ティックリー・アドベンチャー 5-2
Added 2023-01-17 11:28:55 +0000 UTCアイナ「回復薬に調合用の薬草、聖水。後は非常食に…え~っと、何持ってけば良いのぉ~!?」 旅立ち前の夜、アイナは荷造りに悩んでいた。しかし、能力者として戦う事は勿論、旅に出る事など初めてのアイナには当然その答えなど解らなかった。 ミツキ「非常食は本当に最小限、もしくは無くても良い。」 アイナ「えぇ!?それじゃあご飯はどうするの…?」 ミツキ「私達はいつも旅先で調達している。」 アイナ「調達って?」 ライカ「主に魔物や小動物を狩ります。」 アイナ「ライカさん爆弾発言!!怖いよっ!魔物を狩って食べるの!?」 小動物を狩る習慣は、能力者でなくてもあるが、魔物という得体の知れない存在を食べる事には全く習慣が無い為、アイナは心底驚いていた。だが実際、遠征する能力者達は魔物を狩る習慣がある。魔物とは言わば“魔力を持った動物”であり、魔物の魔力を摂取する事で能力者の魔力を微量に回復させる事も出来るのだ。そして勿論その肉も通常の動物と同じように食べる事が出来る為、場合によっては魔物の方が回復にも使え優先される事もある。 ライカ「えっ!?私、爆弾ですか!?爆弾というなら私よりアカネ──」 アカネ「爆弾ってライカ、それ意味違うからね!?」 ミツキ(自分自身が爆弾だと言われた事は否定しないのか…!?) 「……アイナ、魔物と言っても魔力を持った動物だ。私達に限らず、旅に出る能力者には常識だ。それに、普通に世間一般で食べられている食材と一緒で、非常に美味な物も多いんだ。」 アカネ「確かに能力者じゃないと魔物を食べる習慣なんて無いよね。どっちかと言うと恐れられて手を付けられない存在だろうし…。」 ライカ「私…爆弾…?」 アイナ「まあ、皆がそう言うなら変な事じゃないんだよね…!ライカさんごめんね?」 ライカ「私、爆弾じゃありませんよね…?」 アイナ「うんっ!」 ライカ「…良かったです!」 ミツキ「…話を戻すぞ。アイナには薬に必要な調合素材、特にこの先では採れないものをメインに持っていて欲しい。重さも考慮して少な目で構わない。」 アカネ「重い物は私が!」 ライカ「傷の手当などの道具は私が。」 ミツキ「回復薬や聖水は私が持つ。勿論、各々最低限の回復薬も持っているが、私達は調合素材も基本は現地調達だった。薬草の類ならそこまで重くもならないし、あまり邪魔にもならないだろう?」 アイナ「やっぱりプロだねぇ!じゃあ薬草だと、この辺りが良いかな。あとこれも役に立つかも…!あっ、これはアカネさんに持って貰って、これはライカさんに使い方を教えとこっ!んで、これはミツキさんが持っててくれるし、じゃああれは私が持てる!あっ、でもあれはどうしても持っていきたいし、こっちはやっぱりアカネさんにお願いしよう!」 アカネ「お…、おぅ…?」 ライカ「すごいですね…。」 ミツキ「だが、荷物の事はもうアイナに任せて大丈夫そうだな。」 無事に荷造りが終わり、4人は明日に備えて眠りについた。しかし、これから命懸けの戦いに挑む不安と緊張で、アイナはなかなか寝付けずにいた。 アイナ(私…、皆の役に立てるのかな…?足引っ張る事になるだけなんじゃ…。やっぱり…、私みたいな戦いの経験どころか能力者として目覚めたばっかりのド素人が、レディナイツの皆の力になんて…、なれる訳…。) ミツキ「アイナ?眠れないのか…?」 アイナが緊張と不安で自信を無くしている所に、それに気が付いたミツキが心配をして声を掛けてきたのだ。 アイナ「ミツキさん…?い、いや、大丈夫だよ…!」 ミツキ「しかし…、アイナの魔力、かなり乱れているぞ…?とても落ち着いているとは思えない…。」 アイナが眠れない事に気が付いたのは、ミツキがアイナの魔力が大きく乱れ動揺している事を感じ取ったからであった。勿論レディナイツ程の実力か、あるいは魔力感知に特化した能力者でない限り、魔力でその者の精神状態まで分かる能力者はいない。流石に、自らの魔力が乱れている事に気付ける能力者は多いが、アイナはまだ能力者に目覚めたばかりで自分の魔力の状態にも気付けていなかった。 アイナ「そんな事も分かるんだね…。やっぱりミツキさんは私とは比べ物にならない程凄いや…。」 強者の力を知り、弱者と思っているアイナはより一層自信を無くしてしまった。それを感じ取ったミツキは「ふぅ…」と一息付き、ある決心をしてアイナに再び話しかける。 ミツキ「アイナ、隣の部屋に移って少し話そう。」 アイナ「え…?……う、うん…。」 このままではいけないとアイナ自身も思い、ミツキと隣の部屋へと移動した。 ミツキ「……この先の旅、一緒に行けるか?」 アイナ「…正直、今のままじゃ足手まとい…、だよね…。我儘なのは分かってるし、役に立てる自信は無いけど…、でも…!」 ミツキ「行きたい気持ちがあるなら全力でアイナを守るつもりだ。だが、私も守りきれる自信は正直無い…。つまり、万が一という事もある…。それでも、来るか?」 アイナ「……行きたい。能力者として…、強くなりたい。」 ミツキ「うん、なら一緒に行こう。」 アイナ「…でも、やっぱり足手まといになるんじゃないかって思うと、不安で…。」 ミツキ「確かに緊張する気持ちは分かる。それに、確かに魔力量や経験値を比べてしまったら、私とアイナの差は歴然だろう。」 アイナ「だよね…。」 ミツキ「あぁ、しかし──」 ミツキはアイナに語り掛けながら、自らの右手を高く上げると、左手の人差し指を使って、大きく露出する事となった右腋にちょんっちょんっと2回触れ「私の腋に触れろ」と恥ずかしながら無言でアピールする。 アイナ「…?……い、良いの…?」 疑問に思いながらも、アイナはミツキのがら空きの右腋を人差し指でちょんっと1回触れた。 ミツキ「ひぃぃいん!?」 軽く触れられただけでミツキはくすぐったさに耐えきれず、自ら晒していた腋を庇う様に右腕を降ろしてしまった。 アイナ「あの…、ミツキ…さん?」 ミツキ「っはあ、っはあ…。確かに能力者としては私の方が遥かに強いさ。だが、私の方がアイナより遥かにくすぐりに弱い。そして何よりくすぐられるのが本当に嫌いだ。」 アイナ「う、うん…。多分、そうだろうね…。」 ミツキ「これから戦う敵は、その殆どがくすぐりで攻撃してくる。一番くすぐりに弱い私は格好の的だ。能力者としてはまだまだ弱いアイナなんか相手にせず、私をくすぐってくるさ。それこそ、今回のようにアイナを庇わせてくすぐってくるに違いない。」 アイナ「…?」 ミツキ「きっとこうやって、万歳させられて、弱点の腋をこちょこちょくすぐって来るのだろうなぁ。」 そう言いながらミツキはアイナに背を向けるように振り返り、両腕を高く上げ無防備な体勢になる。 ミツキ「困ったなぁ…。少しでもくすぐりに耐えられるように特訓しておかないと、アイナを守る事など出来ないな…。」 わざとなのか、元々演技が苦手なのか、ミツキは明らかな棒読みで一人困り果てた様な言葉を綴る。当然そのわざとらしい言葉の真意をアイナはすぐに理解した。 アイナ(そういう事か…。ミツキさんは、自分の弱い所を受け入れて、一緒に強くなろうって…、言ってくれてるんだ!) 「私で良かったら、特訓に付き合ってあげるよ?ミツキさん…!」 ミツキ(全く…、アイナの為に身体を張るのも大変だな…。だが、元気が出たようで良かった。) 「そうか!じゃあアイナ、よろしく頼む。」 この先の戦い、不安なのはアイナだけじゃない。そのアイナを守るミツキ達も、アイナを本当に守り切れるのか、古城に住むティックラーと呼ばれる魔女を本当に倒せるのか。そんな不安をどうしても抱いてしまうのだ。 だが、それをアイナに見せないよう、自らが苦手とするくすぐり攻撃に立ち向かい、「お互いに不安な物と向き合い戦おう」と彼女なりにアイナを鼓舞したのだ。 アイナ「うん!でも、隣の部屋でライカさんとアカネさんが寝てるから、声出さないように我慢してね!」 ミツキ「うっ…、ま、まあ、確かに奴らのくすぐりを受けるに当たって、一番大事なのは笑い声を出さない事だからな…。仕方ない…、頑張ってみよう。」 アイナ「よし、じゃあ私が後ろからくすぐるから、笑わないように耐えてね?」 ミツキ「あ、あぁ…。」 ミツキは両腕を高く上げたまま、背後から来るくすぐったいであろう刺激に備えた。そして、ゆっくりとアイナの両手の人差し指が、ミツキの腋の窪みに触れる。 アイナ「つんっ!」 ミツキ「ふひゃぁぁあああ!?」 人差し指でスッと触れた瞬間、ミツキは声を抑える事も出来ず、高く上げていた腕を下ろしてしまった。 アイナ「ミツキさん、こんなんじゃ本当に戦えないんじゃ…?」 ミツキ「そ、そうだな…。も、もう一度頼む…!」 アイナ「うん、じゃあもう一回腕上げて?」 ミツキ「…しかし、やはり腕を上げ続ける事すら…。」 アイナ「う~ん…。ただ腕を上げ続けるよりは、何かに掴まったりしてた方が力が入って我慢出来るかな?」 ミツキ「ん?…まあ、ありえそうではあるが…。どうするんだ?何か良い方法が?」 アイナ「ミツキさんの後ろにいる私の後頭部に、背中を向いた状態で手を回せる?」 ミツキ「………?…こっ、こうか…?」 ミツキはアイナに背を向けたまま、腕を出来るだけ後ろにグッと持っていき、背後に立つアイナの後頭部へと回し、それが離れないように腕を組んだ。 ミツキ「うん。想像以上に腋が無防備で腕もかなりキツイが…、さっきよりは我慢出来そうだ。」 アイナ「じゃあこれで特訓してみよ!いくよぉ?」 ミツキ「なっ!?ちょっ、待っ──」 そう言ってミツキの心の準備も待たぬまま、アイナはミツキの両腋を人差し指でつんっと突っついた。 ミツキ「ひぃぃぃぃいいいいい!?」 心の準備も出来ていなかったミツキは、無防備な腋を触られあっさりと腕を下ろしてしまった。 アイナ「ミツキさん、腕下ろしちゃダメだってば!」 ミツキ「うっ……、厳しいなアイナは…。」 アイナ「そりゃあさっきミツキさんにはスパルタ修行させられたし?」 ミツキ(根に持っているのか…) 「大体、急に来られたら無理だ、くすぐったい。いや、どんなに心の準備をしてもくすぐったいのは変わらないが…。」 アイナ「そ、それもそうだね。じゃあ、もう一回!今度はちゃんと心の準備をさせてあげるから!」 ミツキ「……仕方ない。」 心の準備を貰えたとしてもやる気にはなれないミツキだが、アイナに特訓すると言ってしまった手前、仕方なく再びアイナの後頭部に手を伸ばし腕を組んだ。 アイナ「心の準備出来た?」 ミツキ「そんな簡単に出来る訳無いだろう!?」 アイナ「もぉ…!」 (まああれ程くすぐったがりだったら無理もないか…。) ミツキ「ふぅ…、ふぅ…、……よし!こ、来い…!」 アイナ「じゃあ、頑張って耐えてね…!」 結局、ミツキは一度も耐える事など出来なかったが、本来の目的である、アイナの緊張をほぐし、互いに不安な思いを抱きながらも、それを乗り越えようと強い気持ちを持つ事ができ、穏やかな気持ちで眠りに就く事ができた。 ミツキ「さあ、準備は出来たか?」 ライカ「はい、大丈夫ですよ。」 アカネ「オッケー!」 アイナ「う、うん…!」 ミツキ「流石にまだ緊張しているか、まあ…、こればかりは仕方ないか。寧ろ緊張しない方がおかしい。」 アイナの相槌は、やはり不安な気持ちがその言葉に込められているのが理解できた。だが、全く緊張しないよりはマシだと、ミツキはアイナの背中を優しく叩き、落ち着かせる。 アイナ「で、でも、もう迷いません!緊張はしてるけど…、ちゃんと戦うって決めたから!」 ミツキ「うん、良い緊張感のある魔力だ。どんな時も決して焦らず、強い気持ちを持って行こう。」 アイナ「うん!」 アカネ「だね!……ところで、こっから海を渡って行くんだよね?どっか渡れる橋とかあるの?」 ミツキ「ここから別の島や大陸に移動するための橋や海中トンネルはあるが、私達の目的地であるクスグの森に直結する道は無い。」 ライカ「あの森は人の立ち入らぬ樹海ですからね。行く手段は限らてしまいます。」 アカネ「えぇっ!?それじゃあどうやってクスグの森まで行くの?」 アイナ「もしかして、ジェットボード使うの…?」 ミツキ「あぁ、そうなる。やはりアイナは知っていたか。」 アカネ「ジェットボード?」 ミツキ「水上を自在に移動できるボードだ。魔力を出力にして移動するサーフィンのような物だ。」 アイナ「遠征する能力者の移動手段として、港町ではよく使われるんだよ。」 アカネ「さっすが港町の商人だね!」 アイナ「それほどでも…!」 ライカ「確かに便利そうですが、アイナさんはあまり気が進まないようですね?」 アイナ「あ、うん…。自由に好きな所に行けるのはメリットだけど、海に住む魔物に襲われやすいっていうデメリットがあるって聞くよ?それに、私の魔力で運転しながら敵と戦えるか不安で…。」 アカネ「確かにそれは危険かも…。迂回ルートみたいな別の道使って行けたりしないの?」 ミツキ「あとは海中トンネルからクルグ港に出て、森まで陸路で行く道もあるが…。」 ライカ「なるほど…。それはかなりの時間を要しますね…。」 アイナ「そうなの?」 ライカ「クルグ港まで二日間の船旅。そこからクルグ山脈を横断し、スグル村で夜を越し、その後スグル地下道を抜け、グッタ町でも一泊。グッタ草原を通ってクスグ橋を渡ればクスグの森に辿り着けます。」 アイナ「最短でも森まで四日…。」 ミツキ「直接ジェットボードで行けば半日だ。船旅の時間が掛かる分、必要な道具も増えるし、何より時間が掛かる。奴ら使い魔の力の成長を考えると、もうのんびりしてはいられない。」 アカネ「でも、それじゃあアイナが森まで行くのも大変じゃ…。」 ミツキ「私とアイナは同じボードで二人乗りをする。そして、アカネとライカも二人乗りして貰うつもりだ。やはりボードを操作しながら戦うのはリスクが高い。」 アイナ「二人乗りなんて出来るの?あんまりそういう乗り方聞かないけど。」 ミツキ「屈強な男達が重厚な鎧を装備していたら、確かに無理があるな。だが、比較的軽装の女性である私達なら可能だろう。」 アカネ「あぁ、まあ確かにそうかもね。」 ライカ「それしかなさそうですね。」 ミツキ「あぁ。そうと決まれば、港まで行ってボードを借りよう。」 アカネ「そもそも、そんな物借りれるの?」 アイナ「確か、レンタル料として高いお金は取られるけど、それをちゃんと返せれば返金される仕組みだった筈だよ。」 ライカ「危険を伴う手段である以上、ボードを返せない事もあるからこそのシステムですね。」 アカネ「なるほどね!」 ミツキ「勿論金額はかなり高額だ。今私達が持つ全ての財産を払う事になるかもな。」 ライカ「ですが、命を掛けた戦いですからね。無事に帰れればそのお金は殆ど帰って来ますし、問題無いでしょう。」 アイナ「正に大勝負だね…!私も、頑張らなきゃ…!」 ミツキ「よし、行くぞ!」 クスグの森へのルートを決め、4人はジェットボードを使い、いよいよクスグの森へ向かうため、海を渡るのであった。
Comments
何だかオッカさんは僕の作品がお見通しのようで(^_^;) 次回は敵の作戦会議及び戦闘開始を予定しております!
こーじ
2023-01-18 12:52:18 +0000 UTCアイナさんとミツキさんの絡み素晴らしかったです! ミツキさんのくすぐりの弱さが再確認できた素晴らしい回でした。 次回はティックラー様達の回ですかね? ご投稿ありがとうございました!
オッカ
2023-01-17 22:54:27 +0000 UTC