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剣士の出稽古⑤

虎穴は剣士にとって箱庭のような店でした。粗暴な態度が直るまで出稽古は禁じられていましたので、箱庭の中で大切に育てられていたわけです。箱入り娘、あるいは井の中の蛙と言い換えてもいいかもしれません。剣士は本物の"環境"を知りませんでした。 虎穴メンバーは協力し合い、分担してメタゲーム上位のデッキを組んでいます。仮想敵を実際に組み、身内で使い回すことで擬似的な実戦経験を稼いだのです。彼らは全員が独自構築を使っていたので、出稽古をするとはいえ圧倒的に「環境デッキ」との接触機会が少なく、それを緩和するための処置でした。 虎穴内で擬似的な"環境"に触れる事ができた剣士ではありましたが、それはやはりどこまでいっても擬似的なものでしかありません。ヒョウやパン田はトップティアのデッキを高いレベルで回す事ができますし、ライ太の加入でさらに"環境"の再現度は向上しましたが、仲間内数人で再現する環境は本物のそれとは別物です。トップティアの比較的構築が固まったデッキでも自由枠はそれぞれ異なりますし、独自のチューンを施す強豪プレイヤーもいるでしょう。大会に参加すればTier2、Tier3とも当然マッチアップしますし、虎穴勢のようにこだわりのオリジナルデッキを持ち込むプレイヤーも勿論います。剣士が触れていた環境はいわば試験管の中で培養された綺麗な環境であり、実際に大会に参加し始めればありとあらゆるデッキと待ったなしの真剣勝負をしなければなりません。ブルドラ環境も多彩なブルドラ構築が存在しましたので、その例に漏れないでしょう。 剣士に圧倒的に不足していたのは実戦経験でした。 ベーシックなスキルは虎穴で学びました。トップティアのデッキ相手に何度も練習しています。しかしそれはフリープレイであり、対戦相手のヒョウも、横で手札を覗いてくれているパン田も、剣士のミスを丁寧に指摘してくれました。観戦しているドラ彦に煽られまいと、剣士は自分なりに考えながら対戦していたのです。ひとたび大会に出始めれば、そんな親切な仲間(ドラ彦は個人的な趣味で煽っていただけですが)は居ません。何が入っているかわからない自由枠のカードをケアし、初見のデッキであれば見えている情報から構築を予測する。これらはある程度まとまった実戦経験の成せる業であり、そこに達するまではひたすら死に覚えするしかありません。自分で気づけなかったミスは対戦相手に指摘してもらうしかないので、剣士は積極的に感想戦を持ちかけます。試合中判断に迷ったところがあれば、状況を覚えておいて後からイタチや鮫島に相談します。 剣士の出稽古は虎穴というバックアップの無い孤独なものでしたが、それでも剣士は執念深く、上達への歩みを進めようと努力していました。連敗続きの中でも剣士が折れなかったのは"この時点では"僅かな成長の喜びを実感できていたことに尽きるでしょう。例え一歩ずつでも、虎穴の先輩達に近づけているのが嬉しかったのです。プレイヤーとして未熟ゆえに伸び代があったのは、ブルドラ環境の中で格闘する剣士にとっての幸運でした。もし剣士が既に円熟したプレイヤーであり、プレイの精度ではなく「カードパワー」の差で否応なく負けているのだと最初から理解していたら、モチベーションを保てたのかはわかりません。

剣士の出稽古⑤ 剣士の出稽古⑤ 剣士の出稽古⑤ 剣士の出稽古⑤ 剣士の出稽古⑤ 剣士の出稽古⑤

Comments

後語りいいなあ 誰のことを言っているのかわかってしまう書き方だ

えんだ

凄いな剣士は パン田さんは腕があったから、故にどうしようもないカードパワーの差を感じてしまったのか

サスケ → イタチ → 助かる。 そして冷静に見るとジワる。見間違いのケアが行き届いている。

yuusike

カッコいいよ剣士。やっぱお前は虎穴勢だよ。

mr.nadeshiko

幼虫のころは土でも葉っぱでも食えてたのが、成虫になったら食べられなくなる虫っているよな 剣士は幼虫で、パン田は成虫だったな

灯矢

ある種の「逃げ道」の有無で未来が絶たれてしまうなんて…悲しいなぁ…

フミカ@観測者

ありえない選択に拘る上に技術も未熟なポンコツカードゲーマーが、見たことのない熱意で敬愛する兄をも超えたプレイヤーに上昇していく様をサスケはどんな気持ちで見ていたんだろう。 サスケから見た鷲崎剣士を見てみたい。

ブラフマン

一般プレイヤーのサスケにも「ブルドラ禁止されたら」って当然のように言われてるあたり 「竜笛死んでもやっぱりブルドラデッキはアホほど強くて、結局ブルドラ自体が死ぬのも秒読み」って見方が大多数なんですね…

七四三

まさに虎穴で言う"腕"が上がってるのがモチベなんだろうね まだ不完全の剣士にはブルドラ環境でもモチベーションが生まれる余地があって、バッファローに関して行き着く所まで行ってしまったパン田にはそのモチベーションが生まれず、ただブルドラに蹂躙されてしまうという屈辱が残ったわけだ

のら

虎穴で触れられる擬似環境だと、それこそ環境外デッキと当たった時に困るんですよね。野良さんが言ってた「滅多に当たらないから疎かにするんじゃなくてたまに当たるから問題」っていう。直近ではジラフバベルブルドラもそう

アニット

剣士、この時点で未熟ではあるがそもそも自分の中で定義される上達の天井が無限なのかもしれない 虎穴においてヒョウさんの”狂気のスタンス”に実は剣士が一番近いプレイヤーだった説

okome

まってくれてたライ太には追いついたけどパン田には追いつけなかったんだな 剣士と戦った時アギトは何を思ったんだろうな

黒眼鏡

紙ゲーマーなら冠婚葬祭じゃないかな? この世界線はやたら彼女持ちやら妻帯者がいるからわからないけど

黒眼鏡

沢山負けて腕を磨くチャンスだったのかもしれない そう考えると環境デッキを使って禁止になった後は急に勝てなくなった人もいるのかもなあ

霧島

立派な子になって、、、🥺

Y K

まるで植物だ。パン太は成長仕切っていたが故に折れて剣士はまだ成長途中だからこそ柔軟で環境に耐えれた

竜野さん

成長の実感の差がパン田さんとの分かれ目か…

天野屋

イタチさんも鮫島さんも面倒見が良くて救われる

カードパワーのせいにしないで自分の力量が足りないって客観視出来てんのマジで凄いわ剣士……

雷人

ライ太からパン太さんが引退したと聞いた時の剣士の反応 想像したくないな

suyaman

剣士、虎穴の箱入り娘って言われると妙に萌えるものがあるな…

俺惨状

勝ち負けを使用デッキ・カードのせいにできるほど、自分はまだ上手くない。 大半の人がそのはずなんだけど、自覚するのは難しいよね

nick

なんだかんだでサスケェの態度というか見る目も変わってきてるな。最初に比べて嘲るようなニュアンスが低減されてきた

Hum_love_Seed

剣士は遠い未来のGP東北ですら鷲で勝ちあがってるんだよな ブルドラが数年先どころではない強カードだったか、鷲の強みが時代を超えても衰えにくいものなのか、 それとも剣士がオリジナルデッキの限界という殻すら破って飛び立ったか

松笠

エピソード・ライ太の裏で起こってるの見れるの最高なんじゃ!

KTK

サスケが主人公の時の相方は苦労しそうだな

ねぎま

どんな環境であっても「宗教的都合上」を尊重してくれる人が居るのは嬉しいよな…

ho総帥P

完成されていた男と未完成の男、これが生き残れたかどうかの差だったのか…。

亀の三郎

パン田さんと剣士の違い、すごい納得できた 「剣士は続けてるのにどうしてパン田さんは…」と思ってしまうけど、プレイヤーとして立ってる場所が違うってことですね ただ大会15連敗でも腐らないって、フリプ足したらもっと負けてるだろうし、もうそれは才能だ

望月

イタチさん最早第二の師匠ポジじゃん…Gガンのシュバルツみたいな 剣人と鮫島さんのやり取りもみたくなりますね

かもろまん

この時点ではまだ煮詰まり切ってない状態だったっけか。もう一段底が抜けるブルドラ環境の魔窟っぷりにどうやって剣士は挑んだのかなぁ

てとらぽっど

パン田との対比がな・・・。

yukke

虎穴の頃よりかは遥かに紳士度は上がったけど、ZOO剣士はライ太と飲んでいても紳士を崩さない口調と態度だったからまだ「あの」鷲崎剣士には成れていない 例えカード関連の会話でなくても口調で剣士の成長度が分かるのは面白いシステムだと思う

masashi

もうこれ本編ぢゃん! これだけで爆アドだわ

ざんぐーす

ワイルドさは下がりますが、こっちのほうがスッキリとしたイケメンになりますね!(こいつぁ、きっとデート帰りだな)

ヒナコ

パン田さんとの対比がキツいな。実力があるからこそ「デッキが悪い」って結論に行き着いてしまった……。 数年後ふらっとヒョウのやってる新しい虎穴に立ち寄ってもらいたい。趣味なんだから「引退」って言葉自体おかしいもの。「小休止」でいいじゃないか。などと妄想を垂れ流しておきます。 それにしてもイタチの兄貴は素晴らしい人格者というか、生意気な弟がいるからかまだ礼儀正しいとは言えない頃の剣士にも優しく振る舞えるんだな。サスケがいる以上実際「兄」なんだけど、「兄貴分」として慕ってくれてる人が多そうだ。奮闘記時点でも鮫島さんと合わせて交流続いてたらいいな。

枝豆ドーフ

「井の中の蛙大海を知らずされど空の青さを知る」 か

Nori→

いくら成長を感じられているとはいえ延々と負け続ける中でモチベーションを保ち続けたその精神力は怪物なんよ…

すみ@シンタロー廃

ああ………そうか…………この環境を、多くにとっては「ブルドラの嵐」である環境を、彼らのような宗教的な理由で同じデッキを握る者たちにとっては恐るべき「ブルドラの冬」を、剣士は糧として捉えられたけれど、パン田さんにとってそれは糧ではないのだな…

yuma918

たしかに剣士とパン田の違い…

rucke

剣士の話なのに、4ページ目でその負け方完全にパン田さんじゃんってなってつらい

hiro

未熟だからこそ嵐に耐えきれた青い果実である剣士。 熟していたから嵐に耐えきれなかった果実のパン田。 熟していたからこそ耐えきれない。熟していたからこそ直ぐに落ちてしまった……辛いなぁ

めだか

これマジで描き忘れてました。剃ったことにします

ワタル

剣士とパン田さんのモチベが違う…悲しい…

イタチさん、ひげ剃った?

ヒナコ

やっぱりそうなのか…!これこそがパン太さんと剣士の違いか!!そもそも環境のせいに出来るほど腕がないからこそある意味どんな環境でも関係ない…!!パン太さんは円熟し切ってしまっていてカードパワーの環境のせいに出来てしまうのか…皮肉なもんだな…

merody

未熟だったからこそギリギリモチベーションを維持できた剣士 熟練していたからこそモチベーションを維持できなくなってしまったパン田さん

Mohige

剣士の成長が見れてにっこ〜ってしてたらラスト4行で現実に引き戻された……苦しい……苦しいなぁ……

asmo_16

そしてパン田は既に円熟したプレイヤーだった……

アマキー

パン田さんと対照的すぎるよ… 剣士と一緒に遊べてたらパン田さんの未来もまた違ったのかもしれぬ…

lightnewman

あっこの展開は前にも経験したな…それなら!ってできるようになってくるとめちゃくちゃ楽しいんだよなTCG

あさがおさん

パン田さんはプレイ精度も構築も研ぎ澄ましてアレだったからなあ・・・

もんじゃ

パ…パン田さん…! 剣士はそれこそスタートラインに立ってないからこそ、強くなる楽しみを感じれたんですね…まだもう一段落ありそうな書き方ですが。

shyron


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