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ナビゲーター ~女体化をご案内します~(1/15)

プロローグ


 「彼女」は目で合図を送っていた。


 自分の横にいる美少女にである。

 その美少女は、不愛想というよりは無機質というべき佇(たたず)まいだった。

 二人はお揃いの制服を着ている。

 クリーム色のベストに赤いリボン、白い清潔感のあるシャツに、寒色系のチェック柄のプリーツミニスカート。

 肩からは大きなスクールバッグを提げている。

 紺の靴下にスニーカー。

 そして、ミニスカートからは健康的ではち切れそうな太ももが覗いている。

 要は、「イマドキ」の女子ということだ。


 窮屈な電車内でいつの間にか人口密度が増えて行き、気が付けば「気絶していても次の駅まで立って行ける」ほどのラッシュになってしまっていた。

 同年代の女子に比べても明らかに発育のいい肉体を可愛らしい制服に押し包んでいる「彼女」。


 その「彼女」が異変に気付いたのは前の駅を出発してしばらくしてからだった。

 この混雑では多少身体にモノが当たるのもやむを得ない。

 だが、その「手」の動きは明らかにおかしかった。

 スカートに頼りなく覆われた「彼女」のお尻をすりすりと撫で続ける。

 もう「手が滑った」などという言い訳も通用しないほどだ。

 その「手」の動きは妙に手慣れていて、時折「お尻の割れ目」に添って撫で上げる様な動きすらした。

 「彼女」はその都度「ひぃっ!」という悲鳴を押し殺していた。

 だが、動きのエスカレートが、遂には太ももまでしか覆っていない短いスカートをめくり上げ、直接パンティを触りに来るに至って「限界」を迎えた。

 『ガシッ!』っと音がする様だった。

「痛てててて!何するんだ!」

 何と、気の弱そうな青年を挟んで、その後ろのサラリーマン風の男が悲鳴を上げた。

「おやめください」

 美少女が冷たく言い放つ。

 次の駅で人が吐き出されると、「彼女」「美少女」そしてサラリーマン風の男は一緒に駅のホームに出た。

 サラリーマン風の男は何やら良く分からないことを絶叫していた。

 このシチュエーションの致命的な危機感を察していたのだろう。

「違う!俺じゃない!俺はやってない!」

 周囲の乗客は、関わり合いになるのを避ける様に一斉に改札口に向かって歩いて行く。

「どうしました?」

 やってきた駅員とサラリーマン風の男との怒鳴り合いとなった。曰く「痴漢冤罪で一生を無駄にさせられたらどうしてくれる!」「名誉棄損で逆に訴えてやる!」などなど。

 だが、「美少女」が差し出したスマートフォンには、特徴的な男の手元のボタンと共に、スカートのお尻を撫で回し、さすり回し、あまつさえスカートの中に手を突っ込む瞬間までが再生されていた。

 動かぬ証拠の前に遂に男はその場にへたり込んだ。


 「彼女」と「美少女」がお揃いの制服姿で駅を後にする。

 良く見るとスクールバッグには動物らしいアクセサリーが揺れており、髪飾りも可愛らしく、リップグロスが光っている。

 一人は背中まである長い髪が清楚な印象、もう一人はショートカットだ。これがミニスカートでなく、膝丈の上品な制服だったならばどちらも深窓の令嬢に出も見えただろう。


「・・・結局、立件には至りませんね」

「まあ、しょうがないよ」

 にこにこ笑顔でいう「彼女」。大胆な痴漢被害に遭った精神的ダメージは余り無いらしい。

 「立件に至らない」というのは、当の「被害者」たる「彼女」が正体を明かすことなくこうしてその場を立ち去ってしまったからだ。

「一般的な男性はその肉体と制服姿で通勤はしないと思います」

「だろうね」

 駅の改札を「通勤定期」で通りながら二人の会話は続いた。

「危険なので推奨しかねます」

「でも、大丈夫だったでしょ?」


 

 オレの名前は、金碇那知(かないかり・なち)。

 れっきとした二十五歳の男だ。

 隣の「美少女」はパートナーなんだが、ちと事情が複雑だ。

 一応「名前」はあって、IDは「半井寧々(なからい・ねね)で作っている。普段は「ねね」と呼んでいる。


 見ての通り、オレには「変身能力」がある。

 といっても限定的なものだ。

 ハッキリ言うと「女」になれる。

 年齢もかなりの程度操れる。

 医学的に検査してもらったわけじゃないが、恐らく「女」になっている間は、内臓も女になっていると思われる。

 女の性器も膣もあるから、子宮もあるだろうし、乳房には乳腺も通っているはずだ。

 少なくとも「感度」に関しては女だと思う。

 仕事はごく平凡な事務職だ。彼女も今のところいない。いたことが無い。

 退屈な日々を、時々こう言う風に「異性の姿」で通勤することで刺激を楽しんでいる。・・・といっても今日が初めてではある。これからそうしようと思っているところ。

 もしも自分一人だったらこんな危ないことはしないのだが、隣には頼もしいパートナーの寧々がいてくれる。

 彼女は人間では無く、アンドロイドらしい。

 自分でそう言っているだけなのかもしれないが、ともあれ全く眠らずにこちらを監視してくれているし、こんな趣味にもつきあってくれる。

 およそ感情らしきものを全く感じさせず、以前には繁華街で絡まれそうになった時に「お姫様抱っこ」で走って逃げてくれたことも、チンピラを叩きのめしてくれたこともある。


 周囲に目撃されていないことを確認すると、会社に一番近いコンビニエンスストアの車いすも入れる多目的トイレに入って施錠した。

 そして、いそいそと制服を脱ぐ。

 寧々が手際よく荷物から五〇センチ四方の敷物を出す。

 オレは素早くスニーカーを脱ぎ、長い脚と格闘する様に紺のソックスを脱いで裸足になる。

 この時、膝が発育のいい胸につかえる感慨がいいのだ。

 スクールバッグを寧々に預け、リボンを長い髪を通して頭から引き抜き、ベストを脱ぎ、スカートを外した。

 健康的な肌色が展開する。

 男の時と反対の留めになっているボタンを外していき、腕を引き抜く。

 純白のブラジャーが登場し、器用に腕を背中に回して外す。

「・・・ん・・・」

 締め付けられていたバストが解放される。

 同年代にしては発育がいい方だとは思うが、まだ成長の余地のある形のいい乳房が現れた。

 ヒソヒソ声で言う寧々。

「お急ぎ下さい。時間が迫っています」

「わーったって」

 手際よくパンティを引き抜く金碇。これで全裸になった。

 同時にガラパンを渡してくれる寧々。セクシーな女体に、似合わない男物のガラパンを履く。

 そして・・・。

 パンパンに張りつめていたガラパンは、やがて骨ばったものになり、前方に膨らみが現れる。

 形のいいツンと上を向いた乳房は凹み、男性の胸板になっていた。

 細くくびれたウェストはずん胴になり、背中まであった長い髪はごく普通の短髪へと引っ込んでいく。

 金碇は完全に男性となっていた。

 手際よく着替えを手渡ししてくれるのに合わせ、白いシャツにワイシャツ、ズボンにベルト。黒い靴下に革靴、そしてネクタイとスーツに着替える。

 どこからどう見てもごく普通のサラリーマン風男性の出来上がりだった。

「どうする寧々?一発お付き合いしてくれないか?」

「私は構いませんが、このままでは遅刻です」

「・・・そうだな」

 注意深く周囲を見渡した「制服姿」の寧々が一足先にトイレを出る。

 少し遅れて、黒い皮のカバンを携えた金碇が出て来る。

 トイレを使わせてもらった仁義として、ガムの一つも買うと少し離れた会社に向かって颯爽(さっそう)と歩き始めた。

 寧々が気づかれない様にその後を追う。

 勿論、会社は勿論のこと、家族や友人、知人の一人に至るまで、彼に「こう言う特異体質」があり、そして「こういう趣味」があることは誰も知らない。







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