氷室雪之丞
休載穴埋め第二弾、ユキの裏話です。
せっかくですのでユキの最初期のキャラデザからご覧いただきましょう。こちらです。
誰!?
こちら牛島カオルくんです。ユキですらないですね。意味がわかりません。順を追って説明します。
そもそも龍堂会の上位三名である龍堂・ユキ・キバは、初期段階では龍堂・牛島・柳田という全然違う三名でした。エピソード・ライ太の構想メモに牛島についての記載がありましたので以下に抜粋してみます。
名前の表記が「カオル」「カヲル」とブレていますが、決めかねていた名残です。
この段階で牛島はかなりユキに近い設定になっています。【穴熊コントロール】はほとんど【冬眠コントロール】ですね。キーカードである《蜂蜜熊》は言うまでもなく、くまのプーさんから着想を得ています。
当時穴熊コンは「序盤〜中盤は穴の中に引きこもって冬眠している熊のようにジッと動かず除去と妨害に専念し、終盤には冬眠から目覚めた熊が暴れ出すかのようにフィニッシャーを繰り出して殴り勝つコントロールデッキ」というものを考えていました。攻守のスイッチが非常に難しいデッキであり、使い手には相応の実力を要求します。そんな穴熊コンの創始者は冷静沈着に戦況を見極めるクールな切れ者。どんな苦しい展開でも物怖じせずに好機を窺うタフガイであるべきでしょう。当時私の頭に浮かんだのは闇金ウシジマくんの主人公、丑嶋馨(うしじまかおる)でした。まさかの金貸し。
キャラクターの設定を練る時にはよくセリフ回しを妄想しています。口調にこそ性格が出ると思いますし、プレイスキルや使用デッキよりもはるかに読者の皆様にキャラクター性を伝えられるのがセリフだと考えているからです。牛島カオルは中々面白いセリフを吐けるキャラクターで結構気に入っていました。
「(このカードは)通ンの?」
「下手な負け方したら、龍堂会の面目丸潰れなンだわ!」
「高額カードを買ったら大会に持ち込めよゴリ山。減価償却しねェーといけねェだろ⁉︎」
カードゲームうさぎでは今までに無いキャラクターですね。今思い返しても悪くない気がします。言い回しはともかくセリフの内容には気を使わないと燃えそうですが。
さて、何故この牛島案が没になったかといいますと、単純に描くのが大変そうだったからです。日刊連載で最も重要なのは作画のコスパ。龍堂のキャラデザがアレなので、周りを固める龍堂会メンバーの作画コストは極限まで下げるべきだと判断しました。龍堂並みに重いキャラが2〜3人もいたら日刊連載は土台無理でしょう。
牛を諦めて何の動物にするか。描きやすい動物を探すより、簡単に描けると既に判っている動物にするべきだという結論に達しました。そう、熊です。
カードゲームうさぎに登場するキャラクターは基本的に全てお手軽作画の低コストとなっていますが(勿論龍堂を除く)、実のところくま吉は群を抜いて描きやすいのです。なぜなのかは自分でもよく分かっていませんが、とにかく描き直しが少ない。下書きやらラフやら面倒臭い工程無しでいきなり本番一発勝負で描いている私にとって、描き直しが少ないというのはこの上無く有難いものです。熊のバリエーションとしてツキノワグマも考えましたが、よりパーツの少ないシロクマに決めました。目論見通り、ユキはくま吉並みに描きやすくて非常に重宝しています。
余談ですが、意外にも描き直しが多く作画に手こずるのがミケ郎です。顔の柄を上手いこと描かないと目の位置が上手く決まらず、また目の位置が少しでも悪いと一気にブサイクになるのです。
さて、シロクマに決めてキャラデザに取り掛かりましたところ、面白いほど簡単に決まりました。ほとんど一発で現在のデザインに至っています。こちらです。
このラフを描いて最初に持った印象は「なんかエロいなこいつ」というものでした。黒のタンクトップにムキムキのガタイ。にも関わらず、顔はなんだか可愛い系。ギャップがエロいと率直に思いました。シロクマというかホッキョクグマというか、とにかくその様なイメージで描いたので苗字は氷室にするとして、名前の方は中性的なものにしようと「ユキ」にしてみました。ストーリー上カッコいい立ち回りになる事は確定しておりましたので、この時点で考えていた設定は「頼れる兄貴分」です。そう、あくまでも当初の設定では男言葉で普通の男性だったんですね。終盤の重要なシーンでのセリフはガッチリ固まっており、それはそれはカッコいいキャラクターになると確信していました…が。
こいつオネエキャラだったら面白いな??
思いついてしまったのです。思わずラフの隣に「オネエ」という文字を書き込みました。初心者プレイヤーのことをチェリーボーイと呼んで欲しい。たまにウィンクなんかもして欲しい。なんならパン田か龍堂あたりに淡い恋心を抱いていて欲しい。実際にどこまで乙女に寄せるかは別として、オネエキャラとしての妄想は無制限に拡がっていきました。
一方、ユキの終盤の立ち回りはバチバチにカッコよくキメたいものであり、ともすれば「エピソード・ユキ」という一本の連載にできるのではないかというくらい軸のある展開を、オネエのイロモノ系出オチキャラに任せるにはかなりの不安が残るものです。しかし、オネエにしたらキャラの立ち方は尋常ではない気もします。ユキをオネエにするかどうかはエピソード・ライ太構想段階において一二を争う程悩ましい点であり、どれくらい悩ましかったかと言うとユキ登場回(第三話)を描く当日になっても決まっていなかったくらい悩ましいものでした。エピソード・ライ太はキャラの設定をバッチリ決めてからスタートしたとどこかで書きましたが、ユキだけは本当にギリギリまで決まりませんでした。
あと数時間後にはアップしなければならない、もう腹を括って決断しなければならない。結論どうなったかというと皆様ご存知の通り…
さくらんぼ(意味深
勢いのままにオネエキャラになりました。ちなみに第三話を描く直前までユキの本名は「氷室ユキ」でしたが、もしかして本当に女性だと勘違いされるのではないかという問題が浮上し、急遽「氷室雪之丞」という男性的な名前に変更しました。ドタバタの第三話。
牛島カオルから氷室雪之丞にアップデートされたことにより【穴熊コントロール】は【冬眠コントロール】へと変更されます。フィニッシャーも《蜂蜜熊》から《冬将軍》へ。私の脳内では《冬将軍》は鎧武装の白熊のイラストなのですが、分かりやすく《白熊将軍》と言う名前にでもしておけばよかったと後悔しています。
勢いでオネエキャラになったユキは特に問題無くストーリーに溶け込んでいき安心していました。このままラストまでカッコいいオネエとして走り切ってくれるものと確信していましたが、第五十話で作者もびっくりの展開が訪れました。
男言葉⁉︎
このコマについては是非とも言及しておきたいのですが、このコマを描く直前までユキはオネエ言葉で貫き通す考えでいました。というより、オネエ言葉をやめさせるという発想すらなかったのです。事実、プロット時点でのセリフは以下のようなものでした。
しかし、この「ナメんじゃないわよ」というセリフに大きな違和感を感じました。なんというか、リズムが悪い。ここぞの決めゼリフは七五調に寄せることが多いのですが、「ナメんじゃないわよ」だと8音になってしまうんですね(「じゃ」を1音とカウント)。なんとか聞き心地の良い7音に収めたくて逡巡し、出てきた言葉が「ナメんじゃねェぞ」だったのです。
結果、ユキはいきなり男言葉で対野良戦に突入していきました。これはこれで趣があって結果オーライでしたが、なんとも波瀾万丈なキャラクターです。心臓に悪い。
ユキの裏話はこんなところでしょうか。次はどのキャラクターにしようか決めかねていますが、キバ・野良・アギトあたりになる気がしています。
komekkun
2023-03-18 18:44:52 +0000 UTCKTK
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