8 俺のカラダとレゾネイター(共鳴体) 「ははは! テレパシーだって? 違う違う! そっちは僕の専門外さ! 先ほど蕨岡君に聞かせたのはヒトの可聴域では聞こえない超音波ってやつだ。 キミが本当にレゾネイターとして完成し終わっているなら僕の声で、正しく意味のある言語として聞こえただろ? ま、倉知くんからの報告を信じていない訳じゃないけど研究者の性(さが)ってやつでね。自分で直接確かめてみないと気が済まないんだよ」 「それは別に構わないんすけど、何で俺、十字架に磔にされてんすか?」 「レゾネイターになった蕨岡君のカラダを調べるためだよ。でないと君の持っている能力とか精力とか限界とかが掴めないでしょ? そんなにキツくは無いから……、ちょっとだけキツいかも知れない……、いや、かなりキツイだろうがしばらくの間、耐えて欲しい」 手足を大の字に拘束された俺の上から透明なアクリルカプセルが降りて完全に閉じ込められ密封された。 解析ポッドの外からマスター矢場井がタッチパネルを操作するとカプセルの上部にスピーカーが現れた。 そのスピーカーから波のうねる様なチルいサウンドが流れ出すと、たちまち俺の股間は熱く滾りギンギンに勃起してしまった。 チンポや乳首だけじゃなくカラダの外側からも内側からもベロベロ舐められ愛撫されるような気持ち良さがどんどん溢れて嫌でも卑猥な欲望が燃え盛っていく。 「っふぐぅあ! ああああ! きもぢぃぃっ! ん、で、なんで! 俺! こんなに、感じてっ! セ、セックス! セックスしてぇぇーーっ!」 すぐにでもヒトの擬態をやめてレゾネイターに変態しようとするとマスター矢場井は「まだ我慢しような」と待ったをかけた。 「倉知君が作ったASMRの音よりもレベルの低い淫音で始めたってのに、のっけから性欲を爆発させてちゃ限界値が測れないじゃないか。 悪いけどもうちょっと我慢してくれ。それに、淫音を浴びた途端人間の姿が保てないようじゃこの先やっていけないよ?」 気持ちの良い責め苦、快感の拷問が始まった。 マスターの指示を無視して変態してやろうとしたものの、何故かロックがかかったみたいに変態できない。 ひぃひぃ言いながらカプセルの外を見ればタツミもマナブもレゾネイターに変態してマスターのデカいチンポを舐め合っているし、倉知さんまで紫色がベースの昆虫人間みたいな姿に変態してマスターのアナルにチンポをぶち込み腰を前後に送っている。 「ず、ずりぃぃぃぃーーっ! みんなはヤってるのに! 俺も! 俺もヤりてぇーーーっ! セックスしてぇぇーーー!」 マスターは変わらず白衣を身に着けたヒトの姿のままモニターをチェックし俺への拷問を試している。 「ぐひぃぃぃーーー! く、くるしぃぃぃーーーーっ! あああ、でも、きもぢぃぃぃ~! んぁはぁぁ~! もう変態してぇ~! 早く! 早く俺も全身を共鳴させてぇぇ~~! 早く、レゾネイターになって思いっきりセックスしてぇぇぇぇぇぇぇ!」 「よしよし。最高レベルの淫音でもちゃんと規定時間耐えてくれて嬉しいよ。それじゃぁ次はお待ちかね、レゾネイターに完全変態して蕨岡君の構造とレゾネイターとしての能力を確認させてもらおうか。それじゃぁ、変態開始っ!」 マスターの合図とともに俺のカラダが「ギュバ!」って弾けた。 「ぐぅぅぅぅおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!」 ◇ ズゥン、ブゥンと腹の底に響く音が股間に、そして頭の中の俺を呼び起こす。 黒い劣情と真っ赤な欲望が音になって渦巻き、ほとばしり、俺を俺のままではいられなくするほど打ち鳴らす。 放たれる音、吸い込む音、煩悩を煮詰めた音が細胞を、骨を、筋肉を崩して別のモノへと再構築していく。 ぐちゃ、グジュ、バキバキ、ぐちぃっ……。 人間のままであれば忌むべき音に侵され、理性を覆い隠すような快感に震えて、心のカタチまで人間を捨てて異形と化せば、殻を破って成虫が孵化するように俺もまた体内の音に共鳴した姿へ、ヒトではなく異形の「レゾネイター」へと変態する。 「くはぁっ! はぁ、かはっ! がぁ、あ、ああっ、はぁっ、あ、はぁ、はぁ」 「へぇぇ~! 白いボディとはね! それに尻尾と一体な頭部が実に特徴的だな!」 サイボーグボディなのは俺も倉知さんもタツミもマナブも共通だが色合いや部分部分の形状に個性が現れている。 倉知さんは紫色のメタリックアーマーに覆われているけど筋肉量は俺たちより若干スマート。 面長な頭部にはゼリー状の楕円の半球が眼のように六つも並び、側頭部からは角じゃなくて触覚が二本シュルッと突き出ている。 「そんじゃぁレゾネイターとしての能力その他を測定して行こうか。まずは――」 ケツの穴にズブズブとセンサーが内臓されているディルドタイプの測定棒が挿入された。 チンポの鈴口には精液採取用の管がズルルと潜り込んできた。 「あ゛っ! があっ! あぐぅっ!」 耳の穴からも電極付きのプラグがズブゥと挿し込まれ直接脳と接続された。 「倉知君に頼まれてた『説明』的なものを一括して脳へ送り込んであげたよ。測定中は動けないからしばらくはそいつを読んで、学習しておいてくれ。限りある時間を有効に使うためにもね」 暗転した俺の視界に文字が浮かぶ。 いや、目を閉じていても瞼の内側に光る文字が浮かぶ。 まずはレゾネイターとは何か、から。 声に出すような感覚で思い浮かべていた。 すると、字幕と共に機械的な合成音が流れくる。 合成音曰く、レゾネイターはマスターの一部をコピーして音声データとして取り込み、自分の生体データに融かし込んで共鳴させ心身ともに改造された超生命体、人造新生物、であると。 改造される過程で主に性欲が膨れ上がり精力、体力は数十倍に引き上げられる。 そして、改造過程における精神的負荷、肉体の劇的な変容を経ても自我崩壊などの重いメンタルダメージを貰わぬよう精神をも改造、つまり「洗脳」処理を施される。 「つまり、俺も洗脳されてる?」 ――もちろんです。個体名『蕨岡 環』 当個体における脳処理は完璧に実施されております。 疑問に思うと即座に機械的な「肉声」で回答が届く。 「だけど、記憶もちゃんとあるし、自由に考えられるし、マナブやタツミだけじゃない、マスターにも意見を普通に言えるんだけど?」 ――当個体は大幅な自由意志を認められています。改造に用いられたデータにより通常の洗脳とは異なる人格保護も行われております。 「じゃ、じゃぁ俺以外の奴は皆違うって事?」 ――当個体、並びに当個体に改造を行った数体については人格保護と自由意志を有効状態にした洗脳処理を受けております。 他の個体については詳細なデータを有しておりません。故に洗脳レベルについてはデータ管理者に確認をお願いします。 「ところでさ、これから俺ってどうしたらいい?」 ――質問が漠然としており理解できません。また、生きる理由を求めているのであれば回答は不可能です。 えええ、自分で探せってか? それ普通の人間だったときと一緒じゃないか。 「じゃぁ質問を変える。俺も誰かを改造できる?」 ――可能です。当個体の頭尾部に存在する超音波発生器官により対象を拘束、思考力・判断力を奪ってから改造に必要なデータを音声、体液、組織の一部に移譲し注入することにより対象を同質の存在へ改造可能です。 「なるほどね。じゃぁ同じ学科の連中を改造しまくってやろうかな」 ――当個体が所属する大学の、同じ学部、同じ学科、同じ学年の男子生徒の55%が洗脳、或いは改造済みです。故に当個体が改造『しまくる』前に対象が改造されているか否かを確認してから行って下さい。 「ほぼ半分だと!? いつの間に? ちっとも気付かなかったんだが?」 ――社会人学生として同族個体『倉知 太郎』によって自由意志のないレゾネイターに改造されております。 当個体が気付かなかったのは改造済みのモノたちが普段と変わらぬ行動、発言を行うよう命令されているためです。 「倉知さん、なんでそんな悪の組織めいた事を?」 ――マスター『矢場井 和音』に協力するためです。倉知のみではカバーし切れないマスターの性欲処理対象の確保、並びにマスターが必要とする研究素材の確保、そしてマスターの期待に応えた結果得られる賞賛とマスターからの好意を求める倉知自身の欲望に基づいております。 「え? と言うことはタツミやマナブを改造したのも、二人が俺を引き込むためASMRで改造しようとしたときに手伝ったのも、倉知さんの計画?」 ――いいえ。当個体は計画外のイレギュラーな経緯をたどっております。それ故に当個体の特徴を目にした後、すぐにマスター矢場井に報告し、対面させる動きを見せたのです。 「ふぅん……。俺は偶然だったって訳か」 タツミとマナブの歪んだ友情、いや愛情のおかげ、とも言える。 この辺りで質疑応答タイムが終了。 意識が浮上し瞼を開く。 視界が光に満ち眩しさで目を細める。 手術代のような寝台の上に横たわっている俺。 そして、そんな俺を見下ろす4体のレゾネイター。いや、マスターだけはレゾネイターの生みの親であるミュータントと呼ぶべきか。 「ようやくお目覚めかな? 改造された気分はどうだね?」 「…………いや、あの、マスター? 俺ってすでに改造が終わった状態でここに来たんですよね?」 「ほ~ら滑った。だからそのセリフは止めた方が良いって忠告したじゃないですか」 レゾネイター姿の倉知さんがマスターの肘を小突く。 上半身を起こそうとたらタツミが優しく肩を引き起こしてくれた。 「ああ、サンキュータツミ」 「お疲れさん。タマキのカラダを調べまくるんはこれでおしまいや。なんや、俺らには無いどえらい能力を持っとるらしいで?」 「解析中の蕨岡君もすっごくエロかったよ~! いっぱい画像を撮らせてもらってる時に思いついたんだけど、次の同人誌の主人公にしていいかな? もちろん、蕨岡君そのままって訳じゃないから安心して?」 「俺をモデルにした同人誌なんて需要あんのか? 異形のモンスターにレイプされる女の子って異種姦ネタでよくあるパターンじゃないか?」 「そんな内容じゃないから。レゾネイターにカッコよく変態する蕨岡君の秘密を知った男の子がどんどん蕨岡くんを好きになっちゃって、最後はめでたく結ばれるハッピーエンドのラブラブBL本を描きたいから」 ここでタツミがツッコミを入れた。 「それって俺のことやないか。俺がタマキに惚れてるんを漫画にされるんはめっちゃ照れるけど、タマキをカッコよく描くんやったら俺はかまへんで?」 「タツミくん? いや、違うよ? タマキに思いを寄せる男の子ってのは僕自身がモデルだから。タツミくんの出番は無い、……かな?」 なんだか次の同人誌のネタにかこつけてサラッと告られてるっぽい気もするのだが、俺ら全員ヒトの姿じゃなくいかついサイボーグ姿だから、場の空気として「恋バナ」認定していいのか少々考えざるを得なかった。 「さて、そろそろいいかい? 調べた結果を本人にも共有しておきたいんでね。レゾネイターとしての身長、体重、物理的な身体能力の最大値、射精可能な精液量、そして僕や他のレゾネイターには見られない君だけの能力について」 「そいつを聞いたら俺とセックスしてくれますよね? マスターのお陰でずっとムラムラしたまんまなんですから」