ある日、突然人の寿命が見えるようになった。 全ての人の頭の上に、寿命が数字で浮かび上がっている。 昔、漫画で同じような能力が出てきたな。僕はそんなノートは持ってないけど。 僕はこの能力を得た喫茶店の前で、街を行きかう人たちの頭上に浮かぶ数字を見ていた。 6740、29123、16521、9999……あ、ゾロ目だ。 ゾロ目を見かけるとその日は少し嬉しくなる。 数字が1桁の人を見ると少し悲しくなる。 1桁ということは、ここ数日のうちにその人は死ぬからだ。 「よう」 親友が、缶コーヒーを片手に声をかけてきた。 僕の話を唯一信じてくれた奴だ。 「元気?」 「うん。君は?」 「めっちゃ元気」 そう言って笑う彼の頭の上にも数字が見える。 めっちゃ元気、という彼の頭上には、ただ1桁『1』と表示されていた。 「なあ、驚かないで聞いてほしいんだけど」 「うん」 「僕、人の寿命が見えるって前話しただろ」 「うん」 「君の寿命、あと1日」 真剣な顔でそう言うと、彼はしばらく固まった後、 マジかーと言って笑った。 「言うかどうかずっと迷ってたんだけど、本当なんだ。 明日君は死ぬんだ。見える数字は覆らない。 僕の母さんも、数字が0になった日死んだって父さんが言ってた。 病気でも何でもなかった、本当に突然。 街頭テレビに映ってたアイドルも俳優も0になった日に自殺した。 だから、君も明日死んでしまう。 だから、だから」 「だから?」 「明日は全財産使い果たして、好きなことをしてくれ」 真剣な顔でそう言うと、彼はしばらく固まった後、 どうすっかなーと言って笑った。 「笑い事じゃない!」 「でもどうやっても死ぬんだろ?」 「そうだけど」 「じゃあしょうがない」 全財産使い果たすかどうかはわからんけど、明日は好きな奴と過ごすよ。 と言って彼は去っていった。 翌日、彼は僕の前に現れた。 「なんでここにいんの!?」 「だから言ったじゃん、好きな奴と過ごすって」 照れくさそうに笑いながら、彼は僕に大きな花束を差し出した。 「今まで一度も渡したことなかったな、こういうの」 人生初だぞ、と言って、彼は大きな声で 「好きです! つきあってください!」 と僕に向かって叫んだ。 その瞬間、彼の体は突然とびこんできたトラックに潰されて、ぺしゃんこになった。 呆然としている僕の隣で、彼が笑った。 「あーほんとだ。マジで俺にも数字見えるわー」 お前の数字、言ってやろうか? そう言って笑う彼に、僕は首を横に振った。 今、彼の頭の上には『∞』が表示されている。 そして、ずっと前から、僕にも。 「それよりも、さっきの返事なんだけど」