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夏目なつめ
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【無料再公開】淫蕩の令嬢③

§  メイドたち、僕以外のすべての人間は、脅威そのものだった。  最も小さなメイドだって、僕をまるごと踏み潰せる巨大さなのだ。まして中級メイドは手のひらに僕を乗せられて、最上種に至っては足指でさえ僕より大きい。一般人には人形大、拡大種にはガム同然で、最上種にとっては豆粒以下。  そんな僕が、最上位種の館に一人、寄る辺もなく彷徨う日々。  それが、苛烈でないはずがない。  僕は毎日メイドたちの餌食になった。  踏まれた、犯された、汚された。  悪戯で靴に下着に隠され、一日中肉体と下着の間に監禁されるのだ。或いは愛し合う大小のメイドが、僕をディルドにして無茶苦茶にねじ込み合った。お股の中に一日隠されたままだったことも少なくない。  皆競って僕を性玩具にした。  隠れたって無駄だ。僕よりずっと賢い少女たちの目から、どうやって逃げおおせるだろう? 泣き叫びながら僕は追いかけ回され、その先に待ち受けるのはでっかい手か、下着か、開かれた口か。どうしようもない恐怖だけが僕を待ち受けた。  大中小の手が僕に伸びる。昼夜問わず僕を貪り尽くす。それが、巨大女神の殿堂に住まうということだった。羽の生えた天使たちの足の間、僕が虫以下の存在であることを、飽くことなく叩き込まれた。  もう、女の子の匂いは僕に染み着き離れない。  そんな中でも、僕はティナを求めて彷徨をやめなかった。  馬鹿だ。助けてくれっこないのに。  いや、どうせ穢されるならティナ様に、と思ったのかもしれない。いっそ殺してくれるならティナ様に、と。もう、僕自身わからなかった。  どちらにせよ、巨女となってしまったかつての内気な女の子には、なかなかお目通り叶わなかった。僕が四六時中犯されている間、システィーヌ様はアンリ様と一緒。それだけ一層、僕はティナへの想いは高じていった。  そんな、ある日。  僕はメイドたちの手を逃れ、屋外を歩き惑っていた。  逃げる内、そばを通った少女に蹴飛ばされ、無意識の間に放逐されてしまったのだ。  たどり着いた土臭い草原。それは、館の中よりはるかに危険な場所だった。早く戻らねばならない。けれど、戻ればまた恐怖が待っていて……。生い茂る緑の中、哀れな虫はトボトボ歩いた。  ある種のパニック。  僕は無我夢中で歩き回る。  そしてツルリと黒いものにぶつかるまで、僕は頭の中と足元にばかり夢中で、自分がどこにいるか考えもしなかったのだ。 「痛っ……!?」  そびえ立つ黒い物体。高さ数メートルを超えるそれに、僕は隠しきれない既視感を覚える。  磨き上げられた表面はエナメル質。そこに映る自分自身さえ僕は知っていた。  たらりと流れる嫌な汗。  恐る恐る見上げれば。 「…………」  ”ジッ……”と温度のない眼差しで、僕を見下ろすアンリと目があった。しゃがみ込み、いつから見ていたのだろう、読めない表情の巨大メイドが小虫を観察していたのだ。  そして、ようやく気づく。  空には色とりどりの花、ここはアンリが趣味で営む花壇に違いない。綺麗に整えられた巨大な植物は極相林の如く、その間から遥かにそびえる主の影は、あまりの高さに霞んでいた。  アンリの花園など、禁足地以外の何物でもない。それを侵したとなれば、ただで済むはずがなかった。  反射的に僕はうずくまる。血の気が引き貧血の余り震えさえする始末。  彼女が花を掻き分けた時、その恐怖はピークに達した。  訪れる、しばしの沈黙。 「……?」  促されるように顔を上げれば。  そこにあるのは、怒気のない表情。  それどころか、微笑んでさえいる!  目を白黒させたのは当然のこと。  そこに他のメイドが訪れた時、僕の混乱はいよいよピークを迎え始めた。 「あっ、アンリ様!」  声に促され、優雅に立ち上がる高貴なメイド。  その立つ間際に、ふわりと僕を摘み上げ。 「なにかご用です?」 「いえ、大したことではないのですが……。あの虫、ご存知ありませんか? どうも逃げ出したらしくて」 「そうですね……」  全ては彼女の胸三寸。僕は白手袋の細指にぎっちり包まれてなお、ビクリと震えを禁じ得ない。 「私は見ておりません。……食料庫は探しましたか? 虫は、そういうところに集まるものでしょう?」  そうですね、と去っていく小さなメイド。 「さて……」  それを見届けると、アンリはゆったりと手を開き。  いつかのように、僕を胸ポケットにしまった。  そして、何事もなかったかのように裏庭から立ち去ると、日々の仕事へと戻っていったのだ。 §  その後も、アンリの奇妙な恩寵は続いた。  僕は彼女の私室、化粧品箱の中に住まわされた。  大木のようなルージュに塔のような化粧水の瓶、化粧の匂いは立ち込めていたけれど、それはかつてのマッチ箱より遥かに贅沢な住処。快適といえる場所ではなかったが、安全な居場所、食事が与えられ、何より他のメイドから匿われる平穏はこの上ない恩恵だった。  裏があるのではと疑うのは、無理もない。  けれど少なくとも、今与えられる幸せは確かで、それが綻ぶことはなかった。きっと、僕のことなど裏切るに値する相手とも思ってないに違いない。なにより、最上位の存在に情けをかけられるだけで、どれほどの光栄か。それが気まぐれであれなんであれ、アンリにすべてを委ねたい。そう思った。  救われた。  その思いが、どれほど僕の胸を打ったことか。  拷問のような日々に、突如差し込まれた平穏。  文字通り、彼女が女神に見えるのも無理はなかった。こんな救済を得れば、誰であれすがりつくだろう。  美しく崇高な女性。高貴な佇まい、どこまでも巨大なその御姿に、僕は心酔していった。  最上位の存在を示す髪色に心奪われた。一般種と中級メイドの金髪さえ見劣りするほどの銀髪は、ティナの持つ同じく黒髪とよく映える。もっとも崇高な女性らの持つ、銀糸の髪色、流れる緑の黒髪を前に、くせ毛の僕はただ見惚れることしかできなかった。  しずしずとした足音が響き、地面が揺れれば、一気に溢れ出る光、空いっぱいに広がるメイドの上半身。その姿に何度崇高を見出したかわからない。その比較を絶した巨大さ、美しさが僕を救い生かす光だった。ショートボブの前髪の奥、ティナと同じガーネット色の目が、僕を見下ろす。まるでものを見るような眼差しに、けれど僕は感動を隠しきれない。  そこに、巨大な女神がいる。アンリ様が見てくださっている。その事実だけで十分だった。  僕を摘む白くすべらかな指先。絹で編まれた布の海は、命を吹き込まれて柔軟に動き、僕を繊細につまみ上げる。僕を見つめる虹彩は燃えるように煌めいて、読めない瞳でジッと僕を射抜いた。しばし眉を寄せ、モノクルをかけて僕を観察し。それから机におろすと、食事を与えるのだ。  その行動の意味を僕は知らない。そもそも、僕を匿う眼目すらわからない。僕じゃ抱えきれない大きな指先、そこに宿る不可解な意志だけが僕をくすぐる。  それでもよかった。もとより、神意は計り知れないのだから。  上位種に庇護される幸運。しかし、幸いはそれだけではなかった。  彼女は、ティナの半身。彼女についていけば、ティナに会えるのは間違いない。  それは非常に大きな希望だった。  それから、幾日の後。  僕はついに、ティナの部屋へ忍び込む機会を見つけた。  それは宵口、アンリが私室へ戻った時のこと。  システィーヌ様がお呼びですと、声がかかった。 「急用で?」 「”相談”、とのことです」 「……わかりました」  その声に僕の心は沸き立つ。化粧くさい箱から這い出して、すぐさま僕はエプロンの裾に飛び乗った。  その服に掴まれば、後はあっけない。  静かな足音。巨大女神によって、僕はたやすく約束の地まで一尾枯れる。 「アンリです」 「……入りなさい」  ドアから漏れる、あの、愛しい声。ついに僕は、ティナちゃんの部屋にまで入りおおせたのだ。    臆病者の僕も、このときばかりは行動的だった。ベッドへ飛び移り、絨毯の海へ滑り降り。おっきなヒールの下をくぐり、すぐさま物陰へと隠れるのに成功する。絨毯の海を掻き分け、ソファの下。ティナの見える場所にまで、苦慮して進み続けた。  令嬢は、晩酌中のようだった。  お酒なんて、そんな贅沢品を僕は見たこともない。対してご令嬢は、いかにも高級そうなシャンパンをテーブルにのせ、優雅にフルートグラスを傾けている。 「貴女も少し付き合いなさないな」 「まだご奉仕は終わっておりませんよ?」 「うふふっ♪ 白々しい嘘は言うものじゃないわよ?」 「では、ご相伴に……」  僕に背を向け、アンリが腰掛ける。そのせいで、2人の姿は椅子に隠れ見えなくなってしまう。目に映るのは、すぐそこにそびえる白タイツの塔、はるか先、ガーターストッキングのおみ足。  それから、2人だけの大人の時間が始まった。  日々のこと、仕事のことに、他愛ない冗談。  羨ましい距離感で、少女2人は語り合った。  流れる会話、織り合わされる2人の声が美しい。  同時にグラスに口をつける主従。  ちょっとした沈黙。  それで、と。若い主人は切り出した。 「それで、虫は?」 「と、おっしゃいますと?」 「他のメイドが居ないって騒いでるわ。貴女、飼ってるんでしょう?」  ああ、とアンリは頷いた。 「手入れが必要かと。棲み着いた虫とはいえ、お嬢様のお持ち物であることには変わりませんから」 「そう。てっきり飼うつもりだったのかと思ったわ」 「ふふっ、お戯れを♪」  ここに来てメイドは破顔し、主人の冗談を笑い飛ばした。 「最低限の振る舞いです。最近くたびれて来たので、少し手入れしているだけですよ。それがお嬢様のメイドとしてふさわしいかと。……それに、メイドたちのオモチャに留めておくのも勿体ないでしょう?」 「さあ、どうかしら。あれきりほとんど見てないものだから」  興味もないけれど、と言ってグラスに口をつける。 「貴女が世話をしている方がよほど不思議だわ」 「強いて言えば、気まぐれです」    僕の前で揺らめく、美女たちの巨大な足。2色のタイツが、右で、左で、語らうに表情豊かに揺れていた。 「だけれど、よく見つけたわね?」  ”虫ですか?”とアンリは言い、 「まぁ、ずっと飼っていましたから」  そう続けた。 「飼っていた?」 「えぇ。……まあ、本来アレは葡萄や織物を管理させるためのものです。商いのことですので、お嬢様が知らないのも無理からぬことかと」  そう言いながら、手慰みにワイングラスの縁をこする。  高く、澄んだ音を鳴った。  僕の世界を掘り崩す、崩壊の音色が。 「殖えたので他所では間引いていたのですが、お嬢様とお会いになった虫ですから、一応」 「変なことを言うわね。そもそもあの場所を教えたのは貴女でしょう?」 「あはっ♪ そうでしたっけ? いえいえ、箱入り娘のお嬢様が無知になりはしないかと心配だったもので。虫の存在を知っておくのも、お嬢様に必要なことかと思っただけです♪」  酔ってきたのか、跳ね始めるアンリの口調。  それと共に明かされるのは、かつての日々の舞台裏。僕だけが知らなかった、僕の全てだった。 「これだから貴女は! 全部貴女の仕組んだことじゃない。いつもそうよ、酔わせないと本性を見せないんだから」 「まあ人聞きの悪い。お嬢様のメイドとしてですね……」 「い・い・え! 昔からそう! ツンと澄ました顔をしてアレコレ吹き込むんだわ。子供の頃物怖じするのは私の方だったんだから」 「あははっ♪ そんなこと言って、もう誰も信じてはくれませんよ?」  クスクス笑いながら、幼少の頃を舌で転がすようにアンリは目を細める。そこに映っているティナの姿がどのようなものか、僕にはわからない。 「あの頃のお嬢様も可愛らしかったですよ?」 「やめなさいよ白々しい」 「それに、虫に会わせたあの時! あんなに控えめなお姿、他にありません」 「本当に口の減らないメイドね! ……矮人が居るっていうから、どんな蛮族が出てくるか恐ろしかったのよ。……あまりにも無知なので、ついつい騙ってしまったけれど」 「慣れないことをするから勘違いされるのです。……”幼馴染”でしたっけ? アレが幼馴染なら、一緒に育った私は何になるんでしょうね?」  普段とは違った、ややねちっこい声でアンリは笑った。   そして、気軽に僕の全てを踏みにじるのだ。  運命の出会いはハリボテだった。何一つ、何一つ計算外のことはなかったのだ。唯一の誤算は、僕の一目惚れだけ。それすら錯覚で、空虚。だったら、僕に何が残るのだろう。 「大したマッチポンプだわ。虫を飼って、会わせて、連れてきて。それで今は、貴女の手の中。さぞ懐かれてるんでしょうね?」 「どうでしょう、懐いているのか、餌をやる人間に擦り寄っているのか……。あまりに思考が単調なので、判じがたいですね」 「そんなこと、小人のメイドにでも任せておけばいいのに。それとも、なにか気になることでも?」 「まさか。……矮人はどこまで堕ちた存在なのか、興味があったのは確かですけれど。おかげで、随分楽しませていただけました」  クスクスと笑いを忍ばせて、記憶の中の僕を弄ぶ。その目に映る豆粒、手の中で餌をくらい何も知らず懐く虫が、彼女にはどれほど滑稽に映ったか。実験動物が、毒を試さんとする科学者に懐くようなもの。ヤプーだって、ここまで惨めではない。  同じ人間? 主人と幼馴染? それは大層悪い冗談だった。  そもそも彼女らは、かろうじて人間と呼べる生き物を、特別に、ペットとして、飼っているだけなのだ。  自身の膝にも届かない中級メイド、それは成長しきれなかった未熟児だった。自身の手袋にすら収まる常人のメイド、それは正常に成長出来なかった不良品だった。せいぜい人間に囲われることで価値を持つ、ペット程度の存在だ。自分が大きいのではない。下位種が小さいのだ。幼い頃は、等身大のテディベアを肌身離さず持ち歩いたこともあったろう。けれど今、小人らはコレクションとして生かされるだけの、たかが動くぬいぐるみ。それを囲うのはいわば、動物愛護の慈善事業なのだ。  そこに、豆粒のような虫が?  人間? 幼馴染?  かつて遊んだダンゴムシ、それがある日現れて、”ずっと愛してました”、だなんて。  いまさら出てきた話す虫が、面白くないはずがない!  僕の滑稽さにクスクス笑みを漏らす美少女主従。 「不遜にもお嬢様の名を呼び散らして、何度握り潰してやろうと思ったことか」 「インコの音真似のようなものよ。放っておきなさい。第一、少し会っただけで惚れ込むなんて。最初に見たものを親と思う鳥と同じね」 「理解に苦しみます。同じ時間に居合わせたとて、共に生きたことにはならない。そんな当たり前のことも、虫にはわからないのでしょう」 「思考どころか種族も弁別できない、こんな下等な生き物が同じ姿をしているなんて、屈辱もいいところだわ」  それから一通り笑ったところで。  メイドは、静かに立ち上がった。 「さて……」  そして、周囲が一挙に照らし出されたと思うと。 「お掃除の時間といたしましょう」  高貴なる巨大メイドは、床に転がる虫へ手を伸ばし。  柔らかく雪原に似た手が僕に向かって広げられ。  雪崩の如く襲いかかった。 §  ぴっちり指に張り付く白手袋、その先端。  そこで僕は、絶世の美女2人の眼差しに晒されていた。 「気づかれないとでも思ってたのかしら?」 「もとよりそんな知性はないかと」  2人の甘い吐息の混ざる、その間。僕は泣きそうになりながら、少女の指先で藻掻いていた。  こんな時の感情表現を僕は知らない。ただただ無知な僕は、初恋の少女と思慕した少女の嘲笑の中、虚しくメイドの指を叩くだけ。薄い皮膚、繊細な指、少女のきめ細やかな指は、万力のように僕を挟み、もう下半身の感覚さえ奪い取ってしまっている。対して僕の拳は、指に張り付く布地へ力なくり下ろされるだけ。  ……この指は、僕を裏切った巨人の指なのだ。僕は今、敵の、敵の指先に摘まれて、動くことも出来ず囚われている。  絶体絶命だった。もうアンリさえ、僕をイジめる恐ろしき巨女神そのもの。救いはない。ここを出ても、そこは巨人種メイドの巣窟。どこにも行き場はなくて、誰も僕を助けてはくれなくて。そして今、自分の体一つ自由にはさせてもらえない。  僕は両手で身を押し上げようとした。キュッと肌に吸い付く白手袋の中でもがき苦しみ、まるで雪に埋まった下半身を取り戻そうとするようだ。けれど、真っ白な布地の奥に感じる肌の気配、繊細な脈拍は、どこまでも女の子の色彩で彩られている。目を転じて、ぼんやり霞む世界の向こう、僕を見つめる少女の顔立ちを見た時、僕は一層の恐怖に身を震わせた。 「……やっとまともに虫の顔を見たわ」 「お覚えですか?」 「……そうね、少なくとも、人間の顔をしていることはわかったわ」  片眼鏡越しに、2人はもがく僕の姿を観察していた。恐怖と苦痛に歪む小さな生き物、ほんの少しの力加減で高い悲鳴を上げる虫けらを、しっかりその眼で捉えようというのだ。レンズ越しに感じる巨大美女の視線が、僕を焦点にして焼け焦がす。ヒリつくような強い眼差しに、本能的な恐怖を禁じえない。  ガラスの奥、権力と美に輝く虹彩が僕を覗き込む。前なら、僕のかつての面影を探しているのだと錯覚したろう。けれど、違った。今も昔もその視線は同じ。劣等種を、人間未満を見下す女神のそれだった。ティナちゃんが僕を見下ろす。同じ顔、同じ瞳で。どう愉しんでみようか思案するような、あまりの惨めさに哀れんでさえいるような、悩ましく、艶っぽっく絡みつく、美女の視線。指先でこねくり回す仕草すら嗜虐的で、サディスティックな色気さえ感じさせた。  僕は恐れた。そびえ立つ2人の超巨人、まるで美しい城のようなスケールの、崇高な女神様たち……。その間にいて、声も出ないで、ただただその美貌を前に畏怖した。  だのに。  僕は、奇妙な歓喜に襲われてしまう。  意味がわからなかった。だって、僕は今すぐにでも殺されてしまうような境遇だ。裏切られて、裏切られて、辱められて、辱められて。なのにあまりの巨大さは、彼女らの美しさを崇高に見せた。何度も夢に見た美少女が、今や引力さえ感じる巨大さで現れている。それだけで、もう、どうにかなりそうなほど嬉しかったのだ。 「ティ、ティナちゃん! システィーヌ様! 僕です、み、ミヌです! わかりますか!?」  実際、僕はもうどうにかなっていたのかも知れない。  どうしても僕は、歓喜の声を抑えられなかった。 「……ここまで来るといっそ愉快だわ。ここまで次元の違う存在なのに、どういう思考なのかしらね?」  意表を突かれた女神様は、一瞬の沈黙の後、呆れることも出来ず呟いた。 「僭越ながらお嬢様、思考と呼べるほどのものはないかと」 「それもそうね。でもなんでかしら、ちょっと興が乗ってきたわ……♪」  このような状況でも歓喜する僕は、彼女らの眼には未知の生き物となって映ったろう。貴族の娘たちはクスリと笑った。この虫は少なくとも、肥え太った庭の観賞魚よりは楽しませてくれるらしい。  アンリが僕を下ろしてくれる。  重厚なテーブルクロスに沈み込む足、それとともに感じる、ティナちゃんの存在感。  見上げれば、そこには彼女の手のひら一つ分の距離にまで迫った、ご令嬢の姿があった。  ティナが、口角を上げこちらを見る。見ている。見てくれている! 僕はあまりの歓びに感涙さえ浮かべ、一歩、一歩と近づいていった。  テーブルの地平線、そこからそびえる真っ赤なお城のようなお姿。彼女もまた、こちらに注意を向けてくれる。 「じっくり話すのはこれが初めてかしらね? お久しぶり。懐かしいわ」  そして、少し身を乗り出したと思った時。  激震とともに、おっぱいが降ってきた。 「……え?」  テーブルの上に乗る物体、それに顔を近づけようとすれば、ティナはその爆乳を机上に乗せざるを得なかった。結果、地面に乗り上げる特大の乳房。自重でむにぃ……と広がり、弾力でそびえ立つこと、実に5メートルを越した。 「どうしたのかしら? 友達でしょう? 気を遣う必要なんてないわ」  頬杖を付き、ティナが僕に顔を近づける。乳を机に乗せ、けだるげにこちらを見下ろしながら。見えるのは、薄い微笑、下目遣い。至近距離にあって、けれどその姿もおっぱいの影にほとんど隠れてしまっていた。  こんなに巨大な女の子相手じゃ、距離が近すぎるのだ。もう僕じゃ、適切に近寄ることすら出来ないらしい。 「ふふっ、胸の影に隠れて見えないわね。私より背の高かったミヌはどこに行ったのかしら?」  クスクスと笑うたび、ユサッ……ユサッ……と重々しく乳が弾む。その流動的な動き。薄布一枚の中に、どれほど柔らかなものが詰まっているかよくわかる。その柔らかさに、今にもドレスの間から溢れ出してしまいそうだ。谷間や横乳もほとんど丸見えのドレスじゃ、その豊満な貴族おっぱいは隠しきれない。肩紐さえ千切れそうで、そうなれば雪崩れる数百トンおっぱいで、僕は間違いなくぺしゃんこだ。  粒人間は、ドギマギしてその威容を見上げた。ドレスの繊維さえ克明に見える距離感だ。漂ってくる上位種の体熱や香り、それに当てられるだけで幸せだった。  欲を言えば、今すぐ飛びつきたい。このおっぱいにしがみつき、あわよくばドレスの隙間から忍び込んで、その猛烈な重圧に圧死したい。そうすれば、僕はどんなに報われるだろう。  そう思えば思うほど、ティナの引力は増していく。  僕は、崇高なおっぱい様を前に立ち尽くした。  舐めるように見上げ、味わって。それから、眼前にいるティナちゃんがいるのを、噛みしめるのだ。  そこにあるのは、重そうな曲線、限界まで張り詰めたドレス。  その奥、ツンとした乳首の輪郭が浮き出ているのに気づき、思わず僕は赤面してしまう。ずっしりしたおっぱいの曲線、その頂点に慎ましやかに立つ、小さな乳頭。しかしそれに見下される豆粒は、乳首の先端にさえ乗る大きさだった。薄布に身を預け、ティナちゃんのオトナ乳首が眠っているのだ。ドレスに浮かび上がる大きさ、美しさは一級の果物を思わせる。着飾った美少女、肉感的でありながら芸術品のように完成されたその姿に、一点隠された生々しさだった。 「あら、怖がらせてしまったかしら? 当然よね? だって、あなたにとって私達の大きさは50倍。こうして近づけば、自分がどれほど小さいかよく分かるでしょう?」  そう言って巨人種の美女らは笑う。見せつけるように爆乳を揺らし、巨大さを誇ることも忘れない。立ち尽くす僕を、己の巨躯に打ちのめされたと思いながら。  けれど、僕は呆然としていたのではない。  見惚れていたのだ。  ヒリつく恐怖が、彼女の存在を確かに僕に思い知らせた。見上げるその威容が、彼女の美しさを事細かに伝えてきた。もう彼女への憧憬と熱情は骨の髄まで染み込んで、汎ゆる不条理を突破してしまったのだ。  彼女が僕を脅かすたび、ティナちゃんを鮮烈に感じられて僕は歓喜してしまった。    思いもせず女神様が施した、絶対的マゾ調教。  僕は、その犠牲にされていたのだ。 「ティナちゃんが……! ティナちゃんがいる……! おっきくて、美しくて、恐ろしくて……」  うわ言のように叫んだ時、きっとティナは何が起こっているか知らなかったろう。  それは僕が、巨大女神に狂う崇拝者、調教済みのマゾ虫に成り果てた瞬間だった。  そして、愛慕のあまり駆け出したのだ。 「やっと、やっと見てくれた……! ティナちゃん! 僕、僕だよ!」  遥かに巨大な女性。近づけるのはわずかに、その胸元だけだった。コレほど近くにいながら、僕にはその頬に触れることさえ出来ない。ただ、その鎮座するどでかおっぱいに近づいて、なんとか、その注意を向けてもらおうと必死だった。  だから、頬杖を付く、その肘へ僕は手を触れたのだ。  触れてはいけない、高貴な肌に。 「このっ……!」  体に触れられた嫌悪感が、一瞬ティナの背筋を震わせた。  貴女は嫌悪感に鳥肌を立たせ、それから取り乱すのを一気に押さえる。 「ええ、いいわ。それなら、そうね……」  冷たい笑みを浮かべる。  それから、己の乳房を手のひらで持ち上げ出した。  それは、変幻自在に動く巨乳の暴力。初めスルリと滑り込まされた手を飲み込んだと思うとグググッと持ち上げられて大きく撓み、白い手のひらの上に押し広げられる。巨人種をもってしても重そうなそのおっぱいは、少女の手から溢れそうになりながら指に食い込むばかり。そして高く掲げられれば光をことごとく奪い一面に影を落として、小人の直上、その丸さを見せつけ……。 「私の体、思う存分、味わうといいわ……ッ!」  そして、一挙に振り下ろされるのだ。  周囲の空気を巻き込み、天を踏み割って落下する巨女おっぱい。それが辺り一帯を爆砕するのに寸秒もかからなかった。激震を走らせティナの爆乳が世界を揺らす。ズドンッと地を打ち、どぷんッとミルクを波打たせ、凶悪おっぱいの全重量を叩きつけたのだ。衝撃にぶるるんと揺れる乳肉。華やかな貴族のおっぱいが、物々しく地面に鎮座する。 「うふふ……、無断で触れるなんていい度胸ね? いいわ、存分に味わいなさい。わかる? これが私の乳房よ。この、巨大で、莫大で、崇高、この惑星みたいな存在が、私の、乳房♪ わかる? わかる!!? これでもまだ古馴染みだと? いいわ、特別に、直々に教えてあげる。これがあなたの触れた高貴な乳房。虫けらなんか触れるだけで殺してしまえる乳房よ。自分の立場、思い知りなさい!」  それはティナたちにとって、せいぜい10センチ程度の落下に過ぎない戯れだった。どさっと重々しい音を立てて紅茶の水面を揺らし、けれどそれだけのこと。身分を思い知らせるための、単なる名誉刑。性的な部位に下敷きにすることさえ厭わない、なんて。それは貴族社会では、何より屈辱的な戒めだったろう。  けれど今、ティナちゃんの下乳にめり込む僕にとって、それは苛烈極まる身体刑だった。踏み潰されたガムのようになって尚死ねないまま、12万倍の乳重を一身に叩き込まれていたのだ。 「ふふっ♪ 女の乳房に下敷きなんて、これ以上の屈辱はないわね? 私のバストだけで半殺しの目に遭って、これでいい加減こりたかしら」  嘲笑を漏らしてお嬢様は言い放つ。その度タプンタプンとミルクを揺らし、なおのこと小虫を踏みにじりつつ。  均等に分散する重圧と分厚いテーブルクロスに挟まれて、僕は命だけは許してもらえた。  けれど、それだけ。いっそ気絶させてくれればよかった。けれど、あまりに過酷なおっぱいプレスは気絶すら許してくれない。なくなる空気、出口のない下乳の中。バストの下敷きにされて、僕は錯乱しながらティナちゃんに助けを求める。この巨大乳肉こそ、ティナちゃんなのに。 「ティナちゃん! 助けて! どこに居るの!? やだ、怖い、怖いよティナちゃん!!」 「気持ち悪い虫ね。どういう了見なの? ちょっと昔会ったからって、馴れ馴れしくティナティナって……」  劣等種を相手にする義理はない。この際惨たらしく殺して、一時の暇つぶしに供しようか。どちらにせよ、最上種の気分を害した罪は重い。ここで死ぬのが定めだ。  自慢のバストを上げ、不逞の虫を殺しにかかるティナ。  地にうずくまる虫をつまみ上げようとした、その時。 「ティ、ティナちゃん……!」  ゴキブリじみた生命力で、僕は初恋の人と触れ合えた歓びに震える。ここまで強烈に存在を誇示してくれる。その幸福に、僕はもう壊されてしまっていた。 「このッ……! 汚い口で、私の、名前を……!」  再び振り下ろされる12万倍おっぱい。運動エネルギーが加算され、その威力は跳ね上がった。空気を裂き振り下ろされ、ぐちゃぐちゃに僕を叩きのめすのだ。”ズダンッ”と叩きつけられれば衝撃にバウンドし揺れるバスト。  それが、一撃、二撃……。  そして、静謐が訪れる。 「流石に死んだかしら」  品のない行為にクスクス笑い合いながら、己の胸を持ち上げる貴人。  その下乳にべったり張り付いた小人が、剥がれ落ちる。  それでも、僕は這いずって。 「ティ、ティナちゃん……」  熱に浮かされたように、想い人に感謝したのだ。  虚を突かれたように少女は瞠目した。  試しに指を差し出してみる。  そうすれば小人は、自分より太いそれに抱きつき、頬ずりし。  嫌悪感に、グリグリとにじり潰されても尚、存在だけで小人は喜んでいた。  その様を見れば、さしもの彼女とて興味が湧く。  まとわりつく壊れた小虫を、ゴミのように指で弾き飛ばすと。 「これは少し、面白いかもしれないわね」  美少女は、仄暗い笑みを浮かべた。 §  慰みモノとして興味を持った時、ティナの虐待は更に苛烈なモノになっていった。  従順な崇拝者、いくら虐げられても壊れたようにすり寄る虫。それが人の形をとっているのだから、愉快でないはずがなかった。  ティナの部屋に放し飼いにされた僕。この下等動物は、幾多の無視と虐待とを繰り返されていた。  いや、アンリがいない時以外、僕はティナに眼さえ向けてもらえない。間違って出てきでもすれば、殺されることさえ在り得た。  ティナが僕に意識を向けてくれるのは、わずかにアンリとの逢瀬の時だけだ。  たとえばそれは、ティーブレイクの頃。  テーブルを囲み2人が親しげに話し合う。  時に手を握り、頬を撫で、脚を絡ませ。  戯れに、僕を踏みにじりながら。  僕は巨大女神が座る椅子の間に投げ出され、4本もの巨柱の間を逃げ惑っていた。  逃げる僕。それを、おっきなハイヒールが小突いては跳ね飛ばす。電柱のようなヒールを煌めかせ、電車さえ軽々一踏みできる足がじゃれついてくるのだ。メイドヒールの漆黒の革、ティナの履く真っ赤なエナメル。硬そうな生地も崇高種の女性の足に押し広げられ、ギチギチと悲鳴をあげている。そして、艶かしく照り輝いて、磨き上げられた表面を僕に襲いかかった。  2人の足は、爪先だって高さ数メートルはある存在だ。それが、汚い靴裏で僕を踏みつけ、甘噛するように踏みにじり、交互に僕を汚しまくる。ほとばしる激痛、容赦無い嘲笑。幼馴染の女の子が僕を道端のガムのように靴で踏みつけ、最愛のメイドと共に残酷な笑い声を立てるのだ。それはアンリも同じだった。遥か頭上、テーブルの向こうではクスクスと高貴な笑みを浮かべるばかり。  僕から見えるのは、椅子から伸びた美脚だけ。椅子の底面、テーブルの裏に阻まれて、顔はおろかお尻さえ僕には見えなかった。それでも僕は、無機質なハイヒールの猛獣に襲われながら2人の美女に助けを呼ぶんだ。助けて助けてって叫びながら、当人のエッチなヒールに虐められる。靴に染み込んだ、ほのかな2人の体温が怖かった。厚い靴底が、セクシーなつま先が怖かった。でもやめてはもらえないで、埃だらけになるまで2人の足で転がされるんだ。  やめてくださいって何度もすがりついた。テラテラした表面にキスをして、何度も何度も慈悲を乞うた。どこまでも伸びる高い壁、磨かれた女の子の靴を舐めてキスして、泣きながらティナちゃんの名前を呼んだ。けれど返ってくるのは暴力的な踏みつけ。ギャッと叫んで僕はメイドの靴までひとっ飛びだ。そして、つま先で転がされ、嫌というほど硬い靴底を思い知らされ、舐めて、キスして、助けを求めた。  それが、何度繰り返されたか。  それが止んだのは、すっかり僕がボロボロになった頃だった。  2人はまだ、僕のことは見てくれない。遥か上空、隔てられた世界で2人だけの遊びに高じていた。  こっそり、足先でエッチなイタズラを続けながら。  ぐったり絨毯の海に沈む僕。  重い体を、とんでもない爆風と轟音が弾き飛ばす。  スルリと脱ぎ捨てられたヒール、その墜落に吹き飛んだのだ。エッチな足が脱ぎ捨てた抜け殻、それは、乗用車なんか何台でも詰め込まれてしまえる巨大な靴。数十トンはくだらないその脱皮だけで、僕はノミのように飛ばされてしまった。  そこへ忍び寄る、でっかいでっかい女の子の足。  ストッキングを纏いぴっちりした足裏が、辺り一帯に影を落とすのだ。  すけすけエッチなストッキング、皮膜のような下着に覆われた、ティナちゃんの巨足。物言わぬおみ足が、天高く空を覆い尽くした。  それが、どんなに綺麗な足裏だったか。  ミルク石鹸のように白い裸足、それが薄布をぴっちり纏ってラインを浮かび上がらせ、艶かしく足指をくねらせて……。心臓が止まりそうなほどの恐怖と媚態。女の人の足が、こんなに美しいなんて。背筋のようにアーチを描く輪郭。ふっくらと柔らかそうな指の付け根。むしゃぶりつきたくなるような、美味しそうな足が、12メートル。視界から横溢する暴力的な光景に、僕は確かに興奮していた。踏まれたい。踏まれたくない。踏まれたい。踏まれたい……。エッチな足裏の魔力にかかって、僕は動揺するばかりだ。  からかうような足指の蠢き。ストッキングの擦れる音、指同士の擦り合う音が胸をくすぐる。チラリチラリと垣間見えるペディキュアの赤にさえ、性的な興奮を隠せない。  そのおみ足が、一気に降ってきた時。  僕は全身で、ティナちゃんの美足を受け止めようとした。  そして、グシャッ、と。  ミチッ、と。  一瞬で僕は足肉の暴力に包まれる。まるで天災。神罰。腕を伸ばした僕など居ないが如くに踏み潰し踏みにじり、しっとりすべすべの高貴な足が辺り一帯を踏み殺す。どさっという音とともに訪れる、蒸れた繊維と良い香り、暖かさのご褒美。  須臾の間。それに遅れてやってきたのは。 「ぐッ……あ、あ゛あ゛っ~~~~~~!!!」  猛烈な、巨大女神様の質量だった。 「失望ね、いるのかもわからないわ。ここかしら? ここ? ……ふふっ、いた♪」  踏みつけたまま、周囲を弄る女神様のおみ足。僕が泣き喚きながら黒タイツの天井を叩き、敏感な肌はやっと僕を感じてくれる。指股に食い込んで、蒸れた空気を嫌というほど吸い込んで。そのまま惨めに、僕は幼馴染の足裏にめり込んでいたのだ。  ぐにぐにと足指が波打つ。思いっきり握りしめて柔肌に閉じ込めたり、ぐりぐり付け根の膨らみを押し付けたり。そうすれば足裏越しに、見えないティナちゃんの確かな意志が伝わってきた。ゴミ虫に立場をわからせようと、えっちなお仕置きを叩き込むのだ。僕の何倍もでっかい指で虐げて、小虫にしっかりトラウマを植え付ける。  けれどそれが、どうしようもなく嬉しかった。  かつて、僕よりちっちゃかったティナちゃんのあんよ。それが今、僕を小指だけで踏み潰せるおみ足様になっているのだ。50倍、重さ125000倍の超重量が僕に成長を思い知らせる。恋い焦がれたティナちゃんが僕を踏んでくださる。同じ足なのに、僕の足などそのシワにさえ収まってしまうだろう。相対的に米粒のような僕の足と、列車さえ重さだけでクラッシュできるティナちゃんの足。これが、十余年を経て再開した僕らの格差だった。  女王様が、容赦なく僕をお踏みになる。ストッキングの油を弾くような、指に吸い付くような独特の感触が、顔を、体を、尊厳も思い出も全部全部全部踏み潰す。極上のすべすべ感が僕を襲った。動くたび角度が変わり、独特の光沢と共に透けた肌の白が流れていく。  ありがとうございますと僕はキスした。なんて光栄。ティナちゃんが貴族の娘となって僕を踏んでくれてる。ぎっちりとした重みは存在の証。高貴なストッキングは身分の証。そして、夢にまで見たティナちゃん、思い焦がれたちっちゃなティナちゃんが、僕をむごたらしく踏みつけ夢じゃないと教えてくれるのだ。こんなに、こんなにおっきなおみ足になって!  僕は、ご令嬢の足に抱きついた。小指にすら腕は回らない。いや、その半面も抱きしめられなかった。小指の一関節だってキングベッドより大きいおみ足だ、当然だった。でも僕は、嬉しくって頬を擦り寄せキスを惜しまず、懸命におみ足さまにご奉仕したのだ。足なのに。ヒールで蒸れた足裏なのに!  それでも僕はやめられず、ちんちんはすっかり勃起して何度もそのタイツに擦り寄った。気持ちよかった。いい匂いがした。キュッと薄膜の張り付く素足を求めて求めて、ミチっとした足指にちんちんを押し付けた。 「あら? どこに行ったのかしら……」  そして少しティナが少し足を上げた時、僕は懸命にその小指に捕まったまま、腰を擦り付けていたのだ。  ツンと上を向けられた足指の上、僕は小指様の第一関節というキングベッドに床ズリを続けていた。大窓のような爪、ペディキュアの塗られた爪に捕まって、なんとか落下を免れる。そしてそのまま、丸々とした膨らみに大の字にひっつく小虫が僕だった。 「ありがとうございます! ティ、ティナちゃん! システィーヌ様! ありがとうございます! ありがとうございます……!!」  けれど、微生物の感謝が女神様に伝わるはずもない。  このおみ足の先、天界ではなお女神さまたちは語らい合って、いるかもわからない僕への虐待をお茶請けに愛し合っていた。  そしてそっと唇を合わせようと身を乗り出した拍子に、僕は淫らな楽園から振り落とされる。 「いいのですかお嬢様? ”ご親友”をお踏み潰しになってしまいますよ? ……んっ♡」 「ッ♡ ……ふふ、ウジ虫なんかどこかにいってしまったわ♪ ねぇアンリ、舌を……♡」 「んぅ……っ♡ それはいけませんね、きっとお嬢様の足が汚れてしまいます………ん♡ お嬢様、もっと……♡ アンリめがお探しいたしますので……」 「んっ♡ あら、貴女の手を煩わせるつもりはない、わ……っ♡」  頭上から聞こえる濃厚な女神様たちのキス。愛し合った女性たちの、快楽の時間。  しかしそのテーブルの下、4本の脚が絡み合うその草原では。 「う、わ、わああああ!!!??」  巨大なおみ足に追いかけ回される、小人の姿があった。  ヒールを脱いだ少女らの足が、僕を探して動き回っていたのだ。それはまるで、4つのクジラが泳ぐ海だった。白黒2色の艶めかしい足先が、あたりを探るように揺れ動いていたのだ。  もちろんそれは、少女らが仄かに互いの足先を突くだけのこと。脱いだ足で密かに互いをくすぐり合い、小さな足指の僅かな接触で想い人を確かめているだけ。  しかし、僕にとって。  その時間は、12メートルに匹敵する巨獣が僕に食らいつく悪夢の瞬間だった。草原のような絨毯をなぎ倒し、黒タイツのお嬢様の足、白タイツのメイド足が飛んでくるのだ。  走り出す僕を、背後からティナちゃんの足指が跳ね飛ばす。転げ回れば、そこには真っ白なアンリの足指。ほんのり肌色の浮かぶ白い気球にのしかかられ、転がされ、さっきとは違う女の子の香りに潰される。控えめに、おしとやかに、しかし奥からぎゅむっと押し寄せてくる圧倒的質量。そうして、メイドの足にめり込み無力化される僕に、光沢あるストッキングの魔手が襲いかかるのだ。 「ふふっ、捕まえた♪」 「この豆粒が”ご友人”ですか? ふふっ、なんともあっけないこと……♪ 藻掻いていらっしゃいますね? 私達の指より小さいのに、健気なことです♪」  くねりながら、互いの指を絡ませんとする女神たちのつま先。ピンと張った白黒タイツが、僕をみっちり包み込む。絡ませる指の股に挟み込ませ、僕をぎっちり指の肉にうずめてしまうのだ。女の子の足にめり込まされる、その光栄。ホカホカとした暖気と、油を弾くようなストッキングの質感で全身を揉みしだかれる。そうすれば僕は、あまりの屈辱に酩酊し、2人の蒸れた足にキスし、忠誠を誓い、うずく股間を押し付けずには居られなかった。  気球のような女の子の足指、極上の肌触りが互いに互いを揉みしだき、ブルーベリーのように僕を潰そうとする。揉まれ、ほぐされ、いい匂いのする大地に体をこすり合わせ、地獄のような天国の寝心地。  そうして、しばし舐め尽くすと。  互いに薄膜とでっかいつま先を練り込んで。  女の子たちの足は、ぽとりと僕を産み落とす。 「ああ、お嬢様……」  それは、2人の世界が僕をはじき出した合図だった。  互いに唇を重ねる2人。  騒がしくなる頭上の世界。  そのはるか下方。  脱ぎ捨てられた巨大ヒールに囲まれて、僕は。  死にかけのカエルのように痙攣し。  だらしなく、股間を濡らして、ひっくり返るだけ。  頭上、甘い世界から放逐された、用済みの虫が僕だった。


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