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「限界独身女子(26)ごはん」が世に出るまでの裏話

先週、私の新しい単行本が発売されました。書店で本のタイトルを言いづらいパターンの作品ですが、以前「黒の魔王」という王道ダークファンタジーのビッグタイトルをコミカライズさせていただいた後、どんな経緯で「限界独身女子(26)ごはん」という悲しき世界を描くことになったんや。という話。


・コミカライズ打ち切りからの迷走期間

もう2年ほど前になりますが、作画を担当させていただいていた「黒の魔王」(菱影代理さま原作のライトノベル)の連載が終了後、休む間もなく次回作のネームに取り掛かっていました。

まずコミカライズ進行中も構想を練っていた、女の子が怪獣になって暴れるタイプの漫画。こちらはTwitterの方でもネームを公開しましたが、およそ二ヶ月ほど粘って何の進展も得られなかったため、一度ボツにしてベクトルを切り替えることに。


担当氏曰く「目新しさもないしキャラの魅力も弱い」とのことでボツ。今読むと確かにいろいろ雑。でも今でも好きな作品。


その後、前作と同じようなファンタジーもので何か描けないかと思い、厨二病真っ盛りの頃に考えていたネタをネームに起こしてみました。

この子が竜になったりして友達を探す話。担当氏曰く「主人公のキャラはいい。それ以外が……」


結局ヒキのあるネームが描けず、主人公だけが魅力的ならこのキャラでいろいろ描いてみるぞと思ってまた色々なプロットを考えてみることに。

おそらくラノベコミカライズで100万回使われたであろう展開。

竜族に恨みを持つ青年が竜と手を組んで復讐を始める的な……

間違いなくドラッグ・オン・ドラグーンっていう作品の影響です。

担当氏曰く「ありがちなのでもっと主人公のドラマを深掘りしてほしい」とのことでしたが、私自身が主人公の青年に愛着が持てず断念。


ここからまたベクトルを変えてみようと考えさらなる迷走が始まる。


担当氏曰く「シンプルに面白くない(意訳)」とされた、魔王の娘が異世界で配信活動するというネタ。今読んでも迷走してるのが手に取るようにわかる。


この辺から自分が描きたいものと提供できるものの違いに苦しむことになり、「自分が主観的に面白いと思う要素だけではなく、多くの人が普遍的に面白いと感じる構成力を鍛えないとアカン」と思って、脚本に関する色んな本を読み漁る。

で、もう一回女の子が怪獣になる話をファンタジー調に描いてみたり。

このネームは自分が描きたい要素を詰め込んだこともあり「イケるぞ!」と思ったのですが、担当子曰く「今までで一番面白くない(意訳)」。

即ボツ。この辺で結構絶望し始める。


その後、件の竜になる女の子の話が商業的にも良さそうだと言われていくつかネームを描き(また2回ボツになっている)、最終的にどうにか会議に出せそうなものが仕上がる。


また異世界飛んどるやんけ。

連載会議の結果、発想は悪くないが話のフォーカスが行方不明ということでこれもあえなくボツ。


ここからヤケになって吸血鬼が終末世界で子作りしようとする話とか、超哲学的女子高生が異世界で論破無双する女版ひろゆきの話なんかを思いつくも、だんだんと自分が面白いと感じない方向へ向かっている気がしてネームも完成させられず、心身ともに不調をきたし始めます。


・じゃあもう今の自分の心境をそのまま描いてみよう

ここまでですでに前作打ち切りから一年以上が経過しており、焦りと不安で鬱が再発し始めたのか食事や睡眠も徐々に適当になり、いっそこの心境をよりわかりやすい形で誰かに伝えるのも一つの昇華になるかな……と思いたったのが今からおよそ一年前。


当初は「飯漫画とかは鉄板ですよね」という話を打ち合わせでよくしていたので、うつ状態にある人のごはん(食生活)にフォーカスを合わせた、そっちの成分強めの作品にしてみよう……と思って、ある種の心境整理のような気持ちでネームが出来上がる。

オイオイオイ

死ぬわコイツ


これは単行本収録2話目のベースとなったネームですが、実は1話目の想定で描いたプロトタイプです。本作の感想を拝見していると「これ鬱の経験者だろ」というコメントを見かけますが、半分当たってます。

実を言うと連載会議前に3話ほどネームを描いていたのですが、そのどれもが担当氏から「読後のダメージが大きすぎるのでもう少しマイルドな表現にしてください」と言われてしまい、かなり改稿を重ねています。(例えば2話目の腐ったネギを見つけてそっ閉じするシーンですが、当初はそのまま食べてゲロを吐くところまでがっつり描いてました)

重すぎて完全にカットになった、過去の悪夢から始まるシーン。


連載中の今も気をつけているのですが、現実的な苦痛を表現しすぎると読んだ際のストレスが大きくなりすぎてしまうため、特に鬱シーンにおける主人公の言葉選びや過去のフラッシュバックなどは何度も打ち合わせを重ねて最低限のリアリティラインを模索しています。また実際に病名のついた「鬱病患者」であることを明示してしまうと、専門家の監修を入れてより現実に近い世界を描く必要が出てくるので、ぼかすところはぼかしたままの作品バランスを心がけました。


ただそうした悪戦苦闘の甲斐あってか「この作品は刺さる人には刺さるのでは」という編集判断が下り、当初は手慰みに描いてみたつもりの本作がようやく連載にこぎつけてくれた……という経緯がありました。自分としては「本当にこんな暗い作品で大丈夫なのか?」という想いのまま始まった作品なので、思いの外この悲惨な状況の主人公に共感してくれる読者さまが多くて驚いています。


・タイトルどうすんねん問題

鬱という言葉は基本的にネガティブなワードでしかないので、タイトルは出来る限り近寄りがたい言葉を避けようと担当氏とは話し合っていました。

とはいえどうみても鬱状態の人間が主人公だし、とりあえず主人公の境遇に近い言葉の中でまだマシなものを組み合わせてみるか……という発想で選ばれたのが「限界」「独身」。(全然マシじゃないけど「拒食」とか「死」とかよりはまだ……

で、一応食事による生活の維持にフォーカスを当てているので「ごはん」もつけようと。担当氏曰く「語呂がいいし、ベクトルが違うだけで嘘はついてないですから!」ということでできあがった『限界独身女子(26)ごはん』。26という数字は、さりげなく刺さる人に刺さるポイントになればいいなという肉付けで。


ただ、「ごはん(メシ)」という言葉がつくタイトルを見た時、キャラクターが眉を八の字にして「ん〜っ♡」「ぷはぁ〜♡」と唸るハンコ展開を想像する人が多いんじゃないかという心配が当初からありました。案の定、単行本発売後のレビューなどで「タイトルに騙された」というコメントもチラホラ。タイトル詐欺だと感じられた方、ごめんなさい。世の中には素晴らしいメシテロ漫画がごまんとあるので、こういう変わり種も存在すると言うことでご容赦ください。




なんだかんだ様々な人に読んでもらえているようで恐縮な本作ですが、ここに至るまで黒歴史とも呼べるような暗黒を練り歩き数多のネタをボツにし続けてきた結果のこれなので、話の構成やキャラクターのリアリティバランスには毎話ものすごく気を遣っています。

もし「限界独身女子(26)ごはん」に関するご意見や、ここで書いたボツネームを全部読ませろという奇特な方がいらっしゃいましたら、気軽にコメントしてくださると大きな励みになりますので、よろしくお願いします。



次は単行本で解禁されなかった美夜子さんの乳首問題↓について話すかも。

湯気修正なしの絵も含めて……な。


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Comments

メロンブックスの4コマ漫画特典付きも、入手出来ました。4コマ漫画そのものは、あまり進展などを感じませんでしたが、あとがきのメッセージに、今後を予感させるものがあり、嬉しかったです。 素朴な疑問なんですが、美夜子さんの、特技とかって、なにかあるのでしょうか? あくまで、僕の予想ですが、本人すら気がついてない特技があると予想してます。 ゲーマーズの特典の設定資料にも、ヒントが有りました。 それを気づかせ、美夜子さんの自信をつけさせるきっかけが、サッカーを一緒にしたこともある子どもとのやり取りにあると、かなり激アツに感じます。

K_Take

他の店舗特典も確認しました。 メロンブックスの4コマ漫画は、気になりますね。有るといいな。 ちなみにゲーマーズでは、タペストリーも限定販売されていたのを把握していたのですが、気がつくのが遅く、こちらは、確認したときは、すでに売り切れてました。 あと、少なくとも、現時点では、グルメ漫画ではないと思いました。 特に、グルメ漫画を期待して、刺激臭のあるネギとか、消しゴムや、間違った作り方のカップ麺の話が出たら、ギャップにショック受ける方が多いかと思いました。 ゲロ吐くマンガも、見たことはありますが、この漫画だとギャグと思えないです。 そのうち、美夜子さんの、料理の腕が上がって、名実共に、「グルメ漫画」となったあと、初期はこんな酷かったんだなぁと回顧できる日を楽しみにしてます。 絵も気に入ったのですが、何より、美夜子さんの性格が気に入ったので、また、くり返し読んでます。 刺さる人には刺さるとありましたが、少なくとも僕には、かなり刺さりました。 もし、美夜子さんが居たら、友達になりたいと思うぐらい気に入りました。

K_Take

今回、まさにご縁があったと思います。個人的には、子どもたち(完全赤の他人)と遊ぶシーンが、すごい好きです。この出会い方とか、一体どうしてこうなったとかの経緯。 購入にあたり、無料で公開されていた話だけでも、面白くって、 「あるある」と感じて、これは買うしかない。と思い購入しました。 僕も、実は失業経験があり、しかも、新卒時は、後に就職氷河期と判定されるほど、どうしようもない状態だったので、共感せざる得ないところも多かったです。 新卒で入った企業も、ブラック企業と感じてなく、普通だ(流石にこのヒロインみたいに殴られた経験はなかったですが)と思ってましたし、実はブラック企業と気がついたのは、転職して周りの方に、今まで自分が受けた教育を、かなりマイルドに伝えても相手が潰れて「パワハラ」認定されたことがきっかけです。部屋の散らかり方も、この体験がないと、なかなか理解できないと思います。欝の自覚はなかったですが、思えば鬱だったかも知れません。失業中は時期的にちょうど夏休みで、退職理由を、かなり強引に、会社都合にできたので、給付金も生活が成り立つほどにもらえましたし、再就職を決める焦りは感じつつも、その金でゲームを買うなど、「史上最大の夏休み(3ヶ月)」を満喫したのは良い思い出です。アキバが好きだったので職安で「千代田区」で検索してました。失業後、同業種で再就職(志望動機が「アキバに近いから」は友人間で余りに有名)したのですが、そこで出会った上司が「20年来の逸材上司」で、企業のブラックさに輪をかけて酷い経験をし、その結果、週に4,5日は頭痛が酷くて使い物にならず、少なくとも、毎週3日は午前休を取り、果にはあまりに酷いので脳神経外科で、MRI検査受けるほどでした。その後、こんな上司ダメだと見切りつけて、再転職し今に至ります。思えば、失業中の家賃とか、その他色々奇跡の連続の日々でしたが、「一番楽に安定する生き方は『懲役』」という言葉で、「絶対になるまい」と強い意志でなんとか奇跡を起こし続け、生き延びることが出来ました。暗くて重くて辛い話で、どこにも書くことも話すこともできなかったのですが、この漫画を繰り返し読むことで、つい思い出してしまいました。 それにしても、挫折の早さと言い、絵を描くという発想と言い、味覚の好みと言い、このヒロインには共感しまくりです。 長文失礼いたしました。

K_Take

ご購入いただきありがとうございます。メロンブックス、アニメイトでもおまけ特典が付きますので、よければ探してみてください。

的場りょう

今日、WEBページを見ていたら、たまたま見つけて、しかも、ゲーマーズでは、設定資料まで特典があるとのことで、早速確保しました。 背の高い女性は好みです。 後、妙に色っぽいですね。 今後の展開が楽しみです。

K_Take

とはいえそのせいで「リアリティがない」と言われればそれも正論ではありますが……

的場りょう

確かに重すぎる展開描かれてたら単行本発売まで読み続けなかった気がします。 描かない方がいいものの線引き難しいですね

凱梯幸甚

Thank you much for always supporting my work. When I receive words of encouragement like this, it inspires me to keep creating. I would be delighted if you continue to enjoy my work in the future.(I'm considering publishing the uncensored version of Miyoko's oppai as part of a paid plan article.)

的場りょう

作品そのものの感想についてはプレッシャーになることなく吸収できますので、無限に受け付けております!

的場りょう

私も5話が一番好きです。

的場りょう

leave it open-ended if you don't have the ending for the whole storyline just yet. 3) About your current manga (限界独身女子(26)ごはん), when I read it, I always feel sympathetic and wish I could help her. Like each chapter, I want to see her picking herself up little by little and making herself happy. I want her to explore the world a little bit, do hobbies, and try new things and then, reality hit me because I am also similar situation as her (a NEET). Then, I tried to pick myself up and try again in my life, now focusing on releasing a novel as an indie on Amazon and maybe DLSite (which can translate your work into many languages, have you used it?). I just want to say thank you for your work and please never give up! You will never fail if you never give up and do not stop trying. I want to see more of Miyako's day to day life until she is happy! Also, would like to see Miyako's oppai without censorship (/// ̄  ̄///)

Naoe Adam

This is only my opinions as a reader from Asia: 1) What interested me in following your work and your socials like Pixiv & X (Twitter) is your art style, the way you draw the female character's bodylines, faces and emotions. Also, your story about the 26-year-old woman who is depressed touched my heart when I read it because I can feel the author's heart and sincerity. After all, no one knows the feeling of depression other than the depressed people themselves (like me). I read it on some websites which translated your manga to English then I got curious and followed you on the officially published site. 2) Stories are hard to write if you want them to be famous, and exciting but also can gather the attention of a huge crowd of followers in Japan's comic book industry. It is very competitive. So, I think you should focus on what you want to write and build it up from there from your experience of reading other works, creative thinking and making a story draft but

Naoe Adam

様々な構想を経て今の作品があるのですね。 確かラフの漫画で別の物語もツイッターで公開してくださってたこともありますが、面白そうと思ってもそれが商業として成り立つかどうかは別問題で、描きたいものがあっても需要と供給が合ってないと駄目というのは確かに分かるのですが、シンプルに面白くないとバッサリ言われてしまう瞬間は、想像すると結構キッツいですね…。 私は現場作業なので、需要と供給のすり合わせはある程度は現場で出来ますが、本や漫画は出来上がらないと読者に届かないので、そうした部分で大変な業界であり大きな枠の括りで同じモノづくりの世界に身を置くものとして尊敬しています。 しかし今の状態をあえて漫画にというのは、どこにネタの種があるのか分からないものですよね。 今の世の中、生きづらさを感じてる方は少なくないと思いますので、凄く良い着眼点だと最初に作品を読んだ時感じたのは覚えています。 今回の作品の内容に共感できることが多いと感じてる読者の一人としては、リアリティがあり、しかしあまり掘り下げすぎない構成が絶妙だと感じていたのですが、そこも成る程と納得のエピソードでございました。 また、単行本に付属されていた設定も拝見させて頂きまして、バックストーリーや設定の緻密さには感動すら覚えました。 まだまだ続きが読みたいと思いましたし、今後の展開が楽しみです。(と言い過ぎるとプレッシャーになってしまうでしょうか、でも素直な感想として残させてください。) 毎度長文でスミマセン。 それでは。

瑞穂 仁

5話が大好きです。やるべきことを淡々とやらなくてはいけない毎日の中で、子どもの頃の見守られてた日々を思い出せました。

よね


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