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夏目なつめ
夏目なつめ

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お囃子かしまし浴衣ロリ

 §  天に愛されないと成せない成功なんて、虚しくはありゃせんか。  やれ運だとか環境だとか、自分の趨勢すべてを知ったような顔しやがって。  そう思えばこそ俺は、独立独歩を旨として生きてきたのだ。  見ろよと言いたい。この覇気に溢れた顔つき、体つき、スーツに靴を。ブランドをまとっているんじゃない、俺の意志が凝集したのがこのテーラーメイドだと。あくまでも質実に、だが細部に気を遣って、自分を演出する。俺は俺が思った通りの人間だった。日々それを更新していく感覚が快い。委細は省く。俺は成功した。  結果が全てはない。だが、結果は過程を保証する。そう思って生きてきた。  今、それをどう考えるべきか。  嘘は、言っていない。おそらく、ルサンチマンを持たずに俺を、過去の言い分を、否定することは難しい。正しいのだ。少なくとも、自分にそう言い聞かせることは大事なはずだ。自分を人間として認めるとは、自分に責任を帰すことだ。  じゃあ、全てが全て正しいのか?  だが俺は、それでも俺にイエスと言うだろう。  地獄の底でも。  今、ここでも! 「……間違って、ねぇだろ?!」  そう叫んだ時。  俺は、自分の声に飛び起きた。  ……夢、じゃない、な。夢を見る余裕はない。  とにかく身に染み入ってくるのは、まどろみが強引に引き裂かれる、なんとも後味の悪い感覚。  寝ていたのか。  深層意識でも俺は言い訳しているのか。  苦々しくも、理解しない訳にはいかない。  俺は落伍した。凋落したのだ。  硬い床に臥し、嘆息しながらも立つ気力が起きない。周囲からは祭囃子、頭上の星空は灯篭の光でかき消され、賑やかな納涼祭の活気が寝起きの体に突き刺さる。楽しむ側になれば、その非日常感も悪くはなかったかもしれない。だが、今の俺はそれどころではなかった。  ずっしり横たわる俺。  硬いプラ製の地面が、睡眠をひどく貧相なものにしていた。  その原因は床の硬さばかりではなく、むしろそれこそが事情を厄介にしている。もはや、寝るどころではない事情があった。  ほら、来た。  ビリビリと振動する地面。それが後頭部を叩き、身を浮かす。  地響きだ。  次に来るのはなんだ。これほどの地響きを何が立てる。  成功者の身を震わせる、その不逞を誰が犯す。  とはいえ、訪れたのは何の変哲もない光景で。 「でさ? 無理やり叩き起こされて、山行くぞって。朝だよ? 朝。朝6時」 「やば。いつも昼起きるのに」 「まあ起きなきゃ一生寝てたけど」 「でしょ」  通り過ぎる、女子高生の一群。  年頃の娘たちが、寝そべった俺の傍を通っていくのだ。その姿に見るべきところなく、彼女らに選ぶところなし。異様なのはむしろ、道中寝転んでいる俺の方だ。スカートの中を見る格好。見つかったら間違いなく事だろう。そうする間にも、彼女らは一歩一歩こちらへ近づいてくる。  そして娘のうち一人が、ふとこちらに一瞥をくれると。 「……何がヤバいってさ? スマホ池に落としちゃって」  そのまま、友人らへ視線を戻す。気に留めるところなど一ミリもない。  そして、再び踏み出し……。  ──その、7mを超える足を、持ち上げた。  30倍の、巨大女子高生。その足が大地を穿つのだから、波打たんばかりの激震だった。俺の体が跳ね上がる。それでなくとも吹き飛ばされそうなのに、近くに叩き込まれては寝ていられるはずもない。そして巨体の立てる風圧に巻き上げられ、箱の隅から隅へと這いずり回る羽目になる。  彼女に非はない。私が小さいのだ。  信じたくないことだ。だが世は無情、縮小病になってこの方、過去の記憶が本当に事実であったかを、自分自身信じ切れずにいる。激震を立て足の爆撃を叩き込むあの女神たちより、さらに巨大な存在だっただなんて。  とはいえ、現実は現実。縮んだ。それ以上でも以下でもない。  結果、今の俺は縁日の出店で、小人すくいなどと馬鹿げたお題目で売られている。縮小病者は社会の寄生虫だ。意識を失っている間に俺は、身元を失くし実績も失っていた。今会社がどうなっているのか、考えたくもない。差し詰めあの馬面がチェアマンを気取っているに違いない。片や俺は、矮人種と取り違えられて売り飛ばされ、払い下げられ、露店で売られている。どころか、売れ残ってさえいた。  なんの意外性もないことだ。可愛げのある者から売れていく。本来は金魚すくいと同様、追い詰めて捕まえられるはずの小人たち。だがこいつらは、隠れるということを知らなかった。5㎝の体を隠す箱やカラーボールの影から、飛び出していくのだ。生まれついての小人なのだろう、媚びた仕草で足や指へ群がる人間たち。本来小人は逃げる側なのだが、廃棄される趨勢を知ってか知らずか、率先して買われに行く。そして擦り寄っては囚われるのを待つ者ども。どうすれば売れるか、心得た動きだった。  そんなこと、できるわけがない。  同じ大きさではあれ、矮人種とはわけが違う。俺は人間だ。それが何の手違いか、連中と取り違えられこんな場所に行きつくなんて。  じゃあお前はこんな出店の片隅、孤高を気取るつもりか。たった一人売れ残り、プライドの残り滓を撫でてやっているのか。この方勝てない勝負も虚勢を張らず気力で勝ってきた。いや、買い上げてきた。その末にこの無様か。  そんな俺の覇気を、世界は挫きにかかっている。圧倒的な無力感で覆い尽くして。  何よりポリシーを脅かすのは、一にも二にも天を衝く一般人の姿だった。地球上最大の生物より巨大な存在が闊歩する中で、気勢だけでも蟷螂の斧を振りかざしていないと、何かが折れてしまう。  ……今なお、大気を揺らす巨大女子高生たちの残響。通行人の残すカルマン渦が、不穏な気流で俺をなびかせる。そろそろ、足取りで巨人の気質さえわかるようになってしまった。軽い、けれど無視できない巨大な振動。カランコロンと足音が二段に連なっているのは、下駄を履いているからだろう。そして、少ししなやかで気だるげな響き。次に来るのは、退屈したガキだ。  実際、城壁の向こうから、ゆらりと現れたのは……。    軌跡を残し宙に流れる、銀糸の髪色。  ひらひらと金魚のように舞う、夜空に花火柄の浴衣。  色白の肌は月光と遜色なく群青の浴衣から伸び、地平線の彼方からゆったり歩いてくる。  見た瞬間、腹が立った。  本当に、本当に美しい小娘だったからだ。 「…………」  13歳程度の、やや小悪魔的な雰囲気をまとった少女。小柄な体はまだ成長を残していて、子供と娘の間の独特の空気を孕んでいる。身長150㎝程度の小柄に、やたら脚の見える裾の短い浴衣を着ていた。胸元まで伸びた銀髪を揺らし、シュシュでサイドテールにしているがそれもまた長い。美しい、銀狐のようだ。  赤みがかったぱっちりと切れ長の目を退屈そうに細め、あたりを見るともなしに見ている。おそらく祭日自体に興味はない。出店にも興味はなかろう。浴衣を着せられ親戚あたりに送り出されたか。浮かれた人々をどこか馬鹿にしたような表情は、幼女特有の不遜さを物語っていた。  一瞬、その飛びぬけた可愛らしさに目を奪われる。    そして、すぐさま思い直した。  ああいうのには拾われたくない。  ろくなことが起きない。  俺みたいに鍛えた自尊心じゃない、生得的な自己肯定をたたえているからだ。こういうのに出会えば、ねじ伏せるまで俺は気が済まなかった。生意気一つ吐かせる気はない。それが今や、線の細い幼女の指先にも満たない体になっている。勝負すべき時ではなかった。  とはいえ、そう言う時こそ運命の小悪魔は微笑むもので。 「ん?」  やおら、30倍ロリがこちらに目を向けたのだ。  何やら興味を引かれたように、ぱちくりと瞬きをする。  それから、何の気なしにしゃがみ込むと。 「ん~……?」  城壁の向こうからジッとこちらを見下ろした。箱には俺しかいない。明らかに俺を探している。面倒なことに、面白いことへの嗅覚は本物らしい。縮んでしまった元人間。保護の網目から抜け落ちた小人。本来お目にかかることないおもちゃが、格安で売られている。  イタズラ好きの小悪魔娘に、それを見逃す手はない。    なんて巡り合わせだろう。  家のような箱の影から見やれば、壁の向こうに伸びそびえる巨大な柱。まるで双子のビルだ。それが探し物をして右へ、左へ、最後にこちらへ傾くと、ふっ、俺の目前から家が消えた。  見上げる。  明るくなった地表、対峙するのは30倍ドS幼女。それが片手に家、そしてもう片手を地面につきこちらを屈み込むと、上空いっぱいに美貌を広げていたのだ。髪の滝をカーテンにして、完全にその巨躯の影に置かれている。 「あはっ♡ み・つ・け・た♡」  高く澄んだ、けれど跳ねるような声音。狐や猫を思わせる目が、嗜虐的な笑みを見せる。  やばい。猛烈にヤバい。こいつは生粋のドSロリだろう。脱兎のごとく逃げるも、背後では轟音を立て立ち上がる幼姿。下駄が地面を踏みしめる音が、13歳の巨大さを感じさせる。  そして、壁を跨ぎ。  下駄を、脱ぎ捨てたのだ。 「なっ……?!」  おそらくは、人生最大のスペクタクルだった。  宙を舞う、艶やかな履物。巨大なあまりゆっくりとして見える落下物は、漆黒の艶を照り輝かせ、うっすら少女の足型の蒸れを表面にまとっている。まるで、ハリウッド映画のクラッシュシーン。だが幼女の履物は、乗用車の2倍は巨大な代物。何トンものブツが落ちてくるのだ。幼女の下駄が、大型車両となって降ってくる……!  それが、目の前に降ってきた時。  高くカンッと桐が鳴った時。  胃の底が落ちるような感覚に、一瞬、俺はパニックに陥ったのだと思う。 「ふふっ♪ 命拾いしたねぇ♪」  へたりこむ俺。だがサディスティックなおみ足は自失を許さない。へなへなと腰を抜かす背後で、“ドスッ!”と生柔らかな地響きが弾け飛んだのだ。 「ふふ~っ♪ 逃げたいんだ? 小人なのに拾われたくないんだ? じゃあ、捕まえちゃおっかな~♪」  背に感じる威圧感。振り返れば純白の絹糸が、繊細なテクスチャを輝かせている。そこにギチギチに詰まる幼女のおみ足。ほっそりと線の細い足は、それでもトラック級だ。  そんなデカブツが、掲げられるものだから。  出したことのない声が出るのも、当然というものだった。 「ひ、ひいぃッ?!」  プラスチックの箱の中、もはや空間はロリのおみ足でいっぱい。既に彼女の支配下に置かれた世界で、どちらに逃げればいいかもわからない。上空に吊り下がる甘い造形の鉄槌は、俺をギロチンのように粉砕するだろう。  恐怖に逃げ惑う俺の、周囲にそよぐ風。それが華やかな香りを孕み、強烈な気流となって襲ってきた時。 「ギャッ?!」  目前に、あの怪物が叩き込まれるのだ。目前に広がった純白、それがどむ゛ッと鈍い音とともにロリアロマの爆風を炸裂させる。小人を足指一本で踏み潰す21㎝のチビおみ足は、大の男をただの埃にした。  舞い上げられ、打ち付けられた先にはまたも純白足袋美足。車道一車線からさえ溢れ出るサイズの大鯨が、俺を背に乗せる。スベスベの生地越しに体温が染みついてきて、独特の質感に心が躍った。そして、足の稜線を滑り落ちると。  再び丸っこい足が、頭上を覆い尽くすのだ。 「ふふっ♪ 踏まれちゃうねぇ♪ あーあ♪ 可愛そー♡」  普通に生きていれば見ることのない足裏。分厚い生地に、ほんのり埃の張り付く純白おみ足。普段隠れている部分、地を踏みしめる部分が天に広がっている。いつ降ってくるかという恐怖が、思考を染め上げた。  無論、それを粉砕するのもまた足袋おみ足で。 「ぐあっ?!」  再度6mロリ足が炸裂する。それだけじゃない。“ドシッ、ズドンッ!”と可愛らしからぬ音を立てて叩き込まれる足々。交互に叩き込む幼女は、まるでワインの葡萄踏みでもしているかのようだった。潰される葡萄は、一人の成功者だ。 「あはっ♪ 子供の足に潰されるなんて……、可愛そうだねぇ? 幸せだねっ♪」  俺を踏みつぶさんとする一撃が、前へ、後ろへ。文字通り這う這うの体で逃げ回る虫を追い詰める。そのおみ足鈍器がすぐ後ろに叩き込まれては俺は弾き飛ばされ、周囲に少女型の影を落とされれば右も左もなく走り回った。そのうち、気づけば壁、あちらにも壁。どうも、隅まで追い詰められてしまったようだった。  爆撃のように降り注ぐ足に吹き飛ばされ、弾き飛ばされ、叫び、逃げ惑い。  最後に、真上からのダウンバーストで地に貼り付けられると。 「じゃ、捕まえてあ・げ・る♪」  落下してきたふにふにが、俺を叩き潰したのだ。 「ぐあ゛ッ!?」 「あはっ♡ 声きったな~い♡」  敢えて外したのだろう、指先だけで俺を踏みつぶす鬼畜ロリ。足袋の滑らかな足裏と、じっとりとした体温が身に沁み込む。二股のつま先でなぞり上げられれば、思わず悲鳴が漏れた。逃げ出そうとすれば足指で踏まれ身動きもできない。  そして、もう一度足を上げ。  頭上で、艶めかしく足指をくねらせて。 「え~いっ♪」  “ぐりぐりぐりぃッ♡”と踏みしめる銀髪ロリ。その足の底で男は振り回され、母指球と足指を練りつけられる。足指の間に身が滑りこめば、もう動くことすらできない。指股にぎっちり挟まって、メスガキおみ足に完全に拘束されてしまうのだ。


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