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悠月はくすぐられたい③

 いよいよこの日がやってきた。今日は麻希の両親が朝から夜遅くまで出かけるそうで、昼食を各自済ませたらすぐ遊ぶ事になっている。家族と家でお昼を食べた後、昨日買った勝負服に着替え全ての身支度を済ませた私は、高鳴る胸の鼓動を抑えられぬまま麻希の家に向かった。  麻希とは小学校の時からの友人で、高校でも一番気の合う友人だ。今日私がくすぐられようとしていなくても楽しみな日である。麻希の家も徒歩10分程度。自転車ならもっと速いけど、大胆すぎるミニスカートを穿いている為、今日は歩いて行く事にした。  その道中、いつもは感じない男性の視線をやたら感じた。その目線は主に、肩、胸元、お腹、太ももといった肌を露出した集まっているのが分かる。やっぱり胸の谷間とか太ももって見られるのね。お腹も普段服着てたら絶対見えない所だし、チラチラ見えるのは男性からしたらやっぱりエッチなのかしら?でも肩を見られるのは意外だった。肩を見る人って、腕を上げてワキが見えないかなって、期待しているのかしら。  すれ違う度に男性に見られ、改めて自分が大胆でエッチな格好をしているのだと思い、尋常じゃない程恥ずかしくなってきた。こんな格好で麻希に会うの…?変態とか露出狂とか思われたらどうしよう……。今から戻っていつもの服に着替える?でもこの日の為に折角買ったんだし、やっぱりくすぐられたい…!  男性からのイヤらしい視線を感じながらも無事に麻希の家に辿り着いた。麻希は、私のこの格好……、どう思うかしら…。やっぱり私っぽくなくて戸惑ったり、急な露出に引いてしまわないか、そんな事を考えながら、私はインターホンの呼び鈴を鳴らす。家を出るまではくすくられる事への期待や緊張感で高鳴っていた胸の鼓動が、今は麻希の反応に不安を感じ心臓がバクバクしていた。そして、ゆっくりと家のドアが空き、麻希が姿を現した。 悠月 「お、おはよう。」 麻希 「おはよ!」  玄関前で挨拶を交わした後、麻希の目線が私の顔からゆっくりと下へ移動するのが分かった。その瞬間、私の不安と緊張が更に高まる。この姿を見た麻希は、一体どんな反応をするのだろうか…? 麻希 「良いじゃんその服!いつ買ったの?」  私の不安を余所に、麻希は私の服装に好感を持ってくれた。 悠月 「そ、そう。昨日買ったのよ。最近やたら暑いし。」 麻希 「えー、そうなの!?だったら誘ってくれれば良かったのにー!」  くすぐられる事を目的にして吟味していた買い物に流石に友人は呼べないわよ…。 悠月 「ごめんごめん、急にそんな気分になったから。」 麻希 「そうなんだ。あ、暑かったよね。入って入って!」 悠月 「お邪魔します。」  麻希の部屋はすでにクーラーが程良く効いていて、夏の暑さと緊張で火照った身体にはすごく丁度良かった。…そういえば、不安ばっかりで忘れてたけど、チラッと見えるお腹とか、ノースリーブには何も触れてはくれなかったわね。とりあえず好感は持って貰えたから、本来の目的の為に色々仕掛けよう。 悠月 「この服着てたら、今日ここに来るまでの間、結構男の人から見られちゃって…、正直この服ミスったかと思ったわ。」 麻希 「そんな事無いと思うよ?見られたって、寧ろ下心でしょ?ならそれだけ魅力があったって事じゃないの?」 悠月 「いや、まあ…、そうなんだろうけど、私っぽくないかなぁ、とか思ったのよ。」 麻希 「寧ろ悠月を知ってる私からすればメッチャ似合ってると思うけど?まあ腹チラは悠月にしては攻めたと思うけど!」  ニヤニヤしながら私のチラッと見えるお腹を凝視する麻希。その視線には恥ずかしさもあるけど、それ以上にチャンスだと思い私も少し挑発してみる。 悠月 「まあ確かに攻めてる服だとは思うけど、最近のお洒落も取り入れただけよ。」  その視線からお腹を守ろうとせず、腕を組みながら「寧ろもっと見てみなさい」とアピールする。 麻希 「まあ確かに今年は結構腹チラファッション多いよね〜。」  私のアピールに気付かず、麻希はゲームの準備に取り掛かってしまった。イタズラ好きな麻希なら、こんな絶妙な腹チラを逃さず触れてくると思っていたのに、何だか拍子抜けしてしまった。いや、もしかしたらこれは私のミスかも知れない。「そんなに見ないで」と恥ずかしそうに隠した方が、麻希のイタズラ心を刺激できたかも知れない…。  私は麻希の隣に座り、一緒にゲームの準備を手伝った。私も麻希も、実はかなりゲームが好きで、麻希の家に来た時はいつも対戦ゲームやパーティーゲームなど、様々な物で遊んでいる。 麻希 「見て見て!今日は新作のゲーム!」 悠月 「やっぱり麻希なら買うと思ったわ。」  私達が特に好きな某レーシングゲームの新作。私も買おうか迷っていたけど、今日の為の服を買うのにお金を貯めていたから買えなかった。まあ、麻希がどうせ買うだろう思っていたから、そんなに強い物欲も無かったのだ。でも、今やってみて面白かったら買いそうだわ…。 麻希 「うん、想像以上に面白いよ!早くやろ!!」  そう言いながら麻希はゲームを起動する。勿論このゲームは楽しみだったのだが、私の脳内は「どうやってくすぐられるか」でいっぱいだった。というのも、服装の話題からくすぐられる、という作戦が失敗してしまい、内心焦っていたのだ。昨日は色々アピールしようなんて考えてたけど、いざこうして麻希に会うと、自ら腕を上げてワキを見せるとか、服の裾からおへそが見えるようにするとか、そんなアピールが恥ずかし過ぎてとても出来る気がしない。だから他にくすぐられる手段が無いか、必死に考えていたのだ。 麻希 「ん?悠月?どうした?」 悠月 「えっ!?いや、大丈夫よ。」  あまりに考え事をし過ぎて、最初のコースは5位というかなり不甲斐ない結果となってしまった。勿論新作のゲームだから、コースを把握していないというのもあって、私がそんなに上手く出来ないのも仕方ないとも思うが、それでも麻希的にはこの順位はあまりに不自然だったようだ。確かに、最初のコースは比較的単純なものになっているから、初見でも上位は取りやすい。だからこそ、私の5位という順位に違和感を覚えたのだろう。 悠月 「手加減してあげたのよ。どうせ私が優勝しちゃうし。」  とりあえず私のくすぐられ作戦は保留にしておこう。私事で一緒に遊んでる麻希に心配させたら申し訳ない。とりあえずさっきまでの心ここに在らずだった事に対する言い訳でいつもの強気な私を見せつける。 麻希 「あー、そういう事言っちゃう??じゃあ負けた方は罰ゲームね!!」 悠月 「ば、罰ゲーム…!?」  その言葉に私の胸の鼓動がまたしても高鳴る。まさか麻希の方から提案してくれるとは思わなかった。 悠月 「罰ゲームって、何するのよ…?」  嫌そうに言いながらも、内心は期待に胸を踊らせていた。もしここで麻希から「くすぐり」という言葉が出たら…、と期待せずにはいられなかった。 麻希 「……特に考えてない!」  どうやら咄嗟に思い付いただけだったらしく、具体的な事まで考えていなかったらしい。そう言えば麻希は後先考えない言動の多い人間だった。まあそれが麻希らしいし、私もそんな麻希が好きなんだけど。それに、逆に言えばここで私が罰ゲームの内容を提案出来るという事でもある。ある意味これはまたとないチャンスだ。 悠月 「じゃあ……。」  罰ゲームはくすぐりの刑、と言おうと思ったのだが── 麻希 「じゃあ?」  “くすぐり”という言葉を発する事に大きな躊躇いがあり、言葉が出なかった。くすぐりフェチに目覚めた事で、“くすぐり”という言葉を日常で使う事に大きな恥じらいが生まれていたのだ。そしてそれと同時に、自分がくすぐりフェチだとバレたくない。バレたら麻希や他の友人達から引かれてしまうのではないかと言う不安や恐怖があったのだ。 悠月 「考えといて。」  どうしても“くすぐり”という言葉を出せず、麻希に任せてしまった。折角昨日あれだけ作戦を考えていたのに、いざとなると緊張してしまい何も思い通りにいかない。  そしてそのゲームは持ち主の麻希が勝利し、私が罰ゲームを受ける事になった。もしあそこで、罰ゲームを“くすぐり”にしようと提案出来ていたら、今頃私はくすぐって貰えてたのに…。 麻希 「手加減とか言ってたクセにー!結局私が勝っちゃったか!さて罰ゲームか、何もやって貰おうかな?」  レースに夢中だった麻希は相変わらず特に考えてはいなかったようだ。つまり、まだ言えば間に合う。ここで私が言えればくすぐって貰える。でも、そこで私はまたしても二の足を踏んてしまう。ここでくすぐりを提案する方が、圧倒的にハードルが高いのだ。さっきはまだどっちが罰ゲームを受けるか分からない状況だったから、相手にしたい事を言えた。でも今は私が受ける事は決まっている。そこで自ら提案したら、くすくられたいという思いが露骨に出てしまうのだ。ただでさえ言い辛いのに、こんな場面じゃますます言える訳が無い…。  麻希は相変わらず罰ゲームを考えている。自分で言えないのなら、何とかこの状況で麻希が“くすぐり”という言葉を思い付くように仕向ける事は出来ないか、私は必死に考える。  やっぱり疲れたように振舞って両腕を上げてアピールするのが良いか…。私がちょっと羞恥心を押し殺せば出来る事。ただ必要に駆られて行うだけ。私はこれが最後のチャンスだと思い、意を決した。 悠月 「さっさと決めなさいよ。……ん〜っ、ちょっと疲れたわ。」  あくまで自然を装い、私は両腕をぐっと上げ、左手は右の二の腕を抑えるようにして、大きく伸びをする。ノースリーブを着ているから当然私の両ワキは無防備に晒されてるし、腹チラ程度だった服の裾が持ち上げられる状態となり、おへそまで見えるようになる。身体を後ろに反らすようにこの伸びを行う事で、更にお腹が見える。恥ずかしさのあまり目を瞑って麻希の顔を見ないようにしているから、今どんな反応をしているかも分からない。でも、もうこうするしか私がくすぐられる方法はない。これだけ肌を露出してれば、麻希なら絶対に何かしらのアクションを起こす…!そう信じて羞恥心を押し殺しながら伸びを続けた。 麻希 「確かに白熱しすぎて疲れたかも。ちょっとお菓子と飲み物持ってくるから待ってて!」  私の疲れたという言葉だけに反応し、麻希はお菓子の用意をする為、部屋を出ていってしまった。……私が羞恥心と戦いながら行ったこの行為が、私の秘めたる思いは、麻希には全く届いてはいなかった。え、そもそもあれだけアピールしておいて、完全スルーする事なんてあり得るの…?っていうか、私の罰ゲームはどうなったのよ。まあ、こういう優しさも麻希の良いところなんだけど…。最後のチャンスを失い、私は一人呆然としていた。 麻希 「お待たせ〜。」  大きめのお盆にジュースとお菓子を乗せて部屋へと戻ってきた麻希。そのお盆に乗せていたジュースの入ったコップやお菓子をテーブルに並べていく。そこで私はふと麻希の今日の服装に目がいった。麻希は半袖のTシャツにショートパンツという格好だったが、Tシャツの丈が短めで前傾姿勢の状態で腕を前に伸ばした事で、見事に腹チラ状態となっていた。  この偶然の腹チラにすら、私はくすぐりたい欲が芽生えるのに、何故麻希はくすぐってくれないんだろう…。こうなったら、今のスキだらけの麻希をこっちからくすぐってみる…?そうだ、もうこれしかない!私への仕返しも兼ねて、これでくすぐられなかったらもう諦めるしかない…。私は無防備に晒された麻希の脇腹に人差し指をゆっくりと近づけ、その柔らかな素肌にちょんっと触れさせた。 麻希 「あひぃっ…!?ちょっとー!やめてってばー!!」  予想通り、麻希は敏感に反応し持っていたお盆を落としてしまった。安全を考慮して、全てをテーブルに並べたタイミングを狙ったから、大事にはならなかったが、不意打ちを食らった麻希は触られた脇腹を抑えながら私を睨みつけていた。 悠月 「いや、そんな露骨にお腹見せられたら、触りたくなるでしょ。」 麻希 「くそー、悠月は何で効かないのー!?」 悠月 「んっ…!?」  私がくすぐりに強いと思っていた麻希。それを羨みながら、効かないのを承知で私のチラ見えしたお腹に、人差し指をスッと素早く触れさせてきた。仕返しを期待はしていたが、まさかこんな間髪入れずに仕掛てくるとは思っておらず、私も不意を突かれてしまった。  しかも、私はその不意打ちに思わずビクッと反応してしまった。今までは厚手の服を着ていた時にしかされなかったこのお腹や脇腹を突っつく攻撃。それを初めて素肌に直接受けた事で今までとは明らかに違う感覚を味わったからだ。そう、つまり初めて“くすぐったい”という感覚を味わえたのだ。麻希のように明確にくすぐったそうな反応は出なかったものの、あれがきっとくすぐったいって感覚なんだろうと思った。 麻希 「あれ…?今ちょっとビクッてしたよね?」  そんな私の僅かな反応を麻希は見逃さないでくれた。仕返ししても無反応だと思っていた麻希にとって、この反応は嬉しくてしょうがなかったのだろうか。イタズラ心を剥き出しにしたようにニヤニヤしながら私を問い詰める。でも嬉しいのは麻希だけじゃない。寧ろ私の方がこの状況が嬉しくて堪らない。ついに私の念願が叶う瞬間がやってきたのだ…! 悠月 「べ、別に…?気のせいじゃない…?」  私は焦りを誤魔化すように強がった。麻希のイタズラ心をより高める為には、認めるより強がる方が効果的だろう。尤も、素直になれない私の性格的に強がるのは当然というか、素で出た言葉だけど…。 麻希 「ふ〜ん、なら罰ゲームはくすぐりにしよっかな〜?どうせ効かないんだろうけどね〜??」  ついに麻希の口から“くすぐり”という言葉が発せられ、私の心臓がバクバクと激しく高鳴った。 悠月 「べ、別に良いわよ?そんなんじゃ絶対に笑わないし…?」  私は嬉しい気持ちを表に出さないよう、普段の感じを装う。そのお陰でまた強がる言葉が生まれ、麻希も更に顔をニヤニヤさせる。 麻希 「そこまで言うなら、もし悠月が笑ったら追加罰ゲームね!」 悠月 「何よ、追加罰ゲームって…。」 麻希 「私の気が済むまで、好きなだけくすぐらせて貰うからね?」  これは更に面白くなってきた。私が笑ったら、更にくすぐって貰えるなんて、これ程楽しみなシチュエーションはない。 悠月 「気が済むまでって…、まあ別に良いけど?どうせ効かないし。」  私は冷静を装って麻希の提案に乗る。麻希からすれば、私は引っ込みがつかなくなりドツボにハマった哀れな女に見られてるのだろうか?麻希も楽しそうで何よりだし、私も楽しみで仕方ない。  ジュースとお菓子が置かれたテーブルは部屋の隅に寄せられ、いよいよ私の念願だったくすぐり罰ゲームが始まるのだった。


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