花火大会
Added 2020-07-11 15:01:17 +0000 UTC花火大会。 実沙は一人暮らしをしているマンションの一室でパソコンに向かう。 隣町で行われる花火大会について調べるためだった。 噂で聞くと他県からも見物人が集まるほどの人気らしい。 実際に調べると、打上数は二万発を超え、見物人が十五万人以上。 屋台も何百と立ち並ぶとのことで、なかなか規模が大きい花火大会だ。 これは面白そうだし、是非とも遊びにいきたい。 ならそれに相応しい服装が必要になる。 実沙は駅前のデパートへ買い出しに行くことにした。 そして花火大会当日。 今日は雲一つない空が広がり絶好の花火日和だ。 実沙は自分の部屋でこの日のために買った浴衣を着ていた。 水色の生地に紫陽花が映え、帯はピンクを選んだ。 足には靴擦れ対策の白足袋を履いている。 部屋で何種類もポーズを決めて、お気に入りの浴衣を楽しむ。 玄関で桐下駄を履いて準備完了だ。 マンションから出て花火会場へ向けて歩き出す。 今から自分がすることを考えるとニヤニヤがとまらないのだった。 花火が一番よく見えるのは町を隔てる河川敷だ。 普段はまったく人気のない河川敷も、今日だけは人が溢れかえっていた。 次々に打ち上げる花火に歓声を上げる人々。 連続していた花火が途切れる。次の準備のための待ち時間だ。 しかし、花火が途切れているのにドン、ドン、という音がとまらない。 いや、音だけではない。振動も音に合わせて伝わってくる。 音も振動も心なしが少しづつ大きくなっているような気がする。 そして、それは正しい。 「ハハハッ! 小人さんがたくさん! 踏み潰し放題ですねっ♪」 河川敷を埋め尽くす人混み。 実沙はそこに23メートルの桐下駄を下ろしてやる。 ぷちぷちぷち。 足元で数百の小人が弾け飛ぶ感触を堪能する。 下駄も実沙の超重量で沈みこみ、僅かな空間で助かった小人も地面に押し付ける。 せっかく綺麗な格好をしているのだ。 これまでみたいに大きく足を上げたりはしない。 お淑やかに慎ましく、踵を擦るようにして河川敷を歩き回る。 そんなことは踏み潰される小人にとっては何の意味もないことだが。 「本当にたくさん屋台があるんですね~ 私も何か食べようかな」 腰を折って足元の小さな箱を眺める。 消しゴムより小さな屋台が広がっているのは、洪水対策の土手の上だ。 アスファルトで舗装され、普段はサイクリングロードになっているようだ。 実沙は躊躇いなく土手に足裏を押し付けると、力を込めて一気に押し崩してやる。 足幅と同じサイズ。10メートルに渡って土手が崩壊し、その土砂は向かいにあった一件の住宅を押しつぶした。 当然、屋台など跡形も残らない。 「でも、な~んか太っちゃいそうですし、やっぱりいりません☆」 実沙は平均台を渡るように土手を踏みつぶしていく。 百メートル以上続いていた屋台街がすべて消滅するまで、僅かに五歩だった。 数百の屋台と小人を踏みつぶしても、実沙が選んだ黒い桐下駄の美しい漆の輝きに変わりはなかった。 花火の打ち上げが再開した。 夜空に花が咲くたび、足元を逃げ惑う小人たちが良く見える。 どうやら大半は駅や駐車場に向かっているらしいが、あまりの混雑で身動きが取れないようだった。 踏み潰し放題の状況に変わりはない。 遠慮なく桐下駄を振り下ろして小人を始末しつつ、駐車場へ向かう。 千台以上の車が整然と並んでいるのを見下ろし、出来るだけ踏まないように出入口に向かう。 「帰っちゃダメですよ♪ 他の人は死んじゃうのに、不公平です!」 今まさに逃げ出そうとした車を下駄で踏み潰す。 そのあとに続いている車も順番で踏み潰し、出入口をボコボコにしてしまう。 もうこれで車で逃げることはできない。 「きれいに並べてて偉いですね~」 実沙は足元にある車を蹴り上げてまき散らす。 何度も何度も蹴り上げまき散らすと、そこはスクラップの山になった。 駐車場に向かっていた小人たちは悲鳴を上げて引き返す。 反対側にはまだ駅があるのだ。 それは近くに住んでいる実沙も当然知っている。 再び小人の絨毯を踏み潰しながら駅に向かうと、すでに駅には人がごった返しているのが分かる。 自分の腰くらいの高さがある大きめの駅。 近づきながらどうしようか思案を巡らせる実沙は実に楽しそうだ。 踏み潰そうか、蹴り飛ばそうか、お尻でひき潰そうか、手で解体してやろうか…… 一つしか選べないのがとても残念だ。 駅の目前までやってきた実沙だが、なぜかその歩みを止めようとしない。 ついには駅に足が突き刺さり、続いて浴衣に包まれた脛と膝が駅を破壊する。 反対の脚も当然のように踏み出して駅を破壊していく。 三歩目で駅を完全にぶち抜いて、実沙の身体は反対側に現れる 「あれ~?確か駅ってこの辺りですよね? あはっ! もしかして壊しちゃいましたかぁ?」 まるで気づいていないような口ぶり。 実沙はただ歩いていただけだが、駅は小人の希望とともに消えてなくなった。 振り返った実沙は駅の残骸を踏みつけて完全に止めを刺した。 そして、駅に向かって逃げてきた小人を見下ろしてやる。 河川敷まで戻る300メートルの一本道には小人が埋め尽くしている。 実沙と同じく浴衣をきた女の子も点々いるようで、黒っぽい服装が多い人混みのなかでアクセントになっている。 「ま、結局は潰れたらみんな赤なんですけどね♪ 試してみましょうか」 実沙は右足を下駄から抜き出した。 下ろしたばかりの白足袋が小人たちを覆うと、まずは踵が地面について小人を捻り潰した。 ペタン。 踵を軸にしつつ、爪先から足裏を振り下ろして小人を踏み潰す。 続いて反対の足も下駄から抜き出すと、今度は振り上げて踏み潰す。 ズズン。ついでにグリグリと捻りを加える。 小人たちの悲鳴を聞いて実沙の感情が高ぶる。 小刻みに足踏みを繰り返しながら、一人も逃がさないよう丁寧に踏みにじる。 300メートルしかない一本道を全て足跡に換えた実沙。 足を持ち上げて足袋の裏を見てみると、白い部分など残っていない。 全面が小人の血肉とが交じり合ってグシャグシャに汚れている。 この汚れはついさっきまで数万の人間だったのだ。 これまで感じたことのない興奮をなんとか抑え込み、目の前に広がる河川敷を見下ろす。 逃げ場を失った小人がうじゃうじゃ残っている。 実沙の目測で恐らくは10万人以上だ。 「ねぇ、これ見てください♪ 小人さんのせいで足袋がこんなに汚れちゃいました♪」 小人に足裏を見せつける。 赤黒く変色したそれが最初は白かったなどとは思えない。 自分と同じ小人たちがどうなったのか、嫌でもわかってしまう。 「こんな汚いのもういりません! 小人さん、責任取ってちゃんと片付けてくださいね♪」 実沙は両足から足袋を脱いで手に持った。 小人が特に集まる場所を目掛けて、軽く放り投げてみる。 汗と血と肉で重くなった足袋が落下すると、周囲に砂煙が立ち上る。 真下にいた小人はその重量で押しつぶされてしまった。 ふと気が付くと、空に花火は上がっていない。 この異常事態に開催を諦めたのだろう。 こうなると予想していた実沙はとても楽しそうに笑う。 「せっかくの花火が私のせいで中止になっちゃいましたね。へへっ、お詫びに私が大きな花を見せてあげます♪」 実沙はまた魔法を使う。 小人を怖がらせるために徐々に大きくなっていく。 素足が周囲のすべてを磨り潰し、ついには河川敷に爪先が侵入して小人を潰してしまう。 こんな事故で減らしてしまってはもったいない。 脚を大きく広げて小人を潰さないようにしてあげた。 1,630メートルまで大きくなった実沙は、 悠々と十万の小人をその足元に収めてしまう。 一歩後ろに下がって、そこにいる小人に全身を見せてあげる。 そのたった一歩で住宅街を踏みにじり、無意識のうちに数百の小人を消し去った。 「私の浴衣、お花柄なんです♪ 大きさも花火と同じくらいありますよ~」 その場から右足を大きく伸ばし、川の反対岸へ振り下ろす。 そこには花火の打ち上げ機材が設営されていたが、あっさりと消えてなくなった。 「これでもう花火は上がりませんね! 私の浴衣姿で満足してください♪」 反対岸を踏みつぶした足を戻して仁王立ちする。 さて、この小人ではもう十分楽しんだ。……本音を言えば、もう我慢できなくなってしまった。 今度は左足を小人たちにかざしてみる。 「たくさん怖がらせちゃってごめんなさい♪ 最期にしてあげるね♪」 実沙は小人の中心に左足を振り下ろした。 230メートルの素足は一歩で数千の小人を葬り去った。 そして、浴衣の裾を持ち上げながら脚を左右に振り動かし、何度も何度も小人たちを掻き混ぜていく。 その場にいた十万の小人が片足の下に消えるまで僅かに数秒。 圧倒的な虐殺に実沙の心が満たされていく。 「ああ、これは…… さ、最っっっ高っです!」 鼻息が荒くなるのが自分でもわかる。 これ以上は理性が持ちそうにない。 実沙は最後の力で正気を取り戻し、足袋と桐下駄を回収した。 魔法で汚れを消し去ってから履き直す。 あれだけ汚れていた足袋もまるで下ろしたての新品だった。 「とっても楽しかったです! 来年も宜しくお願いしますね!」 そのお願いに応える者はいない。 当然だ。生きているのは実沙だけなのだから。 実沙は魔法を使って一瞬で帰宅する。 着ていた浴衣を綺麗にたたんでクローゼットに仕舞い込み、 シャワーも浴びずにベットに倒れこむ。 少しでも早く今日の自分の行いを反芻しながら楽しみたかった。