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こーじ
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それはまるで私の為の異世界①

紫乃 「うわぁあぁ……!!」  私は突如大きな声をあげ目を覚ました。 紫乃 「あ、あれ……?ここ、どこ……?」  どうやら私は広大な草原で寝ていたらしい。けど、ここがどこだかも分からなければ、何故こんな所で眠っていたのかも分からない。 紫乃 「あれ……?私、何してたんだっけ?」  私は自分の中にある記憶を思い起こす。私は青山 紫乃(あおやま しの)。それなりに偏差値の高い大学に通う2年生、20歳だ。そう、確か今日も講義を受けるために、通学している最中だった筈だ。じゃあ何でこんな所に……? 紫乃 「あっ……!」  思い出した。私、横断歩道を渡っている最中に信号無視をして突っ込んできた車に衝突……、した?しそうになった?……とにかく、その瞬間からの記憶がない。って事は……。 紫乃 「この草原、もしかして……、所謂“天国”ってやつ……?それとも、三途の川的な……?」  車に轢かれ生きていたとしても、目覚めるなら病院だろう。身体にケガや痛みもなく、こんな草原で眠っていたのだ。流石に死んでしまったのだと認めざるを得ない。  あぁ……、私、ホントに死んじゃったんだ……。まだ人生これからだし、ちょっとエッチで歪んだ自分の性癖をまだ楽しみきれてないのに……!  まあ私のエッチな性癖の話は置いといて、死後の世界ってこんなにもリアルで、物に触れる感覚や日差しの温もり、生きているのと変わらない感覚、意識があるものなの……?正直、死んだって気が全くしないんだけど……。  とりあえず、死んでしまったとしてもここでハッキリと意識があるならば、何かしてみよう。そう思い立った私は取り敢えず歩き出した。少し歩くと広大な草原の先に大きな建物が広がる街……?が遠くに見えた。色々知りたい事は山程ある訳で、人がいるならと思い私はそこを目指した。 ??? 「いらっしゃい。……あら?あなたのそれ、見慣れないデザインの服ね。」  大きな街に辿り着いた途端、門番のような女性に声を掛けられた。私は半袖のポロシャツにジーンズという至って普通の服装なのだが、門番の女性はそんな私の服を“見慣れないデザイン”と言った。  だけどその理由も何となく理解できた。門番の女性は、胸だけを覆うチューブトップのような鎧?に肩にも大きな金属の鎧を装着し、右手には槍、左手には大きな盾のような物まで持っており、とても私のカジュアルな服装とは程遠い姿だったからだ。下半身は私と同じようなジーンズを履いているものの、腰にも鎧を纏いっていて、如何にもファンタジー世界の騎士様みたいな格好だった。それにしても、死後の世界にいる人がこんな格好をする意味って何……?  っていうか、上半身エッチ過ぎるでしょ……!鎧を身に纏っている割に、お腹全体を大胆に露出してるっていうギャップがまた私の性癖を見事に突いている。こんな格好の人をリアルに見せられたら、妄想が止まりませんよ。 紫乃 「えっと……、すいません、ここ、どこですか……?」 門番 「ん……?もしかして記憶喪失?困ったわね……。」 紫乃 「いや、記憶はあるんですけど、どうやら私も死んじゃった?みたいで……。ここって、天国、とかですかね?」 門番 「え……?こ、ここはテイクルワールドだけど……?」  あ、今 頭のおかしい面倒くさい女だと思われたな……。でも、今の私の言葉に違和感を持ったって事は、ここにいる人達はこの場所を“死後の世界”とは認識していないって事だ。じゃあ、ホントにこの世界って何なの……?テイクルワールド……?何それ……? 紫乃 「あ、あぁ……!そ、そう!私 実はそこの草原で目が覚めたんですけど、何だか記憶が飛んじゃったみたいで……?」 門番 「あら、そうだったのね……!ここはテイクルワールドで最も大きな商業の街クルスよ。武器や防具は勿論、戦いに必要な道具なんかも手に入るし、魔力や職業の鑑定も出来るわ。だからそこで自分の適正職業を教えて貰えば、もしかしたら過去の自分の仕事とかわかるかも知れないし、それこそ同じ職業だったら何か失った記憶を思い出すヒントになるかも知れないわよ!」 紫乃 「職業……?私まだ学生……なんだと思うんですけど……。」 門番 「ガクセイ……?っていうのはよくわからないけど、もしかして、職業の事も思い出せないのかしら?」  こっちは門番の人が学生という言葉を知らない事に驚きだ。学校とか知らないって事?とにかく、記憶喪失というテイで情報を集めないと。何か嘘ついて話すのは罪悪感が凄いんだけど、仕方ないよね……。 紫乃 「あっ、はい。全然記憶がなくて……。あの、職業って、何の仕事してるか、って事ですよね?お姉さんの職業は……、門番、ですか?」 門番 「確かに私は門番だけど、それはあくまで仕事。職業と仕事はちょっと別で、私の職業は重戦士と言って、戦士の中でも防御に優れたタイプなの。そしてそんな職業の私は、それにうってつけの門番という仕事をして生計を立てているのよ。」  戦士……。本当にファンタジーやゲームの世界みたいだ。……もしかしてこれって、今アニメや漫画で流行ってる、異世界転生とかってやつ……?私、車に跳ねられて死んで、この世界に転生しちゃったって事!? 門番 「あと記憶を取り戻す方法があるとするなら、魔王が持ってるドリームオーブを手に入れる事かしら?まあ、魔王の討伐なんて簡単に出来る事じゃないし、寧ろ無謀な挑戦なんだけどね。」 紫乃 「えっと、そのドリームオーブって何ですか?」 門番 「ドリームオーブっていうのは、別名“願いを叶える珠”言ってね。自分の魔力に見合った願いなら何でも叶う能力を得られる不思議な珠の事なの。これを手にした奴が今、魔王という職業を得て世界を征服してるって訳。」 紫乃 「魔王、ですか……。」  魔力とか、魔王とか、やっぱりここはファンタジーの世界なんだ。本当に私、異世界に転生しちゃったんだ……。  でも希望も見えてきた。魔力って、多分見えない力の源、みたいな事だよね?自分の中にあるその力が大きいほどそれに見合った願いを叶えられるのなら、もしかしたら元の世界に戻るって願いも叶えられるかも知れない……!  っていうか、魔王って職業なの……?じゃあ職業が魔王の人の仕事って、世界征服とか……?まあいいや、とにかく私もまずは仕事を見つけないと。 紫乃 「よしっ…!あ、色々とありがとうございました!早速 職業鑑定?ってのしてもらって、魔王の所に行ってみようと思います!」 門番 「えぇっ!?あっ、ちょっと……!」  結局この世界の事はよく分からないままだけど、少なくとも私は異世界転生みたいな事をして、ちゃんとこの世界で生きてる。一度死を経験しちゃったからなのか、ここがあまりにも非現実的な世界で夢を見てる気分になってるからか……、とにかく何でもやれそうな気がしてる。というか、私からすればこれは願ってもないチャンスだ。私は元の世界に戻って、自分のエッチな性癖を満喫するという願望を叶えないといけないのだ!  あ、いや、そうだね……。普通に仕事して、結婚して……っていう普通の人生も送らないといけないし……!  やる気に満ち溢れていた私は、一目散に職業鑑定をしてくれる施設へと向かうのだった。 紫乃 「あの〜、すみません。」 鑑定師 「いらっしゃいませ〜。どうしましたか〜?」  街の人に聞きながらようやく訪れた建物。ここが職業鑑定をしてくれるお店である。早速私はそこで職業鑑定をお願いしに来たのだが……。 紫乃 「えっと、職業の鑑定をして貰いたいんですけど……。」  この人、いらっしゃいませって言ったよね?商売で職業鑑定してるって事?いや、まあ普通そうか……。でも、困ったな……。私、お金無い……。  お金が無いって言うのは、貧乏学生という意味ではなく、(いや、確かにお金はあんまり無かったけど……。)ここに転生した時には私は財布を所持していなかった。この服は私が事故に遭う時に着ていた物だけど、身につけていた鞄がない。だからそこに入れていたスマホや財布なんかも所持していないのだ。  ちなみに、この鑑定師のお姉さんも随分エッチな格好をしている。ノースリーブのチャイナドレスのようなデザインの服だが、上下が分かれているタイプで、上の服は丈が短くお腹を大胆に露出してるし、下もスリットがざっくりと深めに入ったデザインで太ももが露わになっている。  鑑定師のお姉さんに限らず、この街を歩いていた戦士みたいな人とか魔法使いみたいな人達も、全員が肌の露出を多めにしている人ばかりだった。そのせいでさっきから私は興奮が冷めず、正直ムラムラしっぱなしである。もしかして、門番の人が私の服を珍しいって言ったのは、肌の露出が少ないから……?逆に言えば、この世界では肌の露出が常識って事……?あ〜、やばい……。また妄想が膨らんで興奮してきた……!  っと……、そんな事より適正職業ってのを鑑定して貰わないといけないんだった。でもお金なんて何にも無いし、どうしたものか……。 紫乃 「もしかして、お金取ります、よね……?」 鑑定師 「それはそうなりますね〜?こっちも商売ですから〜。」 紫乃 「……ですよね。」  さっきまであんなに希望に満ちていたのに、一気に現実を思い知らされた感じだ。これじゃあこの世界でも何も出来ず死んでいく未来しか見えない……。 紫乃 「はぁ……、ありがとうございました、失礼します……。」 鑑定師 「ん〜……?ま、待って〜!」  店を出ようとした所で、私は鑑定師のお姉さんに腕を掴まれ引き止められた。まさか一度入ったら強引に鑑定させられて、払えない人間はここで強制労働させられたりとか……!? 紫乃 「あの、えっと……、私お金持ってないので、……その、失礼しようかと……、思ったんですが……。」 鑑定師 「お嬢さんからすっごい強い魔力を感じるけど〜、今までどんな仕事していたの〜?」 紫乃 「えっ!?いや、その……、じ、実は……、記憶がなくて……?」  死んで転生したなんて言って通じる訳ないだろうし、安定の記憶喪失で誤魔化す事をお許し下さい。というより、本当に何かしらの理由をつけて無理矢理 鑑定しようとしてるんじゃ……? 鑑定師 「そうなんだ〜。……うん、いいよ〜。特別に鑑定してあげる〜。お嬢さん、すっごい魔力持ってるし、すぐに仕事も見つかるよ〜。だから〜、料金は後日お嬢さんが稼いだ時に請求させて貰うって事で〜。」 紫乃 「えぇっ!?良いんですか!?あ、ありがとうございます……!!」  少しでも悪人と疑ってしまった事をお許し下さい。寧ろめちゃくちゃ良い人で反省しかない……。  それにしても、私の魔力……?が本当に高いとは思わなかった。これってもしかして、異世界から転生した人はめちゃくちゃ強いみたいなパターン?転生して勇者になって、ホントに魔王を倒しちゃうみたいなパターンなのかな!?まあ私はこれでも容姿端麗、頭脳明晰、文武両道の誰が見ても完璧なレディだし、それがこの異世界で魔力として反映されちゃったのかな〜??いや〜、出来る女が滲みでちゃってるなぁ〜。 鑑定師 「それじゃあ早速〜。」  鑑定師の女性は両手を前にかざすと、何やら光るエネルギーみたいなものをその両手に集め光の球を作り出す。これが魔力、なのかな?その光を今度は私に向けてぱあっと拡散させると、私はその光に包まれた。 鑑定師 「おぉ〜!やっぱりお嬢さんの魔力は凄いね〜。職業は〜、その強い魔力を存分に活かせる“術士”が良さそうだね〜。」 紫乃 「術士……?何か凄そう……。」  術士って、魔法使いみたいな事なのかな?でも、私の適正が術士だとして、その術士になるにはどうしたらいいんだろう。私、魔力が強いらしいけど使い方なんて当然分からないし、魔法だってどうやって使うの?って感じなんだけど……。 紫乃 「あの、適正がその……術士?だとして、実際にはどうやってその術士になれるんですか?」 鑑定師 「私が認定すればもう立派な術士だよ〜。あとはそれに合わせた装備を整えればもうすぐにでも戦えるよ〜。」  戦えるって、急に言われても……。つまり、たった今、この瞬間から私は術士って事……?やってみれば魔法とか使えるのかな? 鑑定師 「装備品も私が手配しておくよ〜。お金が無いんじゃ買えないだろうしね〜。」 紫乃 「あ、ありがとうございます……!でも、何でそこまでしてくれるんですか?」  本当にこのお姉さんを悪人だと疑った私を殴ってやりたい……。 鑑定師 「お嬢さん程の魔力の持ち主なら魔王を倒せるかも知れないからね〜?まあ〜、魔王討伐が目的じゃないにしても〜、それだけの力があればこの世界にとって大きな影響を与えてくれるのは間違いないし〜。鑑定師をやってるからかな〜?これでも私は人を見る目はある方でね〜?少なくともお嬢さんからは〜、悪い心は感じないんだよね〜。」  私に人を見る目がなくてすみませんでした……。 ロゼ 「まあ、何かちょっと変な思考も持ってるみたいだけどね〜?」 紫乃 「えっ……!?へ、変な思考って……!?」 鑑定師 「まあ〜所謂、特殊なエロティシズムって言うのかな〜?」  バレてる……。この人、本当に人を見る目は確かなようだ。でも、見ただけでそこまで分かるって……、何か恥ずかしくなってきた……。もしかして、さっきから興奮し過ぎてたせいで顔がニヤけてたのかな……。 鑑定師 「まあとにかく〜、装備屋に行ったらこの紹介状を見せれば〜、色々とお世話してくれるから〜、あとは頑張ってね〜。」 紫乃 「ありがとうございました!!後で必ず代金はお支払いしますので!」  お金の稼ぎ方とかもさっぱり分からないけど、とにかくまずは術士として力を使えるようにならなきゃ。ここから装備屋までの地図まで添えられた紹介状を手に、私は装備屋へと向かった。  装備屋へ向かう道中も様々な格好の人を見かけたが、全員が露出度の高い服を着ている。特に上半身の露出度は高く、全員がノースリーブにへそ出しという私好みの格好だった。しかも不思議な事に、この街に来てから、というか、この世界に来てから女性としかすれ違わない。ここには男性はいないのだろうか……?まあ、性癖が拗れすぎてイケメンより美女の方が目の保養になるから寧ろありがたいんだけど。 装備屋 「いらっしゃーい!!おぉっ!?そんな服着てるなんて珍しいねぇ!!」  装備屋に着き入店するや否や、そこの店員さんにハイテンションで声をかけられた。さっきのおっとりとした鑑定師さんとは違い、随分活気のある女性だ。それから、勿論この女性も肌の露出が凄すぎる。胸だけを隠す黒いチューブトップにショートパンツ、手袋のような物とブーツを穿いている以外 全てが地肌という、失礼だが露出狂みたいな格好をしている。でもそんな姿は私にとっては本当に目の保養でしかない。こんな姿の女性を見せられたら、ホントに興奮が抑えられないんだけど?  そんな興奮状態の心を表に出さないように私は鑑定師さんからの紹介状を渡しつつ、記憶がないという設定で何も分からない事を説明した。 装備屋 「それは大変だったね……!それじゃあ装備の事、色々説明してあげるよ!」  どうやらこの世界で着用する衣服は、基本的に戦闘の際に使用する魔力を抑制してしまうらしい。そのため、衣服や鎧などの装備品には特殊な加工を施し魔力の抑制効果を無力化させるそうだ。だがその加工を衣服や装備に施すには貴重なアイテムが必要で、衣服や鎧全体に施す訳にはいかない。だからその面積を極力減らす事で、服全体にその効果を付与させられるように工夫したのだ。  魔力というのは、戦う人のバトルスタイルにもよるが基本的には上半身から魔力を放出させて、それを技や魔法に変えるのだとか。だから上半身の肌の露出を前提としているのだと言う。実際、下半身から魔力を発生させる人は、瞬発力やスピードを生かして戦う人達で、そう言った人達だけは下半身の衣服も面積を減らしつつ特殊な加工をするみたいだけど、あくまでそれは俊敏を活かすだけで、攻撃する為の魔力は結局のところ上半身から放出する魔力で行う。つまり、そうでない人は下半身の露出が控えめなだけで、上半身は全ての人間が露出しているという訳だ。  つまりこの世界は、私の性癖を満たしてくれる衣装を着た女性に溢れ常に興奮要素が詰まっている、という解釈にしておこう。あれ、これじゃあ興奮し過ぎて元の世界に帰るって目的が薄れちゃう気が……。 装備屋 「それじゃあ早速お嬢さんの装備だね!」  そう、これも実は興奮要素の1つである。こんなフェチい衣装を私も着る事になるのだと考えると、恥ずかしさもあるがそれ以上に興奮の方が強い。 紫乃 「術士って、どんな戦い方をする職業なんですか?」 装備屋 「基本的な武器は短剣!超近接型だね!」 紫乃 「あ、そうなんですか!?術って言ってたからてっきり魔法使いみたいなのを想像してました。」 装備屋 「魔法と術は似てるけど別のカテゴリーだね!魔法は簡単で短いものから複雑で長いものまで、とにかく何かしらの詠唱が必要な代わりに、威力が高く遠距離から攻撃ができるのが強み!一方、術は威力こそ魔法には劣るけど、瞬時に発動できて素早い攻撃が出来るのが特徴なんだ!」 紫乃 「へぇ〜!私、鑑定師さんに強い魔力って言われて、その魔力を活かせるのが術士って聞いたんですけど、それってどういう意味ですか?」 装備屋 「近接型の職業の中でも、剣士とか格闘家に分類される人達は、武器や自分の腕っぷしで戦って、たまに魔力を使って武器や肉体を強化したり、武器からエネルギー弾を飛ばして戦うのが一般的だから、魔力があまり高くない人でも戦えるんだけど、術士の場合は使う武器が短剣だからあまり威力は出ないんだよ!だから魔力を肉体強化に使っても効果が薄いんだ!でもその代わり、どんどん魔力を使って術をとにかく発動して戦うの!」 紫乃 「なるほど、だから魔力が多い人向けの職業なんですね。」 装備屋 「そういう事!それじゃあ、そろそろ装備を決めようか!お嬢さんにピッタリなのがあるんだよ!」  そう言うと装備屋さんは奥の倉庫を開け中を物色する。何だか凄いハイテンションだけど、私は一体どんなエッチな……、いや、どんなフェチい……、じゃなかった。どんな恥ずかしい装備を着せられるのだろうか。……エッチな服を着せられる、っていう響きも中々に興奮するなぁ。 装備屋 「ほらあった!これこれ!!」 紫乃 「こ、これは……!!」  装備屋さんが出してくれた服は、所謂 “くノ一”の衣装だった。袖の無い、浴衣みたいなデザインで下半身まで覆うのが一般的にくノ一を連想する衣装だが、(そもそもくノ一の衣装なんて一般的じゃないけど……。)この世界では当然肌の露出が求められており、その服は胸の少し下までを隠す程度しか丈が無く、明らかにお腹を露出する物だと見て取れる。そして下半身はミニスカートのようなデザインとなっており、太ももから脚全体も晒す服装である。  そんな、肌を大胆に露出するくノ一衣装は、全体の布地が紫色で襟や帯が黒に統一されたデザインとなっている。  うん、すっごいエッチじゃん。 装備屋 「早速 着てみてよ!」 紫乃 「は、はぁ……。」  装備屋さんに腕を引っ張られ、私は試着室へと強引に押し込まれるように入っていった。勿論この服装は私のフェチに合ったエッチな衣装だが、まだ自分がそんなエッチな服を着用する事には抵抗がある。そういうお楽しみをするのは、少し遠い未来、もっと大人になってから……、と考えていたから、今日突然そんな事になると、心の準備をする時間を求めてしまう。  だけどこれは、そういうフェチい事に対して実際に挑戦するのに消極的だった私にとっては、大きなチャンスなのかも知れない。もう私はそういう風俗にだって行ける年齢だし、そういう場でなくても、SNSで知り合った人とそういうフェチプレイを楽しむ事だって出来た筈だ。だが、そういう事をするのにどこか不安や恐怖があって一歩踏み出せなかったのだ。だからこそ、合法的に出来るこの世界でなら不安なんて感じる必要もない。それに、こういう露出度の高い服を着る事そのものが私のフェチではないし、これはあくまでその私のフェチに繋がる始まりの一歩に過ぎないのだ。もっと気楽に楽しんで一人興奮すれば良いのだ。  そうやって自分を鼓舞し、私はその衣装を着用した。 紫乃 「……ど、どうですかね?」  私は意を決し、試着室のカーテンを開け装備屋さんにそのエロい姿をお披露目した。首元は長い布を巻きそれを首の後ろで結んで忍者っぽさを演出した、コスプレ的な感じもあり気に入ってはいるが、私の豊満な胸も谷間をガッツリ見せるノースリーブの和服風衣装はやはり恥ずかしい。服がはだけないように胸の下で帯を巻いているが、服の裾は短くお腹周りは全く隠せていない、見事なまでのへそ出し服である。  そして帯と同じデザインのベルトと一体化しているミニスカート。布地を正面でクロスするように重ねられたスカートは、はだけない様にはなっているが動く度にスカートの布がひらりと揺れれば、ただでさえ大胆に見えてる太ももの更に際どい部分まで見えそうだ。下半身はそのエチエチスカートと短めの黒いブーツ以外は生脚を晒しており、これもまた非常に恥ずかしい。 装備屋 「おぉ〜!!サイズもピッタリだし、すっごく似合ってるよ!!お嬢さんも自分でそう思うでしょ?」  これ、胸を隠せる程 ゆとり無いし、そもそも布の量足りないし、スカート短すぎるけどピッタリサイズなんだ。流石は露出を目的としてるエロ世界だ。 紫乃 「はい、すっごいエッ──」 装備屋 「え?」  おっと……、危うく本音が漏れるところだった。でも仕方なくない?こんな服、特殊性癖を持ってる私ですらエロいって思うんだから、エッチと言わずに何て言えばいいのさ。 紫乃 「う、動きやすくて良いですね……!」 装備屋 「でしょ?それじゃあ後は、術技の教本をあげるから、これで鍛錬すると良いよ!」 紫乃 「ありがとうございます!あの、魔王ってどこにいるんですか?」 装備屋 「おっ!魔王討伐を目指すんだね!魔王の城はこの先の草原を越えた山の更に向こうだよ!その道中には魔王の手下や配下の魔物がいるから気を付けてね!でもお嬢さん程の魔力の持ち主ならきっと戦える!頑張って!」 紫乃 「ありがとうございます!!」  術技の教本とは、文字通り技や術の教科書であり、戦いの為のマニュアル本だ。私は転生後 最初に目を覚ました草原に戻り、術士に必要な術を習得しつつ、魔王のいる城を目指す事にした。  やっぱり異世界転生した人間には特別な力が宿るのか、はたまた何をやっても優秀な私の才能が溢れ出てしまっているのか、本を読んで何となく力を込めて術の名称を唱えたら本当に術が発動するし、ここに記されている大抵の術は使えるようになってしまった。  いや〜、自分の溢れ出る才能に驚きを隠せないなぁ。 紫乃 「さて、術はもう覚えたし、まずは街に戻って仕事しないと。」  魔王討伐を目標にしたものの、ここから魔王のいる城まではかなりの距離があるらしい。その道中、食事とかも当然必要だし、こういう世界ではきっと回復薬?みたいな物もいるだろう。そういった旅の必需品も何も無いから、まずは仕事してお金を稼がないと。そう思い街へ戻ろうとした時の事だった。 紫乃 「ん……?何だろ?」  何やら少し離れた所に、宙に浮いた2つの何かを発見した。私の小さな顔よりも小さな何か、よく見るとそれらは少しずつこちらに迫るようにゆっくりと向かって来ていた。そして徐々に近づく事で浮遊する物体の正体を認識できるまでの距離感になり、その実体を見た事で私は思わず胸を高鳴らせ興奮してしまった。 紫乃 「えっ……?そ、それって……、まさか……?」  ドクン、ドクン……と、心臓が大きく鼓動するのが自分でもよく分かる。浮遊する物体の姿は、私のフェチをそのまんま体現しているかのようで、それを目の当たりにしてしまうとどうしても興奮せずにはいられなかった。  その物体の正体は、“手”である。手首も無い、指先から手のひら、手の甲といった手全体までしかない浮遊する手だ。それは私のとある性癖においてはとても興奮してしまう物で、その界隈ではよく“マジックハンド”なんて呼ばれている。 紫乃 「う、うわぁっ……!」  そんなマジックハンド(仮)は、私を見つけるや否や移動スピードを一気に加速させ襲い掛かってきたのだ。マジックハンド(仮)を認識した瞬間から、私の性癖である“とある事”をされるのではと妄想していたが、いざ急に襲い掛かるマジックハンド(仮)に驚いてしまい、思わず覚えたての術で応戦した。 紫乃 「すっ……、スラスト……!」  目の前に風の刃を発生させる術を発動し、迫りくるマジックハンド(仮)を迎撃する事に成功した。私の術を受けたマジックハンド(仮)は私の攻撃を受けてあっさりと消滅してしまったのだ。  私が強すぎたのかな?正直、戦いとしても物足りなさが残るし、敵がこんなビジュアルをしてたから、ピンチからの性癖どストライクえちえち攻撃を期待してしまっただけに、悔いの残る戦いとなってしまった。  でも、あのマジックハンド(仮)が、私の性癖であるエロ攻撃をする保証はないし、シンプルに殴ったりする攻撃だったら嫌だもん。あぁ……、でも……、やっぱりえちえち攻撃をしてくれるんじゃないかと想像しちゃうなぁ……。やっぱり倒さなきゃ良かった。  などと倒した事を後悔していたが、そんな私の願いを叶えるかのように、またしても目の前にマジックハンド(仮)が現れた。しかも今度は4体だ。いや、右手と左手がセットで1体と考えるべきか?とにかく、左右セットのマジックハンド(仮)2セットが再び私に勢いよく迫ってきた。 紫乃 「はあぁっ……!」  でもやっぱり、自ら攻撃を受け入れる姿勢はとれず、私は腰に刺した短剣をマジックハンド(仮)の1セットに向けて一振りする。 紫乃 「スラッシュ!」  私の術の発動に合わせ、短剣が風の刃を纏いマジックハンド(仮)を消滅させる。そしてすぐさま迫りくる次のマジックハンド(仮)に対しても術で素早く応戦する。 紫乃 「ブレイズ!」  今度は炎が短剣に宿り、それを一振りする事で火の斬撃のようなものが放たれ、もう1セットのマジックハンド(仮)も消滅させる。 紫乃 「ふぅ……。」  いざマジックハンド(仮)を全部倒してしまうと、またしても勿体無い気がしてしまい少し後悔する。でも、こういうのはヒロピン要素も大事だったりするし、本気で戦ったり、余裕を見せて不意を突かれた結果 ピンチに陥る方が醍醐味というものだろう。 紫乃 「うわっ……!?」  なんて事を思っていたら本当に不意を突かれてしまい、私は背後から迫りくるマジックハンド(仮)に両足首を掴まれてしまった。  しかもその、掴むって攻撃……、また私を興奮させてくるじゃん。もしかしてって……、期待しちゃうじゃん……!! 紫乃 「きゃぁっ……!」  などとまた妄想していたら、次のマジックハンド(仮)により今度は両手首を掴まれてしまったのだ。いやいや……、どこまで私を興奮させれば気が済むの……?ホントに期待しちゃうんだけど……。  とは言え、こんな状況じゃ攻撃され放題だし、何をされるか分からない。手足を掴まれただけでも私からすれば妄想が捗る大興奮を味わえた訳だし、そろそろマジックハンド(仮)連中を倒しますか。 紫乃 「……ん?あれっ……!?」  術が発動しないんだけど……。何で……?魔力の出し方とか、術の発動なんてまだ感覚でやってるだけだけど、少なくとも同じように発動しようとしても出来ないのは確かだ。  あれ……?これってもしかして、本当のヒロピンってやつ……? 紫乃 「ふえっ……!?ちょっ……!」  まず私の両手首を掴んでいるマジックハンド(仮)が、私の両腕を持ち上げるように上へと移動する。 紫乃 「いやいやいや!それは流石にマズいって!!」  そんな事されたらまた私は興奮しちゃうって!ってか、この行動こそが今までで一番妄想が捗っちゃうから……!!  いや、興奮している場合じゃなかった!私の両腕が持ち上げられると、今度は足首を掴んでいたマジックハンド(仮)も、私の足を掴んだまま上へと移動する。それにより、私はX字のように手足を伸ばした状態で空中に浮かされる状態となってしまった。私好みの言い方で言い直すなら、空中で“拘束”されてしまったという訳だ。くっ……、これはエロくて堪らない……!  そんな興奮冷めやらぬ大ピンチの状況で、正面から新たに1セットのマジックハンド(仮)が私の方へとやってきた。仲間に私の身動きを封じさせて攻撃をしてこようと企んでいるのだろうか。ついつい、私の性癖である“あんな事”をされたら……、なんて思いつつ、一体何をする気なのだろうと不安な感情も抱いていた。  だが、期待と不安が入り混じる複雑な感情の中、私に迫るマジックハンド(仮)の様子を伺っていると、まさかの期待の方を高める行動を始めたのだ。 紫乃 「うひっ……!えっ、ちょちょちょ……、ま、待って……!?」  私に迫るマジックハンド(仮)はなんと、その指の関節だけをワキワキ怪しげに動かして見せたのだ。“手”がそんな動きを見せ指をワキワキわしゃわしゃと動かすその仕草こそ、私が思わず求めてしまうエロシチュエーションなのである。だからこそ、もう期待せずにはいられない。  こんなお腹を露出した服装で、しかもノースリーブのデザインの服を着ているのに両腕を上に伸ばすという、こんな体勢のまま拘束されたらどうしたって意識し興奮してしまう。  このまま……、あの指によって私のこの無防備な身体を……、“くすぐってくる”かもしれない……、と。

それはまるで私の為の異世界①

Comments

ありがとうございますm(_ _)m 基本的に僕の作品は敵によって初めてくすぐりという仕置きや拷問を受け屈服するキャラが多いですからね。今回は自らくすぐられに行ったり、それでもいざくすぐられたら辛くて堪らなくなって、そんなコメディ要素多めの冒険物となっております。

こーじ

こーじさんの作品で性癖を満たすことを目的にしている主人公は珍しく感じました。 自ら積極的に妄想し興奮するタイプというのも新鮮でいいですね。 マジックハンドくすぐりすき(語彙力) 続きを期待してます。 またこーじさんに懸念がなければ、Xに投稿されていたこの作品のイラストをpixivFANBOXへも投稿していただきたいです、よろしくお願いいたします。

炙り蜻蛉


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