ケイブワーム。
飾り気のない名前のこの魔物は、その名の通り洞窟に潜む肉色の無脊椎魔物である。
毒性はなく、攻撃性も低い。最下級のワーム種だ。
主な被害報告も、未開発の洞窟の壁面などに群生していたケイブワームが炭鉱夫に飛びつき、吸血、痒みを訴えて仕事がままならなくなる、といった程度のものだ。痒みといっても馬鹿にはできない。危険と隣り合わせの炭鉱夫にとって、集中力を奪う痒みは看過できない状態異常だ。
……おまけに体液は独特の陶た臭い――はっきりいって精液のような濁った臭いをするものだから、随分と嫌われている。
「どちらかというと、まあ……駆け出し冒険者向けって任務だなこりゃ」
ベアセスは誰もいない洞窟の中、懐かしさにも似た感触を味わいながら独りごちた。ケイブワームの討伐など、それこそ十年以上のご無沙汰だ。
正式な依頼であれば、怒りのザクロ亭ほどの規模と実力を持つギルドであればまず受けないような内容である。ましてやギルドマスターでもあるベアセスが出るような幕ではない。しかしながら今回はことがことだった。
なんとも非常識な依頼主だった。
依頼料は子供小遣い程度。
ケイブワームに襲われたという貧相極まりない情報。
被害者である炭鉱夫の父の状況すら、痒みなのかそれ以上なのかもうまく言えない。
非常識な依頼だ。
だがしかし、ベアセスは涙ながらに手渡された小銭を拒否できるような「非情」な男ではなかった。
「あの小僧……出世払いしてもらうからな……。まあ、ココ最近は体がなまっちまってたし少しくらいは負けといてやるけどな」
ベアセスは洞窟の地図に詳細を書き込みながら奥へ奥へと進んでいった。
冷えた洞窟の中はそこかしこに水が溜まっており、確かにケイブワームの精液に似た臭いがした。
……炭鉱夫の数名が被害にあったということだが、洞窟はそれほど入り組んだ形状ではなく、ケイブワームの数もむしろ少ないくらいだ。
時折はぐれたかのように一匹二匹が壁に張り付いて、力尽きたのか床に散らばっている。
「閉鎖されてそれほど経っていないって話だったが、もう餌がなくなって餓死しはじめてる……ってことか」
ベアセスは死骸の発見場所を新たに地図に書き込んだ。
じきに最奥部だが、このままいくとベアセスが出るまでもない。自然解決だ。
「まあこのケイブワームを持ち帰って、適切な解毒薬でも作ってもらうってのがいいか」
ベアセスは床で冷たくなっているケイブワームを拾うと、その体をまじまじと眺めた。
「いつ見てもこのウネウネっとした部分が――カッ……!!」
首筋に冷たい感触。
ベアセスほどの男でなければ、気が付かないような刺激。
ベアセスほどの男であっても、察知できなかった攻撃。
「……なんだ!」
ベアセスは身を翻し湿った地面を転がり構えた。
背後、横、下、上。
最後に見た場所にそれはいた。
天井。
壁や床を這った痕にばかり気を取られて、注意を払うのを一瞬忘れていた。
見上げたそこには、巨大な脳が浮かんでいた。
ぐちゃぐちゃに絡み合った細長い体が、まるで巨大な知性の塊とでもいうかのようにベアセスを見下ろしている。目も鼻も耳もない。ただ体と、口だけがあった。全体が薄っすらと湿っており、それが微かな魔力の灯に照らされている。
巨大なケイブワームだ。
今日見ていたものとは、百倍も千倍も違う。圧倒的サイズの化け物が天井に擬態してベアセスを待ち構えていた。
「ガッ……」
その姿が陽炎のように揺らめいた。巨大なケイブワームが動いているわけではない、ベアセスの視界が、姿勢が、意識が歪んでいるのだとすぐわかった。
気がついたときにはベアセスは膝をつき、浅い呼吸を繰り返していた。
「あ、ああっ…………クソッ!」
下半身に生暖かいものを感じた。勝手に小便が漏れている。神経毒の類に違いなかった。
ケイブワームにこれほどの毒はない。筈だった。
せいぜい吸血時に痛みを誤魔化す唾液くらいだ。
新種、変異種。魔術の類か。思考だけは冴えている。だからこそ、今己が絶望的な状況に置かれているということがはっきりわかった。
果たしてケイブワームの変異種は、予想通りの行動にでた。
すなわち、獲物の捕獲だ。
天井からスルスルと細い体が伸びてくる。それは魔術で操られる縄のようにベアセスに絡みつくと、筋肉の塊のような肉体をいとも容易く持ち上げた。
膝、肘、脇腹。
抵抗できないことがわかりきっているのか、獲物を締め付けるのではなく長持ちさせるように、上へ上へと連れ去っていく。さしたる時間も苦労もなく、ベアセスは大股開きで天井から吊るされた。
「こい……つ…………舐めやがってッ……!」
意味のない悪態をつくのは、少しでも闘志を維持するためだった。そうしなければ今すぐにでも体から力が抜けそうだった。
体が熱い。
ケイブワームの吸血局部麻酔が効き始めている。少量であればそれはただ表皮の感覚を鈍らせるだけだ。しかし、これだけの巨体だ、流し込まれる量は……おそらく医療用に転用されるものの数倍。
「ハァ……ッ!!」
健在だった意識までもが揺らぎ始めた。
体から痛みが消えるだけではなく、ヌルヌルと絡みついているケイブワームの体すら愛撫に感じられるようになってきた。
脳が刺激を勝手に心地よいものだと変換し始める。
まずい。
このままでは快楽に喘いでいるうちに体液を吸いつくされ、死ぬ。
ベアセスは懸命に腕を動かし眼の前のワームから逃れようともがいた。
「う……ぬごぉお…………」
しかしそんな身じろぎすらもが快楽になってしまう。
おそらくその声に反応したのだろう、異常に肥大化したケイブワームが産卵管をベアセスの体に擦りつけてきた。
それは彼の体を次の段階へと持っていこうとした。
立派なヒゲを蓄えた口……ではなく、その下。口の次に大きな穴となる部位へと伸びていく。
「やめ……ろぉぉおお!」
こんな太いものが入るわけない。
体を貫く一撃を覚悟した。
「あ…………ぬがぁぁ!!」
だが、ベアセスの体はそうではなかった。痛みどころか、ただ尻を少し撫でられただけでベアセスの体は「受け入れる」体勢になってしまった。
「――――!!」
声にならない悲鳴と同時に、ベアセスは体内に人肌ほどの細長いものが潜り込むのを感じた。
それはゆっくりと、しかし遠慮なく……ずん、ずんとベアセスの奥へと入ってくる。
弛緩した体は一つの抵抗もせず。腸は細長い異物を飲み込むように受け入れ。肉体はそれらの刺激を快感のように貪った。
「ハァッ…………ッ…………ぐぉぉお!!」
尻の穴が締まらない。股ぐらが閉じない。そのままケイブワームの産卵管は、ベアセスの尻をグイグイと押し広げていく。
(掻き回される……俺のケツが……!!)
痛みを感じなくされた体、それでも、これが初めての経験だったならばベアセスはもう少しは抵抗できただろう。
だがこの屈強なギルドマスターには、実際のところ尻をイジられた経験があった。ガ=インの森で運の悪いことに既に尻の奥を開発されてしまっていた。
肉体は尻に潜り込む刺激を快楽と受け止め、奥へ奥へとまねこうとするように呼吸した。
ずくん……。
鼓動の音が聞こえる錯覚と共に、ベアセスの体内に異物感が増した。
「ま、まさかもう…………!」
前立腺をゴリゴリと刺激し、腸の奥へと入ってくる
感覚のない部位であってもわかる、圧倒的な異物感。
「産み付け、やがっった…………のかっ…………!」
最悪の予感は的中していた。
卵。
この異形の怪物の巨大な卵が、ベアセスのケツに入ってきていた。
「ぬぐぉぉおお!!」
男として、人間の雄としての尊厳を踏みにじられる
ベアセスは怒りの咆哮を洞窟に轟かせた。
普段であればそれは武器を握る手に力を込め、アドレナリンでどんな苦痛も麻痺させてきた。闘志を燃え上がらせるものだった。
だが、その奥に産み付けられた卵から生ずる快楽はその効果を全て打ち消して変貌させてしまった。
「クソ……ぐぅぅうう…………くそぉおおっ!」
咆哮はすぐに情けない快楽の声として出てしまった。
ごくり。ごくり。
飲み込むような音を出しながら、ケイブワームはベアセスのケツの奥に丸く大きな卵を産み付け続ける。そのたびにベアセスは屈辱に打ち震えた。
「入る……はいっで、きやがるぅぅぅ……!」
普段はギルドマスターとして、屈強な男たちをまとめ上げる立場にある自分が……雌のように……それどころかただ孕ませる道具として扱われている。
怒りと快感が同時に襲いかかってくる。頭がおかしくなりそうだった。
だが、なにもできない。
ただただ卵を産み付けられる感覚に、よだれを垂らして喘ぐしかでいない。
「あああ…………俺は……俺はぁぁ………………」
気がつけばベアセスは洞窟の奥深くにいた。おそらく最奥部だ。ケイブワームはココを巣にしているのだろう。獲物を狩るための場所ではない。集合し、成長し、繁殖している場所に違いなかった。
こんな場所にまで連れてくるということは、既にベアセスは彼らにとって敵対する冒険者ではない。卵を仕込んだ繁殖の餌に過ぎない。
「は、はは……畜生……め」
ベアセスは怒りで狂いそうになるのを抑えるために、笑みを浮かべてケイブワームを睨みつけた。
立ち上がることも、腕を振るうこともできなかった。
腹に埋め込まれた卵が胎動している。その震え一つ一つがベアセスの内部から男の弱点を刺激し、魔力を奪い、筋肉から力を奪い続けている。
「う…………!」
腹の中、見ることはできない体内で……何かが変化している。
「俺の…………中から、で、出ようとしてやがる、のか……ッ! もう、こんなに早くッ……!」
言葉どころか口もついていない卵が、母体であるベアセスに訴えかけていた。
産ませろ。早く産み出せ。栄養はもう十分だ。
それは深い闇の中から心に直接語りかけるような声だった。
「グッ、舐めやがって、この俺を使って、繁殖――だとッ、そんなもの、ゆ、許すわけが、ねえだろぅうが…………!」
ベアセスは肛門に力を入れて全身を強張らせた。
このまま腹の中で腐らせてやる。魔力過多、酸素不足、産まれるべきタイミングで産まれることが出来なかった生物がどうなるか、魔物学を収めていなくても冒険者の経験でわかる。
「俺は……この俺ベアセスがッ、てめえら如きに負けると、おもうな…………! あぁぁ……ッ!」
ベアセスは力みながら、喘ぎと怒号の混じった声を出した。
肛門からは絶え間なく排泄欲求にも似た刺激が襲ってきている。ケツアナの奥でわずかに振動すると、それだけで力が抜ける。
「俺は、俺が――ッ!」
勝利のためには忍耐が必要だ。多くの戦いで経験してきた。屈辱に耐えて、好機を待つ。そして一撃、逆転してやる。
「そうだ、自由になったら、てめえ等如き…………ッ! 不意打ちさえされなけりゃあ、この俺が負けるはずがッ……!」
その瞬間ベアセスの表情が変わった。
「…………」
それは急速に広がる不安のような感情だった。腹の中のこの異物を抱えたまま、果たして勝てるだろうか。こんなにも精神集中を妨げる刺激に勝てるものだろうか。ベアセスは己の戦略に対して懐疑的になっていた。
「う…………ぐぉおお…………!」
尻穴が広がるのがわかった。心の変化が肉体に繋がり、ベアセスの下半身が開いていく。
(全部出したほうがいい。そうしてスッキリしてから勝てばいいのだ)
(こんな怪物の苗床になったことを認めるなんて絶対に御免だ。体内でこいつらを仕留めるべきだ)
二つの感情が同時に、同じ熱量でこみ上げてくる。
「は、早くこれを出さねえ…………とっ、はやく……はや、くぅう…………」
ベアセスは腹の奥を見つめて酩酊状態のような口調で呟いた。呟いてしまった。
「いや、ち、違う、コイツラを出すなんて、お、俺はそんな…………!」
これは俺の思考じゃない。この卵が、俺を操ろうとしている。動物的本能なのか、とにかくこれはギルドマスターとしての思考ではない。
ベアセスは己を奮い立たせると同時に、再びもとのように尻穴を締めた。
「う…………おぉぉお!?」
その瞬間、ベアセスは大きくのけぞった。
刺激はソレまでとはまったく異なるものだった。
卵がもうすぐ出るというところまで下っていた。ちょうどべアセスの前立腺をゴリゴリと押すような位置だった。既のところで正気を取り戻した結果、ベアセスはより激しく卵が与える快楽を受け取ってしまったのだ。
「あぁッ!」
結局べアセスができることは一つしかなかった。
激しい快楽に喘ぎ、逞しい体を震わせ、卵を産む。
捕らえられた獲物が、なるようにしかならない結果を生んだ。
「うごぉぉ……でる、出るッ、俺の中から、でちまうぅう、く、くそぉおおお…………!」
ベアセスの体内を全て掻き回しながら、柔らかく丸い卵が音を立てて吐き出された。
「ぬぐぅぅう♥ ふぐぉおぉぉ、おぉおおお♥」
グポ……。
それはベアセスの心と叫びとはかけ離れた、間抜けなほど軽い音がした。
ベアセスの魔力と生命力を吸った卵は、湯気を立たせて地面に落ちると、怪しい輝きを放ちながら一匹の魔物へと変わっていく。
「はぁ…………はぁ…………!!」
もっと産みたい。もっと産まねば。
頭の中から声がしている。
ベアセスは戦慄していた。
ひとつだけだ。たったひとつでこの快感。腸内のすべての卵を産み落とす頃まで、果たして自分は正気を保っていられるのだろうか。
ベアセスは戦慄し、そして…………絶望していた。
この声に抗うことはできない。それがわかってしまったからだ。
もう次の卵が生まれようとしている。あの快楽を待ち望んでいる。
尻穴が緩んで、腰が揺れる。肉棒はガチガチに勃起し、あまつさえ期待の汁まで垂らしていた。
「や、やめろ…………やめやがれええ…………」
ベアセスは声を震わせた。
だがそんな声をあざ笑うように、ベアセスの尻から卵が顔を出した。
「ああぁぁ…………! 出る、出ちまぅうううッッ…………でちまうぅぅうう!!」
それは獲物に極上の快楽を与え、さらなる卵を求めるように仕向けていく。
「あっ、あぅ♥ 出る、次も出るッまだ出るッ、すげえ、すげえでちまうぅう…………♥」
ケイブワームが獲得した、新たな麻痺毒。
体だけではなく、心をも支配する毒がベアセスの脳にまで達していた。
「あ゛~~~………………ああぁぁ゛………………」
果たしてベアセスが「やめろ」と言えていたのは何度目までだっただろうか。
よだれを吐き出すようになったのはいつ頃からだっただろうか。今なんどめの産卵だろうか。
毒と快楽で完全に白痴のようにされたベアセスは虚空を見つめてただ声を上げていた。
開ききった尻穴には、時折産卵管が我が物顔で入り、暫くしたらそこからは丸々とした卵が吐き出される。
既に抵抗の一つもない。それどころか、産卵管によって、ベアセスの尻穴は締めるも開くも管理されているようなものだ。
「出る…………まだ…………でちまうぅぅう…………」
ベアセスはケイブワームに知らせるように声を上げ、卵を吐き出した。肉棒からはとめどなく精液が溢れ、鍛え上げた肉体に掛かっていた。歴戦のギルドマスターは、まるでケイブワームの一部になったかのように精液の匂いをぷんぷんと撒き散らしていた。
後日、今や有名な怒りのザクロ亭のマスターがクエストから帰還しないということで捜索隊が組まれ、ベアセスは救出された。
正規の依頼でなかったということで、捜索隊の到着はずいぶんと遅れた
幸いなことにケイブワームの毒は通常種の解毒薬が通用したため、脳の機能に障害は残らなかった。
だが、肉体はそうはならなかった。べアセスの尻穴は完全に開発され、性器といっても差し支えない状態になってしまっていた。
背景素材利用:アキ二号機様【https://www.pixiv.net/users/61071305】
非天丸(ひてん)
2024-06-10 05:24:26 +0000 UTCヒトシ
2024-06-09 12:37:20 +0000 UTC