SS_大きな者には敵わない
Added 2022-08-18 11:00:13 +0000 UTC今回はオリジナルで書いてみました。
オリジナルなので支援者専用公開の予定です。
とある小さな妖精さんのお話です。
名前などは決めておらず、1話完結のつもりではありますが、
場合によってはシリーズ化なども検討する……かもしれません。
それでは本題。
小さいがために理不尽なことをしてくる人間たちに逆襲する妖精のお話です。
(約5,000字)
※無断転載禁止
------------
何故、おろかな人間は存在するのか。
小さな彼女は時折ため息をついていた。
------
これはとある異世界のお話。
この世界の文明の進み具合は私たちの世界でいうところの
15~16世紀あたりだろうか。
近世の始まりという表現が近いのかもしれない。
そして、私たちの世界と大きく異なる点は2つ。
1つ目は、妖精や悪魔など、人間以外にも言葉を話す種族が存在している点。
様々な種族が入り混じりながら生活をしているのだ。
ただし、人間に対して他の種族の数は少ないらしく、
この世界も人間が統治している。
2つ目は、魔法という概念が存在している点。
妖精や悪魔などはもちろん、ごく一部の人間も魔法を扱うことができる。
ただし、魔法が使えたところで世界を支配できるほどではない。
残念ながらそこまで大きな力を扱えるほどの存在ではないのだ。
そして、ここはその世界に存在するとある街。
付近の街からは少し離れており、ぽつんと存在している。
大きくはないが小さくもない、この街は特徴がないのが特徴だ。
建ち並ぶのは石造りやレンガ造りの民家、2階建ても案外少なくないようだ。
商店街と呼ぶほどではないが、店の並ぶ通りもある。
集会場という小さな体育館のような建物も点在している。
この世界の街としては平均的といってもいいのかもしれない。
そんな街から少し離れたところにある森。
そこには、とある妖精がひっそりと暮らしている。
シルバー寄りのブロントの髪、淡く光る蝶のような羽。
身長約15センチの彼女もまた、人間とともに生活している。
彼女は時々街へと繰り出しては、
買い物をしたり食事をしたり、ときどき見かける困っている人を助けたりと
人間社会に適応し、楽しんでいるらしい。
とはいえやはり、楽しいことばかりではないようだ。
その小さな体ゆえ、一部の心無い人間からは標的にされてしまうのだ。
あるときは追いかけられて捕まえられそうになったり、
またあるときは身体の大きさ以上のものを投げつけられたり。
彼女も魔法が使えないわけではないが、
やはりその小ささでは、抵抗するほどの力を出すことができない。
標的にされたとき、彼女は黙って逃げることしかできないのだ。
人間たちだけの社会でさえこのような出来事は起こる。
異なる種族も混在する社会ではなおさらだ。
「もう少し、平和に過ごせたらいいのに。」
抵抗できる力がほしいわけではないけど、抵抗できないから標的にされてしまう。
そのような心無い人間が居なくなればもっと穏やかに過ごせるはずなのに。
何故、おろかな人間は存在するのか。
とはいえ、そういう人間が居るのは仕方ない。
私が街に行くときにはそういう人間に見つからないことを願うしかない。
彼女は不満は持ちつつも、割り切って生活をしていた。
------
そんなある日の夕方、彼女の家にひとりの人間がやってきた。
「どちらさま……?」
彼女は警戒しながら顔を出す。
それもそのはず、人間がわざわざ自分の家にまで来ることはまずあり得ない。
何故なら、自分の家を人間には誰にも教えていないからだ。
訪れた人間の顔を見ると、ぼんやりと見覚えがあった。
たしか街で……
「……あっ、この前の。
街で道に迷っていた人間さん?」
前回街に遊びに行ったときに道案内をした人間だった。
どうやらお礼をしたいとのことでわざわざやってきたらしい。
人間は実は魔法使いであり、魔法を駆使してようやく見つけたそうだ。
たしかに一度出会っているのだから、
魔力を思い出して追いかければ不可能ではないか。
と、人間は彼女に水晶玉とその台座を差しだした。
「これを、私に?」
どうやら彼女の発明品らしい。
小さな妖精だと両手で抱えるほどの大きさだが、不思議と持てるほどの軽さだ。
水晶玉の説明を早口で説明した魔法使いの人間は
とにかく今夜1度使ってほしいと言い残し、急いで帰っていった。
日が沈む前に森から出ておきたいとのことだ。
たしかに夜の森を慣れていない人間が移動するのはあまりよくないだろう。
「……私が、世界を……
人間に、逆襲できる……ぶつぶつ……」
説明を受けた彼女はもらったものを抱えながら家へと入っていく。
半信半疑に不穏な言葉をつぶやきながら。
そしてその夜、
彼女は魔法使いの人間の言葉を信じ、早速水晶玉の力を使うことにした。
------
ズズゥン……
月と星の明かりが地上を照らす夜。
日付も変わり、殆どの人間たちが寝静まる頃、
巨大なそれは突然現れた。
地響きに気づいて外を見た街の住人たちは目を疑っただろう。
シルバー寄りのブロントの髪、淡く光る蝶のような羽。
手のひらに乗るほどの小さな妖精が
身長約75メートルほどの大きな姿でそびえ立っているのだから。
「わぁ……本当に大きくなっちゃった。」
地上の街を見渡す彼女。
この街の建物の殆どは彼女の膝の高さにすら届いていない。
大きな建物である集会場も、軽々と跨げそうなほどの小ささだ。
すると、彼女はおもむろにブーツを履いている右足を持ち上げる。
そして……
ズシィィィィン!
そこに建物があったにも関わらず、容赦なく踏みつけたのだ。
彼女の右足により建物はひと踏みで簡単に粉々になり、
一瞬で瓦礫と化してしまった。
今の踏みつけの衝撃で街の住人たちも一斉に目を覚ましたようだ。
一方の彼女は何かを確認できたかのように小さく頷くと
改めて街を見渡し、街全体に届くほどの大きな声で話し出す。
「こんばんは、人間たち。
私は今まで心無い人間たちから何度もひどい目に遭わされました。
そこで、今夜は逆に、私が人間たちを襲います。
宣言してあげるだけ優しいと思うので、覚悟してくださいね。」
ドシィィィィン! ズガァァァァン!
言い終わるとすぐに彼女は動きだし、
足元の建物たちを踏みつぶし蹴散らし始める。
「本当に建物がオモチャみたいに壊れちゃう。
オモチャ……私をオモチャみたいに扱ってきた人間たちを、オモチャに……」
彼女の中の何かに、火がついた。
一部の人間たちからひどい目に遭わされ続けた痛みや苦しみ。
種族が異なるから、そういう人間も居るから。
私が小さくて無力だから。
我慢していた様々な感情が、爆発したのだ。
「ほらほら、小さい生き物はひたすら逃げることしかできないんだよ?」
ズシィィィィン! ドシィィィィン!
足元の建物たちをどんどん踏みつぶしていく彼女。
その目では、地上を逃げ惑う人間たちを捉えていた。
自身の数十倍の存在が街を襲っているのだから逃げるのは当然の感情である。
しかし、いざ逃げようとするとどうだろう。
歩幅の違いにより移動速度は人間たちより彼女の方が速いのだ。
さらには彼女が地面を踏みつけるだけで起こる地響きで
人間たちは立ち上がることもままならない。
巨大な者が襲い掛かってくる恐怖と焦り。
彼女の近くから逃げようとしていた人間たちはあっという間に追いつかれるのだった。
「逃げられなかったら、どうなるか……分かるよね?」
ドスゥゥゥゥン……
手加減はしているようだが、彼女は容赦なく人間たちに片足を踏み下ろした。
道には彼女の足跡がくっきりと刻まれ、
その足跡には逃げられなかった人間たちが
何人も埋められて押し固められたのだった。
踏みつけられた人間たちは身動き取れない様子。
しかし、意識はうっすらとあり、痛みに悶えているようだ。
「……本当に、思い通りの世界なんだ。」
足を上げて踏みつけた人間たちを見下ろしながらうっすらと笑みを浮かべると、
再び街を蹴散らしながら歩き始める。
今の彼女は、人間を襲う怪物となっていることに酔いしれているのだ。
「人間たちは道に従って逃げていくから、追いかけるの簡単だね?」
ドシィィィィン! ズドォォォォン!
ある人間たちは、
建物を蹴散してショートカットする彼女に追いつかれて踏みつけられてしまった。
「建物の中に隠れていればたしかに外からは見つからないと思うけど……
いきなり踏みつけられるからもっと怖いんじゃない?」
ドガァァァァン! ガラガラガラ……
別の人間たちは建物内に避難していたが、その建物ごと踏みつけられてしまった。
------
その様子を少し離れた集会場から見ている人間たちが居た。
異変に気付き避難してきたのだ。
その人間たちはある違和感を覚えていた。
それは、街に居るはずの人の数が明らかに少ないことである。
もし付近に居る住人全員が避難してきていれば100人は軽く超えるはず。
それなのに集会所に居る人間は10人前後しか居ないのだ。
さらには、道には誰一人出てきていない。
皆が家に籠っているだけなのか、あるいは……
と、直後、人間たちは驚きの光景を目撃する。
妖精が空を飛んで真っすぐ向かってきたのだ。
「貴方たちが、最後の人間たちだよ?」
ドスゥゥゥゥン……
彼女が着地するだけで周囲の建物にはヒビが入り、
避難していた人間たちも思わず尻もちついてしまった。
何故ここに避難していたことがあの距離から分かったのだろうか。
そして、最後の人間たちとはどういうことだろうか。
混乱する人間たちをよそに、彼女はゆっくりと右足を上げる。
その顔はまさに黒い微笑みという言葉が似合いそうだ。
「しっかり、味わってね?」
ズドォォォォン! グリグリ……
簡単に避難所を踏み抜き、避難していた人間たちを踏みつける。
さらには踏みにじることで瓦礫をすりつぶしながら
人間たちを地面に押し付けていく。
「ふう、このくらいでいいかな。
……いざやってみたけど、小さい者をオモチャにしても
やっぱりつまらないんだね。」
人間たちから足をどけて、小さく伸びをする彼女。
街の各地は破壊され、逃げていた人間たちは踏みつけられてしまった。
そして、彼女の人間襲撃はひと段落したらしい。
再び彼女は街全体に届く大声で話し始める。
「本当は貴方たちに街を全部壊すところを見せてあげようと思ったけど、
踏みつけられて痛みを分かってもらったと思うので、
今回はここまでにしてあげます。
またやったときは、また分からせますので……」
言い終わると彼女は羽を広げて上空へと舞い上がり、
そのまま森の方へと消えていくのだった。
人間たちは踏みつけられた痛みに悶え苦しみながら、
朝が来るのを待つことしかできなかった。
------
次の日の昼。
妖精の家に再び魔法使いの人間がやってきた。
水晶玉を使った感想を聞きたいそうだ。
「思った以上に世界を好きにできて驚きました。
大きくなるのはちょっとドキドキしたかもしれません……?」
魔法使いの人間が渡した水晶玉。
これは元々、好きな夢を見るために使用する道具なのである。
具体的には、寝る前に好きな世界を水晶玉に用意しておくことで
夢の中でその世界に入れるようになるのだ。
そして、夢の中では使用者にある程度の特権が与えられる。
簡単に言えば、夢の中なのだから現実ではできないこともある程度できる、
というものだ。
この水晶玉に魔法使いの人間は1つの細工を施したのだ。
それは、指定した人を水晶玉の世界に同時に入れるようにしたこと。
これにより、複数人でひとつの夢を見ることができるだけでなく
目覚めてからも夢の出来事を共有できるのだ。
さて、昨晩の出来事の真相はこうだ。
まず妖精は水晶玉を使い、街をそっくりそのまま小さな世界に作り上げた。
そしてその世界に一部の人間、
つまり彼女にひどい思いをさせた心無い人間たちを連れ込んだのだ。
街に居るはずの人の数が少なかったのは、
一部の人間しか連れ込んでいないことが理由である。
そして水晶玉の使用者の特権として、妖精は巨大化。
人間たちの居場所が離れていても分かる能力も自身に付与して、
さらに人間たちを踏みつけても生きたままにさせていたのだ。
「あの人間たちは、私をオモチャにすれば本気で喜ぶのかもしれません。
私にはその感覚は分かりませんでしたが……
ただ、反撃されないことが分かっていると、
あのくらい凶暴になれることは分かった気がします。」
それを聞いた魔法使いの人間は小さく頷き微笑んだ。
人間より上位存在になる快感に溺れて、
何度も使うことにならないか心配していたらしい。
もしそうなっていたなら水晶玉を回収するつもりだったそうだが、
そのまま妖精にプレゼントすることになった。
今でも彼女はときどき街に繰り出し、
買い物をしたり食事をしたり、ときどき見かける困っている人を助けたりと
相変わらず楽しんでいる様子。
街のある人が言った。
最近は今まで以上に楽しそうにしている気がする、と。
それはそうだろう。
彼女を虐げた人間には夢の世界でお仕置きをしているのだから。
人間よりはるかに大きくなれる存在であることを見せつけ、分からせる。
分からされた者は二度と自分の意思で彼女にひどいことをすることはなくなる。
そうして彼女の平和は保たれているのだ。
だからと言って、
大きな妖精に襲われたいからと意地悪をすることはオススメしない。
そういう人は素直に襲ってほしいと頼むといいだろう。
おそらく引かれると思うのでオススメしないが。
------
おしまい。
Comments
ありがとうございますー。 普段から仲良くすれば叶えてもらうかもしれません?
ナーヴ
2022-08-21 06:48:47 +0000 UTC妖精さんのお仕置とてもよき... 毎夜色々玩ばれたい...お持ち帰りされたい
八雲橙
2022-08-20 09:41:04 +0000 UTC