報告
Added 2020-07-26 05:30:11 +0000 UTC報告。 仕事においてこれほど重要で面倒なものもない。 上位の者に対して自分の行った行動、それに至る経緯、結果を通知する。 シンプルであるが故に難しいという職場における永遠の課題だろう。 特に軍事組織におけるそれは、民間企業の比ではない程の手間が掛かる。 マリアンナの所属する軍は設立から日が浅く、良く言えば個性を尊重する柔軟さを持ち、悪く言えば個人の好き嫌いが色濃く現れる組織だった。 そのため、上司の顔色を伺いながらの仕事が必要になり、報告書一つをとってもため息を付きたくなることもあるのだ。 だからこそ、自分が指揮する小型宇宙船が救難信号を捉えたとき、赤髪の少女は少し逡巡した後、それをなかったことにすると決めた。 「うわ、これ結構大きいじゃん!?」 救難信号を発していたのは大型の貨物旅客船だった。 全長は400メートル近くあるのだろうか。つい最近まで学校で軍兵学を学んでいたマリアンナに見覚えがないのだから、おそらくは民間の船なのだろう。 この周辺宙域は戦時下において民間船舶の航行を禁止していることから、何らかの事情で迷い込んでしまったらしい。 よく観察すれば艦尾にある四基のエンジンが見事なまでに大破しており、推進力ではなく惰性で動いているだけのようだ。 四基ともが破壊されるとなると、流石に偶然の故障ではない。 考えられそうなものは、この宙域に散布された宙間機雷に接触したことによる事故だろうか。 となると、本来の手続きに則って対応しようとすれば凄まじい量の書類が必要になる。 昼休憩がなくなるのはもちろん、残業どころか休日出勤で対応することになるだろう。 面倒くさい。絶対に嫌だ。 「ごっめーん! あんた達を助けると面倒だからさ、なかったことにするね! 運が悪かったんだって諦めて」 マリアンナが十代の少女らしい小さな手を船に伸ばす。 身長1,640メートルの巨人の手は200メートルに迫る大きさでもって、容易く船の艦首を包み込んでしまった。 続けて反対の手を伸ばして艦尾を包み込む。 エリート将校の証である赤褐色の軍服を押し上げる豊かな乳房よりも少し下、ちょうどお腹のあたりで押さえ付けられる400メートルの巨船。 傍から見れば精巧なプラモデルを持ち上げているように見えるだろうか。 だが違うのだ。 船は実際に400メートルの大きさがあるし、中には1,500人の民間人が突如として現れた女巨人に恐れ慄いている。 宇宙空間にあって特殊な装備を付けずに活動しているだけでも十分に異常なのだが、なによりもその巨体が放つ異常性があまりに強すぎて些事なことに思えてしまう。 なにやら不穏なことを語りかけながら船を捕えたようだが、このまま近くの港まで運んでくれるのだろうか。 呑気な人々はまだマリアンナという少女の本性が分かっていなかった。 「じゃあ片付けちゃいますかね。よいしょっと」 船体の真下から超高速で接近してくる巨大な物体。 それは、民間企業の船が搭載するような最小限の性能しかないレーダーにもくっきりと映った。 だが、残念なことにその正体を分析したり、まして回避したりなどは時間的にも物理的にも不可能だった。 マリアンナが持ち上げた右膝が400メートルの船体を破壊したと理解できたのは、それをやった当の本人だけ。 女の子の膝蹴りは巨大貨物旅客船を一撃で大破させ、中央部を完全に消し飛ばして前後に分裂させてしまった。 「ふふん。楽勝楽勝」 不要なダンボールを折り畳むかのような適当な一撃だった。 だが、それは巨大な船を真っ二つに圧し折り、何百人という乗客を殺害するには十分すぎる威力だった。 これがたとえ最新鋭の戦艦であっても結果は同じだろう。 強烈な膝蹴りで破壊された船体中央部からは続々と小さなものが溢れて、宇宙ゴミとして周囲に漂い始めた。 もちろん、そのゴミの中には人間も混じっているのだが、千分の一という大きさでは探すのも面倒だ。 どうせ酸素がなくて死ぬのだから放っておいてもいいだろう。 マリアンナの両手にはそれぞれ船体の前半分と後ろ半分が残っている。 衝撃時に各種ブロックを自動的に閉鎖する安全システムは全ての宇宙艦船に必須装備されており、幸いなことにこの船のシステムは正常に稼働していた。 中央部を消し飛ばされたとしても、それ以外のブロックにいた者は宇宙空間に投げ出されることはなく、大小の怪我をするだけで生き残ることができたのだ。 もちろん、マリアンナもそんなことは知っている。 だから本当に時間がないときは手を叩くように両方をぶつけ合わせてサクッと皆殺しにしてしまうのだが、今日は少しだけ遊んでみようと思う。 「殺しちゃうお詫びに少しエッチなとこ使ってあげる。感謝しなさいよね」 弱すぎて何の抵抗もできない人間たちを見下す少女。 本来、救うべき民間人をその手で葬る背徳感にはまだ慣れそうもないが、決してそれは嫌なものではなかった。 いっそのこと巨大化の力を秘密にするのを止めて、好き放題に暴れてやろうかとも思うが、まだ人間としての心が残るマリアンナには出来そうもなかった。 「ほら、私の胸って結構大きいでしょ。なかなかエッチだと思うんだけど、この胸になら潰されても悪くないんじゃない?」 マリアンナが右手で掴んでいる船体艦尾を胸と同じ高さまで持ち上げる。 その動きに合わせて、無残に引き千切られた断面から大小のゴミが撒き散らされた。 隔壁のおかげで生き残ることができた2百余名の乗客たちは、千倍の巨体を持つ少女が何をしようとしているのか理解し、あまりの理不尽に泣き叫ぶ。 やめてください! 助けてください! 死にたくない! 命を玩具にするな! ちっぽけな彼らは各々が抱く感情を吐き出し、ニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべる十代の少女へ投げかける。 だが、悲しいことにそんなちっぽけな声は彼女の耳には届かないし、届いたところで聞き入れてもらえるはずもなかった。 マリアンナが手に持った船体艦尾を自らの胸に押し付け、そのまま上下左右に動かして摩り下ろしていくと、百メートル以上あった残骸がみるみるうちに削り取られてしまう。 その全てが軍服に付着する細かいゴミとなるまでに10秒も掛からなかった。 「ふぅ~。これ結構いいわね。なんだか変な気分になっちゃいそう」 ちっぽけな虫けら相手の悪ふざけ。 そのはずなのに胸が僅かに高鳴り、腰の奥にむず痒さを覚えてしまう。 今この瞬間に同じことをもう一度やってしまったら、完全にその気になってしまいそうだった。 胸元を軽く叩いて柔らかい乳房を揺らすと、付着していた無数のゴミが宇宙空間に投げ出されていく。 少女の巨乳に2百名以上を虐殺した痕跡は残らなかった。 「あんたたちはどうする?」 左手に残された艦首部には艦尾よりも多くの人々が残されていた。 無慈悲な少女から虐殺のされかたについて相談されたわけだが、誰もそれを悪ふざけだとして笑い飛ばすことができそうにない。 実際、周囲にはこの少女によって破壊された船の残骸が幾万と漂っているのだから。 「太ももでいい? 鍛えすぎないように気を付けているから、ちゃんと柔らかいよ」 左手で掴んでいる船体を自らの股下に持っていき、宣言どおりに太ももで挟み込む。 勝手に改造している軍服の下半身は、ピンクのミニスカートと黒のオーバーニーソックス。 足先は白のロングブーツがガッチリと守っている。 挟まれた船体は柔肌とソックス生地のちょうど交わる辺りであり、すぐ上には股間部を覆う黒い下着が聳えるのだが、彼らが真上を見上げる余裕はなかった。 意識せずとも微かに動く太ももの筋肉が船体を締め付け、外側から徐々に圧潰させているのだ。 船内に響き渡る金属が擦れて潰される轟音に人々は気が狂いそうだった。 「なんにも悪いことしてないのに殺しちゃってゴメンね。でも、これで許してくれるでしょ」 自分の仕事を減らすための少し残酷な遊び。 マリアンナは股下で最期の時を待つ民間人たちの怨嗟を想像して股間を湿らせていた。 彼らはただただ運悪くこの宙域に迷い込み、さらに運悪くエンジンが故障し、加えて運が悪いことに面倒くさがりな新米高級将校に見つかってしまったのだ。 どれか一つでも揃わなければ、太ももに潰されたりすることはなかったはずだ。 ただただ、運が悪かったのだ。 「あっ! 潰れてる潰れてる。脆すぎでしょ~、もう半分も残ってないんじゃない?」 特別な力は必要なかった。 普通にしているだけで自然と脚が閉じようとするのだから、それで十分だった。 人間たちが作り出した巨大な鉄の塊が女の子の太ももに蹂躙されていく。 鋼鉄の船体が柔肌に競り負けて削ぎ落とされ、次々と人々が宇宙に投げ出されて周囲に散らばる。 マリアンナが太ももをスリスリと動かせばその破壊はさらに加速する。 スリスリ。スリスリ。 女の子の容赦のないお遊びが人々の命を奪い去っていく。 誰一人としてそれに抗えるものなどいない。全員が面倒くさがりの少女によってその生涯を終えていくのだ。 結局、4百人以上が生き残っていたはずの船体艦首部は柔肌とオーバーニーソックスによって蹂躙され尽くされ、跡形も残らなかった。 「はーい、これでおしまい! ……んっ? あ、忘れるところだった」 元々が400メートルの貨物旅客船だった残骸が宇宙空間に漂う。 破片の数は数百万にも及ぶだろうか。 もちろん、広大な宇宙空間にどれだけデブリを撒き散らしたところで迷惑する人間などまずいないはずだが。 マリアンナはスカートのポケットから手の平サイズの端末を取り出し、何度か画面をタッチして周囲の探査をはじめる。 画面にはいくつかの赤い光点が表示されている。脱出ポットが発する信号だった。 「やっぱりね。脱出ポットなんて見落としたら大変なことになっちゃうよ」 十代の女の子から命からがら逃げ出した極少数の生存者達。 身動きが取れないほど狭いポットの中で安堵の表情を浮かべていた彼らは、次の瞬間には意識が途絶えてしまった。 マリアンナが蚊を潰すくらいの感覚で、両手でパンっとポットを叩き潰したのだ。 パンッ、パンッ、パンッ。パンッ。 端末を見ながら次々にポットを見つけては潰してしまう。 「よし、今度こそおしまいだね」 一人の生き残りも出さないように念入りに殲滅したマリアンナ。 さらに現場から立ち去る前に、周囲に漂うデブリに腕を突っ込んでかき回しておいた。 奇跡すら許さない徹底的な虐殺。その冷酷さはマリアンナが軍人として成功を収める最大の理由でもあった。 自分の船に戻ったマリアンナは残骸がこびり付いていた制服をクリーンタンクに投げ込み、シャワーを浴びる。 この後は最初に拾ってしまった救難信号の履歴を消すだけ。 夕方の提示報告は普段と同じく、異常なしで済ませることができそうだ。