vol.5先行公開版_前書き
引き続き、『ナイショノカタチ』vol.5をFANBOXで先行公開します。
「先行公開版」は厳密にはまだ未完成状態のものですので、それでも読んでみたいという方に向けての有料公開です。
『ナイショノカタチ』は完結まで書き上がった暁には、完成版をpixiv小説で今までのように全体公開しますので、お待ちさえいただければ、いずれはvol.2の続きとして、普通に読めるようにする予定です。
(その際は、FANBOXでもあらためて完成版を全体公開する予定です。)
『ナイショノカタチ』はどんどん文章量が増えてしまい、現在vol.6で完結する予定になっています。
なのでvol.6も先行公開になる予定です。
とあるラブホテル。
「先生のこれ、とても逞しいです。」
ソファーの上に立つ中年男のパンツを紅音が下ろすと、お腹の出た中年男の男根は弾けるように起立した。
紅音は普段のイメージとはかけ離れた、リボンやフリルのたくさんついたデザインのスイートガーリーなピンク色のチョーカーとブラジャーとショーツを身につけている。
紅音は中年男の腰に手を置くと、男根に顔を近づけ、根元から先端に向かって舐めあげる。
「紅音ちゃんはおちんちん、大好きですねぇ」
先端をちろちろと舐めていると、男根からはカウパー液が水滴を作り出す。
紅音はそれを吸い取るように舐め上げ、おもむろに男根を咥え込んだ。
「ふぁい。らいすきれす。」
男根を咥えたまま喋っているので、発音がおぼつかない。
「でもダメですよ。先生の許可なく勝手に咥えたら。」
中年男が真面目な顔をして、注意する。本当に先生のようだが、本当の先生なら、こんなことは言わない。
「ふぇんふぇい、ごふぇんなはい。」
男根を咥え込んだまま、紅音は中年男の顔を見上げる。
目はとろんとして、中年男におねだりをしているようだ。
「悪い子には、お仕置きしないといけませんね。」
中年男は紅音の頭を掴むと、思い切り男根を紅音の喉の奥まで突き込んだ。
「え゛……う゛えぇ」
紅音が声にならない声を上げるが、中年男は男根を紅音に咥えさせたまま、まるでオナホを扱うかのように、容赦なく両手で思い切り紅音の頭を前後させる。
「うえ゛ぇ……うえ゛ぇえ゛……」
強引にイラマチオをされたことで、既にマゾの素質を開発されている紅音は、快感に耐えられなくなり、自らのオマンコに手を伸ばしていた。
愛液が溢れたオマンコを包むには到底似合わないほどに可愛いフリルのついたショーツを悪し様に蹂躙するかのように、ショーツの上からオマンコを撫でまわしていると、中年男の平手が紅音のお尻に飛んだ。
ピシン!
「あ゛ン♪」
男根で喉を詰まらせながら、紅音が嬌声を上げる。
「いつ、オマンコをいじっていいと言いました?
紅音ちゃんは本当に悪い子ですね。」
ピシン! ピシン!!
二度三度と中年男の平手が紅音の艶やかなお尻を叩く。
「あ゛ン! あ゛ン♪」
ジンジンと走る痛みが既に快感に変わってしまっている紅音は、叩かれる度に恍惚となった。
最後に中年男の平手が思い切り振り下ろされると
「イグッ!」
中年男の男根を喉に詰めたまま、絶頂した。
蛍原紅音の身体を奪った横宮純太への復讐を誓った秋月なつきは『入れ替わり試薬β』の開発を進める傍ら、紅音である純太への精神的な追い込みを始めた。
簡単に言えば、要はいじめである。
根も葉もない噂を流し、上履きをゴミ箱に捨て、着替えを汚す。
とりあえずは紅音である純太に少しでも精神的に負荷をかける。
そんなありがちな嫌がらせを片手間にしながら紅音の周辺を調べて行くと、陸上協会の会長が目に入った。
何やら援助交際をしてるとの黒い噂もある人物。つまりはヒヒジジイというわけだ。
「使えるわね。」
なつきは紅音になりすまし、出会い系サイトや裏サイトで陸上協会の会長と思われる人物にコンタクトを取った。
実際に会うことになり『入れ替わり試薬α』を使い、紅音の身体でその中年男に会った時に、まさか本当に陸上協会の会長だったことがわかるとなつきは唖然とした。
なつきにしてみれば紅音である純太を貶めさえできれば、肩書きを騙った偽物でもかまわなかったのだから。
偽物の方が、騙されて偽物に取り入る紅音の愚かさを強調することにもなるので、むしろ願ったり叶ったりだったのだが……
紅音の姿をしたなつきは「陸上競技での成績の伸び悩み」を相談するていを装い、中年男と会った。
しばらく話をした後「私にまかせてくれれば、その悩みを解決してあげますよ。場所を変えましょうか。」と連れて行かれた場所はもちろんラブホテルである。
世の中の偉い人というのは呆れるほどに、本当にクズばかりだと思う。
2度目以降の陸上協会の会長との逢瀬は、毎回大きな鏡のあるラブホテルの部屋を選んだ。
入れ変わったことで紅音の感覚こそ得られるものの、その視界にヒヒジジイの姿しか入って来ないのにはあまりにも興が削がれる。
ヒヒジジイに犯され悶える紅音の表情をこそ、なつきは見たいのだ。
「紅音くんは、そういう可愛い下着が好きなんですね。てっきり下着もスポーティなものを愛用していると思いましたよ。
随分とイメージが違うけど、それがまたそそりますねぇ。」
スイートガーリーな下着を紅音の箪笥から見つけた時、なつきは純太を嘲った。
純太はこういう趣味なのかと。
こういう目で紅音の身体を見てるのかと。
それならば、そのイヤらしい望み、叶えてあげると、汚してあげると、陸上協会会長に抱かれる時は毎回身に着けて来くることにしている。
さらには紅音の身体にマゾヒズムの快楽を刷り込ませるために、痛みによる感度を増大させる媚薬も自ら服用し、中年男には「私を思い切り嬲ってください」とお願いをした。
もちろん、アスリートな紅音はユニフォームの関係で肌を出す機会が多いため、痕が残る行為は極力避けてもらうことが前提で。
意外にもその提案には理解が得られ、蝋燭や針などの道具が無理に使われることは無かった。
それが、陸上協会会長という立場から来る保身のための同意ということならば、なんとも皮肉な話である。
とはいえ、なつきにしてみれば、紅音の身体や立場を汚すことが目的であっても、紅音の身体を物理的に傷付けようものなら、誰であろうと許す気は無かった。
なぜなら紅音の身体を傷つけていい権利を持つのはなつきだけなのだから。
もし紅音の身体から血の一滴でも流れようものなら、その瞬間に中年男の男根くらいは簡単に切り落としてしまうだろう。
理解に窮するくらいに、矛盾もはなはだしい理屈と愛憎。
しかし、その愛憎こそが今のなつきの全てなのだ。
ヒヒジジイの男根が紅音の股間を容赦なく貫く。
「んっ!!」
なつきが壁にかかる大きな鏡に目を向けると、腹の出た中年男の男根を挿入された、四つん這いになって頬をいやらしく上気させている紅音の姿が見えた。
いつもの澄ました紅音など欠片も無い、どこまで恥知らずな姿なのだろう。
自分の手によって痴態をさらさせ、自分の思うように紅音を穢しているという行為の愉悦は、なつきの中で絶えず極上の快感へと置き換わる。
中年男に男根を挿入されている事実など、その足元にも及ばない。
そんなものはあくまで道具のひとつだ。張形と大差はない。
鏡の中で不本意にオマンコを貫かれながらも喘ぐ紅音のいやらしい姿こそが、なつきを真に興奮させた。
「紅音くんは、自分の犯される姿を見るのが、大好きなんですね。」
「はい……とてもエッチになれるから……」
頬を染めて見せる紅音姿のなつきのお尻を中年男は思い切り叩くと
「悪い子だ。」
と言いながら、鏡に正対するようにベットの端に腰かけ、紅音の全身が鏡の正面に写るように自分の前に抱きかかえるように座らせた。
背面座位でいう「手懸け」の状態。
紅音姿のなつきは、起立したその男根に自らの手を添え、自分のオマンコにあてがいながら、その腰を沈めて行く。
あたかもそれは、鏡に写る紅音に、紅音が自ら進んで犯されに行く様を見せつけるかのようであった。
深々と腰を沈め膣の奥まで男根を咥え込んでは、ゆっくりと腰を上げ、男根が抜ける寸前で止める。
鏡には、腰を上下させる度に紅音のオマンコから出たり入ったりする男根の姿が、ありありと写し出されていた。
愛液が糸を引きながら二人の股間を、くちゅくちゅといやらしい音を立てながら繋いでいる。
こんなにいやらしい紅音。こんなにいやらしいことをわたしにさせられている紅音。
紅音の全てはわたしのもの。
倒錯した快感がなつきの歪んだ愛情を正当化させる。
これでいい。これでいいの。
わたしがわたしの手で紅音を壊してあげるのだから。
体位を何度も入れ替え、二人はまぐあい続けた。
中年男の興奮は際限なく昂まって行く。
「こうすると、もっと気持ちよくなるんですよ、ほら!」
ヒヒジジイが紅音の首を両の手で締めた。
死なない程度に加減をされているとはいえ、首を絞められることになつきは恐怖した。
しかし、媚薬を飲んでいるその紅音の身体はそんな恐怖も快楽に変換させて、膣の中を占める腹の出た中年男の男根を強くいやらしく締め付ける。
「く……くるひぃ…………それダメ……それダメ……」
息の出来ないなつきは酸素を求めるように口をぱくぱくとさせる。
もどかしいくらいに取り込めない酸素の量に反比例するかのように、快感が全身を駆け巡る。
頸動脈を押さえられ、脳に酸素が回らない。
ふわっと意識が何度となく落ちそうになる。
思うように息が出来ない苦しさが、あまりにも気持ち良くて死にそうだ。
横目で壁に広がる鏡を見ると、首を締められながらも蕩け切ったいやらしい顔でよがり狂う紅音の姿が見える。
なつきはそんな自分の、紅音の姿を見てさらに快感に震えた。
中年男は紅音のオマンコを壊さんとばかりに、首を締めながら男根の抽送をさらに一段と激しくした。
「はひっ、はひっ……」
紅音は少しでも酸素を取り込もうと喘ぐ。
「……らめぇ……落ちちゃう……落ちちゃぅう!」
首を押さえられている腕をタップしながらも、意識が落ちそうになる浮遊感が紅音の快感を無限に増大させて行く。
「落ちそうでしょ! 死にそうでしょ!!
でもそれが気持ちいい変態なんですよ、あなたは!!」
認めざるを得ない中年男のその言葉を、よだれを垂らしながら紅音であるなつきは快楽で朦朧とする意識の中で反復した。
「お……落ちちゃうよぉ……死んじゃうよぉ!!」
紅音姿のなつきの口からその言葉が溢れた時、なつきは快楽の中から奇妙な恐怖が全身に襲いかかり、身がすくんで動けなくなった。
足元から突然地面が無くなり、まるで地獄の底まで落ちて行くような恐怖。
手を繋いでいる誰かと一緒に、永遠にどこまでもただ落下して行く感覚。
頭の隅では理解した。
これは自分の感覚ではない。
紅音の身体に刷り込まれた紅音の記憶だ。
いや、蛍原紅音というより横宮純太の記憶という方が正しいのだろう。
漆澤山(しちさわやま)で紅音と転落し、事故死させてしまった記憶。
その恐怖が「落ちて死ぬ」というワードにより、フラッシュバックしてしまったのだ。
しかし頭の隅ではわかっているものの、突然蓋が開いたように押し寄せた恐怖から、なつきはパニックになった。
そして自ら服用している媚薬は、そのパニックすら、壮絶な快感に変える。
「いや! いやぁあぁあぁぁぁ」
紅音の身体はその快感に耐えられず、オマンコから激しく潮を噴き上げる。
なつきの頭の中は恐怖と快楽で真っ白になった。
「落ちるのいや……落ちるの怖い……怖いのぉ! わたしのせいなのぉ……ごめんなさい……ごめんさい……」
泣き出していやいやをしている自覚さえなつきには無かった。
紅音と入れ替わったなつきの心には、本来紅音側の記憶は残らない。
しかしながら、無意識に発した謝罪の言葉はきっと紅音の身体に刻まれた純太の言葉だったのだろう。
恐怖と快楽が自らの中でぐるぐると混じり合い、信じられないくらいの絶頂感が押し寄せてなつきを包み込む。
『落ちる』という言葉に異様な反応を示す紅音に、中年男の興奮は最高潮に昂った。
紅音のオマンコが噴き上げた潮を塞ぐかのように再度男根を乱暴に挿入し、激しく突き上げる。
「落ちなさい! 落ちなさい!! 落ちなさい!!!」
ヒヒジジイはパニックを起こし泣きじゃくって悶える紅音の姿に更なる嗜虐心を煽られたか、首を絞める力をことさらに強め、腰のグラインドをこれでもかと加速させる。
「らめぇ……怖いよぉ……死んじゃうよぉ……死んじゃうよぉおぉお!!!」
なつきが感じるこの感覚は落下死への恐怖感なのか、それとも味わったことのないほどの甘美な絶頂感から来るものなのか、もうわからなくなっていた。
自分でも何を口走っているのか理解できていない。
紅音の姿のなつきが泣き叫べは泣き叫ぶほど中年男のくちびるは嫌らしいまでにニタリと歪み広がる。
そのパンパンと腰を打ちつける打突音は、自らが快楽を貪るためというよりも、むしろ紅音のオマンコを壊すことを目的としているかのように、激しく荒くなっていく。
「いぐっ! いぐっ! いぐっ!! もうらめっ! らめだからぁ!!!」
真っ白な頭の中で、これ以上反れないというくらいにその肢体を反らせて、なつきは何度も繰り返し絶頂を迎えた。
絶頂感に痙攣する紅音の身体を許すことなく、中年男は男根の抽送を叩きつける。
「らめっ! もうイッてる!! イッてるってばぁ!!」
「まだですよ! 死ぬほど気持ちよくさせてあげますからね!!
どこまでも落ちてしまいなさい!」
……『落ちてしまいなさい!』
その言葉になつきはゾクりとした。
なつきの心だけでなく、紅音の身体全体がその言葉に犯された気がした。
「堕ちろ!!」
最後の責めの言葉を叫びながら、大きく深く、中年男はその男根で紅音のオマンコを突き上げた。
「はひっ!……落ちます……落ちますぅ! 堕ちちゃいますぅうぅ!!!!」
紅音姿のなつきは、耐えきれぬほどの快感に全身を貫かれ、絶頂した。
そのあまりの絶頂感になつきの意識が飛んだ。
いや、本当に意識が飛んでいたのかすらわからないほどに、何が何だかわからないくらい全身が絶頂感に包まれていた。
『落ちる』という言葉が紅音の身体に絶望と快感をドロドロと混ぜ合わせ、頭の中に響き渡る。
それは胸の奥に恐怖を侵食させ、同時に子宮をいつまでも疼かせていることだけは確かなようだと、なつきは真っ白に飛んだ意識の中で感じていた。
そして射精された中年男の大量の精子は紅音の膣の奥までその身体を蹂躙し、男根を抜かれた後もその形状のままに開いた紅音のオマンコから、勝ち誇ったようにだらりと溢れ出していた。
…………数時間後。
紅音姿のなつきはシャワーを浴びると、バスタオルで身体を包み、ソファーに腰掛けた。
事前にピルを飲んでるので、中出しをされようが妊娠する心配はない。
こんな中年男の子を万が一にでも紅音に孕ませるなど言語道断、そんなことをなつきが許すはずがなかった。
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを口にして、乾いた喉を潤すとテーブルに置いた。
陸上協会会長という肩書の腹の出たヒヒジジイな中年男は、幸せそうな顔をしてベッドで寝息を立てている。
紅音との性行為に疲れたということもあるかも知れないが、本当の所は、行為後に紅音であるなつきが、睡眠薬を一服盛ったからだ。
『入れ替わり試薬α』の時間制限があるとはいえ、これで気兼ねなく、盗撮用に仕掛けたカメラを回収できる。
さて、この盗撮映像をどう使おうか。
場合によっては陸上協会会長を脅して、顎で使ってみるのも面白いかも知れない。
——それにしても、今日は興味深い体験ができた。
「『落ちて死ぬ』か……」
その言葉を自分で口にするだけでも、得体の知れないぞわぞわとしたものが恐怖と快感とを身体中に駆け巡らせ、紅音姿のなつきから思考自体を奪おうとする。
これがなつきの心にではなく紅音の身体の方に刻み込ませられているのなら、それはとても楽しいことになるではないか。
なつきは紅音の顔で、悪辣な表情の笑みを浮かべた。
ちなみに、帰宅後になつきの身体に戻って『落ちて死ぬ』のワードを試したところ、やはり秋月なつきに自身には何の影響も無かったことを、周到ななつきはもちろん確認済みである。
「わたしはね、紅音のことを本当に愛していたの。」
視聴覚室の壇上で、高原昌利の姿をした秋月なつきはあたかもミュージカルを演じてるかのごとく、両手を左右に大きく広げた。
「ひき逃げされた子犬を二人で助けようとした、出会ったばかりの小さな子供だったあの頃から……憎い大人を二人で力を合わせてやり込めたあの頃から……わたしと紅音は、本当に愛し合っていたの。」
穏やかな声で語り出すなつきは、広げた両手を静かに閉じて自分自身を抱きしめる。
「幸せだった……本当に世界が輝いていた。紅音と一緒に居るだけで、全世界からの祝福を受けているとすら思えた。
例えどんな苦難にも、どんな試練にも、二人でなら笑顔で乗り越えて行ける……そんな素晴らしい人生がわたしたちには約束されていたの……」
昌利の顔をしたなつきの目から、涙がひと雫、こぼれ落ちたように見えた。
「約束されていたのよ……」
一転、なつきは壇上で全裸で縄に吊るされている蛍原紅音をキッと睨みつけ、声を張り上げた。
「横宮純太! あなたはそれを全部ぶち壊したのよ!!
許されると思う!? 許されるわけないでしょう!!」
小学校三年生の初秋、蛍原紅音と横宮純太は入れ替わり、横宮純太の姿のまま、蛍原紅音は死んだ。
今ここに居るのは、蛍原紅音と偽り、その正体を隠したまま紅音の身体で何年となく図々しくも生きて来た横宮純太なのだ。
「許さない許さない許さない!!」
昌利姿のなつきの目に狂気が走る。
「あんたなんか死んでも許さない! 横宮純太!! あなたに奪われた紅音の人生、今ここで償わせてあげるわ!」
両手を天井から吊るされ、膝立ち状態の紅音は唖然としたまま、昌利の顔をしたなつきを見つめていた。
「あなた、なつき……なの?」
「そうよ。今のやりとり、見てればわかるでしょ。」
「……いつから?」
「つい最近よ。」
「……入れ替われる、薬? が、あるんだ……?」
「そうよ。」
紅音は悲しさと悔しさが混じったような表情で、うつむいた。
「あの時……その薬があれば……」
その言葉が癇に障ったなつきは、反射的に紅音の——純太の頬を平手打ちした。
「あなたが言う台詞?」
なつきの怒りを受け止めつつも、懺悔するように紅音は純太としての言葉を続けた。
「あれは……事故だったの……
最初に漆澤山(しちさわやま)に登った時、あの七色の彼岸花のせいで私と紅音ちゃんは入れ替わってしまった……
こんなこと……誰にも信じてもらえるわけがない……
だから、七色の彼岸花を探して二度目に漆澤山に登った時、崖の中腹に見つけたあの花を無理に採りに行こうとしてた私を引き留めようと、二人とも足を滑らせて……紅音ちゃんは私の、純太の姿のまま、死んでしまった……」
なつきは反対の手で平手の追い打ちを放つ。
「私はもう、横宮純太の姿に二度と戻ることは出来ない……そう思うと絶望したわ。死のうかとも思った。
……でも、しばらくして思い直した。
崖から落ちた時、横宮純太の姿の紅音ちゃんが私を庇ってくれたから、今の私が生きているのだと……それなら、私が紅音ちゃんの代わりに生きることで、紅音ちゃんが素晴らしい人だったことを証明してあげることが、大事なんじゃないかって……」
懺悔し続ける紅音の——純太の髪の毛を昌利姿のなつきはむんずと掴み、顔を引き上げる。
目と目が合ったなつきに向かい、その目に涙を溜めて言葉を続ける紅音。
「僕が……紅音ちゃんとして生き続けることこそが、償いになるんじゃないかっ……て……」
その言葉を待つか待たないかの内に、なつきは紅音の顔に唾を吐きつけた。
「はぁ? あなたが紅音として生きる? 冗談じゃないわ。
紅音の人生を横取りしておいて、何を図々しい!
紅音はね、あなたみたいなゲスな人間がどうこうしていいような人じゃないの!
紅音はもっと崇高なのよ!
だって、わたしの最愛の人なんだから!
紅音のことを好きにしていいのはわたしだけ!
本当に愛し合っていたわたしだけが、紅音のことを好きにしていいのよ!! わかる?」
紅音の——純太の髪を掴んだままその耳元に口を近づけ、がなり声でまくし立てるなつき。
「ごめん……なさい……」
当時の二人の仲を知らないわけでも無かった純太には、返す言葉も無かった。
小学三年生の当時は、転校してきた自分に優しく接してくれた紅音やなつきと、ただ仲良くなりたかっただけなのだ。
紅音となつきの二人の仲を壊す気などは毛頭無かった。
それがこんなことになってしまうだなんて……
七色の彼岸花なんか、見つけなければよかった……
何度悔やんだことだろう。
純太は紅音として生きて行くことを決めたその日から、純太であることを捨てた。
ただ、紅音としてなつきの前に立つことだけが、どうしても出来なかった。
それは、なつきを謀った、裏切りの行為であることがわかっていたからだ。
だからこそ必要以上に真摯な姿勢で、蛍原紅音という人間を高めるために、勉強も運動も人格形成にも精一杯努力してきた。
陸上という個人競技を選んだのもそのためだ。
ただ一人、孤独の中でも、誰に頼ることなく成し遂げることが出来るから。
そんな紅音を置き去りにするかのように勉学に邁進している秋月なつきのことも、もちろん密かにずっと気に掛けていた。
近年、ようやく悪態をつきながらでも会話が交わせるようになった程度のこの関係ですら、紅音として生きることを自らの業として選んだ純太にとっては、特段に嬉しい日々として思えていた。
当人は知る由も無かったが、そこまで二人の関係が修復できた理由のひとつに、実は高原昌利の存在があった。
紅音にとって、紅音としての純太のメンタルを真っ直ぐな気持ちで支えてくれていたことが、思った以上の助けになっていたのだ。
こもまま行けば、いつの日かきっと、なつきともわかり合える。
昔のように、友達に戻れる。
紅音は——純太はそんな理想のような未来を思い描けるようにもなっていた。
それなのに……いったいどこでボタンを掛け違えてしまったのだろう。
信じられないことに、秋月なつきはその高原昌利の姿をして、紅音である自分を全裸に剥いて縄で吊るし、狂気に満ちた罵声を自分に向かって投げつけている。
「は? 謝ったって許すわけなんかないでしょ。莫迦じゃないの?」
紅音の——純太の本当の気持ちも知らないなつきは、掴んでいた髪の毛を投げ捨てるように離すと、蔑んだ目で見下ろした。
「わたしはね、紅音の身体を今の今まで好きに使っていたあんたが許せないの。
だって、紅音はわたしのものなのよ?
あなたのものじゃないわ。
だからね、今後あなたに紅音が汚されるくらいなら、その前にわたしが、わたしの手で紅音を汚してあげることにしたの。
その方があなたも苦しむでしょ?
立場も信頼も純潔も、何もかも失っていっぱい苦しむといいわ。
あなたはその罪と咎を背負って、苦しんで苦しんで苦しみまくって、死ねばいい。」
「それって……」
縄で吊るされてからずっと、視聴覚室内に耳障りなほどに響き続けるビデオ映像の喘ぎ声が、あらてめて紅音の耳に入る。
振り返りスクリーンを見ると、映像内で腰を振り、大音響でいやらしく喘いでいるのは誰でもない、紅音自身だった。
天井から吊るされている数台のモニターからも、通路にうずくまるなつき姿の昌利以外誰も居ない受講席に向かって、同じ映像が室内中に流れている。
流れているのはもちろん、紅音の記憶には存在しない行為をしている、実在する蛍原紅音の援交ビデオ。
「このビデオ……私?」
チンピラにも投げつけられた写真と同じ、ピンク色のスイートガーリーなチョーカーや下着を着けて、腹の出た中年男から与えられる快楽をあさましく貪っている紅音が映っている、援交ビデオだ。
見ているだけで、吐き気がしてくる。
「ああ、あんただよ。中身はわたしだけどね。」
信じられないことをなつきがあっさりと言った。
「え?」
戸惑う紅音。
「言ったでしょ。紅音はわたしのものなの。だから紅音に入れ替わって、紅音の身体を先に汚してあげたの。
紅音の全身がのたうつほどの快感、見知らぬエロオヤジに抱かれる嫌悪感、嫌悪感の中で調教される背徳感、紅音の身体中が感じる汚濁した恍惚感、全部がわたしの物なの。
素敵だったわ。だって素敵な紅音も穢れた紅音も、清濁入り混じるその全てをわたしが紅音として感じられるんだから。」
その快感を思い出してか、うっとりとした昌利の顔でなつきは舌舐めずりをする。
そしてそのままの表情で、紅音を見下ろして、言う。
「でもね、そこで生まれる紅音への蔑視、罵倒、非難は全てあなたのせいなの。
紅音に向けられた悪意は全て浅はかな純太、あなたに向けられたものなの。
あなたのせいで、紅音はずっとこんな酷い目に遭ってるのよ。
悪いのは全てあなたのせい。
あなたは責任を取らなければいけないわ。
わかる?」
……わからない。
紅音として懸命に生きてきた純太には、なつきが言っていることが何ひとつとしてわからなかった。
ただ、昌利の顔から女言葉で発せられるそのひとつひとつの言葉が、純太に向けられた怨念とも言うべき呪いの言葉なのだということだけは、はっきりとわかる。
そして、これまで自分の身に降りかかっていたいじめと思われる嫌がらせの数々が、全てなつきの差し金だったということも、同時に理解した。
「そうだったんだ……」
改善に向かって行ってると思っていたなつきと紅音の関係は、単なる自分の独りよがりの思い込みでしかなかったんだ……
純太の心は、絶望に沈んだ。
「てーのが事の真相ってヤツなんだけどさぁ、なつきちゃん、聞いてた?
それとも、媚薬が効きまくって、それどころじゃ無くなっちゃってたりする?」
いきなり男言葉に戻ると、昌利姿のなつきは講聴席の通路で息を荒くしながらしゃがみ込んでる、なつき姿の昌利に声を掛けた。
昌利は媚薬の力で湧き上がる自らの性欲の疼きを抑えるのに必死だったため、紅音と純太が入れ替わっていた衝撃の事実を聞いても、うわの空でしかなかった。
自分の意思に従おうともしないその乳首は硬くピンと勃ち、ブラジャーと擦れる度に仄かな快感を乳房全体に広げた。
足を内股にさせて押さえ込んでいるはずの熱を持った股間のむず痒さは、洪水のように愛液を溢れさせるだけで止めることも出来ない。
愛液は染みを作ったショーツとの間に糸を引き、くちゃくちゃと小気味良いリズムでいやらしく音を立てさせている。
触っちゃダメだ……一回触ったら、きっと媚薬の力に負けて、もう引き返せなくなる……
我慢しようと左右に首を振るたびになつきの長い髪が揺れて頬に触れ、そのくすぐるように頬や首筋を撫で回す髪の感触が、昌利を快楽の沼に手招きをしながら優しくもいざなう。
ダメだと強く拒絶する心とは裏腹に、右手は股間に、左手は右胸へと伸びて行く。
制服の上から、左手が右胸をゆっくりと軽く揉みしだく。
「はン♪」
たったそれだけで、全身を貫くような快感が走った。
右手の中指が、愛液で濡れたショーツのクロッチ越しに小陰唇の輪郭をなぞる。
「ひゃン♪」
胸に触れる以上の快感が、さらに身体を芯から子宮へと貫いた。
ダメっ……これ以上は……もう無理……
媚薬によって抗う意思を剥ぎ取られた昌利の両手は、制服の上着のボタンを外しブラジャーをずらすと、その形の良い乳房を露わにさせた。
なつきのその細い繊細な指を使って、自らの両の乳首をコリコリとつまむと、捻り、引っ張って、攻め立てる。
「あン……♪」
自分の指先で思い通りに形を変える乳首が、予想以上の快感を与えてくれてすっごく気持ちいい。
程よい大きさの綺麗な形をした乳房を掌で包み揉みしだきながら、それとは別のリズムで親指と人差し指の二本の指でいじる乳首の気持ち良さに、口から涎が垂れてしまう。
なつき姿の昌利は、口から流れる涎をはしたない音を立ててすすり上げると、右手をショーツの中へと移動させる。
ショーツの中が愛液で溢れかえってヌルヌルとしてる。
ヌルヌル気持ちいい……
すくった指先で感じる愛液のヌルヌル感が、もうそれだけで気持ちいい。
愛液でヌルヌルの指先で、皮の上からクリトリスを少し乱暴にヌルっと押しつぶす。
「はひっ♪」
その気持ち良さに思わず声が漏れる。
すごい、気持ちいい……
皮を剥いてヌルヌルの親指でクリトリスを撫で回す。
「んっ……ゃん……♪ ぁん……ひゃん……♪」
撫で回すリズムと同じリズムで声が出る。
クリトリスを撫で回しながら、人差し指と薬指でオマンコの割れ目——大陰唇を小陰唇ごと大きく広げる。小指は添えるだけ。
愛液でヌルヌルの中指は、自然と膣口へと滑り込んだ。
「ぁン!」
中指を膣口から激しく出し入れするも、昌利姿のなつきに開発されまくっている今のなつきの身体には、中指1本の挿入感ではあまりにも物足りない。
小陰唇を小指で押さえ直すと、薬指も中指と合わせて挿入する。
「ぁン! ぁン♪ ぁン! ぁン!」
二本の指で膣内を掻き回す。
ダメ! すごい気持ちいい!!
胸をいじっていた左手が知らない内にショーツの中に入り込み、クリトリスを激しくいじっている。
スカートは、両手が潜り込んで伸びきっているショーツを隠すことすら諦めているかのように淫らにはだけて久しい。
乱暴なくらいに二本の指をオマンコから出し入れしていると、早くも絶頂の波が襲って来た。
「ダメっ、もうイッちゃう……よ……」
絶頂の波を逃さぬように、さらに激しく指を膣の中で抽送する。
「あっ! やだっ! ダメこれっ! あ……イクっ!」
頭が真っ白になった。
媚薬のせいか、快感がいつもの比ではない。
なつきの身体が絶頂感にガクガクと痙攣する。
それなのに……
イッたばかりだというのに、指が止まらない。
全然物足りない。
身体中が快楽をもっともっとと切望する。
「なんでぇ……イッたのになんでぇ……足りないよ?……全然足りないよぉ……」
なつき姿の昌利は、その場にうずくまりながら、一心不乱に自分のオマンコをいじり続けていた。
昌利姿のなつきが側に寄って声を掛けてきたのは、そんなタイミングだった。
「なんだぁ、もうすっかり出来上がってんじゃん。
なつきちゃん、気持ち良さそうだねぇ」
快楽に潤んだ瞳で、なつき姿の昌利が昌利姿のなつきを見上げる。
「うん……気持ちぃよ……いっぱいいっぱい気持ち、いいよぉ……♪」
自分のオマンコをいじりながら、昌利はだらしなく上気したなつきの顔で、にへらっと笑い返す。
媚薬の与える快楽に負けた昌利に、思考力はもう無くなっていた。
今考えられることは、ただただもっと気持ち良くなりたい。それだけだった。
「そしたらさ、紅音のことも気持ち良くさせてあげなよ。
この薬、使っていいからさ。」
昌利姿のなつきが媚薬瓶を取り出して、壇上の紅音を指差した。
「紅音……ちゃん?」
昌利が壇上に目を向けると、全裸で縄に縛られている紅音の姿があった。
それは、とても美しくていやらしくて、見つめていると、なつきの身体の子宮をきゅうっと締め付けるような、新たな疼きを昌利に感じさせた。
紅音の裸体を見ていると、胸がいやらしくもドキドキと高鳴る。
もっと気持ち良く、なりたいかも?
なつき姿の昌利は媚薬を受け取るとふらふらと立ち上がり、壇上へと歩いた。
気配に気づき、両腕を天井に吊るされたままうなだれていた顔を上げる紅音。
そこには、制服のボタンを外し、上にずらしたブラジャーから両乳房をはだけて立つ秋月なつきの姿が目の前にあった。
「なつき……じゃない、あなた、高原なんでしょ? しっかりして!
私を助けに来たって、言ってたよね!!」
虚ろな目のなつき姿の昌利に激を飛ばす紅音。
自分自身への情けなさか、昌利を巻き込んだ申し訳なさか、紅音の目には涙が滲んでいる。
「うん……わたしね、紅音ちゃんを……助けに来たのよ……」
媚薬に思考力が奪われたせいか、昌利は心までなつきになり切ってしまったかのように、なつきの口調で答える。
「でもね……その前に、したいこと……あるの。
いっぱい……気持ちよく、なろ?」
なつき姿の昌利は、媚薬入りの小瓶からその琥珀色の液体を口に含むと、紅音に口づけして、口移しに媚薬を飲ませた。
が、紅音は口を閉じたまま、頑として媚薬を飲もうとはしなかった。
行き場を無くした媚薬が紅音の口元から溢れ落ちる。
「なんで? 紅音ちゃん、わたしと気持ちよく……なりたくないの?
わたしのこと……キライ?」
昌利はなつきの顔で悲しそうな表情を作る。
紅音は口の周りについた媚薬を飲み込まぬようにペッと吐き出すと、再び激を飛ばした。
「高原! お前らしくもない!! しっかりしなさい!!」
その言葉にしゅんとするなつき姿の昌利。
しかし、いたずらっ子のような笑みを浮かべると、
「いいもーん。お口から飲んでくれないなら、下のお口から飲ませちゃうもーん。」
なつき姿の昌利は媚薬を再度口に含むと、縄で吊られて膝立ちになってる紅音の股の間に仰向けになって素早く頭を潜り込ませ、両手で紅音のオマンコを広げると、そこに口付けし、膣口に向かって琥珀色の媚薬を吹きつけた。
「高原?!」
「高原くんはあっち。わたしはなつきだよ? 紅音ちゃん。
どう? 気持ちよく、なれそうかな?
……わたしはね、もう……我慢できない……みたい」
トロンとした目になったなつき姿の昌利は、片手で紅音の腰に手を回し自分の身体を支え、片手で自分のオマンコをいじりながら、そのまま紅音のオマンコを舐め始めた。
「高原! ……やめ……!」
「わらひはなつきだから、やめないよー♪」
紅音の小陰唇を舐め回し、クリトリスを甘噛みし、なつき姿の昌利はクンニリングスをやめようとはしない。
快楽に囚われた昌利は、もう自分が誰で何をしているのかわかっていないのだ。
紅音のことを子供が呼ぶように“紅音ちゃん”と呼び、その言動は、テンションもおかしく人格すらも怪しい。
きっと昌利が子供の頃は、こんな無邪気なイタズラっ子だったのだろう。
——このなつきの身体が感じる女の子の快感で、もっともっとたくさんいっぱい気持ちよくなりたい。だって自分はなつきだから。
媚薬の効果に支配された今の昌利は、ただ性欲だけが全ての、子供のような思考で動く無邪気な動物に成り下がっていた。
「おいおい、経口服用じゃなくて経膣投与はヤバイって」
昌利姿のなつきはそれを見て、腹を抱えて爆笑する。
「あ! ふごい……紅音ちゃん、溢れてきた♪」
紅音の膣から溢れ出てきた愛液を、昌利はなつきの舌でわざと大きな音を立ててジュルジュルとすする。
「ダメっ……! 高原!! そんなにしたら……」
紅音は腰を動かして何とかなつきの舌遣いから逃げようとするが、両腕を天井から吊るされているため逃げきることが出来ない。
縄で縛られている両腕に縄が喰い込んで行くだけだ。
身体を捻って逃れようとする度に、全身を縛っている縄も紅音の肌に喰い込んで行く。
「違うよぉ、な・つ・き。 紅音ちゃん、わたしのことなつきって呼んでくれないと、もっといじわるしちゃうからねっ!」
入れ替わっている間になつきによって身体に仕込まれた被虐によるMの快感——マゾのスイッチが入ったのか、喰い込んでくる縄の痛みが自分の中で仄かな快感に変わったのが紅音にはわかった。
……うそ……?
……こんなのが……気持ちいい?
紅音が縄で縛られる痛みとその拘束感から来る心地よさに気付いた途端に、膣に吹き付けられた媚薬の効果が股間のむず痒さを増進させる。
粘膜吸収によるものなのか、それは紅音の膣内をとろけるほどに一気に熱くさせた。
……だめ……これ以上、あそこを舐められたら……堰き止めている心が決壊してしまう。
「なつき、お願い……もうやめて…………」
哀願するように、紅音は昌利のことをなつきと呼んだ。
「あはっ♪ 紅音ちゃん、やっとわたしのこと、なつきって呼んでくれた。」
なつき姿の昌利は、紅音の股間から抜け出すと、
「お礼に、今度はこっちを気持ちよくさせてあげるね♪」
全身を縄で縛られ、その形を強調された紅音の乳房を揉みしだいた。
「ちがっ……なつき……だめっ!」
なつき姿の昌利が赤子のように紅音の乳首にむしゃぶりつく。
「わらひね、紅音ちゃんのおっぱい、すごく好きよ。
可愛くて綺麗だから、ずっとこんらふうにしてみたかったの」
片方の乳首をちゅぱちゅぱと音を上げて吸い上げる。
「いやっ! いやぁぁ! ……お願いなつき……だめだからぁ! ダメなのぉ……」
紅音の息遣いが、段々と艶かしくなって行く。
なつき姿の昌利は乳房を揉みしだいてた手を紅音の股間にそっと這わせた。
紅音の股間からは、床に滴り落ちるほどに、愛液が垂れ下がっている。
「紅音ちゃん……すごい濡れてる……」
それは媚薬を吹き付けられたせいではなく、快楽に身を寄せ始めた紅音の子宮が作り出した、本当の愛液だ。
「やだ……言わないで……」
紅音の頬が紅く染まる。
「触って欲しい?」
なつき姿の昌利が、掬い上げた愛液をじらすように紅音の太ももの内側の付け根に擦りつけた。
紅音は膝立ちのまま、拒否するように、愛液まみれのなつきの指先を遮るように足を内股にして、閉じる。
しかしその仕草とは裏腹に、閉じた内股は自らの股間をモジモジと擦り合わせている。
「……欲しいんでしょ?」
なつき姿の昌利が紅音の耳元で囁いた。
顔を真っ赤にしたままうつむいていた紅音の顎が、コクリと小さく頷く。
「それじゃぁ、二人で一緒に……気持ち良くなろう?」
なつき姿の昌利は床に置いていた媚薬の小瓶を拾うと、琥珀色の液体を口に含んだ。
再び紅音に口づけをする。
紅音の口が小さく開き、今度はなつきの唇を素直に受け入れていた。
なつきの口から、琥珀色の液体が紅音の口へと流れ込む。
紅音の喉が小さく鳴った。
二人の唇が、唾液の糸で繋がれながら、ゆっくりと離れて行く。
「私……なつきと一緒に……気持ちよくなっていいの……?」
紅音が潤んだ瞳で、なつき姿の昌利に問いかける。
「もちろんよ……」
答えの証に、なつき姿の昌利は紅音に今度はディープなキスをした。
受け入れるように、自らも舌をいやらしく絡めて行く紅音。
それは、紅音が愛欲に堕ちた瞬間でもあった。
昌利姿のなつきは、そんな二人の姿をニヤニヤとした下卑た笑いで見つめていた。
なつき姿の昌利と校舎1階の廊下で別れたあと、杉浦杏奈は2階の端にある職員室を目指した。
学校中の電源を落とせるブレーカーのある、配電盤を見つけるためだ。
職員室の扉の前に着いた。
顔の高さにある、扉の覗き窓から職員室の中を覗く。
真っ暗だ。
微かに入る月明かりが、夜の無人の職員室の薄気味悪さに拍車を掛けている。
怖がりな杏奈は、お化けでも出てきそうな雰囲気に身震いしながら、ふと気がついた。
「そういえば配電盤なんて……どこにあるのかな? わたし、知らないよ……?」
昌利と『30分でブレーカー落とす』とのプランを出し合った時、二人とも職員室の中に配電盤があると前提で話をしていた。
思い込みとは怖いものである。
考えてみれば、そんな確証はどこにも無かった。
本当に職員室の中にあったとしても、職員室のどこに配電盤があるのか、見当もつかない。
モバイルルーターごとノートパソコンを持ち歩いているので、学園の校舎の設計図にでもアクセス出来れば、場所はきっと調べられるだろう。
……でも、こんな薄気味悪いところで一人パソコンを広げるのは、ちょっと嫌だ。
「本当に……職員室で、い、いいのかな?」
一度疑念に駆られると、猜疑心ばかりが募って行く。
「そ、それに……職員室って多分セキュリティがかかっている、よね……もしかしたら扉を開けただけでも……警備会社に通報が行っちゃうかも?」
そういえば以前、学年上の生徒が深夜の職員室に侵入し、警備会社に通報されて騒ぎになったことがあると誰かが言ってた気がする。
そんな記憶が杏奈の頭をよぎった。
「しょ、職員室は……あとにしよう……こ、怖いし。
そ、それに30分後に扉を開ければ、セキュリティに引っかかるんだから……お、同じよね?」
自分にとっての都合のいい言い訳を並べ立ててしまう辺り、やはり少女の気の弱さが出てしまったか。
本来は探偵並みに頭の回転の速い杏奈も、夜の学園の不気味さに負けて、その判断力を鈍らしてしまったようである。
何故なら警備会社への通報も含めての計画なのだから、それならば電源ブレーカーがあろうが無かろうが、職員室の前で30分間待ち続けていた後に、扉を開ければよかっただけのことなのだ。
とはいえ、真っ暗な校舎の中、職員室の扉の前で何もせずにただ黙ってじっとしているというのもなかなかに怖いものでもある。
強迫観念に駆られた杏奈は、電源ブレーカーを探すという先入観に囚われて別の場所に向かってしまった。
何かをして動いている方が、まだ気が紛れるから。
そんな杏奈を責めるというのも、それはそれで酷な話と言えよう。
しかし、この杏奈の迂闊な行動が、全員の運命を変えてしまうことを、この時の杏奈は知る由もなかった。
電源ブレーカーを探して1階と2階をあちこち探し回った挙句、建物の外に出て体育館まで見て回ってしまった杏奈は、中庭で途方に暮れていた。
配電盤が見つからない。
何で勢いにまかせてこんな所にまで来てしまったのか……
時間も、30分などとうの昔に過ぎ去ってしまっていた。
「もう……どこにあるのかなんて、わからないよぉ」
高原くんからの連絡も無いし、諦めて、職員室に戻ろう……
とぼとぼと中庭を歩く杏奈。
そして背中を丸めてうつむき歩く杏奈には、校舎の6階にある視聴覚室の窓の、かすかにはだけた暗幕の隙間から漏れている光があることに、気づくことが出来なかった。
2024年06月17日21時56分 脱稿
(脱稿後、随時修正有り)
vol.5先行公開版_後書き
なんと! 「小指はそえるだけ」のパワーワードがどこかに隠されます。安西先生ごめんなさい!
エッチでのSMって嗜好の相互理解だと思っているので、一方的な暴力を振るうだけのシーンってどうも書くのが苦手のようです。暴力的なエッチシーンが好きな方には「こんなのソフトSMだ」と言われるかもしれません。ぬるくて申し訳ありません。
これがエッチシーンではなくアクションシーンなら「奴の腕を俺は無表情のまま引き抜いた。投げ捨てた腕は床に転がっている」とか、いくらでも平気で書けるんですけどね。不思議なものです。
「七色の彼岸花」に関しての言い訳。
vol.3を書き始めた頃……というか完結させるつもりになって、プロットを再考し始めた頃に「何故なつきは紅音を殺したいほど憎んでいるのか」の理由が「起因は小三」に辿りつき、小三で薬だ何だ言い出すのも不自然なため、子供だし山だし初秋だしということから流れるように「七色の彼岸花」というアイテムの設定を思いつきました。
「良いアイテムを作れた」と満足していたところ、アニメの『鬼滅の刃』を観てたら「青い彼岸花」という重要アイテムがあるみたいじゃないですか!
原作マンガは読んでないので「青い彼岸花」がどんなアイテムか未だ知らない(2024.6.30現在)のですが、本当にまったくの偶然です。
さすがにこの被り方は……と、やめようかとも思いましたが「七色の彼岸花」に代わるアイテムを作り出せなかったこともあり(単に「見たことも無い不思議な花」にしてもよかったのですが)、世の中に彼岸花をプロップにして語られるホラーなど、いくらでもあるだろうと思い直し、「七色の彼岸花」をそのまま使うことにしました。
なので、パクリじゃないんですよ。本当です。
『ナイショノカタチ』vol.6、小説はまだあまり進んでいませんがvol.6の表紙を作り始めてます。
ところで、悩みが少々ありまして、幼児編+小三編でひとつの短編としてまとめようと思っていましたが、小説として書き上がっている小三編だけでもFANBOXで先に発表してしまおうかな? と思い始めています。
小三編読まないと本編がわかり辛いんですよね。
エピソード的には「scene.18(recollection_01)」にあたります。
『ナイショノカタチ』は『ないしょなんだからっ!』の多分パラレルな別の世界線のお話で、ゲームで言えばマルチシナリオの別ルートのようなお話です。(とはいえ、同一の世界線として読んでも破綻のないように書いているつもりです)
小説『ないしょなんだからっ!』はこちらです↓
合わせてお読みいただくと、また違った楽しみ方ができると思います。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20171067
小説『ナイショノカタチ』シリーズはこちらです↓
最初からお読みいただくなら、こちらのリンクが便利です。
https://www.pixiv.net/novel/series/12003348
それでは今度こそ完結予定の『ナイショノカタチ』vol.6まで、しばしの間、お待ちください。