※本記事ではコミックス未収録分の内容にも触れています。コミックス派の方はネタバレ承知でお進み頂くか、最終巻発売後にお読みください。
コミックス最終5巻は2024年10月発売予定です。
※だいぶ長い記事です。
改めまして、『かさねと昴』が無事完結いたしました!
単話配信による月刊連載で1年半、コミックDAYSに移籍して隔週連載に切り替えて1年ちょっと。
紆余曲折ありましたがなんとか描き終えられてホッとしました…。
毎話のご感想、アプリのコメント欄、感想のお手紙などにとても支えられました。
最後まで読んで下さった方々、本当にありがとうございました!
本記事では
🔳今作を描こうと思ったきっかけと描きたかったもの
🔳ストーリー作りで試したかった事
🔳描き終えてみて感じたこと
などをまとめたいと思います。
キャラたちの設定よりはストーリーづくりなど制作過程の話がメインです。
本作は実は構想当初から”5~6巻くらいで完結する”のを目標としていました。
読んで下さっていた方で、終了が突然のように感じられた方もいらっしゃったかと思いますがそれは完全に私の構成力不足です…
34話のキャンギャル編を描き終えたあたりで
「えっ…あと10話くらいで終わらなきゃいけないの無理じゃね…!?」と気づきました。気づくのが遅すぎる…
こういうシーンも描きたいな!こういう描写も必要だな!と
足していったら話数もページ数もどんどん膨らみ…。
まだまだ描かなきゃいけないエピソードはたくさんあったけど
5巻で完結する約束でコミックDAYSに移籍させてもらったので
巻数を増やすことも出来ず、めちゃくちゃ焦りました。
『テレワァク与太話』の時はキャラも少なくて舞台設定が限定条件的だし、ストーリーの順序建てにそんなに悩まなかったんですが
自分はやはりエピソードをどんどん増やしたくなるタイプの作家なんだな…と反省しました。
連載漫画では自分なりにこんな感じ↓で1話1話のカテゴリ分けをしてるんですが
イチャ回…イチャイチャ・キュンがメインの回。パンチ強め
人生 …キャラが困難にぶつかったり人生の岐路に立ったりする。
パンチ中~強だったり重めだったり
閑話 …楽に読める日常回。大きい話の前後とか
わちゃわちゃ…サブキャラメインやみんなでワイワイする回
5巻ではキャンギャル後編以降、
バレンタインのイチャ回が終わったら最後までずーーっと人生回になってしまったので、コミックスで読んだとき重すぎちゃうかもなぁ…という心配があります。
本当はイチャ→閑話→人生→人生→わちゃなどの緩急をつけたいんですが
前述の己の計画性の無さのせいで極限まで削らざるをえなくなりました。
それでもこれだけは描かねば!というエピソードは収められたので個人的には充足感がありました。
この項目はちょっと前作『あせとせっけん』の話が多くなります。
『かさねと昴』を描くにあたって、女装男子やボーイッシュ趣味な
女の子は元々描きたい要素ではあったんですが、
大元の構想のきっかけは
『あせとせっけん』連載時に感じたもどかしさでした。
『かさねと昴』ではそのもどかしさが発生しないような構成にしたい、
そのためにはどうしたらいいか?が構想時の念頭にありました。
この”もどかしさ”とはどういったものかと言うと、
1カップルもののラブコメにすると、そのカップルの恋愛以外のことが描けない
というものです。
具体的に言うと、『あせとせっけん』で言えば主人公・名取さんが商品開発に邁進しまくる話や、サブキャラ(商品開発部・経理部)がメインで数話かかる話などが描けない状態です。
え?全然描けばよくない?と思われるかもしれません。
名取さんが一つのせっけんを作るために商品開発部の面々と切磋琢磨して各キャラの掘り下げもして…こう書くと楽しそうなんですが
もしこれを描いた場合、その話の間麻子さんがずーっと蚊帳の外になってしまうのが致命的でした。
1対1のカップル物のラブコメでヒロイン不在が長く続くなんて言語道断です!!!!
あせ連載時はなるべく麻子さんが名取さんの仕事に触れる機会を増やしてあげたいなと思ってギリギリまでそういうエピソードを入れましたが
もしそれ以上の商品開発話をやろうとしたとき、
いくら同じ会社と言えど名取さんが商品開発の現状をペラペラと
麻子さんに喋るのはおかしいし、いくら麻子さんが素晴らしい体臭を
持っていてリリアドロップのせっけんが好きだとしても
あくまで一般ユーザーに過ぎず、その道で真剣に仕事してる名取さんに
アドバイス出来ることはあまりない(麻子さんの言うことを採用しすぎると名取さんの格落ちにも繋がってしまう)ので
どうしても出来ませんでした。
『あせとせっけん』自体は楽しく描いていたのはもう、本当に間違いないのですが、
”においフェチ男子×汗っかき女子のちょいエロラブコメ”という明確なコンセプトは
わかりやすさと訴求力を持つ一方、描ける話の範囲を狭める状態にも
なっていました。
あと…これもキャラ構造的にしょうがないのですが、
名取さんが本当の弱音を吐くことが出来ないのが自分はつらくて、ずっと名取さんに申し訳ない気持ちがありました。
においフェチで変態で嗅覚が尋常じゃなくて、でも仕事デキのコミュ強で会社のエースで家族思いとかいうスーパー人間…
ギャグもエロもシリアスもいける、作者的にも大変ありがたい存在で
作品の柱でもある。
ゆえに絶対に折れてはいけない存在でした。
常に麻子さんを引っ張ってかっこよく支えてあげなきゃいけなかった。
それこそお母さんのことでつらい過去もあっただろう
麻子さんに対してモヤつくことも0ではなかった(実際ケンカしたし)
だけど、ギャグ以外では「弱音を吐いて泣くなんてあってはならない」キャラで…。
つらいことがあっても立ち止まらず進むことが魅力でもあるので
全然悪いことではないんですが、自分がそれを名取さんに課しすぎてたなぁと…
自分は思った以上に名取さんというキャラが好きだったんだなぁと思います。
恋愛マンガにおいて、元々すぐ泣くキャラだとかギャグ描写とかではない状態で男性キャラクターが
涙を流すシーンを描くのは本当に難しいです。
昴くんが「男が女々しく泣くなんて」と自己嫌悪するシーンは
本人からすればかっこ悪くてツラいシーンなんですが
前述の名取さんのこともあり、思いっきり泣いて欲しかった&一番見られたくない相手(かさね)に見られてくれ!!!と言う思いが強すぎてああなりました。
ごめんな昴くん……
…と、『あせとせっけん』を読まれてない方には
なんのこっちゃな話をつらつらしてしまって申し訳ないのですが
つまりは前作連載時に感じた
サブキャラのこともほんとはいっぱい描きたいな…
キャラを形作るものって恋愛だけじゃないよな…もっと友情や仕事で生まれるストーリーも描きたいな…
などの思いから、
「次に連載するときは恋愛だけじゃないエピソードがいっぱい描ける話を描こう!!」
と思ったのでした。
まだその時は女装をメインに据えようとまでは考えてませんでしたが
『かさねと昴』の構想の根っこはここにあります。
また、昴くんとかさねは恋人として今後も幸せに暮らしますが
作品としての二人のゴールを”結婚”にはしたくないなという気持ちがありました。
遠い未来に結婚はしてもいいけど、二人の関係性の終着点としては
お互いの好きなことや”らしさ”を理解し合えるパートナーになることだと
思っているので、もし本作が10巻くらい続く漫画だったとしても
二人の日常や仕事、女装の話がうんと描かれるだけで
5巻完結と着地点はそんなに変わらなかったろうと思います。
(変わるとすれば伴さんや丈兄ちゃんの登場タイミングがずれたりもっとやばいイケメン長男兄ちゃんが出たり)
試したかった事は大きく分けて2点です。
1つ目は、前述の描きたかったものと少し被る部分はありますが
主人公二人の恋愛模様を主軸にはするけど
昴くんとかさね、それぞれ個人の交遊関係(コミュニティ)をガッツリ描くこと
です。
昴くんなら女装仲間のマサムネさん、かさねならルームシェア仲間の煉ちゃんと撫子ちゃんのエピソードがそれにあたります。
友人キャラは普通のラブコメでも難なく描写できるものではありますが
恋愛に悩む主人公を応援する描写などがメインで
主人公の恋愛に関係ない、生活や仕事や趣味の悩みに比重を置くのは
なかなか難しく感じていました。
本作は1カップルものとしてスタートはしてるけど
どこまでだったらこういったエピソードを主軸からギリギリ離れすぎない範囲でやれるだろうか?というのを試したい気持ちがありました。
自分は実践してみないとなかなか身につかないタイプなので
連載で描いた体感から経験値を積むしかありませんでした…。
2つ目はX(旧Twitter)ですでにちょっと呟いたのですが
商業的に売れるための”最適化”をしないことです。
呟きの内容を要約すると、
”読者さんに好かれやすい要素を意識的に入れること=エンタメに最適化する”のを
本作では避けているという話です。
もし昴くんをもっとエンタメに最適化するなら
女性向けなら女装するのも慣れてて達観している高身長イケメン(美容男子)にしたり、男性向けなら女装した姿がもっと美少女か、女の子の頼みで仕方なく女装することになっちゃった的な「嫌だけど嬉しい要素」を込める、とか…
かさねの場合は
見た目はボーイッシュだけど中身は初心で恋愛下手な乙女とかの
ギャップ要素を足したり、外見は至って普通の社会人女子だけど
中身が特撮オタク(社会に擬態しててオタクを隠してる)とかになるのかなぁと思います。
こういう風にキャラ設定を最適化すると、好かれやすいだけでなく
どういう漫画かわかりやすくなるし、ストーリーもそれに沿って描けばいいので
かなり構成しやすくなります。
もちろんこれらのキャラ象にしてもそれはそれでまた新しいストーリーが生まれると思うのですが、本作では自分が描きたいキャラ象を優先した感じです。
うう…わかっています…最適化しないなんてのは本当はかなりの暴挙です。
それこそエロやイチャイチャ描写を求めて読んで下さる読者さんも多い中で
それすら抑えめにするのは本当に良くないのですが
今こういう模索をやっておかないと今後自分が何を描いたらいいか分からなくなりそうだったのでやりました。
それこそ新人のときから「20文字以内のキャッチコピーが付けられない漫画はクソ!!!」と叩き込まれて来たので(※あくまで昔の担当の個人的見解です)
そういうコピーが付けられない漫画にしてしまった…と最初は冷や汗タラタラだったのですが、描き進めたら昴くんもかさねもどんどん愛しくなって(自分の好きな要素だけで固めてるので当たり前)
売れ線じゃなくてもええ…わいが二人のこときっちり愛でたるからな…!!と
強固な気持ちで描き切れたのでよかったです。
改めて、題材もキャラ造形もニッチだった本作を読んで下さった皆々様本当にありがとうございました😢
結論から言うと
”友情や仕事を描きたいならやはりカップル物としてはスタートしないほうがいい”ということを学びました。
お仕事ものとかスポーツものとか「〇〇荘の人々」みたいな1つの場所に集う人々の群像劇とか…
そうしたほうが結局、「商品に嘘がなくなる」んですね。
『かさねと昴』に嘘はないのですが、この二人のイチャイチャだけを読みたい!!という方には読み味が薄い作りになっているので、
ラーメン屋入ったらラーメンはあるけどカレーとかチャーハンとか他のメニューに力入れちゃってる感じになってしまっていたと思います。
カレーやチャーハンもあっていいとは思うんですが、
イチャイチャものはちゃんと「イチャイチャです!」と分かるように、
お仕事ものは「お仕事です!」と分かるように最初のコンセプトの時点で
わかるように作り分けたほうが良いなと思いました。
こんな風に『かさねと昴』は構成について試行錯誤したり
恋愛に関係しない話でキャラを掘り下げられたりと
自分の中では実りのある作品になりました。
けれど削ってしまったエピソードや、冒頭で触れた
カテゴリ分けによる読み味を考えるとせめてもう1巻分くらいは描けるよう
自分が努力すべきだったなぁと思います。
今作で作品づくりにおいて自分が割り切れる部分も分かった気がするので
次回作では自分のリビドーをもう少し研磨して刺さりやすくしつつ
程よく最適化もしつつまた楽しいお話が描けるといいなと思います!
だいぶ長くなってしまってすいません…
今後の予定なのですが、とりあえず直近は8/18(日)開催のコミティア149にサークル参加いたします。
東6ホール ”そ”12a「東横大賞典」です。
性擬態幼馴染シリーズのエロ本を作っています。
商業作品に関する発行物はありません。
商業の次回作もいろいろ構想中ではありますが、
年内はとりあえず読切が発表出来たらいいな~という雰囲気です。
気長にお待ち頂ければ幸いです!
つなかん
2024-09-01 11:43:01 +0000 UTCマルコ味噌
2024-08-04 05:01:22 +0000 UTClead in pencil
2024-08-01 09:51:33 +0000 UTC