通学路
Added 2020-07-11 15:01:04 +0000 UTC通学路。 8月も折り返しに近づき、セミの鳴き声がより一層やかましさを増す。 駅のホームに蜃気楼が立ち込める猛暑。 ホーム上の自動販売機には売り切れの文字が並び、隣のゴミ箱からは空のペットボトルが溢れそうになっている。 電車を待つ誰もが額の汗をハンカチや袖で拭いとる。 ようやく電車が滑り込み、待っていた人は我先にと空調の効いた車内へ乗り込んでいく。 そして、その瞬間に彼らの運命は決まってしまった。 実沙が電車に乗り込もうとしたとき、誰かと肩がぶつかった。 そんなのはよくあることで普段なら気にもしない。 しかし、実沙は魔法を使って自分の乗る車両にいた全員を百分の一に縮めた。 思ったよりも混んでいたし、謝りもしない誰かさんに腹が立った。 暑さでイライラしていたのもある。 白いワイシャツと透け防止のセーター。 緑チェックのスカートから伸びる足には紺ソックスと黒のローファー。 耳にはイヤホンをつけ、お気に入りのアニソンを聞いている。 目的の駅までは15分。ここにいる200人の小人で遊ぶには十分な時間だ。 ドア付近の小人は迫りくる23メートルのローファーに戦慄した。 そんな巨大なものが信じられない速度で動き回り、周囲の小人を踏みつぶした。 あっという間に十人が死んだ。 それを履く少女は座席に座ろうとせず、無人に見える車内を歩き回っている。 ここにいる全員を殺そうとしているのは明かだった。 小人たちの断末魔の叫びは、アニメの主題歌に遮られて聞こえないのだった。 小人を踏み潰すことは簡単だ。 少し歩幅を整えて歩くだけで彼らは死ぬ。 現にたった今も足元の小人がローファーに潰されている。 革靴の底は固く潰れる感触はあまり伝わってこない。 たまにヒールの下に潜り込んで助かろうとする小人がいるが、足を後ろに引きずることで潰してやる。 ローファーの爪先で小人を蹴り飛ばすと、その場で血飛沫に変わってしまう。 力加減をするれば形を保ったまま飛んでいき、壁にぶつかって血飛沫に変わる。 靴の側面を使って小人を書き集めて小さな山を作ってみた。 全身の骨が砕けた者、手足が足りなくなった者、すでに絶命した者などが交じり合い、苦痛を訴えるうめき声が重なる。 そして人山を勢いよく踏み潰すことで、周囲に破片が飛び散った。 壁際で震えていた小人を爪先でトンと押し付けると、壁と爪先に挟まれて即死した。 何人かの小人が並んでいたので、両足でリズミカルにトントンして次々に壁と一体化させていく。 目線と同じ高さには吊り手にしがみ付いている小人がいた。 縮小されるときに吊り手を放さなかったらしい。 そのリングに手を通して普段通りに使ってみる。 リングを握りしめると、そこに小人の腕が巻き込まれて引きちぎられた。 肩から腕をなくした小人が悲鳴を上げながら落下し、動かなくななくなったが、念のためその上にローファーを被せておく。 床で蠢いていた小人はだいたい片付いた。 次は座席の上にいる小人たちの番である。 7人掛けシートの端に手の平をつくと、歩きながらシートの上を滑らせていく。 巨大な手がシートの埃と小人を磨り潰す。 向かい側にいる小人も同じようにして潰す。 次のシートにいた小人は一匹ずつ丁寧に人差し指が捻り潰した。 その次のシートにいた小人たちには拳を叩きつけて四散させてみる。 最後に、残っている小人を魔法でかき集めて一か所にまとめる。 その数は20人ほど。座席の上で動けないようにしておく。 実沙は小人たちに背を向けた。 座席にいる小人からすれば、背中というより太ももだ。 そのままゆっくりと腰を下ろしていくと、チェック柄のスカートが小人の視界を塞ぐ。 スカートの重さでは潰れなかった小人たちだが、続いて降りてきたお尻の前では無力だった。 全員が仲良く押しつぶされ、スカートの染みと化した。 高校の最寄り駅で電車から降りると、今まで乗っていた電車を千分の一まで縮める。 10両編成の電車を適当に摘み上げて左の掌に載せる。 実沙の殺戮が及んでいない車両にはまだ大勢の小人が乗っていた。 怯える小人に満足すると躊躇いもなく電車を握り潰す。 凄まじい握力によって一瞬で潰された電車をその場に落とし、ローファーで踏みにじる。 最後に残ったのは正体不明の小さなゴミだった。 駅から高校までは歩くと20分かかる。 だが、駅からは高校までの市営バスが運行されており、普段から利用していた。 しかし、実沙がバス停に付く直前でバスが発車した。 電車を始末している間に発車時刻を過ぎていたらしい。 待ってくれなかったバスをすぐに縮める。 大型のバスは空き缶と同じ大きさとなり、掴みあげられて歩道に下ろされた。 中の小人は怪我をしたが命に別状はない。 小人の命を奪ったのは、次の瞬間に真横から叩きつけられた巨大なローファーだ。 実沙は空き缶を蹴って遊ぶ小学生のように、バスを蹴りながら歩いて行こうとした。 だが、予想に反してバスは空き缶より脆く、最初の一回でダメになってしまったのだ。 すぐに踏み潰して、残骸は歩道脇に寄せておく。 高校に向かって歩いていると、正面から自転車が走ってくる。 乗っているのは実沙と同じ制服をきた女の子だ。 自転車の前で両手を広げて進路をふさぐ。 無理矢理に止められた女の子が文句を言おうとした瞬間、女の子だけを縮小する。 乗り手がいなくなり倒れそうになる自転車を支えて、進行方向を反対にする。 歩くのが面倒になったので自転車を借りることにしたのだ。 スカートを広げならサドルに跨ると、持ち主がパンツの下敷きになって潰れた。 その感触で電車内で潰した小人たちの汚れがスカートに残っていることを思い出したので、パンツの汚れと一緒に消し去っておく。 自転車を走らせていると、同じように学校を目指す男子たちに遭遇した。 6人で固まって道路を塞ぐように歩いている。 邪魔なので彼らを百分の一に縮めて自転車でひき殺してやった。 細いタイヤで一度に全員を潰すことが出来なかったので、その場でブレーキをかけて足をつく。 ローファーは友達が潰されて呆然としていた残りの小人を簡単に押しつぶした。 途中で借りた自転車のおかげでだいぶ早く学校に到着した。 駐輪場に自転車を止めると、少し離れた昇降口で上履きに履き替える。 二階にある高校の図書館は実沙のお気に入りだ。 特に夏休み期間は人が来ないので最高である。 そんな無人の図書館を期待してドアを開けると、残念ながら五人の先約がいた。 どうやら受験勉強に集まった三年生らしい。 机の上でテキストをめくり、ペンを動かしている。 しばし逡巡したが、やはり好きな空間を邪魔されたくない。 せめて先輩たちを苦しめないように一瞬で潰してあげよう。 実沙は立ち上がったまま左の上履きを脱ぐと、その中に先輩たちを千分の一に縮小して転送した。 そして、当然のように上履きを履きなおす。 プチプチ、プチ、プチプチ。 紺ソックスに包まれた足裏が一瞬にして先輩たちを押しつぶした。 実沙はお気に入りの椅子に座ると、右脚が上にくるように脚を組みながら本を開いた。 右足には上履きを履かず、足元に落としておいた。 もしこの図書館に誰か入ってくるようなら、自動で上履きの中に縮小転送される仕組みにしてある。 そして帰る時にまとめて紺ソックスのシミにするつもりだ。 そして、実沙が帰宅するのは今から5時間後のことだ。 この5時間で上履きの中に閉じ込めらた小人は6人。 履き潰す直前に上履きを覗き込んだ実沙は、彼らに向かって踏み潰すことを謝罪した。 謝罪はするが、やめたりはしない。 相対的に230メートルの紺ソックスを狭い上履きにそっと捻じ込んでいく。 逃げ場のない靴の中で小人たちが逃げ惑うが、最期は徐々に降りてくる紺色で温かい天井に押し倒され、そのまま潰されていった。 爪先をトントンして足に馴染ませると、その衝撃で小人たちは跡形もなく消えてしまった。 実沙は読み切れなかった本の貸し出し手続きをして、 図書館を後にするのだった。 帰り道で自転車を漕いでいると同学年の女子三人に話しかけられた。 彼女たちは友達がいなくなった、その自転車は友達のものに似ている、と言う。 説明が面倒くさかった実沙は三人を縮めてサドルの上においた。 すぐに座り直し、お尻で三人をぐちゃぐちゃに潰してやった。 これで仲良し四人組は再会できただろう。 今度は忘れずに汚れを消し去ってから、実沙は駅に向かって自転車を走らせるのだった。