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『今際の国のオオカミ』高橋文吾(5)

登場人物: ・高橋 文吾(たかはし ぶんご) 22歳。暇を持て余す大学生四年生。家庭教師のバイト。 ・浜辺 幹也(はまべ みきや) 18歳。受験間近の高校三年生。文吾の生徒。元水泳部。 ============= +++++  文吾は、ついに玄関のドアを開けた。  その途端、濃厚な甘い匂いと、肉の腐った臭いとが押し寄せた。  文吾は、貧血を起こしたような軽いめまいを覚えた。自分では気づいていなかったが、文吾のジャージの股間は硬く盛り上がり、ヒクヒクと震えていた。文吾の意識の上では、そのことにぼんやりとした違和感を覚えただけだった。  文吾は、ごくりと唾液を飲んだ。  玄関の大理石の床には、獣のような大きな足跡が続いており、血の乾いた黒っぽい塊が点々と落ちていた。玄関の正面の壁には朝焼けの海を描いた絵画が飾ってあり、鋭い爪で引っ掛かれたような疵があった。  文吾は玄関の突き当り、左手にある引き戸を開けた。 「――ッ!!」  予想できた通り、そこは狼男の寝床と呼ぶべき場所だった。  高級そうな家具の並んだ、広々とした開放的なリビング。  ベランダのあるガラス張りの壁から射し込む夕暮れの光が、血と肉の飛び散った壁や床や家具を生々しく照らし出していた。フローリングの床、ダイニングテーブルには、何者かに食い荒らされた男の無残な死体が転がっていた。文吾は、度肝を抜かれた。  度肝を抜かれたものの、文吾はすぐさま状況を受け入れた。  普通の感覚を持った人間にとっては耐えがたい、鼻の曲がる凄まじい悪臭に包まれた空間だった。  しかし、文吾の反応は、普通の人間とは異なるものだった。文吾はおびただしい血肉を目の当たりにして、自分でも気づかないうちに目を爛々と輝かせ、舌を垂らしてはッはッと息を荒げ、死臭と腐臭と血生臭さとが混ざった匂いに酔い痴れていた。 「フゥーッ、フゥーッ、」  理性がストップして、何も考えられなくなっていた。怖い、嫌だ、逃げたい――今やそんな負的な感情もどこかへ消し飛んでいた。文吾は五感をフルに働かせ、部屋の中で怒っている出来事を受け入れようとしていた。  その時、「んーッ、んーッ、」という唸り声のようなものが聞こえ、文吾は我に返った。  L字型のリビングの奥に進むと、窓際の椅子に自衛隊の制服を着た中年の男が鎖で括りつけられているのが視界に入った。手足を縛られ、口にはガムテープを張られていた。俺たちの他にも人間がいるのか、と文吾は驚いた。  文吾は、さっきまで狼男の痕跡に欲情していた自身を恥じた。そして、まるで自分は人を助けるためにマンションに侵入したのだと言わんばかりに「大丈夫ですかッ!」と声を上げ、男のもとへ駆けようとした。  ――と、文吾の足先にふにゃふにゃした柔らかいものが触れた。  それは、肩から引きちぎられた腕の一部だった。 「うおッ」文吾は転びそうになり、近くのソファの背凭れに手を掛けて踏み留まった。  ぬちゃ、と嫌な感触がした。手の平に真っ黒いどろどろした粘着質な液体が付着し、文吾は眉を潜めた。  何だ、これ? と、文吾は手の平に顔を近づけた。 「――ァ、」  すべては、どろどろした粘着質な真っ黒い液体から発されている匂いだった。  それを間近で思い切り吸い込んだ瞬間、文吾の中に眠っていた『獣』が目覚めてしまった。ついさっき男の唸り声というきっかけによって戻った理性はあっけなく吹き飛び、文吾は胸を締め付けられる感覚とともに頭が真っ白になった。ズクンッ、と腹の奥から熱が迫り上がるのを感じた。 「ハァ、ァ、ァア、」  文吾は、ジャージの股間を盛り上げながらイッた。  異常なほど興奮し過ぎていたせいで、イッたという自覚さえなかった。  自衛隊の制服を着た男の唸り声も、窓の外でぱらぱらと降り始めた雨の音も、もう文吾の耳には届かなかった。夢精の感覚と似て、自分がいつ射精したのか曖昧なまま熱に浮かされたように腰をヒクつかせていた。  ぱっと、文吾の脳裏に狼男の姿が過った。  文吾は、これが狼男の精液であることを本能的に覚った。文吾は半ば無意識のうちに、手の平に付着した真っ黒いどろどろした粘着質な液体を舐めていた。狼男の精液の独特な匂い、そして舌を痺れさせる独特な味によって、これまで理性で必死に抑え込もうとしていた文吾の中の邪悪な欲望が産声を上げるようだった。  文吾は手の平の精液を綺麗に舐め取った後、ジャージのゴムを突き上げてバチッとチンポが下腹部に反り返る音を聞いた。その時になってようやく、文吾は自分が何度もイッていたことに気づいた。ドクッ、ドクッ、と激しい脈を打ち続けるチンポを握り、竿から亀頭に指を這わせた。 「ア、ァー、アァ、ァ、ァ、」  呂律が回らなかった。それは今までの比ではない、人間としての理性を洗い流すほどの性的な快感だった。文吾は何かに洗脳されたようにうっすらと目を開けながらチンポを扱き続け、ガクガクと膝を震わせた。  おびただしい精液を放出する度、キシキシとかすかな音を立ててチンポが太さと長さを増していった。それだけではない、皮膚の下にチクチクと細かな針が刺さるような痛みが走り、全身の骨格、全身の筋肉が不穏な音を立て始めた。ミシミシッ、とジャージの生地の縫い目が破れそうに悲鳴を上げた。  ――俺もッ、『アレ』になりてェ……ッ!  今の文吾は、雄の化身と呼ぶべき狼男の存在に憧憬を抱いていた。憧憬――いや、それは、もはや信仰と呼ぶべきかもしれない。あれこそが本来あるべき自分の姿で、狼男になればすべて願いが叶うような、文吾はふしぎな錯覚に囚われた。  ――幹也ッ、幹也ッ、幹也ッ、待ってろよッ、幹也……ッ! この世界でお前を守れるのは、俺だけだ……ッ! そのためには、俺が『完全なる存在』へと進化する必要があるんだ……ッ!  幹也に食糧を届けたら自分は姿を消そう、という過去の決断はどこへやら――。今の文吾は歪んだ論理を振りかざし、狼男こそが唯一の正解だと信じて疑わなかった。なぜか分からないが、文吾は自分の肉体に今までの人生における最大の変化が起こるだろう確信を持っていた。 「ッ、フッ、クッ、ゥッ、ッ、ァアッ、ギャッ、ァッ、ハアッ、ハアァッ、」  文吾は短い悲鳴を上げ、血肉と精液で真っ黒く汚れたフローリングの床に膝を突いた。天井を仰ぎ、まるで自身の肉体に新たな魂を降ろそうとするかのように両手を広げた。  次の瞬間、文吾は落雷を受けたように大きく震えた。  文吾は、感電したように白目を剥いて硬直した。  意識はあるのに、何も見えない、何も聞こえない――。  ただ凄まじい激痛だけが、文吾の肉体を貫いていた。  文吾は、ヒュウッ、ヒュウッ、と喉の奥から空気を絞り出すように息を吐いた。  声を上げることも、指の一本動かすこともできなくなっていた。チンポの尿道までもが硬直してしまったように、射精もできなくなっていた。その間も、陰嚢の中で精液は次々に作られ続けていた。放出の機会を失った精液はチンポの根元に溜まり、チンポの根元は野球ボールのようにボコッと膨らんだ。  ググッ、ミシミシッ、ビキビキッ、ミシッ、メリメリッ、ゴキンッ――。  部屋中に響き渡る音を立てながら、文吾の骨格と筋肉は造り替えられていく――。  窓際の椅子に鎖で縛りつけられていた自衛隊の男は顔を真っ青にして、文吾の様子を見上げていた。文吾が常人離れしたガタイを獲得するさまを目の当たりにして、男はもう駄目だと言わんばかりにぐったりと項垂れた。  自衛隊の男が絶望してしまうのも、無理はなかった。せっかく同じ人間が助けに来てくれたと期待していたら、自分の目の前で狼男を思わせる姿に変化し始めたのだから……。  文吾の身に纏っていた真っ黒いジャージは、肉体の変化に合わせて限界までパツパツに膨らんだ。直後、肩と胸の辺りから生地の縫い目が破れ、ゴツゴツとした逞しい上半身が露わになった。腰回りのゴムはバチッと火花を散らすように弾け、下半身もまた一糸まとわぬ姿となった。  全身の皮膚のいたるところに、赤らんだ太い血管が浮かび上がっていた。心臓が脈打つのに合わせて血管がドクドクと震えた。大粒の汗が絶えず滴り落ち、フローリングの床には透明な水溜まりができていた。  文吾の背丈は、あっという間に二メートルを越えた。首は太く据わり、肩は丸みを帯びつつ盛り上がり、首から肩にかけて筋肉が山を連ね、腕はひと回りもふた回りも筋肉で太くなり、背中は筋肉の厚みと奥行を備えながら見事な逆三角形のシルエットを手に入れ、胸筋はずっしりとした立体感を得ながら濃い陰影を落とすほど前に迫り出し、腹筋は厚みを増しつつ鮮明なシックスパックの割れ目を描き、太腿や脹脛もまたメリハリのある筋肉の膨らみを見せ、対照的に尻は引き締まって左右に窪みをつくった。下腹部に反り返って怒張したチンポには赤黒い血管が幾重にも絡みつき、飢えた獣のようにギシッギシッと獰猛に蠢きながら、常人離れした圧巻の巨躯にふさわしい長さと太さに達した。  わずか五分ほどの出来事だったが、文吾にとっては永遠の長さに感じられた。  バンッ!! と何かが爆発するような音がした。  寸止めされていたチンポから、溜まりに溜まった精液が放出される音だった。  ドシュッ!! ドシュッ!! ドシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ――ッッ!!!!  それをきっかけに、文吾は激痛という針の莚から解放された。  次に文吾を襲ったのは、気を失いそうなほど強烈な快感の連続だった。 「ァッ、ァァッ、アッ、アアッ、ハッ、ァッ、スッ、」  文吾は、さっきよりも幾分か灰色に染まった粘り気の強い精液を迸らせた。天井、そして自身の肉体に終わりのない精液の雨を降らせた。文吾の脳の正常な回路を焼き切るように途方もない快感が押し寄せ、目の奥がちかちかした。  文吾は立ち上がり、身長が伸びたせいで間近に迫った天井を見上げながら、絶叫した。 「スッ、ッッッッゲエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェ――ッッッッッ!!!」 (続く) あとがき: 次はいよいよカニバリズムの展開を迎えます。 今回は、これまでとやや趣向を変えた変身描写になるよう頑張りました。 いいね、コメント、大変励みになっております^^ 読者の皆様、いつも応援ありがとうございます!

Comments

감사합니다✨ 한국 독자 님, 반갑습니다☺️🙏

サトー

그래도 심리의 묘사도 나쁘지 않습니다. 몰입하게 된달까

コメントありがとうございます☺️ これまで主人公の中での迷いをたくさん描写してきたので、そのぶん、歯止めが効かなくなって理性が押し流される様子は、ジェットコースターのように展開を早めようと思っていました。 彫像のような感じで見動きが取れないまま肉体がデカくなっていくシチュが書きたかったので、そこに着目いただけて嬉しいです✨ 今回の変身描写は心情の変化を書き過ぎず、なるべく第三者寄りの視点で書こうと試行錯誤しました。満足いただけたようでほっとしました! 引き続きお楽しみいただけるよう頑張ります🤗✨

サトー

理性があっという間に押し流されてしまいましたね…… 変身の最中指一本も動かせないってのが新鮮でした。 その分身体や筋肉がでかくなっていく描写が印象深いですね……!全身余すとこなくでかくなってるのがわかります。 終わった瞬間の射精に「もう切り替わったんだな……」って感じをすごく受けました。 堪能しましたありがとうございます!

ichiya


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