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ヘンリクト
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『サマーバケーションin 南国』 ※C100新刊サンプル

『サマーバケーションin 南国』 作:ヘンリクト 絵:小松いおり  ふと空を見上げればどこまで深い青が続き、所々に真っ白な雲が浮いている。その合間を縫いように降り注ぐ陽の光は、人々を開放的な気分に誘う。  ここは南国の島。リゾート地として開発され、今でこそ夏場には多くの観光客で賑わうが、ひと昔前までは一部の富裕層のみが訪れる憧れの場所であった。そんな島の海辺には、白い砂浜が延々と続くビーチがあり、若い世代を中心に幅広い人々が思い思いの休日を楽しんでいる。友達と駆け回る子供もいれば、海で泳ぐカップルもいて、木陰で寝そべるだけという変わった人もいる。彼らに共通しているのは、少なからず笑みを浮かべていることだ。 「ふぁ〜あ」 そんな人々に混じって大きな欠伸をするのは、高校の夏休みを利用してこの島に遊びにきた梛泉《なみ》だ。南国のビーチに相応しく純白のビキニ水着に身を包んだ彼女は、その絶妙なスタイルの良さと、可愛らしくも美しい顔立ちによって、同性からの嫉妬の視線と、異性からの性的な視線を一身に受ける。普通の人間であればそれだけで萎縮してしまうような無遠慮な視線だが、似たような環境でずっと育ってきた梛泉には今さら気にもならない程度のこと。 「いくら綺麗な海があるリゾート地でも、滞在三日目にもなると、いい加減に飽きてくるよね。……君たちもそう思わないかい?」 彼女は僅かに目線を下に向けて、胸板から大きく張り出す乳房へ語りかける。耳をそば立ててみれば、ほんの微かに何かが聞こえるような気がした。当然、おっぱいが言葉を発するはずもなく、それは彼女の作り出す深い谷間に囚われた数人の小人のものだ。つい数分前まで普通の人間であったはずの彼らは、現代に生き残る魔女をナンパするという痛恨の過ちを犯してしまった。元々の百分の一まで縮められてしまった彼らは、そのままヒョイと摘み上げられ、そのまま胸元へ強引に押し込まれてしまっているのだ。アレだけ触れたいと思っていた巨乳に全身を埋めることができたが、そのあまりの質量に本能的な恐れを抱き、全く性的な興奮を覚えられない。いつか全身を覆い尽くした肉の壁が襲い掛かり、自分達をミンチにするのではないか。そんな妄想を一度でもしてしまえば、あとは震えながら許しを請うことしかできないのだ。 「退屈な一人旅の途中で君たちに声をかけられのは僥倖だったよ。だからこれはお礼の気持ちとして受け取って欲しい。……女子高生のナマ乳だ」  グニュっと。大きな乳をそれぞれ下から両手で持ち上げた梛泉は、ゆっくりと二つの乳房を擦り合わせていく。その度におっぱいは自在に形を変え、持ち主である少女の手の平に重さと温かさをほんのりと伝えた。大して激しくもないそれは、梛泉が一人で遊ぶときと比較しても非常に優しいものであり、行為としては物足りなくもあっただろう。だが、谷間に囚われていた小人たちにとっては、それは突如として前後左右上下から襲い掛かってきた肉の津波であり、自分たちを揉みくちゃににしながら、確実に骨を砕き、肉を引き千切る拷問だ。女子高生がおっぱいの内側で執行する死刑は、経験した者でなければ理解できないほどの激痛を伴う残忍な処刑方法であった。 「このくらいでどうだろうか。……ふふっ、いつもながら汚いなぁ」 おっぱいでの処刑を終えた梛泉は、指先で胸元の谷間を押し広げて中を覗く。そこには、三人の小人ではなく、彼らと同等の質量を有した赤黒い肉片が残るのみ。あまりにも原型を留めていないその様は、苺を潰して遊んだのだと言い張っても、臭いさえ誤魔化せれば相手を納得させてしまうだろう。肉片に触るのを嫌がった梛泉が、そのままそれらを際限なく縮めていけば、やがては何も見えなくなってしまう。実際には消失した訳ではないが、人類のあらゆる観測手段を用いても存在を立証できないほど小さくなった以上、事実上の消失と言っていいだろう。 「いやぁ、ここは怖いところだね。見知らぬ男三人に囲まれて、何をされるか分からなくてとても怖い思いをしたよ。……身の危険を感じたときは、魔法を使ってもいいんだ。姉さんだってそれには文句を言わないはずさ」 クスクスと小さく笑う梛泉。意地の悪さは自分でもよくわかっているのだ。 高校が夏休みに入って暇な時間が増えれば、きっと悪さをするに違いない。そう考えた梛泉の姉は、自分の貯金を切り崩して妹が希望した南国の島への旅行をプレゼントした。本来であればお目付役として姉自身も同行したいところだが、そこは寒い金銭事情によって阻まれてしまった。その目論見通り、梛泉はこの数日間はバカンスを満喫して、非常に大人しく過ごしていたが、もう飽きてしまったらしい。 「……おや、どうにも見られてしまったらしいね」 梛泉は木陰からこちらの様子を伺う若い男女の視線に気がついた。彼らにしてみれば、美少女が自分の胸を揉みしだいているのが奇妙に映っただけのことで、まさかそのおっぱいの内部で無慈悲な死刑が行われているとは考えもしなかっただろう。だからこそ、少女が軽く片手を上げ、笑みを浮かべながら近付いて来ても危機感など抱くはずもなかった。 ――――突如として視界が歪む。 それは意識が途切れる寸前のような奇妙な浮遊感を伴うものであったが、ほんの一瞬だけで収まった。互いに顔を見合わせる彼らは、自分たちの周辺が様変わりしていることに気がついた。 「いやぁ、悪いね。君たちには、私のおっぱい処刑を見られてしまったらからね。……その目撃者を生かしておくわけにはいかないんだ」 そんな声が頭上か降り注ぐと、声に釣られて顔をあげる。 澄み切った夏空を背景に微笑んでいたのは、先ほど公衆の目を気にすることなく自分の胸を揉んでいた女の子だ。ただし、その縮尺が通常とは全く異なり、まるで超高層ビルの最上階を見上げているかのような感覚に陥ってしまう。百分の一まで縮められているのだから、その感覚は決して間違いではないのだが、彼らがそれを理解できる瞬間は訪れない。 「ククッ。理不尽な最期には同情するよ。……どうやら仲良しのようだし、二人まとめて葬ってあげよう」 女の発する言葉の意味が分からない。自分たちがおかれた状況が分からない。もしかしたら、脳が理解することを拒んでいるのかもしれない。 だが、それでも生物としての本能が理解したことがある。 自分たちを見下ろしながら意地悪く微笑む美少女の顔が、多量の砂粒を付着させた足裏によって遮られて見えなくなったのだ。そして、細長の素足が接近したことで、視界が全て肌色によって埋め尽くされてしまう。 踏み潰されて死ぬ。そんな虫ケラしか経験することのない屈辱的な死が間近に迫り、彼らはようやく悲鳴を上げた。ちっぽけな存在が命の終わりに発した悲痛な叫びは、梛泉の耳にも微かに届いたが、それは意地悪少女の嗜虐心をくすぐるだけ。 躊躇なく振り下ろされた素足によってビーチの砂浜に押し付けられた彼らは、次の瞬間に梛泉が足を捻ったことでグチャグチャに擦り潰されてしまうのだった。 「あぁ……。うん、やはり旅行よりこっちの方が好きだな」 縮めた人間の命を奪ったことに対する背徳感。それが梛泉の決心を固めることになった。 直後、淡い水色の光が彼女の肢体を優しく包み込む。 もともと、百六十五センチと女性の平均より少し背の高い梛泉だったが、一瞬後には世界記録すらも軽く抜き去り、それどころか周囲に生える木々を超え、さらにはリゾートホテルすらも凌駕する巨体へと姿を変えていく。流石に異常に気がついた人々が梛泉を指差して何か騒ぎ散らすが、それでも彼女の変化が止まることはない。せっかくの玩具を適当に壊しては勿体無いと思った梛泉が、自らの体を海に投じていなければ、既にビーチ一帯はそこにいた人間諸共、彼女の素肌に蹂躙されて姿を消していたことだろう。 身長千六百五十メートル。もはや考えるまでもなく、どの時代のどの場所においても生物としては最も巨大な存在であり、地上に存在して比較対象になれそうなものは山か一部の超高層ビルくらいなもの。そんな圧倒的な存在に容易くなってしまえるのは、この世界において梛泉とその姉だけだ。そして、ここにいるのは梛泉だけだった。 *** 最初は自分が寝ぼけているのだと思った。 友人たちとビーチで遊び尽くし、疲れてしまったので宿泊するホテルに戻って休んでいれば、次第に瞼が重くなるのは必然だ。しかし、突如として始まった地揺れによって強制的に眠気を消し飛ばされてしまった。ようやく地揺れが収まったので、何が起きたのかと窓の外に視線を投げてみると、そこには不可思議な光景が広がっていたのだ。 ――――五十メートルもある巨大な建物が宙に浮いている。 確か自分が宿泊するホテルと隣接していたそれは、急激な観光客の増加に合わせて急きょ作られた量産型のホテルだったはず。それ故に、自分が宿泊するホテルと外見も中身もそっくりであり、来訪時に戸惑ったのを覚えている。当然だが、大地に杭を打ってから作られる建物が宙に浮くはずがないのだが、呆然とそれを眺める彼の眼前で今もホテルはその高度を上げ続けている。そして、距離が離れたことでようやくその全貌を把握することはできたが、だからと言って理解ができるものではない。 山のように巨大な水着姿の美少女によって、ホテルが消しゴムのように摘み上げられている。 事実を述べればたったそれだけのことではあるが、そんなことを受け入れることができる人間などほとんどいないだろう。その証拠に、ビーチで遊ぶ人々もその大半がその場に立ち止まって空を見上げているのだから。 「お、上手く摘めたか。……さて、これは私の宿泊するホテルなんだが、どうにも従業員の態度が悪くてね。最初はこれにするって決めていたんだ」 梛泉は一瞬にして高度五百メートル越えの空に連れ去ったホテルをじっと見つめている。 四つん這いの姿勢で地表を見下ろし、目的のそれを見つけて一瞬にして誘拐したのだ。 右手の親指と人差し指。たった二本の指だけで持ち上げた建物は、設計時の想定にない衝撃を受けて徐々に崩壊を始めている。大小の瓦礫がパラパラと落下しているが、あまりに些細なことで梛泉の気を引くようなものではない。もちろん、建物内部に溢れかえる何百という人々の悲鳴も同様だ。 「おや、まだ地上では逃げ出さないお馬鹿さんがいるようだ。小さな虫ケラたちが無様に逃げ惑うのを観察するのが好きなんだが…… ああ、そうだ。丁度いいじゃないか」 梛泉は右手で摘み上げたそれを白い砂浜の真上に持ってくる。先ほどまで南国に相応しい日差しが降り注いでいたが、少女の片手によってそれは奪い取られてしまった。ここにきてようやく命の危険を感じ取り、ゆっくり後退りしたり、梛泉に背を向けて駆け出す者が現れた。砂に足を取られながら懸命に駆ける彼らだが、その動きはあまりにも緩慢。梛泉からすれば芋虫の方がもっとマシに逃げるように見えることだろう。 「状況が理解できていない君たちには、これを返してあげるよ。……片付けがしやすいようにしてね」 少女が指先でホテルを捻り潰すのは容易いことだった。まるで砂で作られていたかのように、コンクリートと鉄骨のそれは押し潰され、擦り潰され、微細な破片となってビーチに降り注ぐのだ。もちろん、微細というのは梛泉の視点によるものであって、小さな人間たちにとっては一つ一つが人体を粉砕する死の雨だ。梛泉の指先がホテルを完全に磨り潰して使い尽くすまでの数秒間、南国のビーチは瓦礫が落下したことによる衝突音と、人々の凄まじい絶叫、そして僅かに肉体が弾け飛ぶ音が併存する狂気の空間と化した。 「うんうん、それでいい。たくさん泣き叫んで、無意味に逃げ惑って、最期には絶望しながら死ぬのが君たちの役割だよ。今、私がそう決めたからね」

『サマーバケーションin 南国』 ※C100新刊サンプル

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