SS_目覚めていても悪夢は見られる
Added 2023-05-12 12:36:40 +0000 UTC今回はよその子です。
いわゆるサイズフェチの人ではありませんが、
個人的に交友があり、その人のオリキャラがとても好みだったため書いてみました。
(本人には許可をいただいています)
こちらの方です。
最近はデレマスの二次創作を書いています。
※今回登場するキャラの作品は今のところありません
pixiv:https://www.pixiv.net/users/130104
ざっくり言うと、大人の妖精です。
彼女の設定をそこそこ過大解釈して書きました。
普段以上に前置きの長い話ではありますが、
(よその子ですが)オリジナル作品を読む感覚でよろしいかと思います。
(約4,000字)
※無断転載禁止
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もし、貴方が禁忌の力を手に入れたら、どうする?
力を行使して世界を動かす?
それとも、封印して無かったことにする?
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ここは、魔法や人間以外に言葉を話す種族などが当たり前のように存在する世界。
あるいは歴史から消されたかもしれない数百年前の私たちの世界。
そんな世界のとある国の話。
この国には、草原や農地、小さな村などが点在しているが、
一際大きな建造物が見える地区もある。
その地区は城壁や堀に囲まれていて、
高さ数十メートルの大きな城がそびえ立っているのだ。
城下町も相応に賑わっている。
都心部と郊外、という表現が当てはまるかもしれない。
とはいえこれらはこの世界の他の国々でも大差はない。
言ってしまえば、特徴がないのが特徴の国である。
そんな国に1人の少女が居た。
彼女の名前はシルフィ。
種族は風精、緑のロングヘアーに背中には1対の羽。
大人びた体つきの妖精という方が近いかもしれない。
魔法を扱える彼女はこの国の城内で働いていた。
ここは人間が支配する国であるため、少し浮いている存在ではあったが、
そつなく平和に仕事をこなしていた。
表向きには。
数ヶ月ほど前の話である。
この国の極秘プロジェクトとして、ある計画が実行され始めた。
武力以外の力で他国との交渉を有利に進めるための切り札を作る、というものだ。
国同士のやりとりというのは今も昔も変わらない。
武力、経済力、技術力、情報力……様々なもので交渉や取引を行っていく。
平和的な協力もあれば、そうではない衝突や競争もある。
むしろ、この世界ではまだまだ穏やかではないやり方も少なくない。
全てを平和的な方法で解決するのは簡単ではないのだ。
しかし、全ての国が簡単に武力や兵力を高めることができるわけではない。
彼女が属するこの国も大国とはいえないため、一般的な方法では限界がある。
そこで、秘密裏に切り札を作ることにしたのだ。
この切り札として白羽の矢が立ったのが彼女、シルフィなのだ。
では切り札とは具体的に何なのか。
そのキーワードは、夢、である。
将来叶えたい目標などのことではなく、人間の睡眠時の話である。
睡眠時とは基本的に無防備である。
さらに言えば夢を操るのは難しく、そもそも覚えていないということも多い。
切り札とは、ここにつけ入ること。
つまり、他人の夢へと侵入することなのだ。
直接語り掛けて相手の心理を操作する。
相手から情報を聞き出す。
夢の世界に閉じ込めて目が覚めないようにする。
などなど。
さらに、夢に侵入されて行われた出来事を
目覚めるときに忘れさせることも覚えさせておくこともできる。
魔力を注意深く追いかけない限りは侵入されたことさえ跡が残らない。
遠くから侵入できれば場所を選ばない。
このような能力をシルフィに与えて切り札にしようという取り組みが
極秘プロジェクトなのである。
人間ではなく風精である彼女は
魔力を扱える人間の魔法使いよりも精神的な力の扱い方が得意である。
それもあってプロジェクトは無事に進行。
2週間ほど前、ついにシルフィはその能力を完全に手に入れたのだった。
代償として彼女の羽は悪魔のものに変わってしまったが、
それ以外には特に影響はない様子。
充分に成功といえるものとなった。
そこからの彼女の活躍はめざましいものであった。
近々攻め込んでくると噂されていた部隊を調査して食い止めたり、
気づかれることなく近隣の国から機密情報を手に入れたり……
短期間で多大な貢献をしていた。
しかし、彼女の表情は暗かった。
その理由はこの能力を使役しようとする者たち、
つまり国のトップやその周辺の人、上層部の気持ちの変化である。
まさに夢のような力である切り札を使えるようになった上層部は
だんだんと野望が大きくなると同時に、私物化しようとたくらみ始めているのだ。
最初のうちはたしかに国に貢献できる任務だったが、
明らかに欲望にまみれた任務へと変わっている。
彼女がそれに気づかないはずもない。
かといって、単に断るだけでは今度は自身が始末されるだろう。
自分が使える間は夢の能力、他人に使われると危険な能力なのだから。
もっとも、能力を使えるのは指示を出せる上層部ではなくシルフィなのだが、
欲にくらんで権力に慢心している者たちにはそれが見えなくなっているようだ。
私はこの力で何をするべきなのか。
新しい能力が手に入るから悪い話ではないと簡単に引き受けたものだったが、
この能力の可能性と危険性は身をもって理解している。
長期的に見れば対策されるかもしれないが
世界を動かすには充分すぎる能力だ。
彼女は何日も悩んだ。
そして、ついに行動に出る。
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それは星と月の光が輝く夜。
日付も変わり、殆どの住民たちは灯りを消して寝静まっている。
彼女は城壁の外に居た。
「私は風精だけど……
この能力を手に入れたことで、夢魔にもなってしまった。
それなら、悪夢を見せてもおかしくないでしょう?」
彼女は静かに呪文を唱えだす。
ゴゴゴゴゴゴ……
すると彼女の身体は少しずつ大きくなり始める。
彼女のとっておきの魔法のひとつ、巨大化の魔法だ。
その体は木の高さを超え、城壁の高さをも超え……
巨大化が止まったとき、彼女の身長は約50メートルにもなっていた。
城門を警備していた兵士たちは思わず尻もちをついてしまい、
ただただ見上げることしかできなかった。
城壁の数倍の大きさの悪魔の羽を持つ女性が
突然目の前で巨大化して現れたのだから無理もない。
「安心なさい。
貴方たちには危害を加えないわ?
もちろん城門を蹴り壊すのは簡単だけど、ね?」
くすくすと微笑みながら優しく口にする彼女。
それを聞かされた警備兵たちは彼女の姿にただただ見とれるだけになってしまった。
彼女の周囲に一度強風が起こると彼女の身体がふわりと浮き上がる。
もともと風精の彼女にとっては空を飛ぶことなど当たり前なのだ。
太もも程度の高さしかなかった城門よりも高度を上げれば
そのまま城壁内へと侵入してしまい、ゆっくりと着地する。
城門からお城までは一直線。
幅のある石畳の大通りだ。
「今回の目的はこの町を襲うことではないもの。
悪夢を見せることにはなってしまうでしょうけど。」
ずしぃぃぃぃん……
どしぃぃぃぃん……
彼女はゆっくりと大通りを進んでいく。
足踏みの地響きや音が城下町全体に広がり、
城下町の住人たちに驚きと恐怖を与えていく。
一方の彼女は、
大通りに大きな足跡を刻みながら一直線にお城に向けて歩き続けていく。
とはいえ、その歩き方はとても丁寧だ。
道を外れることなく、通り沿いの建物を踏みつぶさないようにしている。
城門も蹴破らずに飛び越えたことを考えると、
とにかく襲って破壊したいというつもりではないようだ。
「私が襲うのは、ここだけ。」
大通りを進むこと十数歩。
巨大化している彼女にとっては大したことのない距離の移動が終わり、
ついにお城の目の前にそびえ立つ。
お城の最も高いところでも彼女の胸元には届いていない。
巨大化の魔法は、その大きさと重さで圧倒的な攻撃をするというのが主な目的だ。
この状態で彼女がお城に襲い掛かればどうなるか、想像するのは難しくない。
「身をもって知りなさい。
この力は私のものであることを。
そして、大きすぎる力を手にすることの恐ろしさを、ね。」
がしゃぁぁぁぁん!!
彼女が右足を上げると、そのままお城を踏みつける。
足が当たった部分から簡単に崩れ落ちてしまい、
お城の正面部分が大きく抉り取られてしまった。
現代の建物でさえ巨大生物の踏みつけを想定した構造ではない。
この時代の技術や素材なら、なおさら脆い。
どごぉぉぉぉん!!
彼女の攻撃は止まることなく、続けて左足を踏み入れて中央部を崩していく。
蹴りつけられた部分は簡単に粉々になり崩れていくのはもちろん、
支柱となる部分まで崩されてしまい、建物自身の重みでさらに崩れるところも。
彼女のたった2歩でお城の3分の1近くが崩壊してしまった。
「もうひとつ、おまけで……えいっ。」
ずがぁぁぁぁん!!
手を握りながらゆっくりと振り上げた彼女の右腕が
お城の上層部へと勢いよく振り下ろされる。
彼女の手により壁や屋根は簡単に粉々になり、
衝撃の余波が周囲に広がることでさらに崩れていく。
地上に大量の瓦礫が降り注ぎ土煙が大きく舞い上がる中で
彼女は悠々と見下ろしていた。
「全部壊して何もなくなってすっきりするよりも、
中途半端に残して痕が生々しく残っている方が怖いでしょう?
大きすぎる力の危険性も伝わったと思うし、このくらいにしてあげる。」
ゆっくりと1歩下がる彼女。
半壊したことにより、外からでも内装が見えるようになってしまった。
主に中央部はほぼ崩壊しているが、端の方は無傷となっている。
服に着いた土や石の破片を軽く手で払いながら
彼女は小さくため息をつく。
「……これで、私の居場所もなくなってしまったわ。
それに、力に目覚めた時点で取り返しはつかないもの、ね。」
彼女の周囲に風が起こり始める。
正確には、彼女を中心につむじ風が起き始めている。
あっという間にその風は強くなり、
お城の瓦礫や土を舞い上げながらひとつの大きな竜巻へと成長していく。
「それじゃあ、さようなら。」
竜巻に包まれた彼女。
土煙などで中身が見えず、竜巻は動くことなく10秒ほど残り続けた。
足元のお城に少しずつさらなる被害を与えていたが、
だんだんとその竜巻は小さくなっていき、すぐに消えてしまった。
同時に、包まれていたはずの巨大な彼女の姿はどこにも見当たらなかった。
城下町の住人たちはただそれを見つめることしかできなかった。
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その後、彼女の行方を知る者は居ない。
風となってはるか遠くに行ったという人も居れば、
風にとけて天から見下ろしているという人、
この世界から消えてしまったという人などなど。
今日も様々な、風のうわさが飛び交っている。
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おしまい。