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ご褒美

ご褒美。 窓から差し込む朝日で目を覚ます。 外はここ数日続いた曇り空とは無縁の快晴。 今日を楽しみにしていた柊華にとっては嬉しいことだ。 まずは普段通りの洗面と朝食にして、その次は大好きな服選びの時間。 何度も試着を繰り返し、最後に決めたのは白いニット地のセーターと紺色のロングスカート。足元の寒さ対策は厚手のグレータイツで完璧だった。 靴は最期まで悩んだが、結局は無難に黒のショートブーツを選んだ。 次の職場は私服で勤務することになる。 そのために買ってきたばかりの組み合わせだったが、中々のお気に入りですぐに着てみたかったのだ。 次の職場。 そう、ついに柊華は長い再就職期間を終えたのだ。 以前の職場をその周辺ごと踏み潰してから三カ月。 主に妹のせいで狂乱寸前まで陥った社会の中で職を得るのはあまりに困難だった。 だからこそ、柊華は再就職を頑張った自分へのご褒美を妹にねだった。 実沙には心底嫌そうな顔をされたが、なんとか無事に希望通りのご褒美をもらうことができた。 1000万人。 就職のお祝いに使っていいとされた小人の数は膨大だった。 「今日はここを使いますね」 狙いを定めた町に最初の一歩を踏み入れる。 シュッという軽い感触と共に、何百という住宅が住宅がブーツの下敷きとなった。 さらに続けて二度三度とブーツを振り下ろしていく。 今日は遠慮も我慢も必要ない。ドンドン潰して殺してしまおう。 振り下ろした足を左右に振ると、地面には茶色い線が生まれる。 たったそれだけで何百何千もの小人の命と彼らが築き上げた生活の全てを瞬時に奪い去る。 常人の千倍という大きさはあまりにも圧倒的な存在だった。 「クスクスッ。蟻みたいに皆殺しにされる気分はどうですか?」 口元に浮かぶ笑みを左手の甲で隠す。 久しぶりに思いっきり遊べる嬉しさが込み上げてきて押さえられそうにない。 だからこそ次の一歩をすぐに踏み出してしまう。 クシャ、クシャ。 細く長い脚が躍動するたび、その先端をしっかりと包み込むショートブーツが軽々と持ち上がり、超高層ビルでさえ遠く及ばない大質量を町に叩き付ける。 住宅も商店もビルも車も人も関係なく、遥か上空から振り下ろされる靴底で破壊して押し潰していく。 歩く。 たったそれだけのことで人々は自らの肉体も家族も友人も全てを奪われる。 数キロに渡って広がっていた住宅街も、数分も経たずに折り重なった足跡に消されてしまう。 「皆さんの暮らして町、サクサクして気持ちイイですよ」 町の中心を貫くように通っている大通り。 避難しようとする小人たちが集まり、まったく動けない大渋滞だ。 数人が車を乗り捨てて逃げ出したことで渋滞は一切解消されない。 そんな様子を千メートル以上の高みから微笑みながら見下ろしていた。 「そこにいると邪魔ですよ」 大通りを逃げ回る無数の小人たちの真上に靴底を翳す。 さっきまで青く澄み渡っていた空がゴム質の黒に覆い尽くされた。 日頃から見慣れているはずの形をしたそれは、数百メートルの上空で揺らめいている。 「私も歩きたいんです。ノロノロしてると踏み潰してしまいますよ」 適当に足首を捻ってみる。 250メートルの足が生み出した暴風が地上を這い蹲る小虫を吹き飛ばす。 通りの両端に並び立つ雑居ビルの窓ガラスが砕け、中には一部が崩れてしまうものまであった。 一瞬にして数十メートルが廃墟と化し、生き残った小人たちは悲鳴を上げながら走り出したり、その場でへたり込んだりしていた。 そんな彼らの頭上で巨大な影がより大きくなりつつあった。 「ノロマは自己責任ですからね」 ズン。 大通りだけでなく周囲の雑居ビルまで何十とまとめて踏み潰した。 先程の風が起こした被害など比較にもならない大災害。 ブーツの下で生涯を終えた小人の数は数えきれないほどだ。 次の一歩は遠くに振り下ろされた。 172㎝の長身に相応しい長さの脚を広げた結果、実に一キロ以上も遠くに足を振り下ろすことができた。 当然、振り下ろした先にあったものは全て靴底でゴミと化した。 女性に跨れてしまった一キロの空間には何千もの小人。 自分たちを覆い隠すカーテンは濃紺で、それを支えるのはグレーのタイツに包まれた二本の脚。 雲がかかるほどの距離には漆黒の下着が彼らを見下ろしていた。 「あら、下着を覗き込む変態がたくさん。まとめてお仕置きしてあげます」 前に踏み出しておいた左足を引き寄せる。 ブーツの靴底はアスファルトなんてないかのようにしっかり地面を踏み締め、十メートル以上も沈み込んでいた。 小人がどれだけ集まって力を合わせてもビクともしなが、柊華ならばあまり力をいれることなく簡単に動かせる。 黒い津波となったショートブーツが進路上の全てを薙ぎ払いながら超高速で移動していく。 飲み込まれたは瞬時に肉片に変わり、あらゆる構造物は瓦礫や砂と化す。 一キロという広大な空間にあったものは全て柊華のショートブーツによってゴミになってしまった。 ちなみに、靴によって集められた百メートル越えの堆積物の山は一踏みで消え去り、足跡になった。 「少しは反省しましたか?」 反省などできるものは残っていない。 彼らは靴底で泥と瓦礫に混ぜ込まれて赤黒い肉片になったからだ。 もちろん、大虐殺を行った柊華自身が一番分かっていることだが。 ほんの一瞬にして変わり果てた街並みに思わずニヤケてしまう。 あれだけたくさんいた小人や綺麗に並んでいた車、建物はすべてがグシャグシャのよくわからないゴミと化している。 小人たちが何年も掛けて作り上げたものを気紛れに破壊できてしまうのが面白くて仕方ない。 次は何をしようか。 大通りを小股で踏み潰しながら歩く柊華。 小人は流石に脇道に逃げ込んだらしく、先ほどに比べれば一歩当たりの犠牲者の数は減った。 それでも百人程度は靴底のシミ汚れとなっているようだった。 大通りの先にはいくつもの路線が乗り入れる大規模な駅があった。 町の中心にして、交通の要。 ここがあったからこそ町は中規模都市まで発展することができたのだ。 「大きな駅は便利そうですね。……生意気です」 柊華が済んでいる部屋の最寄り駅は小規模なものだ。 乗り入れる路線も少なく、終電も早いため決して便利とはいえない。 小人たちが自分より便利そうな生活をしているのは許せない。 持ち上げる足は自然と高くなり、太腿は大地と水平となる。 明らかに歩行とは異なる明確に踏み潰す意思をもった動作だった。 「駅にいる皆さん、中からじゃ見えないと思いますけど、もう真上に巨人の足がありますよ。このまま振り下ろして皆さんを踏み潰すんです」 日頃から小さな声で話す柊華だったが、千倍もの大きさがあれば話は別だ。 美しい口元から発せられる雷鳴は、巨大な駅全体だけでなくその地下にいる小人にまでしっかりと届いた。 一万人以上の小人が逃げ込んでもなお余裕のある巨大施設だったが、柊華のブーツと比較すれば矮小なものに見える。 「ああ、すっごく楽しみです。きっと中にはたくさんの人がいるんでしょうし、死にたくないはずですね。でもダメです。私の右足が皆さんを踏み潰したくてうずうずしてるんです」 このまま少し虐めてやろうか。 爪先でチョンとしたり、踵を振り下ろしてみたり。 一瞬、そんな考えが頭を過ったが、もう足を持ち上げているし、今日は特別に好き放題に暴れられるのだ。 この玩具は贅沢に使い潰してしまおう。 「それでは、さようなら」 あまりに凶悪で無慈悲な黒塊が振り落とされた。 柊華が勢いを付けたこともあって、駅舎は瞬時に爆砕され瓦礫と煙が周囲に巻き起こる。 沈み込んでいく靴底が地下施設を当然のように蹂躙し、それをより深くまで押し込んだ。 グググッと体重を乗せていけばさらにブーツはめり込み、持ち上げればその足跡の深さは百メートルに迫り、最底辺は凄まじい重量によって圧縮されたことで岩のように固くなっている。 柊華の笑いを誘ったのは、あまりにくっきりと残った靴底の模様だった。 そこに構造物があり、一万以上もの人間がいたなんて誰も信じないだろう。痕跡などなにもないのだから。 「フフっ。大した感触もありませんでしたけど、なかなか面白かったですよ」 自分の足跡を見下ろしながら呟く。 たった一歩、ほんの一瞬で自分が作り上げた渓谷。 小人たちの矮小な街並みと比べてなんて巨大なのか。 深々とした足跡のすぐ横に再びブーツを降ろし、駅だった穴の周辺を掻き混ぜるように一回り振り回した。 町の中では比較的大きな建物が集結していたが、ブーツが通過した後には何一つ残らなかった。 まきこまれた電車などアルミホイルの如く潰れている。 再び小さな街並みを蹴散らしながら歩き出す柊華。 すでに半壊状態の町を後にして、少し離れた隣の町に向かっていた。 郊外は田圃と畑ばかりで面白くないが、一か所だけ面白そうなものを見つけた。 白い外壁に青に塗装された屋根。 屋根の先端には巨大な十字架が付いていた。 この教会には柊華が遊んでいた町から逃れてきた信者が詰めかけ、なかなか広いはずの駐車場は車で溢れかえっている。 当然、教会の中に全員が入ることはできず、入り口を開放しているようだった。 一様に跪いて両手を合わせる彼らは真剣に祈りを捧げているようだった。 「クスクス。とっても悪いお姉さんが来てしまいましたよ?」 小さな彼らを遥か上空から見下ろしながら微笑みかける。 こうすると大抵の小人は狂気がちに逃げ回るのだが、彼らはそんなことはしなかった。 とても敬虔な信仰を持っているようだった。 柊華は彼らをたっぷり虐めるため、その場でしゃがみこんだ。 ゆっくりと右手を教会に伸ばしていき、器用に人差し指だけで屋根の十字架を粉砕してあげた。 柊華としては細心の注意を払ったつもりだが、うっかりと屋根と外壁の一部を消し飛ばしてしまったらしい。 流石に耐え切れなかったのか小人の悲鳴が聞こえる。 「お祈り止めたら神様が助けてくれませんよ? こうしたらもっと頑張れますよね」 屋根を消し飛ばした指をそのまま教会の正面に突き立てる。 コンクリートの舗装を易々と突き破り、そのまま一気に沈み込ませていく。 教会なんぞ瞬時に捻り潰せる巨塔が蠢く様子に小人たちは戦慄する。 第一関節まで指を沈めて作り出した穴は深さ2㎝程度の小さなものだが、小人からすれば20メートルもある大穴だ。 そこにいたはずの小人は柔らかい指先に押し潰され、穴の最奥まで押し込まれていた。 これで小人たちが教会の外に出ることはできなくなった。 ついでに駐車場に手を伸ばして適当に薙ぎ払っておいた。 自動車、バイク、自転車。 小人たちがここまで乗ってきたあらゆる乗り物がこの一瞬で潰れ、転がり、吹き飛んでいった。 「どうでしょうか。頑張る気になりましたか?」 もう彼らに逃げることはできない。 生き残れる可能性は彼女の慈悲か神の奇跡。 意地悪そうに笑う巨人に慈悲などありはしないだろう。 結局、彼らは先ほどまでと同じように祈ることしかできないのだった。 「うんうん。それでいいんです。神様が助けてくれるといいですね」 柊華は風圧で教会を吹き飛ばしてしまわないように気を付けながら立ち上がる。 あっさりと遠ざかっていく山の如き巨体。 完全に立ち上がると、教会の中の小人に見えるのはブーツだけとなった。 そのブーツでさえ、次の瞬間には彼らの眼前から消えてしまった。 もしかして。 そんな淡い希望が小人たちに広がり始めてから数秒、小人たちは歓喜に沸き立ち、そしてその生涯を終えた。 「残念。祈りは届かなかったみたいですね」 振り下ろした左足をグリグリ捻じる柊華。 先程の駅は右足だったので、今度は左足に踏み潰させてあげた。 木造で長い歴史のあった教会。多くの人々の憩いの場であり、神の家とまで呼ばれる建物を踏み潰す。 その背徳感が左足から脳に伝わってくるかのようだった。 ブーツを持ち上げると、足跡の底には白いゴミのようなものがあったが、それが教会だった痕跡のようだ。 次の町に辿り着いた柊華は小さな一般住宅や雑居ビルなどを適当に蹴散らしながら一気に中心部を目指した。 一応、住宅の中でも高級そうなものは洩れなく踏み潰しておいた。 そんな適当に町を消費しながら柊華が目指していたのは、町の中心部に並び立つ高層ビル群だ。 遠目に見つけたときからこれを壊したくて仕方なかった。 「小さなビルがたくさん。小人さんたち頑張って作ったんですね」 ビルは決して小さくはない。 二十近く立ち並ぶビルはどれも150メートルを超す超高層ビルであり、上層階ならば展望台として使えるはずなのだ。 そんなビル群だがすぐ隣に出現した黒いショートブーツによって随分と弱弱しい存在に見えてしまう。 柊華がその気になればこのビル群をまとめて蹴り飛ばし、すべてを一瞬にして瓦礫にしてしまえるのだ。 だが、柊華はそのつもりはなかった。 ゆっくりと腰を屈めていくことで、濃紺のロングスカートが大地を蹂躙した。 柊華が着るスカートは大して重いわけではないが千倍もの大きさがあれば簡単に街並みを消し去ってしまう。 足元に少しだけ残った建物は、タイツ越しにお尻に潰されてその形を失った。 適当に脚を投げ出して座り込むと、グレータイツに包まれた長い脚がビル群を包囲した。 「フフフッ。女の子の脚と股間です。あんまり見ないでくださいね」 無理な要望だった。 あまりに巨大すぎる脚は山脈の如く聳え立ち、小人の視界を埋め尽くした。 超重量が大地を軋ませる音が柊華の股の中に響き渡る。 柊華自身が気が付かない程度の筋肉の収縮も轟音を生み出す。 「脚を広げて座るなんてはしたないですよね? 大丈夫です。すぐに閉じてしまいますから」 脚を閉じる。 そんなことをすれば間に捕らわれているビル群と何万もの小人の命はどうなってしまうのか。 考えるまでもなく全てを破壊し尽くし消し去るのだろう。 グレータイツによって引き締めれられ、艶めかしさすら漂う長い脚は小人にとっての虐殺兵器だった。 「でも安心してください。私は優しいので皆さんが逃げるための時間をあげます。……10秒だけですけど」 笑い出しそうになるのを必死にこらえる柊華。 彼女に優しさなど欠片もない。 どうやって小人を怖がらせ、絶望させ、侮辱するか。 柊華の関心はそれらに向けられている。 もちろん、何をしても結果はかわらない。 自分の脚が引き起こす大虐殺を想像して胸が弾んでしまう。 股なんていう僅かな隙間で蠢く小人の数はどれほどだろうか。 ゆっくりとカウントダウンをしている時間すらもどかしい。 「10秒経ちました。では、約束通り脚を閉じます」 ゆっくりと。 本当にゆっくりと脚を閉じていく。 そのせいで太ももに触れたビルが爆散することなく、横倒しになってそのまま崩れていった。 一棟、二棟、三棟。次々に高層ビルがその姿を消していく。 ビルの瓦礫に呑まれて大勢の小人の姿が見えなくなる。 横倒しのビルの上を柊華の脚が通過すれば、等しく赤茶けた跡になってしまう。 「砂のお城より脆くて気持ちいいですよ。……もう我慢できませんので、いっきにいきます」 パンっ! 手を叩くのと同じような音がして、両脚は一瞬で閉じられた。 柊華自身がちょっと痛く感じるくらいに力を込めた一撃は、そこにあった全ての建物を完全に粉砕してしまった。 あまりの力で堆積物すら存在せず、上空から見下ろす扇状の跡は実に見事なものだった。 余韻を味わうように太腿を擦り合わせる柊華。 タイツの滑り具合が気持ちよく、ついつい何度も擦り合わせてしまた。 「さて、そろそろ本番にしましょうか」 二つの町に壊滅的なダメージを与えた柊華。 普段ならもっと丁寧にそれこそ建物など一つも残さないように町を使っていくのだが、今日はそんなことをする必要はない。 贅沢に。豪快に。町を使い尽くしてしまおう。 五万人しか使えないときには千倍以上の大きさになることは滅多にないのだ。 これ以上大きくなって大都市を踏み付けると、ほんの数歩で五万人では収まりきらない大虐殺になってしまうことがある。 消費量の約束を破ると妹が怒るのでそれはできないのだった。 「でも今日は気にしません。フフッ。10万倍なんていつ以来でしょうか」 座りこんだまま一瞬にして巨大化する柊華。 タイツに包まれた脚とお尻が街並みを徹底的に蹂躙し、山ですら瞬時に粉砕しながら膨張する。 長身なんて言葉では言い表せない巨体は172キロメートルにも達しており、座っていてもなお宇宙空間に顔がある。 見下ろす地表は苔とカビの集まりにしか見えない。 「この白いのが町なんですよね。フフっ、お邪魔します」 白いカビを指でなぞってみる。 何の感触もないが、カビは土と混ざって完全に見えなくなった。 恐らくこれだけでも何万、もしかしたら何十万の小人が死んだのだ。 指先にこびり付いた砂を一息で吹き飛ばせば、町があった痕跡すら残っていない。 続いて柊華は足元に手を伸ばし、ブーツの紐を解いて足を抜き出した。 両方のブーツを脱いでから揃えて地面に置くと、気付かれることすらなく一つの小さな町が消えてしまった。 ブーツを脱いだ足はまだ下ろさない。 10万倍という滅多にできない大きさでの踏み潰し。 出来れば最初の一歩は大都市に振り下ろして大虐殺をしたい。 「あっ、このカビは大きくていいですね…… クスクス」 グレータイツに包まれた足裏が日を遮る。 25キロもの巨足が二つ揃って都市の上空を覆い尽くした。 ブーツによって蒸らされ、一部が湿って足に張り付いているタイツ。 女性らしく細長い柊華の足は悪意を持って小人を虐殺しようとしている。 「四回くらい踏んだらなくなってしまいますね。小さくて大きくて、とっても虐めたくなります……」 ズドン! 最初に振り下ろしたのは右足だった。 何も躊躇うことはない。思いっきり足を踏み下ろした。 座りながら振り下ろしても大した力は入らないが、そのにあった都市と住んでいた数十万人を叩き潰すには十分だった。 そして次の瞬間には左足も叩き付ける。 ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン! 二百万人以上が暮らす大都市を自分が一瞬で消し飛ばすのが楽しくて、ついつい何度も足を振り下ろしてしまう。 タイツの足裏は泥で汚れ、染み出した海水で濡れてしまうが構うことはない。 子供が癇癪を起して足踏みするかの如く振り落とされる25キロの巨足。 ほんの数秒の間に地形が変わり地図を塗り替えてしまった。 「あ、あ、あああ。良いです。最高です。みんな死んでしまいましたぁ……」 座り込んだまま自分の足裏を眺める柊華。 見慣れた自分の足。大きくて強くて全てを破壊する足が。 お気に入りのタイツがグチャグチャに汚れていたが、これが都市を踏み躙ったのだと思うと体が熱くなってくる。 「ふへへへっ。次はこっちです」 ズドン! 先程よりは規模の小さい町だった。 柊華の足が届く範囲にあって気付かれてしまったのが運の尽きだった。 振り落とされた左足に叩き潰され、そのまま地中へ沈めこまれた。 一瞬のことで避難などできるはずもなく、生存者はいない。 「何人死んじゃいましたか? 十万人くらい?」 ついにニヤケ顔を隠すことをやめた柊華。 完全に舐め腐って侮辱しているのだ。 しかし、それはしかたないこと。 細菌のような大きさしかない人間なんて存在を認知できない。 女性の一踏みで全滅するなんて虫ケラにすら及ばないのだから。 「どんどん潰しますよ。ほら、ほらっ」 それからも目に付く範囲にあった白カビを踏み潰していく。 容赦も遠慮もなく、次々とリズミカルに町を消し去る。 厚めのタイツ越しに感触なんてないが十分に楽しい。 一分もしないうちに、柊華の脚が届く範囲に町は消費され尽くしてしまった。 「もうそろそろ約束の人数ですね…… ここまで大きくなるとあっと言う間になくなってしまいます」 最期に使う都市は最初から目を付けておいた。 ギリギリ脚が届かない距離にある都市は、おそらく国内でも最大級の人口を誇っているはずだ。 その証拠に真っ先に潰した200万都市よりもさらに一回り大きいのだから。 柊華は最期の楽しみを味わうため立ち上がり、一歩を踏み出して目的の都市を足元に捉え、その場にしゃがんだ。 「皆さん見えますか? 女の子のお尻です。ちょっと汚れてしまっていますけど、柔らかいし温かいんですよ」 スカートを適当にまくり上げて眼下を覗き込む。 小人たちが逃げ回る様子や恐怖が伝わってこないのは残念だが、間違いなく怯えているはずだった。 「特別に触らせてあげます。変態呼ばわりしたりはしないので、たくさん触ってみてください。タイツ越しで気持ち良いですよ」 そういってスカートから手を離した。 濃紺のロングスカートが重力に引かれて町を襲い、それだけで十万人の命を奪い去った。 巨大すぎるスカートによって町は完全に隔離され、女の子とその衣服が作り出す空間に完全に閉じ込められた。 巨体が生む熱気と臭いが立ち込め、町全体を覆い尽くしていく。 「女の子のお尻で蹂躙されちゃうなんて惨めですね。……小さいからいけないんですよ? 私は座るだけなんですから」 ゆっくりをお尻を下ろしていく柊華。 山脈ですら比較にならないほどの大質量。もはや小惑星と化したお尻が数千数万の建物をなんの苦もなく押しつぶした。 柊華からすれば地面に座り、ちょっとひんやりしたくらいの感覚でしかない。 流石に大都市を一度に潰しきることはできなかった。 「大丈夫です。ちゃんと皆さんに触らせてあげます」 柊華は両手を地面につけて、お尻を前後に揺り動かした。 ほんの一往復で大都市はお尻の下に完全に消え去った。 こびり付いた汚れを落とそうと、パンパンと叩きながら立ち上がる柊華。 300万人が生きていた場所はすでにお尻を擦り付けた跡しかないが、何となく足を踏み降ろして踏み躙ってみると、柊華の気分はさらに高揚していく。 それが何故かは柊華にもわからなかった。 「このタイツ、もう捨てるしかありませんね」 足裏、お尻、そして股間部。 至る所が汚れ切ったタイツを洗濯するのは面倒だった。 結局一回しか履いていないが、後悔はない。 「大満足です。またやりたいですね……」 次の機会はいつになるだろうか。 妹のご機嫌を伺いながらチャンスを待つとしよう。 ご褒美の時間はこうして終わりを告げた。


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