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秀才女子と入れ替わったオレは縄で縛られていた!?『ナイショノカタチ』vol.1  ~もうひとつの『ないしょなんだからっ!』~


scene.1--------------


「秋月さん、どうしたの? 早く答えを書きなさい。

あなたならこの程度の問題、すぐに解けるはずですよ?」

確かに黒板を前にチョークを持って立っている女生徒が本当に秋月なつきなら、この程度の問題はすぐに解けることだろう。

いや、なつきほどではないしろ、<彼>にだって解ける。

しかし…………

秋月なつきの姿をした<彼>の身体(からだ)は、セーラー服の上からでは見えないように注意深く荒縄で亀甲の形に縛られ、ショーツもはかせてもらえないその股間は前も後ろもバイブレーターで塞がれていた。

『こんなんじゃ、答えなんて……っん………答えなんて……書いてる余裕………ないっ……』

「ぁんっ!」

<彼>はふわっと崩れるように倒れた。

あまりの快感に耐えきれず、イッてしまったのだ。

「秋月さん!! どうしたの!? 具合でも悪いの?」

女生徒が倒れた瞬間を目の当たりにして、具合が悪いも何もないだろう。

それほどに、その女教師は慌てたということか。

女教師がなつきの身体に手を添えようとすると、一人の男子生徒がおもむろに立ち上がり、

「あ、先生。オレが保健室に連れて行きますよ。

なつきさん、何でも徹夜で勉強した上に朝メシ抜いて来たって話ですから、貧血なんじゃないですか?」

と、女教師に身体を触らせぬまま、お姫様抱っこのように抱え上げた。

呆気に取られていた教室内から野次と揶揄の歓声が上がる。

「キャー! 昌利クン、ステキー! わたしもそんな風に抱いてぇ~!」

「保健室に連れ込んで、良からぬコトすんじゃねーぞーぉ!」

昌利と呼ばれた男子生徒は照れ臭そうにその歓声に言葉を返す。

「ば、莫迦野郎! 誰がシャーペン女に欲情するかってーの!!」

<シャーペン女>とは、ガリ勉で融通の利かないガチガチな秋月なつきに付けられた蔑称だ。

「勉強が恋人」という揶揄が「シャーペンが恋人」に変化し、しまいには「シャーペンを使い毎日アソコを弄っている」という含みにすらなっている。

そう。生徒会副会長や学級委員という肩書きとは裏腹に、その他人を見下した態度や思いやりが皆無に等しい言動のせいで、なつきはクラスの大半の生徒から、快く思われてはいなかった。

ただ、その言動に有無を言わせないほどの学年トップの学力と、キツめではあるがやはりトップクラスの容姿のおかげで、あからさまにイジメられているわけではない。

が、ここぞというこんな時にこそ、クラスメイトのその手の感情は噴出してしまうものである。

「そりゃそうだ。」

「逆に押し倒されんなよ!」

クラス中に笑いが巻き起こる。

「じゃ、先生。いいですね。」

「え? ええ、お願いするわ。」

呆気に取られてた女教師は不意を付かれ、同意した。

騒がしいままの教室を静める女教師の声を背に、昌利はなつきを抱え教室を出る。


「……ん……? ここ……は?」

なつきの姿の<彼>は保健室のベッドで目を覚ました。

『……そうだ……教室で、みんなの前で……イッちゃったんだ、オレ。』

あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして、掛けられていた毛布で顔を隠す。

顔が赤い理由はそれだけではない。

股間の穴には未だバイブレーターが蠢いて、荒縄は身体を締めつけている。

乳首は休むことを知らずに立ち続けたままだ。

身体中が絶え間ない快感でムズ痒い。

「お、目が覚めたんだ?」

男の声にハッとして顔を上げると、そこには見慣れた顔があった。

<彼>の顔だ。

いや、正確には昨日までの<彼>の顔というべきであろう。

そう、そこで自分を見下ろしているのは<彼>、高原昌利自身の身体だった。


scene.2--------------


前日の放課後。

部活に入っていない昌利はいつものように、グランドの端から、陸上の練習をする女生徒の姿に声援を贈っていた。

声援の先にいる女生徒の名前は蛍原紅音(ほとはらあかね)。

陸上部のエースで、学園のアイドル。

いや。アイドルというよりは、その透き通るような清潔感と凛とした物腰が、女性には似合わないほどの長身と短く爽やかに切りそろえられた髪や容姿と相まって、さながら宝塚の男役とでも言った方が近い。

全校生徒、男女共通の憧れの的のその人である。

今もグランド隅には数十人の生徒がひしめいて、彼女に声援を送っている。

言ってしまえば昌利もその一人だ。

が、昌利にしてみれば、そんな烏合の衆とは決定的に違うことがひとつあるという。

それは「本気度」だ。

その言葉を裏付けるまでもなく、鉢巻きを締め、「駆け抜けろ紅音!!!」と手書きの文字が書かれた尋常ではないほどの大きさの旗を振るその姿は、明らかに他の生徒とは一線を画していた。

応援団など存在しないこの学園において、たかが放課後の一練習風景にしては、あまりにも恥ずかしい絵面と言っていいだろう。

一個人が一個人に向ける応援の熱量としては、常軌を逸してると言えないこともない。

ただ、その彼なりの真っ直ぐな気持ちが伝わっているのか、始めこそ迷惑そうにしていた紅音も、今ではまんざらでもなくなっているようであった。

「申し訳ない、恥ずかしいのでやめてもらえないか?」

「オレは真っ直ぐなキミを、真っ直ぐなままに応援したいからこそ、真剣にやってるんだ!」

過去にそんなやりとりが存在したことで、昌利の純真な心に紅音が触れたせいなのかも知れない。

応援する者と応援される者。

二人がそれ以上の関係になることはないのだが、そこには奇妙な信頼感が生まれ始めているようだった。  


「高原くん。ちょっとお話があるんだけど。いいかしら?」

いつものように紅音の練習を声の限りに応援していると、秋月なつきに声をかけられた。

『珍しいこともあるもんだ。』

クラスの連中程ではないが、昌利もなつきのことはあまり好きではない。

いや、それ以上にむしろなつきの方が昌利のことを嫌っているはずである。

大して頭が良いわけでも無く、乱暴者の部類に入る昌利だ。

なつきみたいな女生徒が、一番嫌うタイプなはずであろう。

小学校が同じだったといっても、昌利となつきとは、さほど接点が無かった。

顔は知っている程度で今日まで来ている。

だからこそ、こうしてなつきに声を掛けられることは滅多にない。

むしろ初めてではないだろうか。

昌利はなつきに連れられるまま、教室に旗を置いた後、数学準備室のドアを開けた。

「で。話って何だよ?」

ひと気の無い狭い数学準備室。

こんな時間、この部屋を利用する者など誰も居ない。

『まさか……愛の告白? ……とか?』

そんなハズがある訳が無い。相手は「あの」秋月なつきだぜ?

そうは思うがこんな状況だ。

女性慣れしていない昌利の胸は、嫌でも緊張で高鳴ってしまう。

「お話の前にちょっとあれ取ってもらえない? 私じゃ届かないのよ。」

なつきが棚の上にある黒板用の大きな三角定規を指さした。

あー、そーゆーことね。雑用係として呼ばれたわけね。

「へいへい。」

そう言いながら昌利が定規を取ろうとなつきに背を向けると、不意になつきが背中から抱きついた。

「お、おい。な、なんだ?」

小ぶりではあるが形の良いなつきの胸が背中に当り、昌利は狼狽する。

『ま、まさか……ホントに?』

後ろを向こうとしたその時、昌利の口にハンカチが当てられた。

ハンカチには何か薬品が染み込んでいたのだろう。

昌利の身体はガクっと崩れ落ちた。

身体が動かない。

なつきは横たわったまま動けない昌利を、妖しい笑みを浮かべながら見下ろしている。

ポケットから小瓶を取り出すと、なつきはその怪しげな紫色の液体をひと口飲んだ。

そしてふた口目を口に含むと、昌利の傍に膝を付き、昌利の唇に唇をそっと重ねた。

昌利の口の中になつきの唇から流れ込んだ、液体の甘酸っぱい香りが広がって行く。

『なんだろう……この幸せな気分は……』

昌利は軽い浮游感を感じながら、意識を失って行った。


……あれ? 身体が変に……熱いような……。

昌利が不思議な快感の中で目を覚ますと、辺りは既に夕闇に包まれていた。

部屋は暗く、よく見えない。

起き上がろうとしたが、両手両足を縛られているため、起き上がることが出来ない。

それどころか、身体中が荒縄で複雑な形に縛られているようだ。

なんだこれ?

『ここは?』

あまりにも状況が理解出来ない。

しかし、一番理解出来ないのは、股間に存在する二つの異物感。

何やら硬い物が前と後ろに入っていて、それが昌利の快楽中枢を刺激していることだ。

前と、後ろ? ……入ってる?

後ろはお尻。肛門である。わかりたくないが、それはわかる。

でも…………前って?

「ようやくお目覚めか? お姫さま。」

パチンというスイッチの音と共に、部屋が明るくなった。

眩しさに昌利は目を細める。

蛍光灯の光に慣れ、目を開けると、そこは数学準備室だった。

「なかなか目を覚まさないから心配したぜ。」

男の顔が昌利を覗き込む。

快感にぼーっとした頭で男の顔を見た。

見慣れた顔だ。

誰だっけ?

そうそう、オレの顔だ。

『鏡じゃなくて直にオレの顔を見ると、こんな風に見えるんだ……』

……え?

昌利は目を見開いた。

自分を見つめているその顔は、まさしく自分自身の顔だった。

「お前は!?」

驚きのあまり起き上がろうとするが、縛られているため起き上がることは出来ない。

「お前! 誰だ!!」

目の前の自分がさも心外だという口調で返す。

「おいおい、同級生の顔、忘れんなよな。なつきさんよぉ。

あんたがココにオレを呼び出したんじゃねーか。」

な、何の事だ?

昌利はまだぼんやりとした頭で、記憶を辿る。

放課後に、なつきに呼び止められてここに連れて来られて……

なつき?

『今、コイツ、オレの事をなつきって……?』

自分の身体に目を落とした。

「え!?」

視界に飛び込んだのはセーラー服を着ている自分の身体だった。

身体を縛っている荒縄は、両手両足を除き、セーラー服に隠れて見えない。

『何で? オレがこんな服着てるんだ……?』

女装をしてる恥ずかしさに昌利の顔は赤くなる。

が、よく見ると、何か変だ。

自分の身体にしては妙に華奢で、セーラー服を着ている姿に違和感が無い。

胸に目をやると、そこには谷間が出来ている。

『!』

昌利は息を飲んだ。

驚いた表情のまま、見下ろしている男の顔を見上げる。

「何びっくりしてんだよ? 用が無いなら、オレ、行くぜ?」

準備室から出ようとする男。

え? ちょっと?

自分に何が起きているのかわからないが、とにかくこのままでは何も出来ない。

せめてこの縄をほどいてもらわなければ。

「ちょっと待てよ! 頼む、コレ、ほどいてくれないか?」

男は振り向いて、ニヤっと笑う。昌利そっくりの顔で。

「いやだね。」

「え?」

「だって、あの高慢チキな秋月なつきが縛られて身動き出来ないなんて、こんないいシーン、そうそう見れるモンじゃないだろ? 

もったいなくってさぁ。」

くくく。と男が笑う。

「そんな……」

男の言葉を信じる限り、やはり、昌利は秋月なつきになってしまったようである。

理由はわからないが。

「そのまま朝までそうしてれば? 明日になれば、誰か助けてくれるんじゃねーの?」

う、嘘だろ?

「た、頼む! 頼むから!!」

こんな訳のわからない状況のまま、一晩なんて過ごせるか!

昌利は焦った。

股間の異物感が昌利の焦りに輪を掛ける。

その時、男は何が可笑しいのか、大声で笑い始めた。

「あはははははははっ、いいねぇ、その顔。最高だよ。

あたしって、そんな顔するんだ。知らなかったよ。」

男は手鏡を取り出し、昌利の前に突き付けた。

昌利の顔が鏡に映る。

そこには悲痛な程に哀願の表情を浮かべた、秋月なつきの顔が映っていた。


何だこれ?

オレが……秋月なつき……?

薄々感じてはいたが、この現実がにわかには信じられない。

「これって……いったい……」

頭の中で思考がぐにゃりと歪む。

「どころで、なつきサン。そんなカッコで何してんの?

服の下に亀甲縛りなんて、なかなか通だねぇ。

前も後ろもバイブ突っ込まれてさぁ。

ソレってアレ? 放置プレイってヤツ?」

昌利の顔をした男がケラケラとあざ笑う。

辱めの言葉に昌利は反射的に身体を隠そうとしたが、両手を縛られているためままならない。

昌利は身体を小さくすぼめた。

「し、知るか!! 気付いたらこんなコトになってたんだよ!!」

そう叫んで、気が付いた。

「てめえか!! てめえがこんなコト、しやがったのか!!

人をこんな風に縛りやがって、ほどきやがれ!!」

男は外人のように両手を広げ、おやおやというポーズを取る。

「そんなめんどくさいコト、する訳ないじゃないか。

それ、なつきサンが自分で縛ったんだよ?」

「ふざけるな!!」

「ホントだって。なつきサン、朝、自分でそうやって縛ってから、登校したんだから。手足以外は。」

男がニヤニヤとした顔つきで言った。

「その方が入れ替わった時に、手間が省けるだろ?」

え?

何の話だ?

……それって……

「てめぇ! いったい誰だ!!」

男が呆れた顔をした。

「おいおい。鈍いにも程があるぞ。いいか、オレとお前は入れ替わったんだよ。」

「……まさか…………なつき?」

「ご名答。」

目の前に居る昌利の姿をした男。

それは高原昌利の身体の中に秋月なつきの心が入った姿だった。

そして当の昌利は、なつきの姿で全身を縛られ、床に転がっている。

「何で!? どうして!?」

昌利はパニックになった。

そんな、そんな莫迦みたいな話があるものか!

「あーもー、いいから落ち着けよ。これ、現実だから。

いいか、さっき口移しで飲ませた薬。

あれな、薬を飲んだ者同士の間で、入れ替わることが出来るんだよ。

その手の話、マンガとかでよくあるだろ?

あれと一緒。わかった?」

わかるか!!

そんな説明で納得出来るものではない。

「ま、納得出来なくてもいいけどさ。話が進まないなら、オレ、帰るわ。

一晩そのままで、頭冷やしてみれば?」

ふ、ふざけるな!

そんなことをされてたまるものか。

昌利は立ち去ろうとする男……なつきを引き止めた。

「ちょっ、ちょっと待てって!」

「なんだよ? 話を聞く気になったのか?」

「あ、ああ。」

納得出来る出来ないは二の次だ。

嘘でもいいからこんなことになってる理由が知りたい。

昌利は腹を決めて、なつきの言葉を受け止めることにした。


「実はさ、お願いがあるんだよ。

あんたに、<秋月なつき>に成り切って欲しいんだ。

これからずーっと、<秋月なつき>として生活してもらいたいんだよ。わかる?」

「ずっとって、いつまでだよ?」

「ほらほら、<なつき>はそんな言葉遣いはしないって。」

「……いつまで……なの?」

昌利は眉をしかめながら女言葉を使ってみた。

「そうそう、そんな感じ。代わりにオレがちゃんと昌利として生活してやっからさ。その点は心配すんなよ。な?」

随分と勝手な事を言ってくれる。

昌利は少しムッとした。

が、いま目の前に居るなつきの身体は本物の昌利のそれである。

これほどまでに自分の口調や仕草を真似られてしまっては、『コイツは昌利じゃない!』と言っても誰も信じないだろう。

「いつまでって、そーだなー。決めて無いけど、下手したら一生。」

「なにぃ!!」

「あ~、そうそう。それと、あんたには今後オレの命令を全て聞いてもらうから。拒否権は無い。いいな。」

「て、てめえ! ふざけるな!! 何勝手なコト言ってんだ!!」

「おっと、<秋月なつき>はそんな口調じゃしゃべらねーぜ。

わかってねーのか? そんな調子じゃ、元に戻れる薬は永久に手に入らなくなっちまうぞ?」

先ほどの小瓶を取り出し、手に持ってその小瓶を落とすそぶりを見せる。

「そ、それが元に戻れる薬なのか?」

「そーだよ? 欲しい?」

「当たり前だ!」

「元に戻りたいんだ?」

「当たり前だ!!」

「じゃ、言うコト聞くよな?」

昌利は、はらわたが煮えくり返るの抑え、なつきの口調を真似てみた。

「わ、わかった。……わ。……こ、これでいいかしら?」

「へー、上手いじゃねーか。さすがオレが見込んだだけのことはあるな~。

小学校のクラス演劇で主役を張ったのは伊達じゃないってか。」

昌利の声でケラケラと笑うなつき。

昌利と同じ小学校だったなつきは、そんなことまで覚えていたようだ。

「て、てめえ!!」

「おっと。」

なつきは小瓶をこれ見よがしにゆらゆらと揺らす。

昌利はその可愛くなってしまった顔を、苦虫を噛み潰すように歪めた。

「ず、随分と私を買ってくれてるのね……意外だわ。」

皮肉混じりに女口調で言葉を返すと、なつきは昌利の身体でひゅーっと口笛を吹いた。

その皮肉な口調こそが、まさしくなつきのそれであるのだ。

「すげーじゃんか。ソレソレ。その調子その調子。」

奥歯を噛みしめながら、昌利はなつきを睨み続ける。

「二・三、聞きたいことがあるんだけど、……いいかしら?」

「おお、いいぜぇ~。なんっでも、聞いてちょ~だい。」

憎たらしいほど、自分のおどけている姿を真似るなつきに虫酸が走る。

感情をぐっと堪えながら、昌利は言葉を続けた。

「入れ替わり相手に私を選んだのって……それが理由?」

「ん? ソレって? ああ、演技が上手いってコト?

そうだな~。ソレもある。ってとこかな~。

理由はひとつじゃないんだよね。

色んな要素を考えて行ったら、あんたがソコに居た。ってとこ。

ま、理由のひとつは、あんたが大っ嫌いってことだけどね~。」

そんな答えに納得出来るわけが無い。

じゃぁ何故なつきはその大嫌いな昌利の姿になっても平気なのだ?

「入れ替わって、私に何をさせようって言うの? 

それとも、あなたがその姿で何かしようとしてるの?

そもそも、あなたの目的は!?」

「ま、それはおいおいわかるよ。」

なつきがそのゴツイ指で、昌利のやわらかい頬を撫でる。

「楽しみにしててくれよ。な?」

手付きがスケベ親父のようにイヤらしい。

「くっ。最後にこれだけは聞かせて。

あなたその薬、やけにぞんざいに扱ってるけど、その薬が無くなったらあなたももうこの身体に戻れないんでしょ? それでもいいの?

それともその薬、他にまだあるの?」

「さすが<秋月なつき>は頭がいいなぁ。質問が的確だ。惚れちゃいそうだぜ。」

くくく。と、なつきが笑う。昌利の姿で。

「オレはさぁ、別に元に戻れなくても一向に構わないんだ。この姿も気に入っているしさぁ。

だから、こんな薬、ホントはもうどうでもいいんだよ。

オレにとっちゃ、あんたに言う事を聞かせるためだけの道具ってトコかな~。

あ、元に戻れる薬はコレだけだよ。信じなくてもかまわないけど、嘘じゃないから。」

元に戻れなくてもいいって、何考えてんだ、こいつ。

それにこの、オレが縛り上げられてるこの状況って、何だよ?

そういや入れ替わる前から自分で縛って登校して来たって言ってたな。

……正気か?

『まさか、こいつ、狂ってるんじゃ……?』

昌利の背筋が寒くなった。

ブラジャーのホックが冷たく感じる。

「そうねぇ~、もしかして私、狂ってるのかも知れないわね。

でも、そんなのどうでもいいじゃない。

どっちにしたって、その<狂ってる私>に逆らったりしたら、あなたは永遠に元の身体に戻れないんだもん。」

なつきは昌利の姿になって初めて女言葉でしゃべった。

そしてその、女言葉でしやべる昌利の姿の異様さは、なつきの狂気を裏付けるには充分だった。

「元に戻ろうとする限り、あなたに選択権は無いのよ。」


その言葉を耳にした時、昌利の頭の中に<絶望>の二文字が浮かんだ。

その通りだ。

オレに選択権は無い。

だからと言って、なつきの言いなりになってもいのか?

この狂人に否応もなく、従うしかないのか?

そんなこと、出来る訳が無い!

しかし……

昌利の思考はメビウスの輪のように同じ所をぐるぐると回る。

それは出口の無い無限地獄にすら思えた。

が、永遠に続くと思えた思考のループは、なつきのたった一言で切断される。

「んじゃ、話も終わったコトだし、ちょっくら楽しむとするか。」

「え?」

なつきがセーラー服の上から、昌利の胸を揉んだ。

「ちょっ、何を……」

「何って、せっかく入れ替わったんだ。

お互いの身体、楽しもうぜぇ~。」

「あ、ちょっと……あンっ。」

異物をオマンコとアナルに入れられっ放しの昌利の身体は、たったそれだけの事にも敏感過ぎる程に反応してしまう。

「どうよ? その身体、気持ちイイだろ~。」

元々はなつきの身体だ。

性感帯は全てお見通しなのだろう。

昌利は魔法に掛かったかのように、あっけなく絶頂に達した。

「や、やめっ……あ……あン……ダメだっ…て……うぁっ…………クあああっ……!!」

女の身体での初めての絶頂に、昌利の思考はとろけてしまう。

「ありゃ~。こんなんでイッちゃうのかよ。お前、相当淫乱だな。

でもさ~、もうちょっと可愛く悶えてくれない?

男言葉で悶えられると何かゲンメツ~。

<なつき>に成り切れって言ったの、もう忘れちゃったワケ~?」

……何だ今の感覚? 女がイクって、こんな感じなのか?

そんなことを言われても、激しい快感の中では言葉遣いにまで気が回る訳が無い。

昌利は自分の身体を見つめた。

……そうだ……今、オレは<なつき>なんだっ…け……

「……ぁ……はぁ………ご、ごめん……な…さい。」

女言葉で答えると、昌利は股間からゾクっとする何かを感じた。

……あ? なに…? コレ……

股間をもぞもぞさせていると、なつきは目ざとくそれを見つける。

「何だ? 今度はコッチをいじって欲しいのか?

しょーがねーなー。」

面倒臭そうな言葉とは裏腹に、なつきは昌利の股間を嬉々としていじり始めた。

荒縄に固定されて、昌利のオマンコに深々と突き刺さっている異物を、動く幅だけ出したり入れたりする。

「やっ……ダメっ…動かさないでぇ……お願いっ……いやぁあ!!」

「おおっ。いいねぇ、その反応。

ほらほら、なつきのココ、バイブくわえてテラテラ光って、涎垂らしまくりだぜぇ。」

……そうか、やっぱり入ってるの、バイブレーターだったんだ……

「なつき……って、<なつき>ってわたしの……こと……?」

「そうだよ。アナルとマンコにバイブ突っ込んでヨガってる、お前のことだよ !」 

オレは……なつき……?……私は………なつき……?

朦朧とした昌利の頭の中では、同じ言葉が繰り返される。

昌利の股間に入っている、バイブの動きが一段と早くなった。

昌利の思考はいつしか消え去り、なつきが投げつける言葉をオウムのように返していた。

「気持ちいいか? なつきは淫乱なメス豚なんだよ! とっととイッちまいな!」

「いいっ……気持ちいいのぉ……なつきは、なつきは淫乱だからぁ……メス豚だからぁ……」

「イケっ! 自分の名前呼びながら、イッちまえ!!」

「いくっ……なつき……なつき…イッちゃうぅぅぅぅぅぅぅうっっっ!!!!」

………わたし………イッちゃった………

オマンコいっぱいいじられて……なつき…イッちゃっ…た………


その後も何度となく繰り返される陵辱的な行為に、昌利は女としてイかされ続けた。

深々と突き刺さるバイブレーターがしっかりと荒縄に固定されているため、抜き取ることが出来なかったのか、直接的な男根の挿入はなかったものの、淫魔のように絶え間無く動くなつきの手の中で、昌利はおもちゃにされ、踊り狂った。

はたしてどれくらいの時間が過ぎたであろう。

快楽にまみれて気を失う昌利を置き去りに、その拘束を解くことも無いまま、性臭が充満する部屋から昌利の姿をしたなつきはいつの間にか消えていた。


scene.3--------------


朝焼けの中、昌利は数学準備室の中で目が覚めた。

未だ身体中を荒縄で拘束されたままで。

昌利は昨夜の事を思い出して、ゾッとした。

『まさか……オレが、あんな、女みたいにイかされ続けちまうなんて……』

女みたいに。というのには語弊がある。

今、昌利の身体は紛れもなく、<秋月なつき>という女性の身体なのだ。

女のように悶えてしまうのは仕方無い。

『でも、オレは男だ。』

この理不尽な状況において、外面だけでもなつきに従うことになるのは仕方の無いことであろう。

しかし、心底から服従する事は、自分のプライドが許さない。

いや、なつきの身体になってしまった今、<高原昌利>という自我を揺るがずに堅持する為にこそ、そこだけは絶対に譲ってはならないのだ。

そのためには拠り所となる物が必要だった。

何でもいい。自己暗示でもかまわない。

折れない自我の象徴が欲しい。

昌利は今の自分には無くなってしまった男根を夢想する。

起立した架空の男根。

加えて、一度だけ経験した事のある挿入感をイメージする。

昌利のとっては思い出したくも無い、封印していた記憶なのだが、背に腹は替えられない。

『オレは入れられる側ではない! 入れる側だ!』

硬く、強く、念じ上げる。

が、昨日からオマンコとアナルを押し広げ続けている異物が、その邪魔をする。

お前はもう女なんだと囁きかける。

昌利のそんな葛藤の中、まだ早朝だというのに、準備室の戸が開いた。

「よお、なんだもうお目覚めか? 昨日はよく眠れた?」

入って来たのは昌利の姿をしたなつきだった。


「さすがに見つかって騒ぎにでもなったら大変だからな。早めに来てやったぜ。オレって優しいだろ?」

「ふざけるな!」

「おいおい、一晩たったらもう忘れちまったのか?」

昌利の言葉遣いに釘を刺す。

「くっ!」

昌利は何も言い返せない。

「ところでよ~、男の身体っておもしれーな。昨日、早速オナニーさせてもらったぜ。

気持ち良かった~。

ぴゅっぴゅぴゅっぴゅ飛ぶんだな、ザーメンってよ。

そうそう、センズリこいてたらオメーの兄貴に見つかっちまって、ま~アセることアセること。

いやー、笑った笑った。」

なつきの口から信じられないような下品な言葉が次から次へと飛び出す。

『……こいつ、いくらオレの真似をしてるからって、本当にあのお堅い秋月なつきか?

まるで別人じゃねーか。』

なつきは本当に狂ってしまっているのだろうか?

昌利は身震いをした。

「そーいや、オメーの両親、すんげー、イイ人なのな。

ホント、胸クソ悪くなるくらい。」

そうか? 別に大して自慢出来る両親じゃねーぞ?

「そんなことはどうでもいいから! 早くこの縄、ほどいてよ!」

仕方無しに女口調で昌利は切り出した。

口調に関しての問答は最早無意味だ。

「いいけど、その前に約束な。

絶対に<秋月なつき>らしからぬ行動は取らないコト。

ほんのちょっとでも誰かに疑われでもしたら、二度と元には戻れないと思え。いいな。」

……約束。即ち命令だ。

「……わかったわよ。」

「あ、勉強に関しては大目に見てやるからさ。さすがにお前の成績じゃ<なつき>に到底及ばないもんなぁ。

オレって寛容だろ?」

ケラケラとなつきが笑う。

「わかったから、早くしてよ!」

「へいへい。」

なつきが昌利の両手両足の拘束を解いた。

昌利は久しぶりに身体が自由に動くことを満喫する。

が、それ以上なつきは何もしようとしない。

身体中を亀甲型に縛り上げている荒縄はそのままだ。

じれた昌利は自分でほどこうとセーラー服に手を掛ける。

「待った。悪いがソイツはそのままだ。」

昌利の手が止まる。

「お前が上手く<なつき>を演じられるかわかんねーからな。

そいつは、上手くできた時のご褒美として、外してやるよ。」

「……そんな……」

理不尽な命令にも従わなければならない自分があまりにも情けない。

「それじゃ、せめて下のコレだけでも取らせてよ。」

「それもダメだ。」

まさか、この姿のまま、授業を受けろと?

昌利の顔が青ざめる。

「そのくらいのコトでボロを出すようじゃ、今後<なつき>に成り切るなんて無理だろうからな。

試させてもらうよ。

あ、汚れちゃって気持ち悪いだろうから、ショーツ穿かないで一日過ごしてね。

替え無いし。」

昌利の目の前が真っ暗になる。

「そうそう、今日は選択授業だったけな。一緒の教室になれるじゃねーか。楽しみにしてるぜ?」

昌利となつきは本来違うクラスなのだが、選択授業の関係で、週に二・三時間、同じ教室で授業を受けている。

コイツ、何かをする気だ。

昌利は直感でそう思った。


女教師が背を向け黒板に年表を書いている。

どこにでもある平凡な午前の授業風景。

しかし、本当は一つの異質な何かが紛れ込んでいることを、誰一人として知る由もない。

当事者の二人を除いては。

女教師に指名され、昌利はなつきとして黒板の前に立った。

黒板に向かうため、昌利の姿をしたなつきの席の脇を通った時に、昌利の股間を塞いでいる二つのバイブレーターが、不意に蠢き始める。

『えっ? リモコンのスイッチ入れやがった?!』

脚がガクガクと震え、立っていることすらままならい。

考えてみれば昨夜はバイブの電源を入れないまま、なぶられていたような気がする。

きっと電池の残量を考えての事だったのだろう。

昌利は、なつきのその計算高さにゾッとした。

まさか、昨日自分で自縛して家を出たというその時から、この事まで想定していたというのか?

いや違う。だからこそ、入れ替わったのが昨日だったのだ。

バイブの振動が与える快感と、他の生徒にバレてはいけないという羞恥のせめぎ合いに耐えながら、昌利はチョークを手にして必死に解答を黒板に書こうと努力した。

そんな姿をニヤニヤしながら見つめているであろう、なつきの視線を感じながら。

そして、快感の波に呑まれた昌利は、その場に倒れ、昌利の姿をしたなつきの手によって、保健室まで運ばれたのだった。


「……ん……? ここ……は?」

昌利は保健室のベッドで目を覚ました。

『……そうだ……教室で、みんなの前で……イッちゃったんだ、オレ。』

あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして、掛けられていた毛布で顔を隠す。

「お、目が覚めたんだ?」

男の声にハッとして顔を上げると、昌利の顔をしたなつきが見下ろしていた。

「どうしたんだ? 急に倒れたりして。みんな心配してたぞ。」

なつきが優しく昌利の長い髪を撫でる。

「きさ…ま…………あなたねぇ!!」

昌利は頭に血が上り、なつきの手を払いのけ、半身に起き上がるとその胸倉をつかんだ。

そのくせ、女言葉を選んで使ってしまう自分が情けない。

そんな昌利を見透かしたのか、なつきはニヤリと笑い、ゆっくりと昌利の手を振りほどく。

「そうそう。わかってるじゃないか。なつきさん。段々と板に付いてきたねぇ。」

なつきは再び昌利の真っ直ぐで綺麗な髪を優しく撫で始め、優しい声で耳元に囁いた。

「どう? オレからのプレゼントは? 気持ち良かっただろ?」

「ふざけないで! 私はあなたのおもちゃじゃないんだから!!」

……あんな、みんなの前でバイブのスイッチ入れやがって!

昌利はなつきを突き放す。

「おおっ、怖っ。

なんだ、気に入ってもらえなかったんだ? 残念だなぁ。」

さも残念そうにポーズを取るなつき。が、見ての通り、ポーズだけだ。

「でもさ、倒れたなつきさんをここまで運んで来るの、結構大変だったんだぜ?

いくらオレが男だからって言ったってさ。

なつきさん、意外に重いんだもん。」

そんな風になつきが男を振りかざすことが、昌利には耐えられなかった。

言い返そうと口を開くが、何を言っても無駄なような気がして、言葉が出て来ない。

「だから、お礼のひとつでもしてもらいたいよな~。

知ってる? この時間、保険医の先生、居ないんだぜ。」

え? それって……まさか……

「お? 感がいいねぇ。ほらこれ。しゃぶってよ。」

昌利の返事も待たずに、なつきは大きく起立している男根をズボンからぺろりと出した。

「縄で縛られてるなつきさん抱き上げてたら、もうこんなになっちゃって、収まらねーんだ。これがまた。」

昌利は、久し振りに見る自分の男根から目を離すことが出来なかった。

見下ろすことはあってもそれ以外の角度からは見たことが無い。

他人の目として初めて見るかって自分の物だったそれは、意外にも大きく目に映った。

「こ、これを?」

「元々自分のモンだろ? きたねーとか、言い出さねーよな。」

「い、嫌よ! 何でそんなことしなきゃいけないのよ!」

「え~? 随分と恩知らずな女だな~。だからクラスの連中から嫌われるんだぜ。」

……嫌われてたのはてめーだろ!!

「しょーがねーなぁ。じゃ、ここでフェラしてくれたら、その縄、といてやるよ。それならどうよ?

なんなら、またバイブのスイッチ入れてやってもいいんだぜ?」

「ほ、ホントに縄をほどいてくれるの?」

「ああ、オレは嘘なんか吐かねーって。」

どうだか怪しいものだ。しかしまたバイブに動かれてはたまった物ではない。

「や、約束よ。」

昌利はなつきの男根に手を添える。

自分が自慰行為の時に何度も握っていた懐かしい感触が蘇る。

硬くて……太い。

「ねぇ……、手だけじゃ、ダメ?」

さすがに元自分の物だけあって、手でしごく分には簡単に出来そうなのだが、口でくわえるとなると話は別だ。

くわえようとして、口を近づけてみるものの、どうも拒否感が先に立ってしまう。

「無理矢理して欲しいのか?」

なつきが冷たく拒絶する。

昌利は腹を決めた。

息を止め、口を大きく開き、なつきの男根をくわえ込む。

「おっ。」

なつきが短く声を上げた。

亀頭の分だけ口に含むと、先端が舌に触れた。

つるつるしている。

男の身体の時には、身体が硬くて自分の男根をくわえるなど、絶対に出来なかった。

しかし今、他人の身体で、いとも簡単に出来ている。

何とも奇妙な気分だ。

『フェラチオって、こんな感じなんだ。』

昌利は亀頭をくわえたまま、ちろちろと舐めてみた。

なつきの身体がそれに反応して、ぴくぴくと動く。

不思議な事に、一度くわえてしまうと肝が座るせいか、嫌悪感が無くなり、昌利は男根を深々と飲み込んでいた。

何度と無く観ているAVビデオを思い出し、その男根が気持ちいいように、唾液を塗りたくり、時には横から舐め上げ、時にはカリを甘噛みし、思い付くままに攻めたてる。

「すげぇ……すげぇ気持ちイイよ、なつき。」

昌利は邪魔になるその長い髪を耳の上に乗せるようにかき上げる。

まるで女性がする仕草のように。

男根を飲み込むストロークに合わせ、手を動かす。

昌利の口からこぼれた唾液が、その手を濡らす。

「おおっ、それイイ。さすが淫乱ななつきだけのことはあるぜぇ。

もうオレのチンポの虜なんじゃねーの? もしかして、惚れちゃった?

ま、安心しな。嫌われ者のなつきちゃんの事は、男のオレが、これからちゃーんと守ってあげるからよぉ。」

相変わらずこれ見よがしに男を振りかざすなつきに、思わず男根から口を離し、文句を言う昌利。

「ふざけないでよ! 誰があんたなんかに!」

「でも、やっぱりくわえちゃうんだろ? オチンチン大好きだから。

やだなぁ、そんな言い訳しちゃってぇ。

なつきちゃん。そーゆーのを<ツンデレ>って言うんでちゅよ~。」

誰がツンデレだ!

心でそうツッコむものの、なつきの催促で再び男根をくわえると、いつのまにか昌利の股間は愛液で溢れ返っていた。

なんで……こんなに……

「だめだ! もうガマンできねー!」

なつきが不意に昌利の頭をつかみ、昌利の口の中の男根をグラインドさせるように、激しく腰を振り始めた。

「うぐっ……ググ……ウゴっ……」

息の出来ない昌利はむせ返るが、許してはもらえない。

昌利はその可愛い口を、まさしく強姦されていた。

男が女に強姦されるという屈辱を感じながらも、昌利の股間は熱くなって止まらない。

昌利は知らぬ間に自分のクリトリスをいじりだしていた。

「うぉ……イク!!」

そう叫んだなつきの男根から、勢い良く、精液が飛び出す。

男根で口を塞がれた昌利は、その精液の全てを、飲み干すしか無かった。

自らの股間をいじって導いた、軽い絶頂と共に。


scene.4--------------


なつきは結局、荒縄の拘束を解いてはくれなかった。

「自分で勝手にほどいていいよ~。バイブもあげるね。

あ、バイブは元々なつきさんのモンだっけ~。」

と、あざ笑いながら、早々に保健室を出て行ってしまったのだ。

複雑に縛り上げられた荒縄のほどき方も解らず、切断出来る程の道具も持ち合わせていなかった昌利は、学園内でほどく事をあきらめざるを得ず、バイブも抜けないまま、放課後まで、授業の全てをそのままで受けることとなった。


放課後、帰り支度をしていると、気分が憂鬱になった。

なつきの指示により、昌利はこれからなつきとして、なつきの家に帰らなければならないのだ。

なつきの家族の人間とは、どうやって接すればいいのだろうか?

考えただけで逃げ出したくなる。

そんな時、<なつき>と同じクラスの薫が声を掛けて来た。

大野薫。

高原昌利の……オレの親友である。

<薫>という女みたいな名前ではあるが、れっきとした男だ。

だが、当然彼の目の前の女性が実は昌利であることなど、今の薫には知る由も無い。

「秋月さん、今日、具合悪かったみたいだけど、大丈夫?」

大野薫はイイ奴だ。

クラスでも敬遠されがちななつきにも、普通に声を掛けることが出来る。

以前聞いた話だと、薫自身もイジメられた経験があるから、イジメられる側の気持ちがとてもよくわかるのだという。

線の細い、手折れそうな美少年風容姿とは裏腹に、芯の強い優しさを持ち合わせている薫。

その柔らかな物腰に誤解されがちだが、こういう奴こそが本当に強いヤツだと昌利は思う。

「ありがとう。大野くん。優しいのね。」

昌利はなつきの姿になって、初めて他人に優しく微笑み返した。

普通に接してくれる薫の好意が、涙が出る程嬉しかった。

「そ、そんな……」

照れる薫が何とも可愛い。

「あ、あのね。秋月さん、いつもそんな風に笑ってた方が、いいと思うよ。

その方が、とっても素敵だと思うな。ホントだよ。」

本当にイイ奴だな。コイツ。

他人の事を自分の事のように心配をしてくれる。

コイツと親友になって、ホントに良かった。

昌利は心の底からそう思った。

しかし、

『今のオレは、お前にとって<秋月なつき>でしかないんだよな……』

そう思うと寂しくなる。

いや。

もし、もしも、昌利に戻れなくても、なつきのままだったとしても、こいつとは友達でいたい。

! そうだ。

だったらなつきとして、また友達になればいいだけの話じゃないか!!

そしたら、そしたら……

昌利の心に一筋の光が射した気がした。

「あ、大野くん……、もし、良かったら……」

……一緒に帰らない?

そう言おうとしたとき、

「あ、昌利~! 待ってよ、一緒に帰ろうよ~!!

秋月さん、それじゃ、また明日ね。」

と、昌利の姿を見付けて、走り去ってしまった。

そう、その昌利は本当の昌利では無いと、知る事も無く。

「あっ……」

呼び止めようと差し出した昌利の細い指先が宙に泳いだ。

なつきの姿を置き去りに、二人は楽しそうに話しながら帰って行く。

昌利は、その場に一人取り残されてしまった。

うつむいた昌利の姿を、昌利の姿をしたなつきが、一度だけ振り返り、見る。

その顔には、あの下卑た薄笑いが浮かんでいた。


To be continued.



【ナイショノカタチvol.1 後書き】


その昔に「TSF画像掲示板」というサイトがありまして。
以下略。


『ナイショノカタチ』vol.1は2006年10月28日に書いたものになります。
あまりにも昔な原稿で根本的には手を加えることも憚られるため、微修正程度で当時のままをアップします。


この作品は以前に書いた『ないしょなんだからっ!』の、パラレル的な作品になります。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20171067

(決めていませんが多分別の世界線だと。逆に同一の世界線として読んでも破綻のないように書いているつもりです)


当時「秋月なつきにキャライメージがピッタリ!!」と思ったイラストを見かけまして。

「こんなイメージで書きたい!」とは思ったものの、実はその絵は教室で遠隔バイブ?で調教されているイラストでして。

ハッピーエンドに突き進む明るいお話の『ないしょなんだからっ!』には、調教シーンがなど入り込む余地が無く、どうしよう? と考えていたら、こんなお話が新たなシリーズとして出来てしまいました。

パラレルな分、この二作は密接に絡み合っているので、併せてお読みいただくとまた違った楽しみ方が出来るかも知れません。


実はこの『ナイショノカタチ』、vol.2までしか書かれておらず、当時未完のままの作品でした。

なので、せっかくですからこの機会に合わせ10数年越しに完結させようと思っています。

完結はvol.5の予定で、現在vol.4まではほぼ書き上がっています。

とはいえ、vol.3を書き始めてから早くも1年以上過ぎているので、完結がいつになるかは未定です。

また、本来は表紙イラストと挿絵イラストを描き下ろして小説を再掲させることを目標にしてpixivでの活動を始めたのですが、私はイラストを描くのも遅筆なため、今回は小説を完結させることを目的にしました。

完結後に時間が取れれば、挿絵等、追加してアップできればと思っています。


こちらにキャラ設定画がありますので何かの参考になると幸いです。

https://www.pixiv.net/artworks/109405698



手元の小説原稿のテキストデータは紛失してしまったため、下記サイトからサルベージさせていただきました。ありがとうございます。


支援図書館 CACHE

(リンク切れのためURLは削除しました)


秀才女子と入れ替わったオレは縄で縛られていた!?『ナイショノカタチ』vol.1  ~もうひとつの『ないしょなんだからっ!』~ 秀才女子と入れ替わったオレは縄で縛られていた!?『ナイショノカタチ』vol.1  ~もうひとつの『ないしょなんだからっ!』~

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