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邂逅

邂逅。 彼女との出会いは人類にとって大きな意味を持つものであった。 人類が宇宙へ足を踏み入れてから数十年、ようやく隣接する惑星の開拓に着手して移民が始まってからまだ十年。 惑星上のあらゆる場所を探査し尽くした人類にとって、宇宙は未だ多くが解明されていない未知の空間であり続けている。 人類が抱く疑問。それは自分たちが宇宙で唯一の知的生命体であるのかということだ。 こうして人類が発展するまでには無数の奇跡が積み重なる必要があり、自分たちと同じような知的生命が誕生する確率は極端に低いとされている。 その一方、観測すら及ばないほど広大な宇宙空間においては、その無数の奇跡の積み重ねすら容易に起こるのかもしれない。 現代においても解決されることのない疑問に対し、人類はいくつかの挑戦をしていた。 その中の一つが、宇宙空間に向けての通信であり、地表や宇宙ステーションから外宇宙に向けて無差別にデータを発信し続けている。 もし、自分たちの他に知的生命がいれば反応があるかもしれない。 そんな淡い、もとい当てにならない期待を抱いての試みであったが、それが今日、報われることになった。 人類は自分たちが宇宙で孤立した存在でないことを知り、同時にどれだけ無価値な存在であるかを思い知らされることになった。 宇宙空間を平然と遊弋する一人の女の子がいた。 酸素の代わりに膨大な放射線で満たされた宇宙空間とは、生物の存在を認めない神の領域であるはずだがそんなことお構いなしであった。 少女は真っ赤な軍装に身を包み、少し苛立ったような表情を浮かべている。 マリアンナが指揮する警備艇が微弱な通信を捉えたのが数分前のことであり、その発信源をたどって周辺中域まで空間跳躍したばかりであった。 通信の出力があまりに乏しいために座標の補足に多少の手間はあったが、特に大きな問題もなく辿り着くことができた。 当たり前のように船外ハッチを開けて宇宙空間に躍り出ると、そのまま自らの身体を使い慣れた1,640メートルまで巨大化させる。 通信の発信源を辿って泳いでいけば、そこは直径5,000キロほどの小規模天体であり、そのごく一部が都市として整備されていた。 まだ惑星上に酸素大層を作る技術がないのか、透明な強化ガラスのようなもので都市全体を覆い尽くしているようだ。 「うわ、やっぱり未開拓人かぁ。面倒くさっ……」 嫌な予感が的中したマリアンナはその場でため息をついた。 未開拓人は技術発展が大幅に遅れている惑星に住まう人々を指すものだ。 彼らは技術が進歩して宇宙に進出するようになると、決まって宇宙空間に向けて自分たちの存在を知らせるメッセージを送るのだ。 一説には、自分たちだけが宇宙で唯一の知的生命などと訳の分からない心配を抱くことが原因なのだという。 こうした未開拓人たちはその愚かな行為によって、自分たちより遥かに高度な科学技術を持つ海賊を自ら招き込み、そのまま奴隷として売り飛ばされてしまうことがある。 そうした危険から彼らを保護するために未開拓人保護条約が施行されており、彼らを発見した場合には一時的に軍が保護し、その後に議会の承認を経て連合政府へ加盟してもらうのだ。 未開拓人との接触が多いのは人類居住域外を警備する軍隊であり、警備隊に属する大佐以上の階級を持つものがその任を帯びる。 新人ながらも少将の階級を持つマリアンナには、未開拓人を保護する義務が生じている状況であった。 「なんで私の担当区域で余計なことするかなぁ」 真っ白なロングブーツに搭載した重力制御機構が働き、マリアンナは赤茶けた地表に着地する。 目の前に広がるのは半円ドームに覆われた中規模都市である。 ドームの頂点ですら腰より低く、その内側に収まる都市など膝丈すらないものばかり。 それでもいくつかは高さ300メートルを超すような超高層建築物なのだろうが、悲しいことに比較対象があまりにも大きすぎたためにちっぽけに見えてしまう。 「ねぇ、とっても迷惑なんだけど。あんた達を保護するのってすんごい面倒な手続きばっかりでさ、あたしの仕事増えちゃうじゃん」 保護とは通常の軍事行動ではなく外交的な側面もある業務だ。 それ故に、必要とされる手続きの数も数えるだけで日が暮れるほどである。 毎日定時に退勤して、夕方からはベッドでゴロゴロしていたいマリアンナにとって、それを受け入れることはできない。 「今すぐ文明と技術を放棄して原始人に戻ってくれない? それなら何もしないから。……嫌ならあたしがやってあげるね」 マリアンナが片足を持ち上げてドームに翳す。 ドームの端であればそれほど高く持ち上げなくても、靴底を見せ付けることはできる。 酸素制御がまだ実用化されていない彼らにとって、このドームは生死の境と言っても過言ではない。 自分たちを守っているはずのそれ。もはや空といってもいいような存在であるはずのそれが、突如としてやってきた巨大な女の子に踏み付けられそうになっている。 240メートルの靴底がもたらす圧迫感は、航宙戦艦が飛行することで生まれる影と同じようなものであった。 住民たちは状況を全く理解できないまま、ただその光景に恐れ慄き逃げ惑うばかり。 「ま、考える時間なんてあげないんだけどさ」 マリアンナがゆっくりと靴底をドームに押し付ける。 これまで聞いたこともないような轟音が惑星都市内に響き渡り、厚さ5メートルの外殻フレームに無数のヒビ割れが生じる。 理論上では最も堅固な構造をしており、それこそ隕石の直撃でもない限り安全とされてきたはずなのに。 もしドームが崩壊するようなことがあれば、この都市に住むあらゆる生物は莫大な放射線に晒されて即死することだろう。 女の子に踏み付けられる。 たったそれだけで、10万の人々は絶命の危機に晒されているのである。 「こんなことしちゃったり?」 マリアンナがブーツを動かし、深い凹凸が刻まれた靴底をドームに擦り付ける。 先ほど靴を押し付けたときと同程度の轟音が再び響き渡るが、その持続時間が先ほどの比ではない。 上下左右に擦り付けられる度にドームには巨大なヒビ割れが生じ、その下にいる人々の小さな胸を不安で押し潰そうとする。 その場で跪いて許しを請うものも大勢いたが、意地悪な少女はそれを無視して脅迫を継続していた。 ゴミのように小さな生き物が怯え逃げ惑う様子を観察するうちに、ちょっと楽しくなってきたマリアンナであるが、それでも正面から接近してくる戦艦部隊を見落とすことはなかった。 ようやく出てきてくれた。 内心で舌舐めずりするマリアンナは意地の悪い笑みを浮かべつつ、ドームを蹂躙していたブーツを地表に戻す。 逃げ惑うばかりの人々にとっての唯一の希望は宇宙軍の存在であった。 未だ外宇宙に他の知的生命を確認していない現代において、その存在意義を常に疑問視されていた宇宙軍はこれが初の実戦となった。 全長300メートルの白色の船体を煌めかせながら航行する戦艦は全部で三隻。 この惑星に配備されている全戦力であった。 都市の上空を防御するように遷移した三隻は、マリアンナとの10キロほどの距離を維持したまま動かない。 「ねぇ、どうしたの? 悪い宇宙人を倒しにきたんでしょ? 早く攻撃しなくちゃ」 緩む口元に手を当てながら挑発してみる。 別に顔を守ろうとしたわけではない。小馬鹿にした笑いを隠すためである。 彼らの技術力はマリアンナたちと比べて数世紀ほど遅れており、おそらく熱核兵器などという骨董品ですら現役で使用しているだろう。 そんなものであれば、マリアンナは意識しなければ痛みを感じることもできない。 もちろん、現代の最新兵器だからといって彼女が怪我をすることがあるわけでもないのだが。 「こうしたらやる気になれるんじゃない?」 マリアンナが再び足を持ち上げて真っ白なロングブーツをドームに押し当てる。 先ほどの悪戯でヒビ割れたドームは、その耐久限界を迎えようとしていた。 これは紛れもなく大量虐殺の予告である。 彼女の気分次第で、今この瞬間にも住民が何千、何万と殺されてしまう。 それに焦った戦艦部隊は搭載した火砲をたった一人の少女に向けて射撃を開始した。 原子力が生み出す無尽蔵のエネルギーを集約させた高出力のレーザーと、船体の至るところに設置された発射口から無数の誘導弾を斉射する。 創隊以来初の実弾発砲であったが、日頃の訓練の成果が実ったのか、凶悪な侵略者の上半身に集弾して最大限の効果を発揮した。 最大限の効果を発揮したことで、マリアンナの軍服に黒い煤を付けることに成功したのだ。 「やっぱこんなもんか」 期待通りに弱すぎる彼らの攻撃はマリアンナの関心を引くことはなかった。 マリアンナは徐ろに貸与された端末を取り出し、待機させた警備艇からほぼリアルタイムで送られてきた映像を確認する。 そこには三隻の戦艦がマリアンナに向けてレーザーと誘導弾を発射する様子が映し出されていた。 この映像を残すことがマリアンナの目的。合法的に未開拓住民たちを虐殺するための条件である。 「うん、ばっちり。未開拓人を見つけちゃったときでも、相手が過激な好戦思想を持ってたら、保護の対象外でいいんだよね~」 いくら技術が進んだところで人間は人間だ。 極端な話を持ち出せば、石を投げつける知能を持つものが相手であれば、いつでも殺される恐れがある。 そのリスクは軍人も一般人も未開拓人も関係ない。 だからこそ、未開拓人と接触したとしても、彼らが過激な好戦思想を持ち合わせていた場合は保護をせず、必要な程度において反撃も認められるのだ。 「ほら、あたしって今は非武装なんだよ~。しかも一人だし。そんな女の子にレーザー兵器とか使っちゃうんだもん。…………あなたたち、物凄く好戦的で危険だよね」 以前、故障した民間船を発見した際、処理が面倒だったのでこっそり処分したことがある。 その時はうまくやったつもりであったが、帰投後に部下の誰かがこっそり元帥の地位にある姉にチクったせいで悪事がバレた。 烈火の如く怒る姉があまりにも怖かったので、適当に話を合わせて次からは真面目にやると約束してしまったのだ。 だからこそ規定と法規を徹底的に学びなおしたマリアンナは、このような仕事の抜け道をたくさん用意しておいた。 「残念。あなた達はもう保護してあげませ~ん! 無駄な手間を増やされてムカつくし、ちょっとだけ虐めてから滅ぼしてあげるね」 パリッ。 靴底が何の抵抗もなくドームを粉砕して都市に降臨する。 居住区画であったそこは240メートルに渡って女の子のブーツに支配された。 僅か一歩で数十の住居を押し潰し、その衝撃だけでも同じだけの建物が倒壊して吹き飛ばされる。 くっきりと刻み込まれた足跡は緊急用の地下シェルターすらも押し潰し、大地にめり込ませていた。 これだけでも犠牲者の数は千を優に超えているだろうか。 彼らの遺体を収容するためには、まずマリアンナにブーツを脱いでもらい、その靴底にこびり付いた膨大な土を削ぎ落としながら肉片を集めることになるだろう。 もちろん、頼み込んだところでマリアンナは面倒だと言って断るだろうから、それはどれだけ願っても実現しないことであった。 もう片方も足でも同様の被害を生み出しながら、両足をドーム内に揃えたマリアンナ。 何らの容赦もなく両足を使って居住区画を踏み躙るたび、未開拓人たちにとって憧れであった宇宙進出の夢が靴底の下で消えていく。 足裏に感じるザクザクした軽い感触は、クッキーよりも脆い建物を何十とまとめて踏み躙ることで得られる楽しみだ。 数万人が暮らしていたはずの居住区画が折り重なる足跡にとって変わるのは、僅か数分の出来事であった。 「ん~、いい感じ。……ちっちゃな戦艦さんたち、足元の様子見てる~? あんた達のおかげでこんなこと出来るようになったんだよ」 ブーツの太いヒールを市民ホールに突き立てながらグリグリと捻ってみる。 世界初の他惑星移植者たち全員が集えることをコンセプトに設計されたスタジアム式の大型施設であったが、女の子の片足によって一瞬のうちに姿を消した。 そこに避難していた数千人の人々も赤黒い泥となって、大量の瓦礫に混ざり合っている。 跡形もなく破壊した直後に、瓦礫をヒールで蹴飛ばしてしまえばそこには何も残っていない。 「はら、たくさん死んじゃった。……次はあれを壊すからね。嫌だったらもっと頑張って止めてみなよ」 マリアンナが意地悪そうな笑みを浮かべながら指差す先は、都市の中心に聳える宇宙ターミナルであった。 この都市にあって宇宙空間へ船を送り出すことができる唯一の施設であり、ここに暮らす人々がマリアンナの虐殺から逃れるために殺到していた。 ターミナルと言えども、その運用能力は通常時でも過稼働している状態であり、とても緊急事態によって殺到してきた数万の人々を移動させることはできない。 発着レーンはメインと予備の二本だけであり、一度の打ち上げにも一時間以上を要するのである。 当然、あの少女がそれを待ってくれるはずもない。 あの強靭な脚で一蹴りされたらターミナルは粉々に吹き飛んでしまうことだろう。 運良く打ち上げの準備が整っていた一隻だけは、辛うじて難を逃れることができるかもしれない。 その幸運な民間船の最大搭乗人数は僅か80名。 あまりにも少なすぎる搭乗枠を巡って人々の間では大規模な乱闘が生じたが、ターミナルの保安要員が銃を使って制圧することに成功していた。 ようやく全員が搭乗を終えた瞬間、管制室は通常の安全確認手順を全て省略し、一気にターミナルの打ち上げカタパルトを作動させた。 高さ500メートルのターミナルビルはその外壁自体が打ち上げ用のカタパルトであり、民間船は徐々に超高速域まで加速していく。 その乗客たちは、窓から見える不思議な光景に首を傾げていた。 いつもと景色が違う。 最初は白、次に黒、肌色、ピンク、赤。 それは居住区画を殲滅した後で歩いてやってきたマリアンナであったが、死ぬまでにそれを理解できた乗客はいなかった。 「はい残念。逃げられませ~ん」 肩幅と同じくらいに軽く足を開きながら腰に手を当て、地面を覗き込むような姿勢で船の打ち上げを待っていたマリアンナ。 居住区画からターミナルまでの三キロの距離を二秒と掛からずに詰め寄り、もしかして逃げられるかもしれないと期待していた人々を絶望させる。 打ち上げ途中の船を停止させる手段はない。そんなことをすれば、乗客たちは全員がミンチになるからだ。 80人の乗客を乗せた船は真っ直ぐに赤い布に向けて進むほかない。 制服越しでもはっきりと見て取れる大きなおっぱいが、彼らの到着を待ち構えている。 一切の回避行動をすることも出来ないまま、船はマリアンナのおっぱいと衝突して瞬時に爆散してしまう。 女の子の柔らかい乳房を揺らすことすらできないちっぽけな威力であるが、乗員乗客の肉体をバラバラにすることは簡単だった。 「おっぱいの勝ち。……ねぇどうするの? 私ここから動くつもりないけど」 彼女がそこに居る限り打ち上げは失敗する。 打ち上げ方式の性質上、避けるという選択肢がないのだから。 あの乳房に衝突すればどんな船、おそらく戦艦だって粉々になってしまうだろう。 逃げられない。 一つしか無い脱出手段がおっぱいによって塞がれてしまったのだ。 微かな希望さえも絶望に塗りつぶされた人々は、その場で崩れ落ち座り込む。 「これ使わないなら壊しちゃうね」 これ。500メートルのターミナルを指してそう呼んでいるのだろう。 少女がどれだけ巨大であるかを改めて痛感させられる。 マリアンナが膝を曲げてゆっくりと腰を下ろし始めると、ターミナル内に居た人々は少女の肉体が放つ筋肉の鼓動に恐怖する。 適度に引き締まったお尻は、飾り気のない黒のパンツによって覆われていた。 超巨大であるはずの建造物がミニスカートの内側に閉じ込められ、黒パンツによって蓋をされてしまうのはあっという間のことであった。 マリアンナが興味本位で腰を前後に軽く振ってみれば、股間と臀部がターミナル上層階を粉砕して消し飛ばしてしまう。 もっとも敏感なところに布一枚越しで伝わるクシュッという軽い感触に思わず身震いしてしまい、それだけで再び建物の上層部が崩落してしまった。 「……うん、決めた。これはちょっとずつ削って壊すね。ゆっくり壊すから逃げられるかもしれないね」 先ほどと同じく腰を振って建物を削ぎ落とすマリアンナ。 大きいはずなのに小さく、頑丈なのに脆い。 何年も掛けて作り上げた大規模施設なのに、今は少女の玩具である建物。 その中では何千、何万という人々が絶望して泣き叫んでいるであろう。 それら全てを股間で磨り潰しているのだ。 誰一人として、少女の股間で潰されて死ぬとは考えたこともなかっただろう。 マリアンナが彼らの惨めすぎる境遇に思いを巡らせていると、無意識のうちに溢れる吐息は熱っぽさを帯び、しっかり着込んだ制服の内側には汗をかき始める。 500メートルの高層建築物を擦り潰す感触など、一人でしているときより遥かに小さな刺激だというのに。 ターミナルの中にいた人々は避難どころか満足な身動きすら取れていなかった。 巨大な少女が歩き回ったせいで地中の送電網はすでに全損し、ターミナルは辛うじて自家発電装置によって機能させていたが、屋上に設置していたせいで先ほど少女のパンツによって真っ先に破壊されてしまったのだ。 電力を失ったことによって、人々の移動手段は階段だけとなっていたが、それすらも建物全体を襲う強烈な振動によって遅々として進まない。 マリアンナが喘ぐたびに、人々は激震によってその場で押し倒され、床に打ち付けられることになるのだ。 それでもなんとか出口まで到達した者もいたが、緊急事態に合わせて強制作動したエアロックによって脱出は叶わない。電力が失われた今、このエアロックが開くことは絶対にない。 あの少女ならば小指の先で軽々と持ち上げるだろうが、普通の人間であればどれだけの人数を動員したところでびくともしないだろう。 「あっ、んんっ、ん。…………はぁ、こんなもんかな」 マリアンナが十分に満足して腰を振るのを止めたとき、すでにターミナルは百メートル程の高さしか残っていなかった。 瓦礫と一緒に数千人の命を蹴散らし飲み込んだ黒いパンツは、遠目には分からない程度に湿っている。 これは帰ったら捨てなければいけないだろう。 実際には数分で終わったはずの出来事であるが、ターミナルの中で好き放題に弄ばれた人々はそれだけでも傷つき疲弊していた。 それでも、この悪夢のような出来事が終わったことに気が付き、生き残ることができた自らの幸運を神に感謝する。 「よっと」 残り僅かとなったターミナルの真上に座り込んだマリアンナ。 そこにあったはずの何もかもを押し潰してお尻が地面をしっかり捉える。 どうせ捨てるパンツなのだから汚れてもいいだろうと、お尻を左右に振って周囲の瓦礫も磨り潰していく。 奇跡的な生き残りすら許さない。完全な殺戮であった。 「はははっ。もうこの町をほとんど壊しちゃった! …………じゃ、次はあんた達かな。最後にしてあげたんだから感謝してね」 マリアンナの視線の先には三隻の戦艦が飛行している。 彼らも都市を守るために必死に戦っていたのだが、あまりにも貧弱過ぎる威力しかないために無視されていたのだ。 彼らは守るべきものが全て死に絶えているのに、それでも逃げずに留まっている。 マリアンナの顔を目掛けてレーザーを発射するが、残念なことに眉毛の一本を燃やすこともできないでいた。 そんな彼らの無駄な抵抗に失笑するマリアンナであったが、先ほど軽くとはいえ自慰に浸ったことで多少の倦怠感が残っている。 戦艦が飛翔するところまで手を伸ばしても届かないし、なにより立ち上がることすら面倒だった。 結局、座ったままもう少しだけ体を大きくすることで問題を解決することにした。 少女の肉体が爆発的に巨大化していく理解不能な光景に戦艦の乗組員たちは絶句する。 膨張する少女の体は戦艦の間近まで迫り、地表千メートル以上の高さで飛翔しているはずなのに船体のすぐ下には真っ黒な大地が広がった。 マリアンナの履く黒いニーハイソックスに包まれた太腿が、戦艦の窓から見える地上の光景を全て埋め尽くしているのだ。 「さっきの10倍まで大きくなっちゃいました♪ この芋虫みたいなのが戦艦なんでしょ? ほら、あたしの指となら互角に戦えるんじゃない?」 完全に見下しながら右手の人差し指を近づけ、戦艦と横並びに揃えてみる。 彼らが誇る最新鋭の戦艦は少女の指より遥かに小さく、辛うじて第一関節と比較することが出来る程度の存在であった。 もし、このまま指が自由に暴れ回ることがあれば、ぶつかった衝撃で戦艦は粉々に消し飛ばされてしまうことだろう。 試しに一隻の右舷側を指の平で船体を撫でてみたところ、外壁を削ぎ落として大穴を空けたうえ、どうやら主軸を圧し折ってしまったようで徐々に高度を下げ始めてしまう。 降下の途中でエンジンから出火したかと思えば、次の瞬間には船体後尾が爆発を起こし、降下ではなく落下に切り替わる。 「あっはははははは! あんたたち弱すぎでしょ! なんで女の子の指先が触れただけで沈んじゃうのよ!」 ニーハイソックスの上に落下した戦艦が爆発四散する。 数万トンの鉄の塊が激突して、原子炉の暴走による核分裂が発生する大惨事であったが、幸いなことにマリアンナのお気に入りニーハイソックスは僅かに汚れが付いただけだった。 燃え盛る残骸に指先を押し当て、そのまま柔らかい太ももに押し付けていけば、大火災は一秒掛からずに鎮火し、戦艦だった砂粒がニーハイソックスにこびり着く。 それを手で軽く振り払えば、いつもと変わらない女の子の太ももがそこにあった。 「こんなに脆いんじゃ玩具にもできないね~。守るはずの市民も女の子一人に皆殺しにされちゃうし。あんたたちさ、生きてて恥ずかしくないの?」 バカにされたことに怒ったのか、残り二隻となった戦艦の砲火は苛烈さを増した。 連続発射による砲身溶解のリスクを受け入れたうえでの全力投射である。 それは山一つを消し飛ばすほどの火力であったが、マリアンナにとっては太ももの上でピカピカと小さく光っているくらいの認識でしかない。 痛みどころか熱すら感じ取っていないのだ。 哀れみを通り越して可愛さすら覚える弱っちさであったが、だからといって生かしておく理由にはならない。 「ふふ。もう一隻撃沈しま~す。……えいっ」 正面にだらしなく投げ出していた両脚。 そのうち右脚の膝を折り曲げるように微かに動かしてみれば、僅かに地表から持ち上がった脚が巨大なアーチを生み出した。 彼女の脚を守るニーハイソックスはちっぽけな戦艦を船底から押し上げ、その勢いだけで鋼鉄の艦艇を瞬時に鉄くずに変えてしまった。 数万倍の質量が超高速で衝突したのだから当然の結果である。 マリアンナがほんの少し体制を変えただけで撃沈され、数百の乗組員は肉片となって周囲に飛び散り跡形もなく消滅した。 「脚が動いたくらいじゃ蚊でも死んだりしないんだけどなぁ。……さ、次で最後みたいだけど、もしよかったら降伏する? それなら捕虜として扱ってあげるよ」 圧倒的な力の差を嫌というほど見せつけられた宇宙軍の隊員たちは困惑した。 守るべき民衆を虐殺され、僚艦も乗組員ごと粉々にされてしまった。 そんな冷酷非道な女の子から持ちかけられた、思いも寄らない提案。 おそらく、自分たちが生き残れる唯一の可能性だ。 自分たちの存在意義の全てを自ら放棄することになるが、それでも明日を生きることができる。 艦内の意思が降伏による生存に統一されようとしたときのことだった。 「嘘に決まってるでしょ」 マリアンナは先ほど二隻目を沈めるために軽く持ち上げていた右脚を一気に持ち上げると、ちっぽけなガラクタを巻き込みながら左脚の上に重ねた。 適度に引き締まった十代女子の柔らかい太ももが、上下から戦艦に襲いかかった。 少女が脚を組むことで生じた肌の擦れる音が、戦艦の圧潰音を掻き消してしまう。 そのままスリスリと両腿を擦り合わせれば、凄まじい重量のぶつかり合いによって破片は極限まで圧縮されて目に見えなくなってしまった。 「手続き面倒だから捕虜とかいらな~い。軍人なら戦場で負けたときは死なないとダメだよ」 マリアンナの業務日報に捕虜という文字が出たことは一度もない。 それは彼女なりの理屈に基づいて徹底的な殲滅を行うことにしているからである。 相手が一人なら一人を殺し、相手が百万人なら百万人を殺す。 一応、必要なときは尋問のために生け捕りにすることもあるが、情報を聞き出したあとにちゃんと始末しているのだ。 最後の一隻を片付けたことでこの都市は完全な滅亡を迎えることとなった。 ほとんどの住民は少女のブーツに踏み潰され、お尻にすり潰され、適当に投げ出され脚に轢き潰されてその命を奪われている。 極僅かな生き残り達も、ドームが破壊されたことによる酸欠で苦しみながら死んだ。 その場でパンツとスカートについた砂粒を払い落としながら立ち上がり、周囲の様子を伺っても、数分前まで整然とビルが立ち並んでいたとは信じられない、赤茶けた地面が広がるばかりだ。 特に自分が座り込んだところにはお尻の形にくっきりと巨大なクレーターが生じている。 それでも、微かに都市の最外周部に形を保っている建物が何百棟か残っていたのだが、身長16キロ超えの巨大少女に見つかった一秒後には全てブーツの下に消えた。 「じゃあ仕上げして帰ろっと」 大地を強く蹴って宇宙空間まで身を踊らせたマリアンナは、再び自身の体をより大きなものへ変貌させていく。 目の前に捉えている未開拓人の本星は直径で約12,000キロメートルといったところか。 それほど大きな惑星ではないが、それでも身長16キロのままで蹂躙するのは時間が掛かりそうだった。 最終的にマリアンナが巨大化を止めたときには、身長が32,800キロメートル、通常時の2,000万倍という途方もなく巨大な惑星級少女としてそこにあった。 「まずはこれを片付けて……っと」 マリアンナは先ほどまで自分が遊んでいた惑星に手をかける。 直径30センチほどの小さな土の塊は、女の子に両手で掴まれたことによって崩壊を始めていた。 惑星上にあった唯一の都市。今では僅かに残骸が残る程度のそれは、その何倍もの面積を持つ左手の親指によって押し潰され、数十キロに渡って大地に埋没していった。 その直後、両手に握力が掛かったことで惑星は瞬時にその姿を失い、宇宙に漂うゴミとなった。 「これでよし。じゃあ次が本番かな」 ゆっくりと回遊しながらサッカーボールほどの惑星に接近して観察してみる。 未開拓人の本星は表面の半分以上が水で覆われており、鮮やかな水色が全体の印象を決めている。 水に覆われていない部分は植物が生い茂る緑色、その中に微かに交じる灰色の点が人の住む都市なのだろう。 先ほど見てきた科学技術の発展度合いと、この惑星の規模であればおそらく人口は30~80億人程度であると推測できる。 もちろん、マリアンナにとっては記録に残す価値もないようなどうでもいい数字なのだが。 「流石に未開拓人でも気づいてると思うけど、さっき惑星を一つ握り潰したんだ。あんた達が必死に開拓してた星はもうないの」 丁寧にそんなことを教えてあげる。 本星に住む60億の人々はその事実を改めて加害者本人から告げられることで、あまりの恐怖に心臓を押し潰されそうになる。 あまりに大規模であるがゆえに高度な観測機器など不要で、市販の望遠鏡でもあれば十分に観測することができてしまった異様な光景。 ―――あれには敵わない。 今日まで人類は地震や台風、火山噴火などの災害を無数に経験し、発達した科学が生み出した強力な熱核兵器を保有している。 人類が栄える以前には隕石の衝突によって氷河期を迎え、地表の生き物の大半が死滅したことだってあった。 だが、星を握り潰せる彼女の握力と比較すればどれもチンケなものでしかない。 災いなんて大層な呼び方はこの瞬間から滑稽なものとなった。 「自分たちが今日で滅亡するなんて思ってなかったでしょ? 調子に乗って余計なことしなければ死ななかったんだよ? ……ばーか♪」 惑星を遥かに上回る超巨体が更に巨大化していく。 実際には少し距離を詰めただけなのだが、未開拓人にはそれだけで十分な絶望であった。 せめてもの抵抗にと惑星上の対宙ミサイルを次々に発射してはいるが、最大級の核弾頭であっても生じる火球は直径250キロ程であり、あまりに小さすぎるためマリアンナは気が付きもしなかった。 一応、本星の衛星軌道上に展開していた宇宙軍艦隊も居るにはいたが、その存在が価値を持つことは終ぞなかった。 惑星を全身で覆い隠すようにして背を丸めたマリアンナは、彼らに自分たちの最期がどうなるかを教えてあげることにした。 「ふふふ。星ごとお腹と太ももに挟まれちゃった! しかも天井はおっぱい! 女の子の柔らかくてエッチなところが一度に堪能できるんだし、少しくらい喜んだらどう? さっきの星みたいに適当に握り潰されるのは嫌でしょ」 お腹。太もも。おっぱい。 そのどれもが本来であれば暖かく柔らかい女体の一部なのだ。 惑星ごとそれらに覆い被されることで、肉体の檻に囚われた住民たちは若い女の体臭に嗅覚を支配された。 それはマリアンナお気に入りのボディソープの匂いに、先ほどの軽い自慰でかいた汗が混じり合った体臭である。 60億人が暮らす惑星の大気が一人の少女によって満たされてしまう。 「じゃ、潰しちゃうね。……ギュー、っと♪」 体育座りをするように体を丸め込んでいくマリアンナ。 肉体の檻に閉じ込められていた惑星は、お腹によって削り取られ、太ももによってひしゃげ、おっぱいによって磨り潰される。 惑星はその凄まじい圧力に一瞬たりとも持ち堪えることはなく、即座に崩壊して土塊へと姿を変えてしまう。 その表面だけで生活していた生物も例外なく肉体を磨り潰されてしまった。 上半身を軽く左右に動かして更に磨り潰してしまえば、土塊すらも砂粒に取って代わった。 マリアンナが姿勢をもとに戻したとき、その空間には惑星を構成していた土が浮かぶのみ。 それすらも片手で軽く振り払われたことで完全に消失してしまう。 「ま、こんなもんかな」 余計な仕事を増やそうとする悪者たちを退治したマリアンナは、満足そうに自分の指揮する警備艇に帰還する。 艦長室に戻ってシャワーと着替えを済ませると、そのままベッドに倒れ込んで昼寝をすることにした。 ……後日、この件についての顛末書を提出したところ、激怒した姉から呼び出され、ふざけた言い分で虐殺を正当化するなと叱り付けられることになるのだが、それは少し先の話である。


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