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「つまりはー……どーしたらお兄ちゃんに喜んでもらえるか?」
「うっ……そうハッキリ言われると、なんかこー……いや、うん、ハイ……」
――未だ日も高い放課後。ルナは珍しく学校の用事に取られてしまった兄を置いて、リミルと二人、某カフェの新作フラペチーノを楽しみながら、雑談に花を咲かせていた。
話題のほとんどは生まれては消える水泡のように他愛なく、刹那ごとに移り変わり日常に融けていく。ここ最近のマイブームやら、SNSで流れてきたヘンな動画やら、嫌いな教師の癖の話、いま不意に見かけた通行人がこれから何をしにいくのか、正答を解りもしないのに二人で推理しはじめたりもした。
そんなさなか、リミルが横に伸びた耳を指でなぞりながら伏し目がちに切り出してきた、些か迂遠な話の概要は、要約するならライトの――ルナの双子の兄について、もっと喜ぶツボを知りたいと、そういったものだった。
「んん……そんな気合い入れなくても、お兄ちゃんは普通に喜ぶことすれば普通に喜んでくれるよ?」
「えー、あいつが普通に喜ぶことってそんなわかりやすいかぁ? ……妹だからわかる、とか?」
「あ、そうかも。思ってみれば嬉しいコトって人によって違うか、そっかぁ~……」
ふにゃ、と相好を崩し、ルナは鮮やかな桃色の髪をくしゃりと手のひらに巻き込みつつ、頬杖をついて、対面に座ったリミルを見遣った。気恥ずかしそうに目を逸らす彼女が、兄を好いている――というか、兄の力になりたがっていることくらい、とうに知っている。きっと偶然彼がおらず二人きりの今くらいしか、自然に切り出す好機もあるまいと、こんなに顔を赤くしながらも葛藤を抑えて口にしたのだろう。なんとも微笑ましい話だ。
本当は、最初から解っている。リミルが聞いてきているのは、もっと特別な喜ばせ方のこと。この妹は、兄のことをとてもよく知っているから、他の誰にも分からないような彼の心理を詳らかにすることだってできるのだ。
「……ふふふっ」
「な……何さっ。一応信頼して訊いてるんだけどっ!」
「んーん、いやぁ、かわいーなぁリミルちゃんはーって思ってねー?」
「あ、あんたまでライトみたいな言い方しないでよ! 双子だなホントもう……」
そんな『兄のことをとてもよく知る』妹に、迂闊にも教えを請いはじめた彼女を見て、ルナの心の奥底に、仄かな悪戯心が芽生えた。
ルナは兄を愛しているし、兄も自分を愛している。ただし飽くまで、兄妹として。例え二人の間に肉体関係があろうとも、そこにあるのは恋人や夫婦ではなく『兄』と『妹』の間の情でしかない。だから別に、ルナを排斥しないなら、リミルの恋路を応援もする。ちょっぴり歪んではいるが、ある種の共同戦線だ。
リミルも既にそれを知っている。だからこんな質問をしてきたのだろうが――見落としが一つある。
『ルナも当然、兄を喜ばせたいと常に思っている』ことだ。
「……リミルちゃんはね、もうちょっと自信持って大胆にいけばそれだけでいいんだよね」
「か、簡単に言うなあ……うー、もっと大胆にって結構やばない? 引かれるんじゃ……?」
「ふふふ、大丈夫! 一発で自信持てるように度胸つけちゃおーよ、お兄ちゃん好みの感じにさ」
「……待ってなんか嫌な予感する、ぼくのこれまでの経験がそう告げてる!」
「だ・い・じょ・ぶ♡ 絶対喜ばせてあげるから、信じて!」
「ほ、本当に大丈夫!? 信じるよぼく!? ……ね、ねぇ、なんでお手洗いに引っ張ってくの?」
――最高の表情と最高の反応を、しっかり記録して見せてあげよう。
そんなリミルのかわいくってぶざまな姿を見せたら、きっと喜んでくれるに違いない。
ルナにはその確信があった。妹は、兄のことをよく知っているのだ。
◆
…………
「……えへへ、ほら、恥ずかしーことにも慣れたでしょ? 大胆になれそー?」
「慣れるか――ッ!! ま、まだ心臓ばくばく言ってるし、脚がっくがくで……!」
「うふ。よきかなよきかなー。こんなカワイーとこ見れたらお兄ちゃん絶対喜ぶよー♡」
「うぐぅー……し、信じるからね……死ぬほどハズいけど……」
「ついでに自分がその場に居なかったの超超惜しがって、リミルちゃんはもっかいコレやらされますね、たぶん」
「えっ……ちょっ、や、あの、それは聞いてないんだけど!?」
「そりゃ言ってないですから……でも言われたとおり『リミルちゃんのおかげでお兄ちゃんが喜ぶ』よ?」
「中間!! ハードル!! 踏むべき段階ぃぃ――――!!」
…………
(▼文字なし差分)
※写真や動画は見知らぬ通行人に声かけて「はだか撮ってくださーい♡」っつって撮ってもらいました
よいこはまねしないでね!
モブC
2019-08-30 22:20:06 +0000 UTCま
2019-08-30 17:59:41 +0000 UTCモブC
2019-08-30 14:13:32 +0000 UTCま
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