悪魔への生け贄①
Added 2022-12-11 02:43:54 +0000 UTC私の住む小さな島には、毎年“悪魔”がやってくる。その目的は、食事である。その悪魔は、触手の様な魔物を操り人間を捕らえ捕食する。この島で取れる“ティックの実”を日常的に食べている人間は、その悪魔曰くとても美味なのだそうだ。だからこの島に住む人間を捕食する為に、毎年現れるのだ。特に、若い女性はその中でも抜群に美味だと言う。 つまりこの島は毎年、その悪魔に一人の若い女性を生け贄として捧げる事で、平穏が保たれている。島に来た悪魔は、その年の生け贄を得ると共に、来年の生け贄を指名する。指名された女性が生け贄を拒めば、島ごと海に沈められてしまう為、言いなりにならざるを得ないのだ。 指名された女性は当然、どうせ死ぬなら生け贄になんてなる必要など無い、このまま逃げてやる、と考えるのが普通だ。どうせ死ぬのなら、島ごと道連れになろうが、死ぬ自分には関係ないからだ。だが、指名された女性は決してそうしない。寧ろ悪魔に気に入られる様に残りの一年でより自分を磨き、健康体で生け贄になろうとする。その理由は、生け贄として悪魔のエサになっても、悪魔が気に入れば死ぬ事はなく、一年後に生きて帰れるからだ。ちなみに、何人か帰ってこれなかった女性がいたが、その女性は皆、残りの一年を怠惰に過ごした者達だった。だからこそ、生け贄に選ばれた女性は皆、自分磨きの努力をするのだ。生きて帰ってくるという希望を抱いて。 では、悪魔の食事とは一体何なのか?食べられてしまえばそれで死が待っていると誰もが思うが、ならば何故生きて帰れるのか。その理由は実は誰にも分からない。生きて帰ってきた女性すらもだ。何故なら、帰ってきた女性は皆その一年間の記憶を失っているからだ。だから噂では、悪魔は女性の一年間の記憶をエサにしているのでは?と言われている。だとしても気に入った女性のその一年間の記憶をエサとして食べて、そのまま島に返すというのは謎である。気に入ったのなら、一年と言わず、何年もエサとする事も出来る筈だ。だが悪魔はそれはせず、必ず一年後に帰すか、そのまま生け贄の女性が死んでしまうかのどちらかで、帰ってきた女性も、「悪魔に気に入られたから帰れた」、としか言わず、それ以外は記憶に無いと言う。謎めいた事柄が多く、不思議でならないのだが、だからといって今まで同じように自分を磨いて健康体で生け贄になった女性が、皆記憶を失くした事以外は無事で、ちゃんと生きて帰ってきているなら、それを信じて同じ様にするしかないのだ。 そして今日、島に再び悪魔が訪れ、昨年生け贄にされた私の友人ニコと、今年の生け贄である私セリナが入れ替わる様に、生け贄に捧げられる。この儀式の様な生け贄交換が始まる時間も決まっており、必ず23時に島の中央にある大きな森の入口で待っていなければならない。それまでに、生け贄になる側、つまり私は生け贄の為の準備をしなければならない。 まずは身だしなみ。悪魔に好かれる為に、身体や髪をしっかりと洗い、清潔にする。それが悪魔の好物かどうかは分からないけど、自分を磨くとは、中身は勿論外見も立派でなければならない、という事なのだろうと思っている。勿論これには何の疑問も浮かばないのだが、問題は次の身だしなみ、服装である。 勿論これも確証がある訳ではなく、生きて帰れる可能性を検証した結果に過ぎない、と言う話なのだが、“比較的露出度の高い服”を着て生け贄になるというものだ。どの程度の露出が好みだとか、そもそも本当に肌の露出が必要なのかも分からない。とにかく、過去に生きて帰ってきた女性の共通点や、その時の服の乱れ方などを統計した結果が、“比較的露出度の高い服”なのだ。全裸なら良いという訳でも無く、秘部はしっかり隠した方が良いという情報もある。つまり、肌は見せても“ふしだらな格好”ではダメだという事だ。具体的に言うと、腹部が見えるような丈の短いノースリーブ、太ももが露わになるぐらい短いスカートやショートパンツ、と言えば分かりやすいか。つまり、肩から先の腕全体、腹部、太ももから下の脚全体が露出するような服装が理想の格好、と言う訳だ。ちなみに、エロ目線で考えると胸元なんかも露出対象だが、この悪魔に関してはそこまで胸元は重要じゃないらしい。まあ、露出するに越したことは無いかも知れないが。 とにかく“ふしだらな格好”にならないような服を選んだ結果、上半身は胸元がV字に空いた黒の襟付きノースリーブのトップスで、丈はへその少し上まで露出する長さのデザインの物。下半身は少し濃い色のデニム生地のタイトなミニスカート、すぐに裸足になれる様にスリッパに近い形状のシンプルなサンダルという格好にした。生け贄になると分かった日から模索して決めた服だが、正直言うとこの露出はやはり恥ずかしい。でも、恥ずかしがっている場合じゃない。羞恥心を捨て意を決し、私はその場所へと向かった。 森の入口で待っていると、奥から友人であり昨年の生け贄、ニコがこちらに向かって歩いて来るのが見え、胸が熱くなるのを感じた。 セリナ 「ニコ…!お帰り、無事に帰ってきてくれてありがとう…。」 ニコ 「セリナ、私、生きて帰ってこれたよ…!!今度は…、あなたがちゃんと帰ってくる番だよ…!」 セリナ 「えぇ、そうね…。勿論必ず帰ってくるわ。…それより、やっぱり記憶は、何も無い…?」 ニコ 「うん、悪魔と会話が出来ていたかどうかも分からない。とにかく、認識として悪魔に気に入られたからここにいるとしか…。」 セリナ 「やっぱりそうよね、ありがとう。でも、とにかく無事で何よりだわ。」 友人と一年ぶりの感動の再開をし、積もる話が山の様にあったのだが、悪魔は決して待ってはくれない。ニコの背後から、悪魔の操る植物の蔦が私の存在を確認するや否や、私はその蔦に巻き付かれ、自由を奪われてしまう。つまり、生け贄になる時が来たのだ。 セリナ 「…じゃあ、私も…、頑張ってくるから…!」 ニコ 「うん…。必ず…、帰ってきてね!」 私はニコと一年の別れの挨拶をし、必ず帰ると誓った。悪魔の操る植物の蔦は、私を見送る為に集まった島民達から次の生け贄を指名する。選ばれたのは、またしても私の友人、おとなしい性格のアニだった。アニは指名された恐怖から身体を震わせ、目に涙を浮かべてしまう。それでもニコと共に、私にエールを送ってくれた。それを受けた私も気持ちを強く持つ事が出来た。そして私は、蔦に巻き付かれたまま森の奥へと連れて行かれてしまった。 どこまで連れて行かれるのだろうか。このまま悪魔の口まで運ばれて、本当に食べられてしまったらどうしよう…。そんな不安を抱きながらしばらく蔦に運ばれていると、辿り着いたのは無数の木々が生い茂る森の中とは思えない、開けた大きな空間だった。そこは濃い霧が立ち込め、まるで異世界を思わせる程に異質な空間で、その広い空間の中央には石造りの祭壇の様なものがあった。そこまで連れて行かれた所で、私は巻き付かれていた蔦から解放された。これから私はどうすれば良いのだろう、どうなってしまうのだろう、とまたしても大きな不安を感じながらその場に立ち尽くしていた。 すると、足元から植物の蔦が二本、石造りの祭壇を突き破る様に勢いよく現れ、それぞれが私の足首に絡みついたのだ。そして間髪入れず、新たに頭上から現れた二本の蔦に、今度は両手首を捕らえられてしまう。私は両手足に絡みついた蔦に持ち上げられ、何の抵抗も出来ぬまま宙に浮いた状態で拘束されてしまったのだ。再び自由を奪われる恐怖もあったが、生け贄になった以上、これも悪魔に気に入られる為だと、身体を震わせながらも気を強く持った。 ??? 「中々強気で良いねぇ。気に入ったよ。」 セリナ 「…!?だ、誰……?」 霧で周りは何も見えず、静かな空間の中に突然人の声が聞こえ、私は思わず声の主を確かめた。 ??? 「私はドリュアス。この島の悪魔、って言った方が分かりやすい?」 声の主は、私を生け贄に選んだ島の悪魔、ドリュアスと名乗った。祭壇を見た時から感づいてはいたけど、悪魔は毎年島にやってくるのではなく、ここに住み着いていたらしい。だが驚いたのはそこじゃない。声の主である悪魔が霧の中から現れると、その見た目は私より少し年上の、ただの人間の女性そのものだったのだ。 セリナ 「あ、あなたが…、悪魔なんですか…?」 普通に会話できるとも思って無かった上、見た目がただの女性だったせいで、どうしゃべったら良いか分からず、思わず敬語で普通に話し掛けてしまった。 ドリュアス 「そう。驚いた?まあ今までの女の子も皆同じ反応だったし、そう聞きたくなるのも無理ないね。いつもの事だし、先に言っとこうか。何が聞きたい?」 良心的、と言って良いのか分からないが、生け贄である私に質問する時間をくれたドリュアス。どうせ忘れてしまう記憶だが、私は疑問に思っている事を聞かずにはいれなかった。そして私が質問しようと口を開いた瞬間、ドリュアスの方から再び話しかけてきた。 ドリュアス 「あっ、そうそう。私、人の性格とか本性みたいなの、何となく分かるから、変に気に入られようとかってしなくて良いよ。そもそも、私が気に入った女の子だけが生きて帰れるって話、私の力で“そういう認識にさせてる”ってだけだから。だからよく思われようみたいな演技とかいらないし、逆に気が萎えるから、変な言い方だけど、仲の良い友人と話すような感じで接して貰っていいよ。」 突然そんな事を言われても、相手はずっと恐れていた悪魔。そんなフランクに話しかけれるものではないのだが、私の性格が何となく分かると言うのなら、わざわざ猫を被る事も無いか。寧ろ、それがバレて怒りを買う方が危険だと判断し、私は普段の強気な口調で、ありのままを晒す様に話し掛けた。 セリナ 「えっと…、じゃあ、どうして生け贄になった人達は、この一年の記憶を失くしてるの?今の言い方だと、やっぱりあなたは人の記憶を操作できるのかしら?」 ドリュアス 「へぇ、最初に聞きたかったのはそれなんだ。皆自分がどんな目に遭うのかって事が一番気になるもんだけど、やっぱりセリナちゃんは違うねぇ。益々気に入ったよ。」 セリナ 「そりゃどうも…。」 何故か名前も知られているが、もう何も驚きはしない。寧ろ気に入られた事を喜ぶべきだろう。いや、実際今までの生け贄が帰ってこれた理由がドリュアスに気に入られたからって訳じゃ無いのなら、高感度はあまり関係ないのか…。 ドリュアス 「で、記憶を失くした理由だよね。それはセリナちゃんの予想通り、私が記憶を消したから。で、記憶を消した理由は、私が“楽しみたいから”としか今は言えないかな。」 セリナ 「……分かったわ。」 分かったとは言ったけど、正直よく分からない。しかし、「今は」って事は、後で分かるのだろうと思っておくしかない。 セリナ 「じゃあ次の質問だけど、ここって島の森の中よね?島の調査隊や食料調達班、勿論私もここには頻繁に出入りしてるけど、今までこんな所見た事ないんだけど。」 ドリュアス 「この霧は私が作った空間だから、外からは何も見えないし何も聞こえない。だから私が招き入れない限り、人間がこの場所や私の存在、生け贄である女の子を見つけるのは不可能って訳。」 だからこの悪魔が島に住み着いていた事を誰も知らないのね。 セリナ 「…じゃあ、皆が聞いたって質問。私はこれから一体どうなるの?ホントに、あなたのエサになるの?」 ドリュアス 「うん、エサというか、私が生きるために生け贄を毎年貰ってるのは事実だよ。でも残念ながらセリナちゃんに何をするのかって事も今は答えられない。というか私の都合上、今は答えたくないってのが正解かな。でも、後で必ず分かるから安心して?」 身動き出来ない様にされて、これからどうなるのかも分からないのに、安心なんてできる訳がない。寧ろその答えが聞けなかった事で恐怖が増してしまう。しかし、元々強気な性格の私は、それを見せない様に平静を装ってしまう。 セリナ 「じゃあ、私達は生け贄になる上で、自分を磨いて清潔感を保ち、健康体でいた方があなたに気に入られるって思ってるんだけど、それは正しい?」 ドリュアス 「まあ不潔で不健康な女の子よりは、そりゃあ綺麗で健康な方がありがたいよ。これも結構気になってる人がいるみたいで何度か質問された事あるから答えるけど、病気を患ってたり体力が著しく劣ってると、私の所謂“食事”に耐えられなくて、命を落としてしまった子が何人かいてね。死なせてしまったのは申し訳ないと思うけど、殺すつもりなんて別に無かったし、こっちも生きる為にはこの行為を止める訳にはいかないし。で、この生け贄のシステムも一年毎って決めちゃったから、正直その一年の間に死なれても困るし、身体が人並みに丈夫な方がありがたいから、島の人達にはそれが私の好みだと認識させたってのが正解かな。」 セリナ 「なるほど、そういう事ね。」 つまり、元々この悪魔の食事に死は伴わなくて、過去に帰って来れなかった女性側に生きる体力が無かったから亡くなってしまったと言う訳だ。その身勝手な理由に関しては勿論怒りもある。しかし、こんな事を言いたくは無いが確かにこの世は弱肉強食。食物連鎖の世界だ。人間が動物や植物を食べるように、このドリュアスという悪魔も人間を食べなければ生きていけない。その食事方法は分からないままだけど、一年経って生きて帰れるのなら良心的な方なのだろう。何をされるのか分からないけど、健康体でないといけない理由は、一般的な体力があれば死なずに済むから、という認識で間違いはなさそうだ。 セリナ 「悪魔のくせに一年毎にエサにする生け贄を変えるってルールを守るなんて、意外に律儀なのね。それとも、守らなきゃいけない理由でもあるの?」 ドリュアス 「おっ、結構痛い所突いてくるねぇ。良い質問だよ。ホントにセリナちゃんって普通の女の子?今も冷静だし、強気な目でこっち見てるし。」 セリナ 「あ、いや…、元々そういう性格なだけで、睨んだつもりはないんだけど。内心やっぱり怖いとは思ってるし…。」 ドリュアス 「うん、それも伝わってるよ。私のこの能力は、相手の思考回路を読むんじゃなくて、嘘を言ってるのか演技してるのか、そういうその人の本質が表情や仕草で分かるって曖昧な感じなんだけどね。でも、セリナちゃんが今も強気な口調の癖に素直に思った事をそのまま喋ってるのも分かるよ。」 こうも見透かされた様に観察されてると、非常に喋り辛い。とは言え今の私には喋る事しか出来ないし、記憶が失くなるにしても気になった事は聞かないと気が済まない。 ドリュアス 「で、さっきの質問だけど、私はこうして植物を操れる能力を持ってるけど、正直そこまで戦闘向きじゃなくてね。戦えない事も無いんだけど。ただやっぱりこの島の人間が同時に攻めてきたら、勝てるか危ういし、私の食事の方法はやっぱり特殊だから、今みたいに争わずに平和解決出来た方が助かるんだよね。折角人間側がこのルールを守ってくれて、私の生活が平穏なのに、私がそれを破ったら人間側が反逆してくる可能性もあるでしょ?私が負ける事は無いと思うけど、またこうやって平穏に暮らせる場所探すのも面倒臭いからねぇ。出来ればここでずっとこうして過ごしていたいんだよ。」 セリナ 「じゃあ一年で生け贄を生きて帰すのは?島の人達から反逆されるのを恐れてるから?」 ドリュアス 「いや?それは単純に私が一年でその女の子に飽きちゃうから。人間だって毎日同じ食べ物だけで暮らすのは難しいでしょ?だから一年毎ってルールを決めて、味変をしてるんだよ。」 こういう情報を平気で教えるのも、私の記憶を消せるからか。まあ悪魔なりに自分のルールや立場とか考えて行動してるのは分かった。それより、この悪魔の食事がどんなものなのか余計に気になってしまう。ドリュアス自身も食事って言ってるし、エネルギーを摂取するんだろうけど、どうやって私から生きる為のエネルギーを摂取するんだろうか。生きて帰ってきてる訳だし、本当に食べたりはしないんだろうけど…。まだそれは教えてくれない様だし、…あ、それ関連でまだ疑問があったわ。 セリナ 「あ、じゃあ、こういう“露出度の高い服”を着た方があなたに気に入られる、ってこっちは認識してるけど、これは実際どうなの?今までの話を考えると、あなたに気に入られる為って訳じゃないわよね?」 ドリュアス 「あ、いや、私の為にそういう服を着て貰ってるから、私に気に入られる為って認識で一応合ってるよ。実際、セリナちゃんの服すっごい好みだし!」 セリナ 「あ、そう……。って事は、これは本当にあなたのただの好みな訳?」 ドリュアス 「まあ好みだからっていうのもあるんだけど、そういう服を着てくれてる方が“やりやすい”ってのもあるかな?」 セリナ 「やりやすい…?その、食事としてあなたが行う何かをする上でって事?」 ドリュアス 「そ。別に肌の露出が無い服でも良いんだけど、破く手間がかかるし、個人的には元からそういう服でいてくれた方が嬉しいからね。」 食事をする上での合理性や本人の好みって事か。この答え次第で何をされるのか分かるかもと期待してたけど、やっぱり分からなかった。でも私の思った通り、この服と悪魔の食事行動には関係があったのね。 セリナ 「分かったわ。もう聞きたい事はこれで全部よ。記憶を消す理由も、こういう服をわざわざ着せる理由も、結局あなたの食事方法や趣味趣向に関係してるみたいだし、これ以上他に知りたい事は無いわ。」 ドリュアス 「おっけー。じゃあ、そろそろお楽しみの時間を堪能しようかな。」 その言葉に、強気な性格の私も流石に不安を抱かざるを得なかった。でもそれは誰だって同じだ。これから、得体の知れない“食事行動”が始まるのだから。
Comments
ありがとうございます。②はお馴染みの焦らし回となります(笑)
こーじ
2022-12-11 12:50:59 +0000 UTC新作のご投稿ありがとうございます! 今後どのような展開でくすぐられるのかとても楽しみです!
オッカ
2022-12-11 12:02:48 +0000 UTC