名も無き遺跡。
都より西方に位置するこの遺跡には、まだ誰も名をつけていない。
しかしだからといって、この遺跡の価値がないわけではない。
むしろ情報が不確かである分、どれほど希少な遺物が見つかるかわからない。より慎重な調査が求められる。
安全を確保し、正確な地図を残し、それでいて遺跡に傷をつけない。それだけの冒険者はなかなかいるものではない。
「ゴブリンの数が……多すぎるな……」
ヴェルデンは大鎚を振るい、襲いかかるゴブリンたちを一蹴しながら呟いた。
かなり重量級の得物だが、その狙いは正確無比だ。壁面や床を避け、ゴブリンたちの頭部や脚部を破壊していく。
「これではとても、線の細い学者先生に同行してもらうわけにはいかんな」
現在怒りのザクロ亭には遺跡調査の専門家はいない。そんな中でもこのヴェルデンは鍛冶の知識に優れ、鉱物や石材に対して深い造詣をもっている。
ある程度の鑑定能力があれば、遺跡に対して最悪の結果を招くこともなく、また戦闘力も申し分ない。そういった次第で、彼が代表してこの遺跡の探査、調査、そしてマッピングのクエストを受けることとなった。
「警戒すべきはウォールミミックか。成る程、……なかなか優れた擬態だ」
ヴェルデンは壁を睨みつけた。
一見それは何の変哲もない岩肌の壁だ。だが、彫刻された燭台は僅かに造形が甘い。確証はないがウォールミミックだ。
遺跡の岩壁に擬態し、休憩のため壁にもたれたり調査のため手を触れたりした時などに体を取り込まれ、壁の中、つまりウォールミミックの体内に獲物を捕獲し生命力や魔力を吸収する。
注視していれば問題はないが、問題はこの周囲にいる大量のゴブリンだ。手練れの冒険者であっても、戦闘中の勢いで手をつくことがあるかもしれない。
「この罠の存在が、ゴブリンたちをのさばらせているというわけだな」
この壁はゴブリンにとっても脅威であるが、同時に一種の共生関係にもなっている。
たとえばこの壁に『もし』冒険者が捕らえられれば、それはゴブリンにとっても極上の餌になる。普段ならば手も足も出ない冒険者でもねぶり放題。魔力や体力も取り放題。ウォールミミックにとっても、捕らえた獲物をからより多くの体液や魔力が溢れるのだから悪い話ではない。
「とはいえ本物の壁面との境目まではわからん。討伐できん以上、マッピングするのがせいぜいだな」
ヴェルデンは苦々しくつぶやくと魔物から目を逸らし、ただ印をマップに残しだけを残して遺跡を進んでいった。
そうして進むうち、ヴェルデンはおそらく最奥に近い場所に出た。
「これは……」
遺跡――いや、神殿と呼んだほうがいいだろう。
ギルドで報告された通りの『遺物』がいくつも並び、祈るための広さや在る種の荘厳さを兼ね備えていた。
だがしかし、報告にあった遺物や、ヴェルデンが想像していたものとは、随分と様子が違っていた。
「なんだ、この大きさは……」
ヴェルデンがギルドで見たのは、人形ほどの大きさだった。
だがここに並んでいるのは、それと同じ造形をしながら等身大。そう……まさに人間の男がそのまま捕らえられたような姿だった。
壁に埋め込まれた逞しい男が、顔と下半身のみ壁から突き出したような形で石化している。
いや、石化の術とは違う。間違いなく本物の石と鉱物だ。しかし、ヴェルデンほどの目利きでなければ本物と見まごうほどの出来栄えだ。そんなものが何十と並んでいるのだ。邪教徒……そんな言葉が頭に浮かぶ。
「誰が…………なんのためにこんなものを」
ウォールミミックに警戒しながらその遺物を間近で観察する。すぐにはわからないが、小型の遺物(今となってはそう呼ぶしかない)に比べてより古い時代の層が見える。出土した遺物はこれらを元に作られたものかもしれない。
「一人の人間が趣味で作り上げたものではない。文化、あるいは複数の世代にわたってこんなものを――何故だ」
壁に埋まったような姿、壁を通して突き抜けている姿もある。卑猥というよりは、なにか恐怖のようなものを感じさせる造りだ。
「……ひとまずこの情報を持ち帰るべきだな、然るべき知性に託そう」
ヴェルデンは地図を書き印し、そう結論付けた。
刃を作るのに適した鉱物と槌に適したものがそれぞれ違うように、この情報はそれを専門にした者が考えるべきだ。
「ゴブリンはまだ多く残るが、ミミックの場所と遭遇地点を印した地図があれば、警護隊と共に調査できる程度には進めるだろう」
武器作りに心血を注ぐヴェルデンは、冒険においても慎重や正確さを重視する男だった。
綿密に調べ上げるも無理はせず、慢心もせず、帰路も同じ道を選んで進んだ。
壁には一切手を触れず、ゴブリンとの戦闘も必要最低限に留めた。
そうして往路の倍近い速度で進み、ヴェルデンは出口まであと数ブロックというところにたどり着いた。
「………この辺りにはウォールミミックの姿はないが、ゴブリンの足音がやかましいな……少し迂回するのも手か…………」
彼はそこで初めてほんの少し違う道を選んだ。
油断したわけではなかった。
むしろ警戒はより強めていたからこそだった。
だがそれこそがヴェルデンの運命を分けた。
「――――なッ!?」
ヴェルデンは足元が沈み込む奇妙な感覚に狼狽した。
彼ほどの冒険者がなにもない場所で転ぶ筈がない。足元に『なにか』が起きたのだ。
ヴェルデンはぐらつく体を支えるためにとっさに壁を――触れることはなかった。ここに至っても彼は警戒していた。だがその警戒が、知識が、今この瞬間は仇となった。
「なんだ、床が……抜ける――いや違うッ」
泥のような感触。口を開くように一気に飲み込まれる。
「ウォールミミック!」
壁だけではない。
この遺跡全体に巣食っていたのだ。
床という踏み荒らされる場所に生息できる魔物は多くない。だが、ここはつい最近まで踏み込まれていなかった遺跡だ。
「ぬかっ…………った…………!」
そんな思考をあざ笑うかのように、ミミックはヴェルデンを飲み込んだ。
下半身が絡め取られ、腕もまた泥のような床と一体になる。顔面だけは本能的に死守しようと突き出すが、そこもまたミミックに飲み込まれた。
濁流に飲み込まれるようにしてヴェルデンの視界は真っ暗になった。
最後にゴブリンの下品な笑い声のようなものが聞こえた。そんな気がした。
—
「おのれ……こんな、姿に…………ぬぅぅ…………!!」
次にヴェルデンが意識を取り戻したとき、彼は遺物で見たあのおぞましい姿に変わっていた。
飲み込まれた時にはこのまま地面の中で朽ちて死ぬばかりだと思っていたが呼吸ができる。獲物を活かすために敢えて壁のように形を変えたのだ。
すぐに死ぬことはないだけマシだろうか。
だが抵抗ひとつ出来ず生かされるのは、死より屈辱ではないか。
「こいつにとって……俺は既に……つまり、喰らう対象……ということか…………!
装備は全て剥がされ、無防備な肉体が遺跡の空気にさらけ出されている。体が壁に突き刺さったような状態だ。
腕や脚といった抵抗に必要な部位は完全に埋め込まれ、空気を取り込む顔や、そこだけあってもしょうがない足だけが露出している。
「ぐぅ……体が、まるで、動かん! ぬぅぅう……!」
自分から見ることは出来ないが、尻や一物といった部分も丸出しだ。呼吸するたびに敏感な部分に風を感じる。
どこも鍛え抜かれた見事なオーク種の体だが、これでは全く無意味な飾り物のようだ。
「ふぅう、ヌォォオッッ!!」
ヴェルデンは全身の筋肉をはちきれんばかりに膨らませていたが、暴れることさえ出来ずにいた。
わずかに露出した体から、オーク種独特の体臭が遺跡へと流れていく。
「ぬぐぅ………ウゴオォォ、オォォオオッ!」
ヴェルデンは焦燥に駆られるように力を込めた。
緑色の筋肉が冷えたミミックの体に食い込む。太い首が仰け反り、咆哮が響き渡る。そうして壁にヒビの一つでも出来れば、脱出の糸口になったのだが……やはりどうにもならなかった。
「このままでは…………! ぬぅぅ…………!」
焦りの原因は、己自身の体にあった。オーク種にとって、体臭は単なる老廃物ではない。
他人種には失われたとされるフェロモン効果がいまだ強く残り、それは使い手によっては武器とも、厄介事にもなりえる特殊能力だ。ヴェルデンのような屈強な肉体を持つ雄であれば、その量は調整不可能。
そしてその効果範囲は、人類に留まらない。
「このままでは奴らが……! ぬぅ!?」
そう言ってるうちに、それは現れた。
ゴブリン。比較的小型で非力。オークとは祖が近いとされるが、知性品性はまるで違う醜い魔物。今までその剛腕で蹴散らしてきたそのゴブリンたちが、ヴェルデンのフェロモンを嗅ぎ取り集まってきた。
「ギヒヒヒィッ!」
彼らの目に憎しみや怒りはない。ゴブリンにはそれほどの仲間意識はない。その目に宿っているのは、純粋な欲望だった。
「やめ……ろ、そんな目で…………見るなッ……!」
奴らが生命力に優れた獲物を前にしたとき、する行動は一つ。
「ゲヒィッ!!」
甲高い声でボス格が鳴くと、ゴブリンたちは一斉にヴェルデンに襲いかかった。
勃起した肉棒を棍棒のように振りかざし、一匹がヴェルデンの頬を叩いた。
獲物。種馬。そして孕ませる肉壺。
奴らにとって、抵抗できない人間はソレでしかない。
ゴブリンは力こそ弱いが人類と交雑が起こる可能性が非常に高いという点で危険視されている。この種は特に特殊で、雌雄同体に近く妊娠させる際には相手の性別を選ばない
頭の中に、改めて彼らの脅威が再生される。
「やめんかッ――この、ぬぐぅぅう!!」
肉棒が鼻の穴付近に近づくと、とてつもない臭いに声に口を開くことさえ躊躇った。そんなイチモツで鼻の穴を突き、口を開かせようとしてくるのだ。たまったものではない。あまつさえ、その穴の中に種を注ごうというのだ。
ヴェルデンは当然歯を食いしばり、迫りくるゴブリンを睨みつけた。
唯一自由になる口で噛み切ってやろうと、オーク種の持つ強靭な顎に力を込めた。
その瞬間である。
「ふ、ごぉお――!?」
ヴェルデンの口からは奇妙な声が上がった。
全く見えない場所。
壁の向こう、気配を感じることさえ出来ない背後で、何かが起きた。
「まさか、これは……むぅうッッ!!」
推察するしかできない。それでいてハッキリと刺激だけは伝わってくる。
湿っていて柔らかい、それでいて生暖かい。これは舌だ。
それも一本ではない。長くてやたら先細った舌がいくつもヴェルデンの臀部と、足の裏、そして尻の穴を舐めている。
「お、おのれ、勝手なことを――ぬぉぉ…………!」
ゴブリンにとっての性行為は、交尾というより、搾取に近い。
ヴェルデンからこみ上げる体液と魔力、生命力といったものを舌や肉棒でこそぎ取るように迫ってくる。
「う、がぁあ…………!」
閉じた口が開く。
見ることさえ出来ない刺激は、ゴブリンの卑しい舌であってもヴェルデンを喘がせる。
「ぬぶぅ…………バファッ……はひぃい!」
たまに敏感な足の裏を刺激され、抵抗することも出来ない。
耐えるどころか、まともな呼吸も出来ずヴェルデンは情けない声を上げた。
「ふ……ぐぅ!?」
そうして開いた口に肉棒が突っ込まれた。巨大で悪臭まみれ、誰も望んでは口にしたくないソレが、ヴェルデンの口内を容赦なく犯す。
「おぉぉ…………むおぉぉおッ!」
さっきまでの意気など残っていない。
尻や足の裏への刺激で呼吸するのがせいぜいだ。
(ど、どうすれば良いのだ、助けを求めようにも、出口まで声は届きそうに――ぬぉぉお!?)
押し付けられる濁った快楽に思考でさえも阻害される。
体が勝手に尻の穴の刺激を探ってしまう。
このまま喘いでいては埒があかない。
だがどうすることもできない。
そのうえ、次に来るのはおそらくアレなのだ。
抵抗できない。
拒むことも出来ない。
身構えることすら許されない。
たのむからやめろ。やめてくれ。
祈ることしか出来ないヴェルデンだったが、無情にもそのときは来た。
「オッ――――!」
尻の穴の門にゴブリンの煮えたぎった棒が突き刺さる。こじ開けられる。中に入ってくる。内臓が掻き回される。屈辱が形となったような棒が鍛え抜かれたオークの尻を遠慮なくぶち壊してくる。
「こんな――こんなことが、俺に、本当に、ああ…………グアァァア!」
見ることは出来ない、だが確実に自分は今犯されている。
痛みと屈辱、そして体の奥から込み上げてくる僅かな快楽がそれを『突き』つけてくる。
グチョ、グチョッ。
遠慮ない腰使いが、一呼吸ごとにヴェルデンを犯す。
腰を使った断続的なピストン運動だ。一人だけではない。ベロや肉棒らしきものが、尻の周りや肉棒をベタベタと刺激してくる。
気がつけばヴェルデンの肉棒は勃起していた。ガチガチに固くなった竿がウォールミミックに擦れ、薄緑色の亀頭がザラザラとした壁に擦れもどかしい快楽を味わっている。
「あぁ…………ハァッ…………!」
気持ちよくなるのが止まらない。
ゴブリンの口が戦士の屈強なうなじと大胸筋を舐め、足の裏のシワの一歩まで味わっている。
汗が止まらない。先走りが止まらない。そして興奮が止まらない。
「ゲギィイゲィイイ!」
「貴様らッあとで覚え…………んぐぅぅうッッ!!」
当然そんな極上の餌を逃すゴブリンではない。ヴェルデンの竿は感じたことのない柔らかい刺激に包まれた。
先走りを堪能しようと、新たな『口』が…………いや違う、口ではない、コレはゴブリンの『穴』だ。
「ば、馬鹿な、そこまで、ぐああぁぁッ!!!」
強制的に勃起させられた肉棒が、なんの許可もなく使われている。
ヴェルデンはゴブリンに犯されながら、ゴブリンを犯していた。
顔も見たくない、見れないような生物と、孕まされ、そして孕ませてしまっている。
何が起こっているのだ、コレは現実なのか。
「こんな……こんなことが、俺が……何故、何故ッ」
そんなことを口にしながらも、勃起は収まることなく……それどころかより一層強く固くなっていた。
「ああ………………あぁぁ…………ッ」
快楽に小さな嗚咽を漏らしながら、ヴェルデンはついにゴブリンの尻と思われる穴に向けて精液を吐き出した。
そうして穴がなくなると、また違うサイズの穴が肉棒に収まる。
ヴェルデンが快楽に尻を窄めると、そこに雄汁が流し込まれ……そしてまた別のゴブリンのチンポが突っ込まれる。
射精が終わっても交尾が終わらない。また新たな肉棒と精液が注がれる。
ヴェルデンの苦しみと快感は終わることなく続いた。
◆
「がぁぁ…………あぁぁ……………………ッ」
それから、どれだけ経っただろうか。
ヴェルデンが捕らわれてから数刻。
昼も夜もない空間の中で、ヴェルデンは壁になり続けていた。
尻を犯す音さえ聞こえず、出す精液もさすがに薄くなった。
出が悪くなるとまるでスイッチを入れるかのようにヴェルデンの尻が叩かれ、より深い場所までケツを犯された。
ゴブリン達によって仕込まれ、覚えさせられてしまった。
体を知られた。
弱点も、性感帯も。
あるいは、ゴブリンに新たに開発されたのかもしれない。
どちらも同じことだ。
ただ、人間として惨めすぎる姿であることに変わらない。
「あぁぁ…………ケツが……俺の、ケツが…………」
尻穴は常に開き切り、肉棒は壊れたように精液を垂らしていた。
そんな尻穴と連動するように、口もまたあんぐりと開き続け生暖かい呼吸を続けている。
犯されていないことが不自然なくらいに尻が求めている。
何かを犯していないことがおかしいことのようにチンポが先走りを垂らしている。
そんな穴を肉棒が入り、また入れ替わる。
チンポをゴブリンが咥え、また変わる。
ゴブリンにとってヴェルデンは自由にできる穴であり棒にすぎない。
拒否することも、動くこともない生きた人形だ。
ヴェルデンはもう抵抗もできず、ただただ虚ろな目で与えられる快楽を受け取るだけだった。
ミミックの魔力の影響なのか、快楽で鈍くなっているのか、次第に思考すら困難に陥っていた。
まるで自分自身が、壁になったかのような
ただ受け入れるだけの物体。
物言わぬ石像と同じだ。
ただ肉で出来ているという違いしかない。
何十何百という鉱石を扱ってきた冒険者、鍛冶師ヴェルデンの末路がこんなものになるとは、誰が想像しただろうか。
「ああ…………うがぁああ…………」
口を犯す肉棒に至っては、ヴェルデンは自ら舌を這わせるようになっていた。
そうして精液を受け止めれば、少しは早く肉棒が離れていく。
射精のあとは交代まで暫くの間自由になる。その僅かな時間のみ口で呼吸ができる。
今のヴェルデンにとってそれが唯一といっていいほど味わえる自由の味だった。
「あ、あああ…………!」
尻もそうだ。
拒まず、受け入れる。
ゴブリンの雄汁で孕みそうになる
あるいはもう孕んでいるのかもしれない
どのゴブリンか、顔も声も知らぬ雄の種汁で…………。
「うぁーーーあぁあ…………」
そんな事を考えたくないあまりに、また思考が遠のく。
射精の快楽だけを考える。逃避であり本能だ。
尻穴を穿られた歓びだけ。すべての感情や意思をそのことに集中する。
きっとこのまま石になるのだろう。
一人の冒険者として尊厳在る終わりどころか、雄としても、人間としても、最底辺の終わりだ。
ただ少しミミックに捕らえられただけで。
ヴェルデンは未来から目をそらすように、再び肉棒に意識を集中させた。
尻を犯される快楽と、射精の歓びで再び意識が虚ろになった。
そしてまた一匹のゴブリンの尻に精液を垂れ流した。
ヴェルデンが思考と呼べるものを取り戻したのは、それから随分経ってからだった。
気がつけば、全ては終わっていた。
ゴブリンは付近におらず、ミミックの拘束も消えていた。
そんな状態でありながら、数時間はヴェルデンは放心していた。
「な、んだ………………なに…………が………………」
ウォールミミックは植物が枯れるようにしなびていた。
ここで取れる養分を取りきった、ということなのだろうか。
「ゴブリン、共は………………」
アレほどヴェルデンに執心していたゴブリンはどこか。いずこかに消えていた。
「な、にが…………いや、いい、今は…………いい…………」
ヴェルデンは思考を再び止めた。
だが、その思考停止は今までとは違った。
考えることをやめ、そのかわり足を……腕を動かした。
不自然な形に固められ、犯され続けた体は歩くことさえ困難であったが獣のように四つん這いになりながら、ヴェルデンは本物の壁に近づいた。そうして、そこに無造作に転がっていた装備と……大事な情報が書かれた地図を手に取った。
そのままヴェルデンは出口に向けて、死にかけの牙獣のような速度で這った。
それはまさに脱出というしかない動きだった。
ともあれヴェルデンは脱出に成功した。
手にもった地図を届けるまではなんとしても歩みを止めるわけにはいかなかった。
そうして改めて調査隊が組まれた結果、いくつものことがわかった。
オークの生命力に助けられた。往路で何匹ものゴブリンを討伐していたのも幸運だった。
もし行きの路で捕まっていたならば…………。
ゴブリンの数が十分であったならば…………。
ヴェルデンはゴブリンたちの性欲のサイクルに組み込まれ、永遠に穴として使われていただろう。
ともあれこの情報は一部を除いて共有され、この遺跡は間もなく攻略されることになるだろうということだった。
背景素材利用:アキ二号機様【https://www.pixiv.net/users/61071305】