この日、シオンは治療院にて処方された薬を受け取り、その帰りに王都の防具屋へと足を運んでいた。 王都は人の行き来が盛んだ。 そのため様々な物資が出入りを繰り返し、市場は活気がある。 シオンは以前拠点にしていた街にはない、珍しい商品や実用的な道具がないかを見て回っていた。 そして、少し古びた看板を掲げている店へと入る。 「あっ」 ほぼ同時に出てきた言葉だったが、込められた感情は真逆のものだった。 「お~、シオンさんじゃないですか」 そう言って軽く手を振る女性。 彼女はB級冒険者リッカだ。 黒のタンクトップに深緑色のジーンズというラフな格好をしていて、目を見張るような美人でもあった。 両サイドでまとめられた赤髪のおさげが揺れる。 以前王都へ移送される際に、護衛として同行してもらった過去があるのだが、その結果シオンは道中、散々性的な悪戯に晒され続けたのだ。 それ以来リッカに対して苦手意識があるのだが、相手はそう思っていないようで、シオンのことをどこか気に入っている節があるようだった。 今もシオンの肢体を眺めてはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。 淫魔を彷彿とさせる同性の粘着質な感情を瞳に浮かべながら、リッカは人の好さそうな笑みと共に歩み寄ってきた。 「リッカさん……お久しぶりです」 「護送の時以来ですね。治療は終わったんですか?」 「ええ、お陰様で、あとは投薬治療だけですね」 「ふんふん、今日は装備を買いに来たとかですかね」 「そうですね」 会話の最中にリッカはチラリとシオンの胸部に目を向ける。 こういう視線は本人には分かりやすいものだ。王都のような人が多い場所でシオン程の美人が歩いているならば仕方のないことではあるが…… しかし、その王都の人々のどの視線ともリッカの目は異なっていた。 まるで蛇が獲物を見つけたような……絡みついてくるような強い欲望の色。 じりじりとにじり寄ってくるリッカにシオンは思わず後退った。 「……なんでしょうか?」 「いや、なんでもありませんよ?」 リッカはクスクスと小さく笑みを零すと、シオンの胸部に手を伸ばした。 そして、その豊満な果実を下から揉み上げようと…… 「あまりからかわないでもらいたいですね」 シオンは手首を握るとそのまま手のひらを返す。 「わっ、と!?」 足払いを受け、リッカがバランスを崩した。 そうして女冒険者が地面に倒れ込みそうになったところを押さえ込む。 あまり舐めるな、とシオンは言っているのだ。 討伐を専門にしたS級ハンターと何でも屋のB級冒険者。 同じように比べることはできないが、明らかに二人の戦闘技術には隔絶した差があった。 そして、そこには以前の護送の時、無抵抗な自分を好き放題されたことへの意趣返しも込められている。 「いたたたた……わ、分かりました。分かりましたって……もう、つれないですねぇ」 リッカはおどけたように、降参の意を示す。 「はぁ、度がすぎればさすがに怒りますよ?」 「冗談なのに~」 そんな軽口を叩く二人だが、その瞳は互いを牽制していた。 まるで獣のように視線を交差させている。 「そういえばシオンさんって淫魔に調教されてたんですよね?」 「……なんですかいきなり」 「いや、情報屋に売れそうなネタだな~と思いまして」 懲りていないのかと、シオンは呆れたようにリッカに視線を送る。 「困りますよね?ちょっとだけ遊んでくれたらやめておきますけどどうですか?」 「お断りします。大体根拠が何もない情報じゃないですか」 毅然とした態度でそう言ったものの、シオンが王都に移送されてきたことの裏がとられれば信憑性は増してしまう。 実際治療院にも通院しているのだから、そう言われれば困るのはシオンの方だった。 「二束三文ですかね~、言ってもいいんですよね?」 シオンは大きくため息を吐いた。 普段から優しく穏やかな彼女がここまで礼を欠くほどの壁を作るのは珍しいことだった。 しかし、そこまで分かりやすく拒絶しているのに、リッカが諦める様子はない。 どうやらこのまま行かせたら本当に情報を広げることになるらしかった。 「……金品ならお支払いします」 「口止めってことですか?」 「ええ」 苦々しい表情で頷くシオンにリッカは満面の笑みを浮かべていた。 「そうですかそうですか!いやぁ、よかったよかった。実は金欠だったんですよ。でもそれならこっちはいくらで買い取ってくれるんですか?」 「?」 リッカが見せたのは記憶石。 希少な鉱石を加工して作られたもので、映像と音を記録するという機能を持っている。 そこでシオンが何かを察する。 「あ、気付きました?護送の時の映像が入ってます」 「なっ!?」 あんな痴態を映像に収めていたと言うのか。 シオンの明らかな動揺が面白かったようで、リッカは口元を歪めた。 「こんな貴重な物を売ればどうなるんでしょうねぇ?きっと裏社会の変態貴族あたりに高値で売れると思うんですよ。あ、オークションに出品するのもいいですね。となると……お金じゃ満足できませんかねぇ~?」 身体の秘密を暴かれただけでなく、物的証拠まで握られている。 そんなのもはや抵抗のしようがないではないか。 結局リッカの手のひらの上で踊らされていただけだったのだ。 「ひ、卑怯ですよ!」 顔をしかめ声を荒げたシオンにリッカは近付いた。 胸に手を伸ばしてくる……だが今度は抵抗することができない。 「ぁうっ!?」 身構えていても声を我慢できなかった。 肉の振動が一拍遅れてリッカの手のひらに伝わる。 持ち重りのする極上の重量感。 張りがあり、さらには大玉スイカのような一メートルを大きく超える爆乳サイズ。 しかも、軽く持ち上げられただけで、甘い吐息がこぼれてしまうほどの異常とも言える感度まで持ち合わせている。 やっぱり最高の玩具だ。確信と共にリッカは舌なめずりをした。 「きひひっ、淫魔の調教もですけど、”治療”の方もよっぽど凄かったみたいですね。これだけで喘ぐなんて」 「うっ……あぐっ、ぅぅっ……!」 震えるシオン。 身体は既に妖しく火照り、僅かではあるが小さな絶頂の予感を感じ取っていた。 その耳元でリッカは「じゃ、宿屋行きましょうか♥」と囁くのだった。