくっきり浮かぶ叩き方だから、当然、数発後には啜り泣きが聞こえてくる。


「つぅ!」


小さな呻きが漏れ、叩かれた拍子に思わず振り上げてしまった足の踵が、椅子の座面にぶつかって大きな音を立てた。そこへ、大人しく受けなさいという戒めのためか、すかさず無防備な腿にバチンと平手が飛ぶ。


「ひっ!」


その不意の痛みに、今度はしがみついていた机がガコンと揺れたが、さすがにそれ以上の追求はないまま十発目が終わった。そして、次は隣の石川くんだ。


バチンッ!


一発目を受けてビクッと軽く体を跳ねさせた拍子に、細い両足の間から、まだ小さな男の子の部分がぷるぷると揺れたのが見えた。


バチッ! バチッ!


先生の手の平が当たるたびに石川くんの小さなお尻にぎゅっと力が入る。そして、四発目、連続する痛みに耐えきれなかったのか、彼はつい、つま先をトントンと弾ませてお尻を上下させてしまった。


「お仕置き中に動くんじゃありません」


すると、先生は石川くんの腰を押さえつけ、さっきまでの叩き方よりもさらに高く手を振り上げて打ち下ろした。


バチィンッ!!


「ゔっ!!」


石川くんの口から漏れた、うっ、とも、あっ、とも付かないくぐもった声は、完全に泣き出す時のそれだった。


バチィンッ!! バチィンッ!! バチィンッ!!


「ゔぁぁぁ……」


石川くんが強打に耐えきれずしゃくり上げ始めたところで、しかし、ちょうど十発目。先生は押さえつけていた腰から手を離すと教卓に戻り、私の目の前には二つの真っ赤なお尻が残された。


「二人とも、お尻をしまって席につきなさい」


浜崎さんの方はすぐに下着を上げて座れたが、石川くんの方は腕で顔を覆ったまま、しばらく動けずにいた。そのせいで斜め後ろの席にいた私には、彼の真っ赤になったお尻の下にぶら下がったものが、ぎゅっと小さく縮こまっているのを、その細かなシワの一本一本まで観察できてしまった。


「さあ、今日はもうお仕置きが無いように、気を引き締めていきますよ」

『はい!』


先生の号令を合図に教科書に目を戻すが、内心はまだみんな完全には気持ちが戻っていない。教科書を読む声が最初、少しだけ上ずることがあるのが、その証拠になるだろう。


ただ、あんまり他人のお仕置き(と、あまり見慣れぬ未知のモノ)にばかり気を取られているわけにもいかない。なぜなら、朝のダメージの残る私と同じように、二人がお尻を気にして身じろぎしたのを、つい目に留めてしまったがために――


「どうしたんですか? 続きを読みなさい」

「あっ……!」


――指されているのに気づかないということが、起きてしまうからなのだった。


「あなたは二回目よ、あと一回やったら、わかってるわね?」

「はい、ごめんなさい」


危うく百叩きを受けたお尻に、さらなる罰を貰うところだった。そうなったらもう泣くだけじゃすまないかもしれない。それからの授業中、極度に気を張り続けた私は、チャイムが鳴ると同時に思わず机に突っ伏してしまうほど疲れ切っていたのだった。




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