『BLOW UP』(上)
Added 2021-04-02 07:19:24 +0000 UTC登場人物: 上野匠太朗(25) 藤巻龍也(21) ========== 「はあッ、はあッ、はあッ、はあッ、」俺はベッドの上で目を覚ますと同時に射精してしまった。あの精液特有の生臭さが鼻を突く。心臓がドクドクと素早く鼓動していた。スウェットの股間がぐっしょりと冷たく濡れている。あーあ、掃除するのが面倒だ、と俺は内心で舌打ちする。部屋はまだ真っ暗で、枕元のスマホをタップすると午前3時と表示された。 「んん、」隣で眠っていた彼女が苦しげな声を上げる。俺は彼女を起こさないように足音を殺して洗面所へと向かう。パチ、と電気のスイッチをつける。LED灯の眩しさに目を細めながら、自分の股間に目を落とす。どろっと白濁した液体がスウェットの腹や胸にまで飛び散っているのが分かり、俺は、うげ、と舌を出す。洗面台のティッシュで精液を拭ってから、スウェットと下着を洗濯機に放り込む。暗闇で分からなかったが、きっとベッドも汚れているだろう。俺はため息をつき、スマホの懐中電灯とティッシュを持ってベッドに戻り、シーツに飛び散った精液を拭った。 BLOW UP――真っ黒い背景に黄色い文字ででかでかとプリントされたプロテインを飲み始めてから、5日が経った。最初はプラセボ効果を疑ったが、これを飲むようになってから俺の体調は明らかに良くなっていた。ハードな肉体労働を終えた後は家でぐったりしていたのに、今では仕事が終わった後に会社のジム(うちの工場の一隅には社長の意向でトレーニング器具が置かれていた)で何時間も筋トレに取り組んでいる。そうやって体力を発散させなければ、身体がむずむずして居ても立ってもいられない感覚に襲われるのだった。なぜだか異様なほど回復が早く、いくら重量を上げても筋肉痛にさえならない。 きっかけは何気ない彼女の一言だった。「匠太朗って、工場勤務の割に痩せてるよね。もっと男らしい身体になりたいとか思わないの?」その言葉が、グサッと心に刺さった。俺はもともと彼女から細身の男が好きだと聞いていたから、え、何で? と聞き返した。「いやさ、テレビで細マッチョ特集を見てたら、意外とアリだなって」そうなんだ、と俺は興味なさげに答えながら、筋トレに取り組むことを決意した。 俺は会社で一番ガタイの良い後輩の藤巻(余裕ありげな雰囲気もあって俺より年上に見える)にアドバイスを求めた。藤巻は身長2メートル越え、筋骨隆々とした巨漢だ。会社では髪色は黒のみと規定されていたはずだが、藤巻だけは短めのアップバングを明るい銀色に染めていた。そんな調子だから、遠く離れた場所でも藤巻はすぐに見分けることができた。 「アドバイス? 別に、大したことないッスよ」藤巻は喫煙所のトタン壁に背を凭せ掛けながら煙を吐き出し、何か考えるように俯いた。そして藤巻は頭を上げ、「飲むだけで筋肉がつくプロテインがあるって言ったら、飲みます?」と言った。俺は冗談かと思って鼻で笑ってしまったが、藤巻の表情は真剣だった。「俺のお勧めのプロテイン、あげますよ。タダで」マジで? すっげェ嬉しいわ、と俺は答えた。 翌日、藤巻はお勧めのプロテインを手渡してくれた。効果は絶大だった。いや、絶大過ぎる程だった。体力がついただけでなく、それに比例するように性欲が旺盛になった。休憩になればトイレの個室に駆け込んで自分で処理する必要があるほど。陰嚢は性欲を溜め込んで腫れぼったく感じられ、チンポはイッたそばからムクムクと起き上がってボクサーパンツを押し上げる。筋肉に刺激を与えると性欲もまた刺激された――特に、ジムで何時間も筋トレに取り組んだ後はなかなか勃起が収まらず、シャワールームで何度も抜いてから彼女のアパートに向かった。 彼女とセックスするのは週に1~2回程度だったが(平日は仕事で疲れて寝落ちすることが多かった)、プロテインを飲み始めてから俺は毎晩のように求めるようになっていた。彼女は最初、「急に元気になっちゃって」と笑っていた。しかし、俺が行為中に1回イクだけでは飽き足らず、ぼってりと精液で膨らんだコンドームを交換しながら、2回、3回、4回……と射精を繰り返すうちに、「どうしたの? 匠太朗って、そんなに絶倫だったっけ?」と彼女は顔色を変えた。それでもしばらくの間は俺の性欲に付き合ってくれたが、5日目になると、「いい加減にしてよ」とぴしゃりと断られてしまった。 夢精、と呼んでいいのか? 俺は彼女にセックスを断られ、ムラムラするのを我慢しながら眠りに就いた結果、深夜に目を覚まして射精してしまった。こんな経験は初めてだった。プロテインって、ただのたんぱく質なんだよな? どうしてこんなことになるんだろう? と不思議に思ったが、俺はすっかりBLOW UPの虜になっていた。シーツに飛び散った精液を拭い、下着を着替えた今だって、俺はキッチンに立ってプロテインの黒い粉をシェイクしていた。 後輩の藤巻からタダでもらったプロテイン。水に溶けるとコーヒーのように濃い焦茶色に染まる粉末は、まるで覚醒剤のように作用した。ざらざらした液体を飲んですぐに鳥肌が立つ。腹の底は熱くなり、ぐぐっと股間のイチモツが持ち上がる。頭の中は冴え渡り、今なら何でもやれるはずだという万能感が湧き起こる。日々の労働に疲れ切って眠り込んでいた「雄」の自分が、ざわざわと目覚めるような感覚だった。 「ふッ、ふッ、ふッ、ふッ――」俺は有り余る体力を発散するためにキッチンの狭い床で腕立て伏せを繰り返した。ここは家だから、ジムにいる時のように性欲を我慢する必要はない。筋トレをしながらゾクゾクする感覚に襲われ、そのゾクゾクする感覚のままに射精した。ボクサーパンツを貫通して、俺の身体とフローリングの床に白濁とした液体が飛び散る。手で扱く必要さえなかった。どうせまだまだイクんだから、掃除するのは最後でいい。そう思って、腕立て伏せを続けながら、ブシュッ、ドシュッ、と俺は何度も何度も腰を動かした。「ああ、やっべェ、こんなんじゃ頭がおかしくなっちまう……」 結局、俺は朝まで筋トレを続けた。カーテンの隙間から朝陽が射し込むのを見て、精液でどろどろになったキッチンの床を急いで掃除した。彼女が目を覚ますまでにシャワーを浴びる。「うわあ、匠太朗? 凄くなったねェ――」洗面所に立ってタオルで身体を拭っていると彼女の声が聞こえ、振り返った。洗面所の入口には目を丸くした彼女が立っていた。俺はたった5日で細マッチョと呼ばれるような体型に変わっていた。まだ藤巻のようなムキムキなガタイからは程遠いが、それでも俺の身体はひとまわりも大きくなっていた。 「好みの体型になってきたか?」俺はニヤリとしながら質問した。彼女に身体つきを褒められて満更でもなかった。「うん、格好良くなった。この体型を維持して欲しいな」と彼女は答えた。「俺、もっと筋肉つけたいな」「私は、今くらいの感じが好きかな」そんな話を交わしながら、俺は彼女に性的な魅力を感じなくなっている自分に気がついた。なぜだろう? 昨晩までは彼女を見るだけで情欲が激しく刺激されていたのに、今は何も感じない……。あんなにイッたんだから性欲が落ち着いて当然だよな、と俺は考え直し、出社のための身支度を始めた。筋肉がついてきたおかげか、ツナギの作業着を纏った自分の姿が以前より格好良く見えた。 白米3合、トースト5枚、ゆで卵12個、ウインナー6本――彼女に「大丈夫?」と心配されるほど、俺は食欲が旺盛になっていた。家にある食べ物だけでは空腹感は満たされなかった。俺は少し早めに家を出てコンビニで弁当とおにぎりとサラダチキンと総菜パンを買い込み、車の中でがつがつと掻き込んだ。これだけ食べても胃がもたれることはなかった。夢中になって食べ物を貪っていると、スマホのアラームが鳴った。俺は出社時間が近いことに気づいて慌てて車を発進させた。 昼休憩の時間、同い年の同僚と笑いながら煙草を吸っている藤巻の姿が見えた。その瞬間、俺は雷に打たれたように立ち尽くした。心臓がドクドクと高鳴り、手の指先がかすかに震え、股間に血が集まって熱くなるのを感じた。こんなときめきを覚えるのは初めてだった。ときめきなんて馬鹿々々しいと思うが、それ以外にどう表現すればいいのか分からない。俺はぎゅっと自分の胸を押さえながら、喫煙所のパイプ椅子に座って話し込んでいる藤巻の横顔に釘づけになっていた。 俺は自分の性癖の変化に戸惑いを覚えた。今朝彼女を見ても性的魅力をまるで感じなかったのは、昨晩イキまくったせいではなかった。だって俺は今、遠くに見える藤巻の姿を目で舐め回し、チンポをギンギンに勃たせていているのだから――。あんな身長2メートル越えのバキバキの筋肉野郎に興奮してしまっている自分が恥ずかしかった。そう、俺はすっかり藤巻に惚れていたのだ。 俺はその場から踵を返して小便臭いトイレに駆け込んだ。個室の鍵をかけ、ツナギの作業着のチャックを下ろし、汗で蒸れた下着から勃起したチンポを取り出す。ボクサーパンツには先走りの黒い染みができていた。目を瞑ると藤巻の姿が脳裏に鮮明に浮かんだ。俺は心の中で何度も藤巻の名前を呼び、昼休憩の終わりを告げるチャイムが鳴るまで自分のイチモツを扱き続けた。 (続く) あとがき: 新年度になりましたね!^^ サトーのFANBOXを応援いただいている方は、社会人の方が多いと思います。仕事はとても大変で、サトー自身も何かと落ち込むことが多いのですが、職場を舞台にしたTF物語は大好きです!w 特に、工場勤務はアツいですよね!w 最近はあまり改行しないスタイルで小説を書くようになりました。ネットでは改行が多い方が読みやすいと聞きますが、サトーには今のスタイルが合っているため、しばらくこの書き方を続けるつもりです。読みにくいと感じる方がおられましたら、申し訳ありませんm__m 今月中に続きを公開する予定です。 楽しみにお待ちいただければ幸いです^^