C106 サンプル
Added 2025-08-08 11:45:14 +0000 UTCC106にて頒布する「健やかなるかな、高きかな!」のサンプルです
場所……二日目、東4ホール、ホ‐03b
価格……100頁1000円
§1「ノアとたどる縮小録」……「ノアと綴る縮小譚」続編。ペットボトルや消しゴムを胸で圧し潰す様を見せつけ、縮んだらどうなるか耳元で囁くノアのお話(段階縮小)
§2「始末に負えないラプソディ」……花火の愉悦に振り回され、開拓者が縮められたりホタルたちが巨大化したりするお話(1/30→30→100倍)
§3「無人都市にてお姫様は」……「聖夜にミカは百倍で」続編。旧タイトル「ミカと教師と無人都市」加筆。無人都市の蹂躙を先生に見せつけながら段階巨大化するミカのお話
§4「蛍と夢境と同床異夢」……謎の夢境で小人の集落を見つけた蛍が、攻撃してくる小人相手に巨女堕ちするお話
§5「長い夜の後であっても」……クロコとゆっくり眠ったり、お風呂に入ったり。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
§1ノアとたどる縮小録……生塩ノア(ブルーアーカイブ)
シャーレのオフィスには、長い銀髪の少女が一人。
それが私の顔を見るなりにっこり笑うと、一言。
「無事に戻れて、良かったです」、と。
生塩ノアは、さらりと言ってのけた。
「ああ、まあ……」
片や私は、ノアの顔を正視できずにいる。あいまいな返事を漏らすだけ。ノアに「どうかされましたか?」と顔を覗き込まれて、反射的にそっぽを向く。
けれどそれも、仕方のないことだった。
……興奮すれば縮む体にされた私は、ノアに散々おもちゃにされた挙句、百分の一にまで縮められたのだ。縮小器の暴走はエンジニア部の失策。だが、縮小自体は私の失態だった。縮めば縮むほど、私の体は雄弁に快楽を彼女に告白してしまう。縮小は、興奮したことへの罰として私に襲いかかった。
結果、ご覧のあり様。私はノアの、目すら見られない。
数々の失態に痴態。彼女の記憶力はそれら一つ一つを克明に覚えていることだろう。私が無意識に記憶から消去したものも、一つ残らず全て。となれば、そのアメジスト色の瞳が、微笑した唇、わずかにたわめた瞼の陰影までもが、意味深に思えてならない。
「とりあえず元のサイズには戻れたようで何よりです」
「大変だった……」
「何もしなくても戻るはずですよ?」
「何もしないことが大変だったんだよ」
「と言いますと?」
大きな目をパチクリさせて少女は小首を傾げる。わざと言っているんだろうか。それとも私に言わせたいのだろうか。一週間の禁欲生活は堪えると。渋い顔をしていると、ノアはふふふと笑った。
「とにかく、業務には戻れそうですね」
「そのはず……、多分」
「体の方は治られたんですか?」
「わからない」
「試せなかったんですね♪」
「ぐ……!」
何も言い返せない。その通りだったからだ。縮むと仕事に差し障る。そうなるとまたノアに頼らなければならない。そんなもの、私は性的興奮を得ましたと申告しているようなものだ。何かと負け通しの今、さらに黒星を重ねるのは避けたい。そう思っていたのだが、
「では、私が確かめてあげましょうか?」
ノアは、ぬっとこちらに近寄ると。
私の手首を、握りしめた。
「……え?」
「では失礼して」
振り払おうにもノアの力は途轍(とてつ)もなく、とてもじゃないが振りほどけそうにない。というか、微動だにしない。抵抗するうち、体と体が近づく。ノアの体温が伝わってきた。顔が近い。胸が当たる。ついには、手首を掴まれると、壁に押し付けられて。
「では、失礼しますね」
無理やり、唇を奪われていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
§2始末に負えないラプソディ……花火+ホタル(崩壊)スターレイル
熱帯魚のように流麗に、仮面の愚者は夢の国の喧騒を歩いていた。カランコロンと下駄を鳴らし、長い袖、長い黒髪をネオン街に翻して、その様は琉(りゅう)金(きん)のよう。
それが、何やら話している。
「花火、忠告したよね? お友達は選んだ方がいいって」
彼女にしては良識的な発言だが、それを聞く人影はない。不安定な抑揚で、一人ごちている。
「それがあ~っさり篭絡(ろうらく)されるなんて。ちょっと単純すぎるんじゃなぁい?」
それから、足を止めると。
「ねえ?」
そう言って、下駄を脱ぐ。
そこには、5㎝サイズの何か。
縮められた、開拓者の姿があった。
「もう口もきけないの?」
「こんの……ッ!!」
何を言おうにも無駄、さっきまでぺったんぺったんぺったんぺったん踏み潰されてきたのだ。硬い下駄と柔らかな足の間、何度も何度も圧し潰された。踏み潰され、圧殺され、その艶めかしい足裏に幾度もキスさせられた。口をきく余裕なんてどこにもない。
何がどうなってこうなったのか分からない。なにがしか面妖なボタンを取り出して、それを押された瞬間縮んだのは覚えている。仮面の愚者に道理とか因果関係とかを求める方が無理な話だ。ましてここは夢の国。ピノコニーの一角で、小人は静かに危機を迎えていた。
ぐったりと下駄に張り付き、動けない。圧死しなかっただけマシかもしれない。
「死んだふりしたって無駄だよ~? この国は悪趣味なくらい安全、死にたくたって死ねないんだから」
「フリじゃない! 人を散々踏みつけておいて……」
「あは、口だけは元気そうだね~♪」
指先で摘まみ上げられ、開拓者はネズミのようにぶら下がるばかり。小柄な花火も、30倍ともなればビルのような大きさだった。そんな巨人、見つめられるだけで正直恐ろしい。おまけに相手は、何をしでかすか分からない少女。狂気スレスレの遊び心が、俺を見つめて笑っている。
「良いから戻せ! こんなことしておいてタダで済むと……」
「あまり生意気だと花火芦毛ちゃんのこと食べちゃうかもよ~?」
「ひっ?!」
“ぬぱぁっ♡”と唇を開かれる。もう、俺を一口で飲み込んでしまいそうな巨大な口だ。瑞々しい唇の中では、桜色の巨大な舌が丸く膨らんでいる。
それが、こちらに伸びてくる。
「ひいぃっ?!」
「さっきまでの威勢はどこ~? そ~んな情けない声出して、まるでネズミじゃな~い♪」
どうあがいたって無駄。手のひらからはどうやったって逃げられない。花火が言葉を発するたびに、唇から空気が押し出されてくる。そして、伸ばされる艶めかしい舌。それが唇を潤すと、俺を背中から押さえつけて。
「やめろおぉっ!!」
ねろぉっと、舐め取ってしまうのだ。5㎝の小人などひと舐めだった。そのまま口内に引きずり込まれる。
次の瞬間口内から響いたのは、凄まじい絶叫で。
「あは、す~ごい声出してる♪」
ねっとりと執拗(しつよう)な舌責めが、小人開拓者を襲ったのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
§3 無自覚都市にてお姫様は……聖園ミカ(ブルーアーカイブ)
綺麗な街並みにはまるで人影がない。歩くことすでに十分、どうも本当に誰もいないらしい。清潔な無人都市には、暴動の痕跡も混乱の跡も見られない。未だ綺麗なのは、無人清掃ロボットでも走っているからだろう。
「本当にこんなところで良かったの? ……ミカには退屈じゃない?」
あの多感な少女に限って、これで満足することがあるだろうか。はなはだ不安だが、問いかけても返事はない。
そして、ワンテンポ遅れて。
「呼んだ?」
背後から轟音が響き渡った。が、振り返っても目前には黒い壁がそびえて何も見えない。数歩後ずさってようやく視野に入る白い塔。頭上をテントのように黒い星空が覆って、顔を上げて上げて……。
「もしかして先生、何か言った?」
聖園ミカは、身の丈五十m近い巨躯で、しゃがみ込んでいた。
「大したことじゃないよ」
私の声に、少女はこてんと小首を傾げていた。
……聖夜の一件のあと、私はミカの戻し方を見つけられずにいた。
「念じたりすればなんとかならないかな」
クリスマスも終わる頃、彼女に声を掛けたのを覚えている。ミカは露骨にいぶかしげな表情で私を見下ろした。
『そんな簡単な話じゃなくない?』
「でもそうじゃないとろくに会うこともできないし……」
『うっ』
言葉も出ないゆるふわ少女。大きすぎるせいでそんなわずかな所作にも迫力があった。傷心のミカがぶつくさ不平を鳴らす。そして両こめかみに指を当て、唸ってみせると……。
「あ、縮んだ」
ぼんっと音を立てて巨体が縮む。
……でも、まだ五十mほどもある。
「これは要検証かな……」
三十倍になった衝撃からか、ミカはまだ目をぱちくりさせていた。
かくて。
今私たちは、開発途中で放棄された島に来ていた。なぜって、身の丈四十五mの少女を市街地に置いておくことはできない。その点無人島は打ってつけだった。方々手を尽くせばなんとかなるものだ。
ただ、何もない。
「これは……、退屈しそうだね」
「私はそうでもないけどな~」
バスを筆箱のようにもてあそんで、私の視線を感じてか慌てて元の場所に戻す。なるほど、早くも認識の違いが生じ始めているらしい。私にとっては何もない廃墟だが、彼女にとっては何もかもが物珍しいミニチュア世界だ。十階程度の高さのビル街が、彼女の胸元に整然と屋上を並べている。彼女の目にどんな光景が広がっているか、私には想像がつかない。足元でチョロチョロ歩く私が、どのように見えているかも。
「本当に綺麗な街並みだね? こんなに作って放置なんてもったいないかも」
「まあ、思いつきで始めて途中で投げ出すのが子どもだから……」
「あは、ちょっと心当たりあるかも♪」
ビル街を悠々と歩く巨大ミカ。羽をはためかせ前進する巨人は、女神のようにさえ思えた。一歩ごとにズゥンと大地を震わせ、車が小刻みに震える。振り返れば、街路樹は白スト美脚の膝にも届かない。すっかり生い茂った枝葉が、巨体の作る渦に巻き込まれ大きくそよぐ。まるで台風にでも遭遇したような暴風だった。
「で、どこで寝ることにしよっか」
「え、私ここで暮らすの?!」
「他の生徒も見に来ちゃうからね。それに歩くだけでこれだけ道路が荒れるんじゃ……」
ハッとミカが振り返ると、背後には巨大な足跡が点々と穿(うが)たれている。巨人の質量にアスファルトが耐えきれず、陥没してしまっていたのだ。まるで戦車でも通ったような惨状は、彼女の重さを雄弁に語っている。今更恥じたように、足跡を見せまいとする少女。だが、そうする間にも愛らしいヒールはミシミシと地面に食い込んでいる。
おまけに、振り返った瞬間バストがビルにぶち込まれ、丸く外壁をこそぎ取ってしまった。衝撃で”ぷるるんっ♡”と揺れる横乳。呆然とする私の上空で、巨乳は一階分叩き潰してしまった。慌てて胸元を隠す。「見た?」と聞かれるから「見てない」と答える他ないが、白々しすぎる嘘だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
§4 蛍と夢境と同床異夢……蛍(原神)
星海を渡った旅人も、今は地底にて、一人採掘作業にいそしんでいた。鉱石が足りない。モラもない。自前で調達するほかなかった。
とはいえ、例のごとく地下世界はモグラの巣も同然であり。
「……迷ったかも」
蛍は、ぼそりと呟いた。
もう少しもう少しと思って採集しているうち、とんでもない地底まで降りてきてしまった。どう戻ったらいいかとんと見当がつかない。そもそもここがどこかも怪しい。モンスターさえほとんど見かけないから、自分のいる地区がどこかすら憶測の域を出なかった。
淡い金髪を漂わせ、白いワンピースを揺らし、諦め混じりの地底散策。どうとでもなると思っているからこそ今更慌てることはないが、行き詰まりつつあることには気づきつつあった。琥珀(こはく)色の瞳を周囲に泳がせるけれど、目ぼしいものは何もない。
「パイモン、連れて来ればよかったな。……ん?」
見れば何か、丸いシャボン玉のようなものが浮かんでいる。大型スライムサイズの、巨大な球体だ。見た限り、無害そうだが……。
覗き込んでみる。中には、どこかの風景らしきものが映し出されていた。島が二つと、それぞれに都市が一つずつ。二つの丘陵の間は海が広がっている。無個性で、どの国ともつかない光景だった。
思わず、身を乗り出して覗き込む。
そして、球面に手が触れた瞬間。
「こ、これ……!」
急に引力が生じ始める。慌てて踏ん張っても手遅れだった。既に踵は浮いていて、泡の中に取り込まれつつある。
次の瞬間には、華奢な少女は完全に球体に吸い込まれてしまっていた。
──風のそよぐ丘の上、少女はしばらく気を失っていたらしかった。
「……ん?」
ふと目が覚める。
あったはずの地底世界がない。
丘陵の上に、寝転んでいる。
よろよろと立ち上がると、妙にあたりの空気が重苦しい。というより、気圧が強い。地底より息詰まるくらいだ。見晴らしはこんなに良いのに。ゆったり広がる海原と、小さな島がいくつか。ただ、知っているどのような国にも似ていない。足元に生える花も見慣れない。かるく足元をさらった時。
「……?」
何かが足元を駆けていく。というより、逃げていく。一cmサイズの虫らしいが、妙に注意を掻き立てるものがあった。
しゃがみ込む。ジッと見つめていると、それはギョッとしたように動きを止め、それから一目散に逃げ出した。二足歩行をしている。おまけに荷物も背負っている。虫ではない。
「……人?」
小さすぎてよく見えないが、人であるのは間違いないらしい。見れば数人いる。悲鳴をあげているのもわずかに聞こえてきた。ただ、全力で走っても、速度が百分の一では止まっているも同然。怖がらせるつもりはなかったが、まあ、百倍の存在に認識されたら怖いのは確かだろう。
まさかテイワットに小人がいたとは。積み木が喋るんだし何があってもおかしくない世界だが、指先サイズの小人は聞いた覚えがない。となると、誰もここまできたことはないのだろう。まずい。想像以上に自分は遭難している。
「話を聞けば少しはわかるかな……」
立ち上がると、スカートが風を巻き立て小人を吹き飛ばしてしまった。もう小人も荷物どころではない。慌てて岩壁の穴へ逃げ込もうとする。でも、石つぶてが穴を塞いで逃げるに逃げられない。ひょいと小石を持ち上げてやる。喜んで岩穴へ入ろうとする小人。けれど小人すら拾い上げてしまうと、蛍は壁に手を当てる。こぶしに灯る黄色い光。元素力の高まりと共に辺りが明るくなっていく。
「大丈夫、少し壊すだけだから」
すでに蛍は、壁を破壊しようとしていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
§5 長い夜の後であっても……シロコ*テラー(ブルーアーカイブ)
差し入れがてら家を訪れたが、誰もいない。出かけているらしい。
(あまり夜更(ふ)かしは良くないのだけれど)
既に終電が近い。生徒なら、帰宅していて然(しか)るべき時間だった。今の彼女が厳密な意味で生徒であるかは怪しいにしても。手にした袋に目を遣る。食べ物に飲み物、大したものではないが……。ドアノブに引っ掛けて帰ろうか。逡巡(しゅんじゅん)していると、背後で気配があった。
「……先生?」
そこには、長身の女性の姿。黒く長いドレスに、長い銀髪、大人びた目元。幾分輝きを取り戻しつつ、ヘイローは元の空色より一段暗い。
「来てたんだね。いらっしゃい」
青い目出し帽を脱ぐと、もう一人のシロコは、落ち着いた声でそう言った。
──通された部屋は、存外にこざっぱりとしたものだった。
「散らかってるけど、ゆっくりしていって」
「うん。これ、差し入れだよ」
「ん。ありがとう」
「大したものではないけれど」
「ううん、嬉しい」
袋の中身を並べながら、それとなくあたりを見回す。
(野鼠のような生活をしていないか心配していたけれど……)
クーラーの効いた部屋には自転車が飾られ、それなりの生活を送っていることが窺えた。仲間想いなシロコが一人でいるのは不憫(ふびん)だが、街の人にも慕われているようだった。サイクリングに出たりと、それなりにエンジョイしていると言ってすら良い。思えば、適応能力の高さで言えばキヴォトス随一の少女だ。過ぎた老婆心だったかもしれない。
「また町の見回りをしていたの?」
「騒動には事欠かないから」
「それはそうだろうけど」
顔立ちは大人びて、髪も長く伸び、物静かな狼のような雰囲気を漂わせている。ただ見た目こそ随分変わったが、内面的な部分は変わっていないようだった。仲間思いで活動的。自警団のようなこともしているようだから、ある程度忙しくしているのだろう。
「ご飯は食べられてる?」
「町の人がくれたりしてるから」
「ならよかった」
恐らく、彼女は私の思っている以上にシロコなのだ。