「ぐ、ヌゥゥウ……! 駄目だ、体の自由が利かん!! 脚がピクリとも、ヌウッッ!」
「そんな馬鹿なっ、グランド、この部屋に敵性反応はなかったはず!」
どこまでも続くような暗闇の中、二人の巨人のようなヒーローが苦しげに呻いていた。
濃い青のスーツを身に着けたブルータイタンと、漆黒のスーツを纏ったグランドタイタン。日本人離れした巨体の二人は、まるでその筋肉がすべて重しになってしまったかのように身じろぎをしていた。
巨大基地の攻略。
今日の任務は、確かに困難が予想されるものではあった。
山間にひっそりと建設された規模は街一つほどの大きさで、規模からしても大量の兵器の存在が予測されていた。単独のヒーローでは対処困難。さりとて、大量の戦力を投下しては証拠もろとも基地の自爆が予測される。
そこで白羽の矢が立ったのが、ブルータイタンとグランドタイタンだった。
彼らの鍛え抜かれた肉体を用いた戦い方は、電撃戦と隠密任務のどちらもこなすことができるもので、師弟ならではの意思疎通によって隙なく基地を制圧してくれるだろう。
そう期待されていた。
だが――
「あ、足の裏が……熱いッ! 体から力が、抜けていく――、こ、この光は一体ッ!あぁぁ……馬鹿なぁ……!!」
「ええい、な、なんて規模だ! つまりこの部屋それ自体が……大規模な罠だったということか! ぬかったわ! ン――ぐぅぅう……こ、こそばいわッ……!!」
暗闇ばかりだった部屋の床が怪しげな緑色に発光し、二人のヒーローの肉体が徐々に崩れ始める。
ヒーロースーツに覆われた足の裏を、熱いような、くすぐったいような、不可思議な感覚が這い上がってくる。その『刺激』を意識した瞬間、そこから力が抜けていき、鍛え抜かれた筋肉が骨抜きの重りに変わっていく。
組織の計画は、彼らの数段上手で、そして狡猾であった。
「しかし……ぐっ、動け、動かんか! 儂の脚だってのに、どうしてこうも言うことを聞かねえッ! ブルー……お前はどうだ!」
「グ、グランド……申し訳ない、全く自由が効かない。それどころか、脳波によるコントロールも……不可能になっている! うぅ……接地面が大きくなればなるほど、まるで……全身が磁石になったように、動けない……! ぬぁああ!」
「クッ、こんな格好で、晒し上げになるとは、まったく、さて――どう逆転したもんか……! ハァハァッ!」
「この基地は兵器を作っているものだとばかり思っていたが、誤解だった……! この基地そのものが、一種の兵器だったとは。暗闇を警戒するあまり、その可能性に気がつけなかったとは……!」
「ヒーローを……儂らを捕まえるためだけにこれだけ馬鹿でかい玩具を作ったっちゅうことか。まったく巫山戯おって。ブルータイタン、パワーを最大にしろ。こうなったら――ぬぅ!?」
追い詰められたヒーローたちの決意を見越していたかのように、主なき『部屋』は激しい唸り声を上げた。
薄く光を放っていた床にエネルギーが駆け巡り、異様な電子音が耳をつんざく。光は床を離れ立ち昇り、意思をもつ軟体生物のように二人のヒーローに絡みついた。
「ん!? んぉおぉおぉおおぉおお!?!?」
「んほぉっ、おおぉおおおおお! んぉおおおおおお!?」
さっきまでは足の裏や背中だけで済んでいた。それだけでも力が抜け、ヒーローとしての力が発揮できていなかった。そんな刺激が、一気に全身に広がってくる。愛撫へと変わる。
脇の下、首筋も、太ももにも、全身余すところなく、『刺激』が駆け巡る。
その衝撃に、二人のヒーローの思考は吹き飛び、何が起きたのかさえ全く理解できなかった。
だが、それだけでは終わらなかった。
「うぉッうぉッうぉぉおおッ!! な、なんだこれはぁああ!! 儂の頭に、頭に頭に儂の頭になにかが、なにかが流れ込んでくるぅううう!!」
「うほぉぉお!! おぉぉおすごっすごっ、これすごッおぉぉぉ!! ああぁああ足ピクピクなるぅぅううチンポビクビクなるぅぅうう!! おおぉぉおおンンン!!」
二人の顔は、全く同時に変貌した。口をすぼめ、眉を歪め、男らしい顔を無様に歪めて、笑顔とも悲鳴ともつかない奇妙な顔でよだれを垂らす。
それは、快感と幸せが脳に直接叩き込まれた人間だけが浮かべる顔だった。
ヒーロースーツの股間はすぐさま完全勃起し、ブルータイタンの肉棒はグランドタイタンの……師の尻の穴に向かって導かれるようにガチガチに持ち上がっていた。
禁断の行為が、今まさに行われている。
ヒーローにあるまじき惨めな姿を晒している。
だが、二人の頭にあるのは、快感と幸福だけだった。
楽しい出来事があった時。
美味い食事を味わった時。
欲しい物が手に入った時。
初めてこの手で人を助けた時。
愛する者との交接。
生まれた我が子をこの胸に抱いた時。
が英雄と呼ばれたあの日。
それら全てのかけがえのない幸せが、全身に強烈に与えられる幸せにより上書きされていく。
輝かしい数々の思い出が、今、ヒーローとなった二人が交接しているという現在、その目を背けたくなるようなこの状況で台無しになっていく。
「やめ、やめろぉっひっ、ひっ、ひっ、あ゛っ! いやだっあ、んぁあ、おぉお!!」
「ぎいぃいいぃいんぐぅううううぁああぁあああああぁああ!! んおぉぉおおお!!!」
状況判断どころか、何を考えることもできない。
強烈な幸福により全てが焼き切れていくようだった。馬鹿になった頭と、欲望の入れ物となった体が、ただその場の快感のためだけに動きだす。
グランドタイタンはチンポを受け入れるようにスクワットを始める。
ブルータイタンは足の裏をニギニギと動かしながら腰を前後に振り始める。
組織の目的はヒーローの鹵獲ではなかった。
ブルータイタンやグランドタイタンなどの強力すぎるヒーローは捕縛したところで自力で打ち破られてしまう可能性が高い。
しかし、より強力な処置を施したとして駒として使い物にならなくなってしまっては意味がない。
よって組織がもっとも有効だと判断したのはヒーローたちのクローン作成、精子の入手であった。
身体状況操作インターフェースが起動し、ヒーローたちの脳へと直接作用し、一つの命令をくだした。
射精。
「「んぉおおぉおほおほほおおほおおおおおおぉほぉおおおおおおぉおおお」」
スーツの生地を突き抜け、師弟は揃って同時に激しく精液を吹き出した。
射精。
射精。
射精、射精射精射精射精射精射精しゃせいせやせいしゃしゃしゃしゃしゃせせせせせ
男たちの脳内に直接射精が入力され続ける。
幸福によって焼けただれた脳へ、唯一必要な機能だけが入力される。
ただひたすらの生殖行動、いずれ世界を滅ぼす存在を生み出すための道具へと変わる行為。
射精。
射精。
射精。
彼らは雄になり続ける。
「ひひ、ひひひひひ、ひひひひ、ひひひっひひ」
「へへ、ひっ、へへへ……ひっ、ひっ、へへへ」
数刻の後、完成したのは肉人形だった。
世界最強のヒーローであった二人には、もうかつての正義は残っていない。そんなものは全て焼かれ、精液と一緒に流れて何処かへ消えていった。
彼らは今、射精をするだけの存在になったのだ。
二人は壊れた笑みを浮かべながら、快感の余韻に浸っていた。
残っているのはさっきまでの射精の快感。
待っているのは、やがて来る次の射精の快感。
二人は絡んでいる相手が偉大なヒーローであることすら忘れ、ただひたすらに笑い続けた。