平塚静
Added 2024-01-05 11:30:00 +0000 UTC職員室で一人の女教師が夜遅く残って仕事をしていた。
「まったく、最近この学校で起こる出来事はなんなんだ? どうしてこんなに立て続けに問題が起こる」
その女教師、平塚静は机の上に積んである書類を見て愚痴をこぼす。
ここ最近起こっている問題のせいで、彼女は仕事に追われていたのだ。しかもどれもこれも解決が難しい問題ばかり。
どうしたものかと悩んでいる時だった。それに変な噂も流れているので更に頭を痛めているのだ。
なんでも深夜に学校にいるとドッペルゲンガーに襲われるとかなんとか……。まあ、これは流石に嘘だと思われるが。
しかし、最近の若者はまったく、といった感じで彼女は溜息をつく。不意に鏡を見るとそこには疲れた顔の美人女教師がいた。
「……歳はとりたくないものだな……」
自分の姿を見ながらそう呟く。そんな事を思っているとふと誰かが廊下を歩く音が聞こえてきた。それも段々と近づいてきている。
こんな時間に誰だと、不審に思った彼女は窓を開ける。するとそこに一人の女が通り過ぎていった。
(だれだあれは……)
一瞬しか見えなかったが、かなりの美女であった事は分かった。思わず見惚れてしまう魅惑的なスタイル、何よりその黒くて綺麗な長い髪に目を奪われた。そして何故かその姿に見覚えがあるような気がした。
暫く呆然としていると彼女は妙な胸騒ぎに襲われた。誰かに見られているという感覚。まるで彼女の全身を舐めるような視線。
静はその感覚が気持ち悪かった。窓を思いっきり閉めて、机に戻り仕事を再開させようとしたが……。
「……うん?」
不意に彼女は隣の空き教室から人の気配を感じ取った。こんな時間に学校に生徒がいるはずがないので、誰かが不法侵入したと思い静は怒った様子でその教室へ向かう。
(全く、誰だこんな馬鹿な事をしたのは)
叱ってやろうと思い彼女は勢いよく教室の扉を開く。
「誰だ!勝手に学校の教室に入って……え」
静は始めは鏡があるのかと思った。だがそれは間違いなく目の前にあった。しかし、それが鏡でない事がすぐに分かる。何故ならそれは、静自身だったのだから。
「…………」
静は何も喋れなかった。突然現れた自分に驚き言葉を失っていたのだ。
目の前の自分は何も喋らない、そして静と同じ表情をしていた互いに喋らない時間がどれくらい経っただろうか。
少しして彼女は我を取り戻し、目の前にある物を理解しようと考える。
「これはどういう事だ?お前は誰なんだ?」
そう言って静は自分に掴みかかる。しかし、その女も静に掴みかかってきて
「お前こそ何者だ!?私の姿に化けるとは許さんぞ!」
そう言うと女は静の顔を思いっきり殴りつけた。いきなりの出来事に静は何が起こったのか理解できなかった。
「痛い!何をする貴様!」
いきなり殴られた静はそう怒鳴りつける。
「黙れ、私の姿を騙りおって!偽物め!」
そう言うと女は同じ顔を静に近づけてきて、額同士がぶつかる程接近してきた。互いの瞳に相手の姿が映る。そしてそこで二人はある事に気づいた。お互いの匂いや感触が全く同じである事に。それに良い匂いもする。
「どうなっているんだこれは?どうして私がもう一人いる!」
静はそう言うと、もう一人の自分を自分から引き剥がす。
すると目の前にいる静そっくりな女は
「どういう事だこれは。お前、本当に私なのか?」
静の顔に触れてくる。
「お前こそ何者なんだ?どうして私と同じ姿をしている」
静は目の前にいる自分と全く同じ容姿をした女を改めて見つめる。黒くて綺麗な長い髪は艶があり、良い匂いもする。スタイルのよさが嫌でも分かる。肌は白くきめ細かい。胸も大きく女性らしい体つきをしている。
(よく見たら……なかなか悪くないじゃないか)
顔も美人だし、顔まで良い匂いをさせている。白衣同士がが密着した時、静はその匂いも嗅ぐ。思わずドキっとしてしまった。
「お前こそ何故私と同じ姿をしている?」
もう一人の静はそう問いかけてきた。
「そんなの私が知るか、お前こそ私と同じ姿をして」
「黙れ、お前が私を騙る偽物だという事は分かっているぞ」
二人はそう言うと激しく睨み合う。
(こいつが一体何者なのかは分からないが、このまま引き下がるわけにはいかない)
「本物は私だ!」
静はもう一人の自分にそう言ってやる。すると彼女は顔をしかめると
「だから私も本物だと言っているだろ!いい加減にしろ!」
彼女の剣幕に静は少し怯んでしまう。しかし彼女も負けじと言い返す。
「そういう貴様こそ、一体何者なんだ!何が目的なんだ!」
そう静が言うと、もう一人の彼女は静の頬に手を当て、顔を近づけてくる。
「そっちこそ何なんだ!」
彼女の顔がすぐ近くにある、その息がかかるほどに近い。そして甘い匂いもする。
「さ、さあ?私が聞きたいくらいだ」
静は強い口調で彼女にそう言う。
すると彼女は大きく溜息を吐くとこう言った。
「お前は本当に私なのか?姿だけじゃなく思考まで一緒とはな……。まったく、ドッペルゲンガーとは厄介極まりないものだ」
静はその言葉に勝手にドッペルゲンガー扱いされて少しムッとしたが、やはり自分の思考と言動まで同じというのは自分でも気味が悪いと感じていた。
「勝手に決めつけるなドッペルゲンガーはお前だ!」
静はそう叫ぶと目の前の自分の肩を掴み、押し倒そうとして、それはもう一人の静も同じでただ抱きつくような形になってしまった。
「ドッペルゲンガーはお前の癖に!私に化けておいて生意気な!」
「なんだと、いい加減にしないと……はうっ!」
静はその衝撃で大きな声をだす。別に大したことではないのだが、何故かこの女と触れ合っている時だけ反応してしまうのだ。しかし、それを悟られるわけにはいかないと思い我慢する。相手も同じで、思わず喘いでしまったのを隠そうと静の肩に顔を埋めていた。そして、その体勢のまま暫く二人は動かない。
それから何分経っただろうか、ふと静は抱き合っていると妙にドキドキしてくる事に気づいた。そして相手も同じなようで、顔が赤くなっていた。
「貴様……何反応している……」
静はそう呟くと、女はそれに答えようとはしないが、更に密着しようと体を寄せる。互いの胸が圧迫されて形が変わり始める程になる。
(や、やめろ!そんなに押し付けるな!)
そう思う静だが、どうしてもそれが出来ないでいる自分に驚いていた。相手の胸の感触があまりにも気持ちがよすぎるのだ。
(くそっ……どうしてこんな事で反応するんだよ)
静はその感触のせいで、違和感を感じ始めている。その事を悟られないように静は懸命に我慢する。もう一人の静も同じく必死で我慢していた。
「偽物め……やめろ!」
「それはこちらの台詞だ!偽物の癖に何を」
二人はそうやって罵声を浴びせ、そして更に体を密着させる。
もう相手を感じたくない為なのか、或いはただ気持ちいいからなのか、それは二人にも分からなかった。
それから何分経ったか分からないが、二人は体を密着させ合ったままでいた。ただ一つだけ分かるのは二人の胸が潰れ合い、突起しているということだという程度だ。どちらも同じ様な感じであったが、その事には気づいたとしても指摘はしなかっただろう。
「はぁ……いい加減離れろ……」
静は吐息を漏らすと顔を相手の顔に近づけてそう言う。
「そっくりそのまま返してやるぞ…」
そしてそのまま二人は見つめ合う。近くで見れば見るほど、自分そっくりなその顔に驚くが、なぜか目を離す事が出来なかった。それは相手も同じようで、ずっと相手の目を覗いている。タバコの匂いすら一切しないそれどころか良い匂いまでする。
(私の匂いもこんな良い香りなんだろうか)
そう思った途端、静はその自分の考えが恥ずかしくなって顔を赤らめる。それすらも同じで、しかもそのせいで顔が赤くなったせいで更に相手が愛おしいとすら思い始める。
静は全く理解不能だった。そして段々と自分もこの匂いが好きになっていっている事に驚愕した。
(こいつの匂いを何度も嗅いでると、何故かとても良い匂いに思えてくる……)
「私の匂いが気になるか?」
静は挑発するように相手にそう言ってみると、それに対して相手もまた
「貴様こそ私の匂いが好きな様だな。顔が真っ赤じゃないか」
と言いながら返してくる。
お互いにその言葉に顔を赤らめるがすぐに平常心を保とうとする。
(なんだこの感情は……なんでこんなにドキドキするんだ……?相手は自分だぞ?そもそも性別からしても同じ存在だ。それなのにこんなにドキドキするなんて……)
静はそう思い、焦り始める。しかもそれだけじゃなく、先程から動悸が止まらなくなってきているのだ。相手が自分と同じならこの気持ちも理解できるが何故胸が高鳴っているのか理解不能だった。
(ただ単に匂いが好きというだけでここまで動悸が激しくなるのか?自分相手に恋をするはずはないだろうし……もしかして私はこいつに対して特別な感情を抱いているというのか!?そんなばかな!私はナルシストじゃないぞ!)
静は自分の心に嘘を付いて否定しようとする。しかし、静の心臓は相手にまで伝わる程に鼓動していた。しかもそれは相手も同じだったので全く説得力が無かったのだった。
そして、二人はまた見つめ合っていたが、暫くしてお互いから目を逸らし、どちらともなく離れた。
しかし、それでもまだ鼓動は収まるどころか更に強く高鳴っていた。しかもそれは密着していた時よりも激しくなっていたので更に困惑する。
(なんなんだこの反応……どうしてしまったのだ私は……)
静は自分が怖くなったのか思わず自分の体を抱いて困惑していた。
もう一人の静も同じで、自分の体を抱きしめて何故なのかを考える余裕も無くなっていた。
(……とりあえず落ち着こう落ち着け私と念じて平常心に努めるが……どうしてここまで緊張してしまうんだ……?)
そう思いながらも彼女は目の前の相手と見つめ合うのだった。二人共かなり動揺しており、落ち着きを取り戻すまでかなりの時間が経ってしまった。
それから静は改めて自分に対して口を開く。
「お前は一体何者なんだ」そう静は聞く、もう何時間も抱き合ったせいで若干敵意が薄まっているが、やはり自分を偽っている相手なので、それ程心を許す気もないようだ。そしてもう一人の自分が何者かの方が気になっていたのだ。
「何故私そのものの偽物がいるのかは知らないが、本物は私だ!」
彼女は強くそう言ってくる。しかしそんな自分に静はなんとも思わないどころか逆に相手に近づいてしまった。
(あれ、何故私は相手に接近したのだ?)
相手は自分と同じ存在の筈なのに、不思議と悪い気はしなかったのだ。そして静も「本物は私だ!偽物め!」と叫び、また相手を倒そうとする。
(なんだこの感覚は……それにまた動悸が!)
そして相手もまた同じ反応をして、静に対して抱きついてきた。
(こいつもまた同じ事を……)
静はそう思って、やはりおかしいのは自分の方だと気づかされた。しかしそれでも抵抗をしようとは全く思わなかった。それどころか彼女を抱き返したかったのだ。そしてそうする為にも彼女は更に相手の体を強く抱きしめる。相手もそれに応えるように抱きしめてくるので、ますます気持ちが良くなってしまう。まるでお互いの体が一つになっている気さえしてくる。そして、暫くしてから二人は急に体から力を抜いて相手から離れた。その時ですらお互いの体が離れるのが名残惜しいとさえ感じながらだった。それから静はこう呟いた。
「一体なんなんだこれは……私達は同じ存在なのに……」
そう言いながら彼女はもう一人の自分の顔を見つめるのだが、彼女から見れば自分も同じ様な顔をしているので、すぐに視線を逸らしてこう言ったのだ。
「わ、分からない!お前が悪いんだぞ!」
自分でも何を言っているのか分からなかったが、そうだとしか思えなかった。
そして、目の前の自分にここまで瓜二つな女を前にして何もしないなんて事は出来ないと言う思いがどこかにあったせいなのか、それとも自分の思考を真似する相手を自分の手で追い出そうという支配から逃げる為の意地みたいなものだったのか、静は気づけば相手に顔を近づけて、更に強く抱きしめていた。
「お前は本当になんなんだ?」
そう静が聞くと彼女はこう答えた。
「私だって知りたいさ!お前こそ一体なんなん」
ふと気が付くと、二人の唇が徐々に近づいていっているのが分かった。
それに気づきはするのだが、どうしても止まる事は出来なかった。互いの唇は柔らかそうで良い匂いまでしてきて美味しそうな唇だ、それにこのままキスしても自分は良いんじゃないんだろうか、そんな事を思っているうちにとうとう二人の唇は重なってしまった。
「んっ!」「んん!!」
(やわらかい……)
相手の唇が触れた瞬間静の中で何かが弾けたような感じがした。そしてそれと同時に喜びがあふれてきそうだった。
(なんだこれ……相手は自分だぞ?……いやそれは確かにそうなのだが、それでも何か……)
その感情は今まで味わった事は無いようなものだった、とても幸せな気持ちである。そしてその唇を押し付け合っていたが、あまりの気持ちよさに離せなくている自分に気づき、離れようとする。しかしもう一人の自分の唇の感触はあまりに魅力的ですぐにまた押し付けてしまうのだ。そうしているうちに段々激しくなっていき、あまりにもお互いの唇が瑞々しくて乾いた教室にリップ音が鳴り始める。そしてその音は次第に激しくなっていき、遂には唇から口全体に移っていくようになっていく、
「んっ……はっぁ……」「あっ……」
キスは初めてではない筈なのに、今まで一度も感じた事の無い快感が襲ってくる、それが心地良くてただただ気持ちが良くてずっと続けていたくなる程だ。それは相手も同じなのか唇が離れたり触れたりする瞬間に小さく喘ぎ声を上げているのが分かった。もうそれだけで興奮してしまいそうになるし、更に激しくするとさらに気持ち良い。(どうして……自分とキスをしているのにこんなに愛おしいんだ……?)
暫くそのまま続けてようやく唇が離れると、どちらのとも言えない唾液で橋がかかっており、それをお互い何も言わずにすぐに拭った。
しかしそれでもまたすぐに互いの唇を見つめてしまう、そうして今度は相手に対してこう言葉を紡ぎ、キスをする為に顔を近づける。
「お前は一体何なんだ……どうしてお前にここまで興奮するのだ……まさか自分自身に恋をしたとでもいうのか?」
そしてもう一度キスが始まるかという時であった。足音がしたので二人は慌てて体をカーテンに隠し、通り過ぎるのを聞いて二人共ホッとする、もう少しでばれるかもしれなかったからだ。そして慌てて隠れたからかお互いにかなり密着して体を密着させ合っている。その状態で相手の顔を見ると、相手は顔を真っ赤にして視線を逸らしてきた。恐らく自分と同じような事を考えているのだろうが、そして静は彼女の顔と向き合うと、優しく口づけをした。自分でも何をしたのか分からなかったが、勝手に体が動いたのだ。しかし何故か、悪い気分ではないなと思った。これは相手も同じのようで、顔を真っ赤にしながら驚きを隠せないでいた。それが何故か心地よかったのだ。
もうここまで来れば後は何をするかは明白であるのだが、それを口に出すのは少し癪に障る、そう思ったがやはり同じ思考なのか、相手も黙って頷いていた。
そして二人はまたお互いの口を塞ぎ、静かに絡み合った。それは今までの何よりも情熱的で、静は彼女の頬を両手で挟んでいる為か、相手の柔らかなほっぺたやぷにっとした唇の感触を直で感じられたのもあってより興奮したのだ。
「んっ……んっ……」
キスの途中で小さな喘ぎ声を出している相手に興奮しながら、静はもっと強く彼女を求め始める。
相手もまた同じように静を求めているのか、体を更に押し付けてくるので、お互い密着度が増していく。二人の巨乳が激しくぶつかり合い、キスが一層激しくなると、ふと相手の手が静の胸に触れたので、
「ひゃぁ……あっ」
と声を出しながらビクンッと体を震わせたと思うとすぐに恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にしながら口を離す。そしてお互いのおっぱいを擦りつけ始めるのだがそこでもまた二人はお互いを感じてしまい気持ちよくなってしまう。そうして暫くすると静は相手の顔を見ながらこう囁いた。
「こ、これ以上は不味いんじゃないか?」
そう聞くと相手も顔を真っ赤にしながら、相手の胸に手を乗せていた。そしてその手を動かし始めると、まるで自分の胸の感触を確かめているようだった。それを見ていると自分もまた触れたくなってきたので、思わず触れてしまった。そしてお互いが同時に相手の胸を触り始めたのだった。
しばらくその状態が続いたのだがらやはりお互いに感じてしまっており、気が付けばお互いの顔をじっとお互いを見つめ合っていた。(このまま、お互いにもっと強く刺激し合えばどうなるのだろうか……?)
お互い同じ事を考えているのか、胸を触り合っていた手を離して相手の胸に手を伸ばして触れると、静はそのまま揉み始める。
「んっ……」「んんっ!」
二人とも、その感触に体を跳ねせて声を出すが相手もすぐに触り出したのだろう、静もまた喘ぎ声を上げて体を動かしてゆく。そして暫くしてから胸から手を離すが、今度は顔を近づけてきてキスをした。
「そんな…顔で…私を…見るな…あっ」
そう小さく呟くと、もう一人の静は顔を赤らめて、目を潤ませる。その表情に静はドキッとした。自分と同じ姿の、でも、違う自分を見ているような感覚だった、今まで感じたことの無い感覚、だがそれがとても心地よくて堪らない気持ちになってしまう。
それから二人はゆっくりと顔を近づけ、二人は舌を相手の口に入れていた。
「んぅ!」「むぅ!?」
(自分の舌を舐めてる……!)
それが分かった途端、静は驚愕して一瞬キスをやめてしまうが、直ぐに再開しだす。どうやら、自分の舌と相手の舌とで絡め合いたいという思いが急に沸きあがったのだ。
そして再び深く唇を重ね合う二人だが、その間もずっと舌と唾液を交換し続けていた。
そうして暫くして唇を離すと、お互い目がトロンとしており、これからする事なんて当然分かっていたが、それでも口から出てきた言葉は
「キスだけでこんな気持ちになって……どうするんだ……」だった。それは相手も同じようで、「そっちこそ、キスだけでこんなに感じて……どうするんだ……」と言葉を返してくる。そう言われればそうだと思ったし、やはり相手もその事を意識しているのだと思った、そうして暫く睨みあった後。
「私の舌、舐め返してこい……そんな拙いキスじゃ、物足りないぞ……」
「そっちこそ、私の舌を舐め返しに来い……こんなゆっくりじゃ、飽きてしまう」
という言葉だった。顔を更に近づけていき、唇が重なる。もう何分も唇を合わせている為か唇は既に湿っていた。
そして二人の舌が絡み合う。互いの舌は甘くて。もう唾液は相手の口に入りきらずに口から溢れる程になってしまっていた。そんな唾液が勿体無いと思い、また相手の唾液を飲もうとするのだが、あまりの甘さにそれだけで体が熱くなってくるのが分かる。
そうやって何度も何度も相手の口の中にある唾液を飲もうとしたが、飲みきれずに、溢れて零れてしまいそうになるので、顔を離そうとするが、体がそれを拒否しようとするのだ。
だからもうどうしようもなく、二人はキスを続ける艶やかな黒髪同士が絡み合う光景は、淫らであり、美しい。
唾液が零れだしているせいでその液が二人の口回りを汚してしまうのだが、そんな事はもはやどうでも良かった。相手も自分と同じ顔をしているのならその唾液すら愛おしく感じてしまうのだった。
だからなのか、余計に相手の舌が美味そうと思えるようになると、静はさらに激しくキスをして舌を絡める。するとそれに答えてくれるように相手も同じようにして濃厚なディープキスをするようになってゆくいく。しかし相手も同じ事を思ったのか、彼女もこちらの頭に片手を入れてくる、それによって更に顔同士が近い位置に来る事になった二人だが
(あぁ、もうダメだ……もっと欲しい……!)
(これ以上したらおかしくなりそうだ……だけど、この気持ち良さから逃れたくない……もっと深く繋がりたい……)
という思考に支配されていくのだがやはり止めることは出来なかった、それは相手にだって同じことであるようだ。
そして最後に相手の顔を掴みなおすと、さらに密着させた二人は相手の口内に舌を入れて激しく動かしていき、唾液を奪い合いながら、舌同士を絡ませ合い、そして相手の舌を吸い取りながら、激しいキスを続ける。もうこの頃には二人は完全に快楽に支配されており、何も考えられずただ本能的に相手を求め合っていただけであった。
何度も激しく唇を交わし合うとようやく離れた時にお互いの口から唾液の混ざった糸が繋がっていくのが見えた、それが途切れると二人は抱き合いながら倒れる、もうすっかり二人は出来上がっており、これ以上続けてしまうと完全におかしくなる事は分かっていた。
それでもやめる事など出来ずにそのまま密着しながら息を荒げていると、もう一人の自分が顔を近付けてきてこう言うのだ、
「もう一度だけ……キスしてから……終わりだ……」
「ああ、分かった……」
そしてまたキスをする。何度も、何度でも。やがてお互いが限界になり離れると、二人の口の間には透明な橋が出来上がっていたがそれも直ぐに途切れてしまう、しかしそれでもまだ満足していないようで、お互いに見つめ合っていた。もはやお互いしか目に映っていないかのようにただ相手の事だけを見ていた。だがしばらくしてから再び相手の顔が近付いてきたかと思うと、そのままキスをしてお互いの唇を激しく吸い合った後、舌を絡ませ合う。床に綺麗な黒髪が重なって広がっていた。
「はぁ……はぁ……」
「んんっ……」
これ以上すると……完全におかしくなる……でも、したい……もっと続けたい……!)
それでも止める事は出来ず、そのまま続いていった。しかしお互いに限界が近づき、ついに口を離してしまう。互いの口の間には唾液が糸を引き合っており、それが切れると同時に二人は横向きになって倒れ込むとゆっくりと目を瞑り眠りに付いてしまうのだった。
翌日、彼女は目覚めると自分の部屋だった…どうやって家に帰って来たのかさえ思い出せない程に疲れてしまっていたようで、気が付けば布団の中に入っていたのだ。
そして起きてからすぐに気が付いたこと、それは体が熱くなっていて顔中が何かの液だらけという事だった、寝ている間に誰かがやったのかと思ったが、今はそれどころではない。
「一体どうしてあんな夢なんか……私はあいつを……」
そう思いながらも自分の中にある性欲に驚きを覚えた、今まであそこまで激しく求めあった事なんて無かったし、それ以前にそういう相手に出会った事が無いのだから当然だ。
(もしかしたら夢じゃなかったのではないか?)そう思ってしまう、だってあんなにリアルで激しい夜を過ごしたのだから、そう信じて当たり前だと思っているのだけれども、そう考えていても何故かスッキリしなくて、もっとしたいと思ってしまう自分が居た。
「私は何を考えているんだ……自分なんかと……」そう思った途端に顔が真っ赤になってしまうが、それを振り払おうとして首を横にブルブル振ると立ち上がって部屋を出た。朝食を食べないといけないからだ。
しっかり朝ご飯を食べると家を出て、また学校で教鞭を振るった、いつものように生徒達の相手をして、だが、それなのに今日に限っては何かおかしかった。それは自分でも分かっていた事だった。しかしそれを意識しないようにしていたのだが、やはりどうしても頭から離れないものがあったのだ。
それは当然昨日のことである。そして気が付けばずっとその事を考えてしまっていたようで、ボーっとしてしまう時間も増えていたようだった、だからなのか生徒からは「今日は先生疲れてるみたい」「何か心配事でもあるのかー?」などと聞かれる始末で、これはもう自分が思っている以上に重症のようだと理解する。
だからなのか静は早めに仕事を切り上げようとしたが、今日も時間がかかり、また夜遅く一人残って職員室で作業をして、帰りはいつもより遅くなり、結局帰宅時間が日付も変わろうかという時間になってしまった。
そして玄関の鍵を開けて中に入るとそこには電気が点いており、誰かが居る事が分かるのだが、
(どういう事だ……鍵は閉めて置いたはずだが……)
そう思って警戒しながらリビングまで進むと、そこに居たのはやはり自分であり、
「なっ!?」思わず驚きの声を漏らしてしまう静。
しかし向こうは何もリアクションを起こさずに、ただジッとこちらの方を見つめてきているだけだ。
(一体何が目的だ……?)
そう考えていても相手は無言のまま近づいてきて来て、思わず逃げようかと考えて後ずさってしまう。だが後ろは壁であり、すぐに追い詰められる形となってしまったのだが
「どうしてここに居る……いや、それにしてはここは私の家だぞ」なんて事が言えずに黙っていると、いきなり抱き着いてくる相手。その行動に困惑しながらも、慌てて引き剥がそうとするのだが、相手から漂う匂いを嗅いだ途端頭の芯までクラクラするような甘い匂いが鼻に来て、全身の力が抜けていく。
(この匂いは……何だ!?)
そう思うも体は動くことがなく、そのまま為すがままにされている状態になって、更にキスをされた瞬間意識は完全に吹き飛んでいた。そして気が付くと二人の静はキスをしながら抱き合っていて。「どうしてこんな事に!」と思ってはみたが、体はもう完全に蕩けきっていて、頭の中もピンク色のモヤがかかったかのように思考が働かないようになる。それは相手も同じのようだった……いや、向こうの方がその症状が強くなっているのか、こちらの口の中に大量の自分の甘い唾液が入って来て、それを呑み込んでしまう程に夢中になっていたのだった。そして唇が離れ唾液の橋が伸びるとそれが切れないうちに今度はこちらの舌が彼女の口の中へと入って行き、絡み合い、相手の唾液を吸い尽くす勢いで吸い上げていく。
「ぷはっ」と口が離れた時、二人の口には混じり合ったお互いの唾液が橋のように掛かっていて、それをお互いに舐め取ると同時に二人は再び抱き合う、今度は正面からしっかりと相手の背中に手を回す。お互いの胸を押し付け合う形だがそれでも全然構わないし寧ろ気持ち良いと思える程だった。そしてまた激しいキスを繰り返し始める…やはり昨日の出来事は夢ではなく現実だったのではないかと思ってしまう程だったのだ。いや、確かにキスだけではない、昨日の激しい一夜は現実の出来事だったのかもしれない、だってこんなにも自分は彼女に興奮しているのだから……
と頭の中で一瞬そう考えると途端に思考は甘くて蕩け、何も考えられなくなる「駄目だ……気持ち良い……もっと欲しい」という感情だけが頭の中で支配してしまうのであった。もはや相手を求める事で一杯になり、他には何も考えられなくなっている状態になっていた彼女だったのだが、それは相手も同じらしく、彼女もまた必死に求めてきてくれるのであった。垂れ流し続ける唾液をお互いに相手の口の中に押し込んでいく、すると喉がゴクンと音を立ててそれを受け入れてくれる。そして飲み込んでしまう、二人の唾液が混ざったそれはあまりにも甘すぎて脳がおかしくなる…そしてまた舌を絡めると今度は向こうの方から舌を出してきたのでそれに答えるように自身の舌を出して絡ませると、今度は向こうから攻めてきたのだ、こちらの口の中でねっとりと舐め回してくる、その動きに対応してこちらも動くのだが、やはり同じように上手く対応されて逆に攻められてしまう。
クチュクチュ、グチュッグチャという音だけが響く、そしてまた唾液を大量に交換しながら流し込んでは飲むのを繰り返している内に、二人は完全に快楽の虜になって行く。お互いに相手の舌を吸ってみたり噛んでみたりと色々なことをしてお互いを貪っていったのだった…そして唇が離れた時に、2人は糸を引き合いながら口を離すとそのままお互いを見つめ合って、また再び口が重なり合う。
もう何度目か分からない程キスを交わしてはお互いの唾液を貪り続ける二人、そこには理性などと言うものは一切存在してはいなかった……。こうして完全に堕ちた二人はその後も一晩中激しい時間を過ごしてしまい、翌日は当然寝不足になってしまうのだった。そしてそこからの日常は完全におかしくなりながらも今までのような平和な生活が続いていく。