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悦楽

悦楽。 人には個人ごとに千差万別の趣味趣向が存在している。 そのなかには他者に理解されることが難しいものも当然存在し、その一つに他者を害する他害嗜好とういものがある。 そうした思考を持つものは日常ではそれらを隠して生活していることが大半であるため、他人がそれに気がつくことは難しい。 二十代前半の美しい女性、柊華も学生自体は自らの心に秘めた残虐な本性を隠していたが、今となってはそんなことをするつもりはない。 妹から貰った特別な力がある以上、我慢をする必要などないのだから。 柊華は自宅の玄関で真っ黒なハイヒールパンプスに足を通し、姿鏡に写った自分の姿を確かめる。 今日という日のために新調した黒のワンピースは、170センチを少し超える彼女の長身に映えるデザインであり、大人の色香を振り撒く自分に満足げな笑みを浮かべる。 妹との約束で一日に消費できる人間の数を5万人までに制限されて以来、誰かを虐め遊ぶときは相手を縮めて嫐ることばかりになってしまった。 だが、たまには思い切り巨大化して都市を気ままに蹂躙したい。 だからこそ、この数カ月間ちょっとずつ消費量をセーブして積み上げ、ようやく都市一つ分に匹敵するだけの消費可能数を実現したのだ。 快晴の今日は遊ぶには最高の日。 なにも知らずに日常を送っている人々が、自分を見上げて慌てふためく様子が目に浮かぶ。 楽しみで、楽しみで、昨日は眠れなかったくらいだ。 柊華はルンルン気分で鼻歌を歌いながら自宅を後にすると、狙いをつけていた町へ向けて歩みを進めた。 最初の犠牲者はターミナル駅の利用者だった。 一日の平均乗降車数が三十万を超える中規模駅であったが、突如として内側から膨張を始めた女体によって吹き飛ばされることで、数千人の人間と共に瞬時に破砕されて周囲へ吹き飛んでしまった。 わざわざ地下鉄に乗って駅までやってきた柊華が、地下にいるままに力を解放して一気に常人の百倍まで肉体を巨大化させたのだ。 「こんにちは。今日はこの町で遊ばせて頂きますね」 肩口に残った瓦礫をはたき落としながら周囲を観察する柊華。 多くのバスが行き交う駅のロータリーでは、無数の人々が柊華を見上げて指差し、口々に何かを叫んでいる。小さな光はカメラのフラッシュだろうか。 駅周辺に立ち並ぶビルはどれも高層のガラス張りであり、柊華が視線を向ければその奥にいた人々が姿を隠してしまう。 小さな人々の可愛らしい反応にゾクゾクしてしまう柊華は、そのむず痒さを消すためにハイヒールパンプスを履いた足を小さく踏み出し、ロータリー内のバスをまとめて3台踏み潰す。 「ふふふ。どうして逃げなかったのですか? 私に殺されるって分からなかったんですか?」 柊華の足元で人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。 どこに逃れればいいのか分からず、とにかく漆黒のパンプスから遠ざかろうとしているようだ。 まるで理知的ではないその行動に苦笑しつつ、足を左右に振って人々を靴底で飲み込み磨り潰してしまう。 何百という人々で賑わっていたはずのロータリーが完全に静寂に包まれるまでに要した時間は僅か数秒。 女性の足から逃れることができたものはいなかった。 人々を虐殺して整えた足置き場に両脚を揃えた柊華は、次に真横に聳え立つ高層ビルへ視線を向ける。 柊華の胸より少し低いビルはどこか怯えているかのように見えた。 「お姉さんが意地悪してあげる」 柊華の片手が高層ビルの上層階に伸ばされそのままグッと押し出される。 それと同時に右足でビルの低層階を軽く蹴りつけたことで、支えを失ったビルは背後に向けて倒れだす。 隣り合っていたビルを巻き込みながら倒壊した高層ビルは、大量の砂塵を巻き上げながら膨大な瓦礫の山と化した。 中に居た人々が生き残れるはずもないが、意地悪なお姉さんは瓦礫をその上から踏み潰して奇跡的な生存者さえ存在を許さなかった。 「あら、弱っちいのね。ふふっ」 気を良くした柊華は次に低層のビル群を蹴りつけて吹き飛ばす。 十棟ほどのビルはなんらの抵抗を示すこともなく、女性の一蹴りで爆散して周囲に瓦礫を振り撒いてしまう。 その光景が気に入った柊華によって、駅周辺は次々に更地へ姿を変えられている。 ときにはワンピースのスカートが捲れ上がるほど高く足を振り抜き、無意識の内に笑い声をあげる様子はまるで子供が遊んでいるかのようであった。 駅周辺を瓦礫の山へ変えた柊華は、そのまま町中へ足を踏み入れる。 その向こうにある超高層ビル群を伴う大都市こそが柊華の今日の目標であり、駅の周辺などは前座でしかないのだ。 容赦なく住宅街を踏み躙りながら歩みを進める柊華は眼前に学校を捉えた。 柊華の視点からではそれが小、中、高のどれなのかは判別できなかったが、それでもそこを避難所として使っており、周辺住民が大勢集まっていることは分かった。 そんなものを見つけて見逃してあげるほど、柊華は優しい女性ではない。 「皆さん、私のハイヒールを見てください。これが皆さんを踏み躙ってグチャグチャにする靴ですよ。……ほら、もっと怯えて泣き叫んでください。反応がつまらないと今すぐ皆殺しにしてしまうかもしれませんよ。ふふっ」 軽く持ち上げた靴底を避難民たちに見せつける柊華。 柊華に促されるまでもなく、人々はありえない巨体に対して恐怖し、涙を流しながら助命を懇願していた。 ここでは年齢も性別も関係なく、全員が生き残るために必死であった。 助けて。殺さないで。許して。 そんな彼らの必死の言葉が柊華の嗜虐心を刺激したことで、柊華はついに我慢しきれなくなって校庭に避難していた人々を踏み潰してしまった。 ハイヒールなので踏み潰しにくかったが、その分何度も何度も足を踏み降ろして蹂躙することができるので気分がいい。 「あら、私としたことがついうっかり。ごめんなさいね」 なんら謝罪の意を含まない謝罪をした後、校舎内と体育館で様子を伺っていた避難民たちを建物ごと踏み潰して柊華は再び歩き出す。 彼女が通った跡にはなにも残っていなかった。 都心の超高層ビルの内部では混乱が生じていた。 断続的に続く地震のせいでエレベーターが停止し、人々の移動が大きく制限されてしまったからだ。 彼らが移動する手段は階段だけであるが、高さ2百メートルを超える超高層ビルを階段だけで行き来するのは無理がある。 大半の人々はエレベーターが復旧するのを待つことにしたが、彼らは人生の最期でそれを後悔することとなった。 「ふふ。私よりも大きなビルなんて失礼だと思いませんか?そんなものは存在してはいけません。……だから、もう少しだけ大きくなってあげますよ」 都市の中心部にやってきた柊華が不敵な笑みを浮かべる。 直後、再び巨大化を始めた彼女は圧倒的な開放感に包まれながら、一瞬で超高層ビルを追い抜いたが、それでも巨大化を止めなかった。 体の膨張に巻き込まれた無数の雑居ビルが押し潰され、つい数秒前まで柊華と同じ大きさであったはずのビルですら瓦礫と化した。 1,720メートル。 常人の千倍という途方も無い存在へ変貌した柊華は、沸き起こる優越感に心が満たされていくことを感じていた。 「貴方達と遊ぶならこれくらいで十分でしょう。……ほら、どうしますか? 私、こんなに大きくなってしまいましたよ?」 意地悪く微笑む柊華がその場でしゃがみ込む。 だいぶ視線は低くなったが、それでもあらゆる構造物は柊華の眼下に収まった。 女性の平均よりも一回り大きな手を差し伸ばし、高さ2百メートルの超高層ビルを鷲掴みにすると、そのまま根底から圧し折って持ち上げてしまう。 ペットボトルと同じ程度の大きさでしかないそれは、中に数千の人間を収容している。 可愛らしい存在だ。そんな小さな箱を手に持ったままワンピースを押し上げて、その奥に秘めた柔らかな乳房の間に挟み込む。 鉄骨で作り上げられたはずの高層ビルであったが、柊華の柔らかい脂肪に勝てるはずもなく、触れたそばからボロボロと崩れ落ちてしまう。 無数の瓦礫に混じって人間までもが地表に落下していく様は滑稽ですらあった。 「私のおっぱいの勝ちみたいです。……次はまとめて相手にしてあげますから、勝てるといいですね」 あまりに意地悪な自分の発言に吹き出してしまいそうになった柊華は、なんとか口元に手の甲を当ててそれを防いだ。 こんな砂の玩具なんてどれだけ集まっても吐息で消し飛ばせてしまうことだろう。 柊華が超高層ビル群の両端に聳えていた高層ビルをそれぞれの手で押し潰すと、そのまま脚を背後に伸ばして膝を下ろすことで、四つん這いの姿勢を取った。 柊華が姿勢を変えるたびに何百何千もの命が無意味に消えていくが、そんなことは柊華にとっては些細なことでしかない。 「こんなに大きなビルをつくるのはとても大変ですよね。何年もかけて、たくさんの人が協力して、何十何百億円も注ぎ込んで作り上げる。……それが十も集まっているのですから、お姉さんの胸くらい押し返せますよね? それが出来ないとたくさんの人が死んでしまいますよ? ふふっ」 漆黒のワンピースに包まれた莫大な脂肪の塊。 片方だけでさえ50万トン、例え柊華の乳下に捉えられたすべての高層ビルの質量を合算しても足元にも及ばない超質量であり、こんなものが二つも降臨すれば人工物は何一つ原型を留めることは出来ないだろう。 確かめるまでもなく、この高層ビル群はおっぱいに蹂躙され、そこにいる人々は虐殺されることになるのだ。 実際、意地悪なお姉さんが上半身を押し倒して胸を押し付ければ、その瞬間にあらゆる構造物が押し潰されて地下に沈めこまれてしまった。 逃げ出す時間など与えられず、女の胸のしたで生涯を終えることとなった。 「んっ。結構良いですねこれ。クシャクシャするのが焦らされているみたいで興奮してしまいますよ。お姉さんをそんな気持ちにさせるなんて、とっても悪い人たちですね」 ズリズリと押し付けた胸を擦り動かす柊華。 感触を楽しむために下着を付けていない柔らかな乳房は自在に形を変え、瓦礫の山と化した超高層ビルを粉々にしてしまう。 町の中心部を女性の胸が磨り潰す轟音が周囲に鳴り響き、人々は恐怖に怯える。 女性らしさの象徴であるはずのそれも、これほど巨大となれば殺戮兵器と化すのだ。 「んんっ// はぁ、ああ、これはいけませんね。本当にいけません。……もっと楽しみたくなってしまいました。これは皆さんが悪いんですからね?」 頬を上気させた柊華が周囲を見渡すと、少し離れた場所にまだ無事な超高層ビルが残っているのが目に入った。 四つん這いのまま両手で数え切れないほどの雑居ビル群を叩き潰し、無数の道路を寸断し、逃げ惑う人々を肉片に変えながら真っ直ぐ突き進む柊華。 彼女を止められるものなど存在するはずもなく、僅か数秒のうちに何万人もの犠牲者を出しながら十キロ以上も移動した柊華は、超高層ビルの手前で動きを止めた。 そのままワンピースの裾を捲りあげると、しっとりと濡れた下着が露出し、その奥では女性の秘部がヒクヒクと蠢いている。 刺激を求める秘部を満足させるため、柊華は超高層ビルの屋上に下着に覆われた股間部を押し付け、ゆっくりと体重をかけていく。 先ほど胸で感じたのと同じ、クシャクシャという僅かな感触が秘部に伝わり、切なさが込み上げてくる。 全力で股間を押し付けて一息に壊してしまいたい衝動を抑えつつ、ゆっくり味わうように超高層ビルとその中に取り残された三千人の命を消費していく。 あまりに非道な遊びをしている背徳感が背筋を駆け抜け、次第に呼吸が荒くなってしまう。 自分でも無意識のうちに腰を振ってしまったため、半分ほどまで壊れていた超高層ビルの残部が一瞬にして消し飛んでしまった。 「あっ……」 興奮が冷めないまま突如として終わってしまった、いけない遊び。 足りない。全然足りない。 満足にはほど遠い状態の柊華が再び周囲へと視線を這わせると。そこに広がるのはまだ無事な町並みであった。 中心部の超高層ビル群こそもう跡形も残っていないが、それでも百万人が暮らす町には玩具にできそうな建物はいくつか残っていた。 「……皆さん、私のことを満足させてください。それが出来ないなら存在価値を認めてあげませんし、もちろん価値がない人間を生かしておくつもりはありません。わかりますか? 百万人もいるのですから、女一人を満足させるくらいなんとかしてみてくださいね? 期待してあげますから。ふふっ」 その気になった柊華を止められるものはない。 街中の人々が美しい女性からの性的な要求に対して泣き叫んだが、そんなこと柊華にはなんの興味もないことだった。 この日、柊華が町を使い尽くすまでそれほど時間は掛からず、この町の誰一人として生存することはできなかった。


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