9 新たな俺の、新たな日常 ギリで講義室に飛び込んだ。 そのせいで講義室はほぼ満席。また黒板の見づらい一番後ろしか開いていない。 だけど、空いている席の横には倉知さんが座っていて俺を手で招いている。 「また遅刻寸前だなんて、いけない子だなぁ~。まさか明け方まで君たちだけでセックスしていたの?」 「言い方に棘がないっすか? つうか、倉知さんだってマスターとヤっていたんでしょ?」 「そりゃぁね。今日はあの人も朝イチで講義を持っているから前もって発散させてあげないと。講義中に性欲が溢れて受講生を意思の無い肉奴隷にしちゃったら後始末が面倒なんだよ。他の先生方にまで迷惑かけちゃうしさ」 俺が知らないだけでマスター矢場井の「やらかし」が前にあったんだろう。 もしかしたら知ってはいるけど記憶が削られているだけかも知れないが……。 「講師陣もかなりの割合で改造されていたりマスターだったりなんて、まったく、変な大学ですね、ここって」 「そこが面白いんだよ。タマキもそう思うだろ?」 いつのまにか倉知さんまで俺を「タマキ」とフランクに呼ぶようになっていた。レゾネイターとして先輩風を吹かしていると言う感じじゃない。タツミやマナブみたいに心の距離が縮まったからだろう。 数日前、マスター矢場井の研究室で俺のカラダは隅々まで調べられた。 タツミやマナブ曰く『最終的には言葉で言えないくらいグロい状態になってて玉ヒュンした』らしいが、全ての分析や調査が終わって目が覚めれば痛みは無いし解析ポッドに入る前と何も変わってないため二人が言うような惨状があった事など全く気付かなかった。 その後はマスターと倉知さんと俺たち3体でセックスした訳なんだが、正直言ってマスターのパワーに圧倒されっぱなしで兄貴っぽい立ち位置の倉知さんまでマスターのジャイアントチンポに貫かれて狂わされてたし、俺もまたマスターの指使いや腰使いで身も心もメロメロにされちまっていた。 講師の先生が入って来てぼそりと挨拶を告げた。 テキストを開き、聞き取りにくい声や見えづらい黒板に注目していると隣に座る倉知さんが俺の太ももをイヤラシイ手つきで撫でさすってきた。 「ちょ、何なんすか倉知さん、講義中ですって……」 やんわり拒否の意味も込めて小さくたしなめる。 「いやぁ、マスターを発散させることに注力し過ぎちゃってぇ、俺の方は今一つ発散しきれてないんだよね~」 「だったら、次の講義はバックれますんで今は我慢してくださいよ」 「あ~、ごめん、もう無理。タマキのエロいチンポやかっこいい共鳴体のカラダを思い出したら、もう、もう……、ううっ、我慢できないっ」 「ちょ!? 倉知さん!?」 メキャ、バキバキ、と倉知さんが徐々にカラダを大きくさせて行く。 「ちょ! ダメっすよ! 他のヤツもいる講義中に変態しちゃうなんて!」 「ぬぐ、ぅ、ああ、あ゛、ダメだぁ、も、もう! フギュゥグルルッ!」 理性がぶっ飛びどんどん変態していく先輩のため何とかこの場をしのがないと、と焦る俺。 だけど、対処を思いつく前に倉知さんはヒトの姿を捨て異形のレゾネイターに完全変態してしまった。 このままじゃバレる、ああ、さすがにもう気付かれちまう。 青ざめながら周りを恐る恐る窺うと、女子は全員机に突っ伏して眠っているし、男子は人形みたいに背をまっすぐ伸ばして身じろぎもしない。 「……え?」 そんな中、俺たちに振りむいたのはタツミとマナブ、そしてなぜか講師の先生も。 「――あながち倉知さんだけが悪い訳でも無いねんな~」 「そうだよ。蕨岡君がイヤらしい『音』を鳴らしたまま入って来るのも悪いよね~」 「え? 俺の音? そんなの出してないんだけど?」 俺は変態もしてないし昨夜ちゃんとタツミたちとセックスしたのでさほど溜まってはいないんだが……。 「自覚が無いってのは厄介だな。倉知君は特に受容感覚器官が鋭いからひと際強く共鳴してしまったんだろう」 講師の先生が俺の隣りに立ってうなじにかかる髪をそっとすくい上げた。すると、そこには俺も知らないうちにゼリー状の振動球がポコっと浮かんでいて……。 「うわ、俺、いつの間に……」 「無意識に部分変態してしまっていたんだよ。君らは確か、矢場井ラボで改造を受けた子たちだね?」 「あ、あの、先生? なんでそのことを?」それに、なぜ男子生徒と違って普通に動けるのだろう? 「不思議に思うのも無理はない。私もまたあるラボを主催しているマスターであり、矢場井さんとはライバル関係と言っていい。だが、争っている訳じゃないから安心してくれ。 研究者として切磋琢磨しているだけだからな」 「先生もマスターだったんすか」 理系じゃなくて文系の、経済学が専門の先生が人体改造の研究をやっているなんてとても意外だ。 「技術的に分野違いだと思うかい? まぁ無理もない感想だ。しかしね、経済学は人とモノとお金の関係を突き詰めていく学問でね、例えば――」 講師の先生が手の平に金色のコインをズブゥと浮かべ、人形みたいに固まっている男子生徒の頭に押し当てた。 すると、そのコインは生徒の頭の中にするっと吸い込まれ、直後、男子生徒の下半身から肉色の太い触手がズビュル! と何本も生えてきた。 『ぐじゅぎゅるふひゅーーーーっ!』 「性欲と同じように人間が持つ金銭欲は実に大きい。そこをちょいと目に見えるカタチで刺激してやればご覧の通り、真面目な生徒もたちまち触手の魔物に大変身って訳だ」 うん、経済学と魔物化との関連は今一つ理解できないけれど俺には分からない何らかの理論があるんだろう。 「で、触手モンスターになった彼、どうするんすか?」 「どうするって? そりゃぁ、倉知くんのついでで良いからコインが切れるまで君たちに相手をしてもらいたい。私はこの空間の維持で精一杯だから見物に回らせてもらうよ」 何らかの能力を使って講義室を現実空間と切り離しているのが先生の言葉で理解できる。俺たちのマスターも謎が多いけどこの先生もどんな力を秘めているのか気になった。 「う゛、うぅ、タ、タマ、キィ……」 先生の能力を知ろうとする前に倉知さんを何とかするのが先だ。 変態を遂げた倉知さんの股間からは狂暴なチンポがズブゥと厳めしく聳え、飢えた猛獣のマズルみたいにだらだら涎をこぼして獲物を求めている。 ここまで欲情し切ったらとてもじゃないけど引き返せない。タツミとマナブは早くも倉知さんの淫音に共鳴してベキベキ筋肉を肥大させ変態を開始している。 だったら俺も、と擬態を解いて筋肉を盛り上げながら人外の異形へ、白いアーマーをまとうサイボーグ状の形態へと姿を変えて行く。 『ぐじゅぷ、お、おれも、まぜて、くれよぉ、おまえら、の、ちんぽ、すげぇ、うまそう……。りーじょん(領域)ちがう、でも、いい、だろ?』 立ち上がった触手生徒の下半身はタコのようになっていて上半身は見事な筋肉美を見せている。 彼が自由に動けるのは魔物化したことによって先生からの精神拘束から外れてしまったためだろう。 「ああ、もちろんだ。お前の触手がどんだけ気持ち良いのか分からせてくれ」 俺の発言で触手くんはさらに興奮したのか瞳を真っ赤に染め新しい触手をさらに追加した。 「お前ら~、盛り上がるのはいいが時間にも俺の能力にも限界はあるんだ。その点を頭ん中に入れておっ始めるんだぞ~!」 ◇ 言いつけられた追加のレポートを作るため図書館に足を運んだ。 参考になりそうな書籍を求めて棚を眺めていると俺の背後から誰かの手が伸びた。 その瞬間、そいつの音には何の混じりっ気も無い、つまり未改造のヤツなのだと知れた。 振り向くと眼鏡をかけた真面目そうなヤツだった。色白で細身で、しかし内包するエネルギーの高さ、生体が発する音の大きさ、卑猥さは「耳」をそばだてなくてもビンビン伝わってきた。 (美味そうだな……) 股間が疼いた。 コイツに俺の音を共鳴させたい、と強く思った。求めた。 そいつは俺に見られている事など気にも留めず目的の本を掴んだら背を向けて離れて行く。 俺はそいつの後ろ背中に『音』をぶつけた。 人間の耳には聞こえないがカラダの中で効果を発揮する「淫音」を。 そいつが不意に勃起しだした股間に慌てて周囲をきょろきょろ窺う。そして、逃げ込むように図書館の地下にあるトイレへと駆け込んだ。 距離を取りながら俺はそいつの後を追いかける。 一つだけ閉じられた個室のドアの奥からイチモツを扱く音を聞くと俺は衣服に変えていた組織をカラダに吸収し、すぐにレゾネイターへと完全変態を遂げた。 俺の場合はASMRで徐々に脳から改造された。そのお陰で膨大なデータを流し込まれても精神は壊れず記憶も自我も保ったままレゾネイターに到る事が出来た。 しかも、マスターや倉知さんが言うには新種のレゾネイターだ、とも。 『自分をコピーさせる能力が現れるとはさすがに想像できなかったな』 マスターは手放しで喜んでくれた。 倉知さんも分析結果を面白そうに聞いていた。 タツミもマナブもつられてニヤニヤしていた。 トイレの個室でシコる奴に向けて長く伸びた後頭部の太い尾部の、内側にあるゼリー状の振動球から卑猥な超音波を大音量で浴びせた。 きっと個室内のヤツはASMRの卑猥な音と同じく自分以外誰も居ないのに「ぬちゅぬちゅ、くちゅくちゅ」とリアルに舐られしゃぶられる感触を受け取っているだろう。 だけど、俺の「淫音」はその程度では収まらない。 俺の本気の音は相手に俺をコピーさせる。 ドアを開けた。 鍵は音の振動で外れていた。 中にいたそいつはすでに筋肉を倍以上に肥大させ、頭部がズブズブと後ろに伸び始めている。 皮膚は白い装甲になりメタリックなツヤを帯びて行く。 やがて目の前には俺とまったく瓜二つ、複製され『俺』へと姿を変えたヒトではないモノが立っていた。 「よぉ。オリジナルの『俺』」 「おう。無事にコピーが完了してよかったな。レプリカ(もう一人)の『俺』」 「んで? このカラダの持ち主の意識や記憶はどうする? このまま眠らせておいてOK?」 「ああ。セックスが終わるまでは封印しておいて構わない。でも、男同士で気持ち良くなってたことはしっかり残しておいてくれよ?」 「了解。じゃぁ、始めようか。『俺』たちがやりたい事を」 コピー体が頭尾部の振動球をブゥンと震わせた。 途端にヌメヌメ舐める感触やチンポをしゃぶる様な感覚が流れ込んだ。 「ヴァーチャルな音も気持ちイイが、リアルに触れ合おう。――うん?」 振り向けば別の男子生徒がトイレに入ろうとしたまま俺たちに固唾を飲んでいた。 しまった、見られた! 焦る俺が考えるより先にコピーの『俺』はためらうことなくその生徒に「淫音」を投げつけた。 すると、その生徒もカラダをメキメキ、バキバキと鳴らしながら新たな『俺』に変化して……。 「結局3Pになったな」 二番目・コピーAの『俺』がニヤついた。 「お前もその能力が使えるのか」 「そりゃぁ、『俺(お前)』のコピーなんだから使えて当然だろう?」 能力まで複製できる事の良し悪しはともかく、もう一体、新たに三番目・コピーBの『俺』が、レゾネイターがまた一体出来上がった。 「んふぅぅ……。早くヤロウぜぇ~。この魔法(コピー)が解けたら『俺』は元に戻っちまうんだろぅ?」 コピーBの『俺』が股間を撫でつけながら俺たちを煽る。 「まぁな」 コピーは永続的には続かない。 だが、何度か繰り返せば淫音によって変質したカラダはその変化に馴染み、変化を求め、元のカラダにその気が無くとも自然とレゾネイターになるための素地ができあがる。 俺がASMRによってレゾネイターの生体データを分割して流し込まれたように。 さぁて、待たせたなぁ。 下顎のマスクを開いた俺はコピーAのチンポを口に咥えケツをコピーBに向ける。 何も言わずコピーBのデカいチンポが俺のアナルにグㇷ゚、ズズ、ズブゥと入って来る。 「ぅ、あ、あぁ……」 早く絶頂したい、だが、まだまだこの快感を浴びていたい。感じ続けたい。 そんな我儘な俺の本音がコピーの2体にも伝わっている。 ギリギリの、あと1ミリでも強くなったらイってしまいそうなラインを責めつつ彼らもまた俺の舌使いやアナルの締め付けにビクビク耐えている。 「お前らもコピーなんかじゃなく本物のレゾネイターになる気は無いか? 中身まで改造されりゃ、もっともっと気持ち良くなれるんだぜ?」 喘ぐ息を漏らしながら問う。2体とも躊躇いなく大きくうなずく。 あまりの即答ぶりと、迷いのないマジもんの目つき。 「まさか……、元のこいつら自我が目覚めて……?」 今の意志表明はコピーの『俺』からなのか、封印し眠らせている筈のカラダの持ち主からなのか……。 果たしてどちらなんだろうな? 終 【人物紹介】 蕨岡 環(わらびおか たまき) 大学2年生 オナニー好きな普通の大学生。テニス部に所属しているが幽霊部員 乾 巽(いぬい たつみ)大学2年生 環の友人。身長が高く陽キャのイケメンで女子受けがいい。関西出身。 菅原 学(すがわら まなぶ)大学2年生 個人サークルにて同人活動を行っている。男の筋肉や男性器の表現がエグい(凄い)と評価されている。 倉知 太郎(くらち たろう)社会人学生 26歳 サラリーマンをしながら大学の講義を受講している ミュータント(変異体)と化した矢場井によって改造され、矢場井と同じく自身の欲望を共鳴させるレゾネイター(共鳴体)に転生した第一号。 より手軽にレゾネイターを増やす方法としてASMRを用いる方法を思いつき乾と菅原、二人の希望を叶えるために協力した。 矢場井 和音(やばい かずね) 34歳 情報生物学の研究者 AIが創り上げたデータ生命体を自身に取り込み合体。その結果、自我をデータ生命体に侵食され元の人格を失った。 人格だけではなく肉体ごとミュータントへと変容した矢場井は急激に膨張した性欲を満たすため、自身を音声データに置き換え狙った対象の耳から脳に流し込み同質の存在を増やそうと動き出した。 原初のレゾネイターであり、矢場井以外のレゾネイターにとってはビーコン(目印・道しるべ)となる存在である。 レゾネイターー(共鳴体) データ生命体と人間が合体して生まれたミュータント(変異体)。もしくはミュータントにより改造された元・人間のこと。 発する音声で対象を洗脳するだけではなく肉体構造まで改変させられる。 また、カラダの一部を音声データに変換して相手に寄生させ、強制的に性的快楽を与える事も可能。 H大学 驚異の就職率を誇る名門総合大学 主人公たちが通学し、原初のレゾネイターである矢場井も勤務している。 優秀な講師や研究者が多数在籍しており研究設備も充実しているため受験生だけでなく社会人、或いは他大学の専門家からも人気を集めている。 一見するとごく普通の大学ではあるものの性格が豹変したり、行動パターンが急変する学生が常に一定数現れ、それ以外の学生も異様に学業に打ち込む期間が発生するため落ちこぼれだった学生も最終的には優秀な成績を納め、病気やケガなど長期の欠席以外の理由で留年になってしまう生徒は皆無である。 これらを不思議に思った他大学の職員やメディアが過去に何度も探ろうとしたものの調査は毎回尻すぼみになり一度たりとも実態を暴けず全て失敗に終わっている。 むしろ、潜入調査に入った者までもが洗脳されたかのようにH大学を賞賛し始めていた。 ここにいる週刊誌の記者もまたH大学に潜入調査を試みた一人なのだが御覧の通り、顔を紅く上気させ瞳の光は消え失せ、湿った吐息と舌なめずりに加えて激しく膨らませた股間をビクビクと震わせながらH大学の素晴らしさを思い出して生臭い染みを滲ませている。 「……俺ぇ~、今度は調査じゃなくてぇ~、学生として~入りなおしてぇ~、ふひっ、いひひっ、ふひひひぃイグッ! ィイグゥゥッ!」