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悠月はくすぐられたい②

 明日の日曜日は友人の麻希の家に遊びに行く事になっている。季節は夏真っ盛り。つまり、誰もが肌の露出が多くなる服を着る季節だ。普段の私はこの時期、少し袖が短めの半袖にハーフパンツが多いけど、それではこの作戦は成功しない。  今回の大勝負はズバリ、私の肌の露出をいつもより増やし、くすぐられた時の衣服による防御力を減らそうというものだ。しかも麻希は私の友人の中でも特にイタズラが好きで、やられたらやり返すタイプだ。それに肌を見せ誘惑する事で、イタズラしたくなる様に仕向けるという訳だ。  去年の冬も実は、私は彼女にくすぐり攻撃を仕掛けられた事がある。ただ、やっぱり冬は厚着をしており、更にコートまで着ている時に脇腹をツンと突かれても刺激は弱い。ただでさえあまりくすぐったいと感じた事がなかった脇腹、しかも冬の厚着という防御はあまりにも強く、私はくすぐったいと感じる事など当然無かった。そこでやっぱり"私はくすぐりに強い"というイメージが余計に付いてしまい、それ以降、麻希も私にはくすぐり攻撃を仕掛けてこなくなってしまったのだ。だからこそ、明日は肌の露出を増やしてどうにかくすぐられるシチュエーションを作ろうという作戦なのだ。  問題はどんな服を着るか、という事。とりあえずノースリーブには挑戦してみようかしら。やっぱり腋はくすぐりの代名詞だし。一応腋は脱毛してるからムダ毛は一切生えてないし、黒ずみとかも全く無いキレイな見た目だという自信もあるから露出しても問題は無い。…恥ずかしいけど。  足の裏をくすぐられる事も考えると、サンダルにして素足のままにするべきか。靴下も無い方がくすぐったいだろうし。…恥ずかしいけど。  ある意味一番の問題はお腹周り。本当なら胸から下は全部露出していた方がくすぐられるのには向いてるけど、流石にそれは恥ずかしすぎて無理。それに私の性格的にもそんな服は絶対に着れない。となると、インナーは着ずに捲ればお腹が見えるという状態が無難。そうなるとあまり丈が長い物は避けた方が良いかしら。それに、麻希がくすぐってやろうと思うような、イタズラ心を刺激する服でないとそもそも意味がない。なら、丈が短めでお腹がチラリと見えるぐらいのトップスにしてみようかしら。…恥ずかしいけど。  胸元とか、開けた方が麻希は喜ぶだろうか…?勿論、この"喜ぶ"というのは、イタズラ心が刺激されるか、という意味だ。でもあんまり大胆には晒したくないし、覗き込むと谷間が見えるぐらいにしてみようかしら。…恥ずかしいけど。  それから、ボトムスはやっぱり太ももから下を大胆に晒した方がエロさはある。パンチラとかしそうなミニスカートの方が麻希のイタズラ心を刺激出来るか。…恥ずかしいけど。  これで一応理想のコーディネートは脳内で完成した。あとは実際に着てみて、どんな感じか確かめる為、少し遠出をしてそういう服を置いているお店を探しに出掛けた。  普段は入らない、責めた服を扱うお店を見つけた私は、早速店内でそれなりの服を何着か選んで実際に試着をしてみた。  色々試した結果、トップスは胸元が少し大きめに広がり、丈はギリギリおへそが隠れるぐらいの黒いノースリーブ。ただそれだけだと少し地味なので、その上にノースリーブの薄いピンク色のジレ(ベスト)を着る事にした。  腕を上げるとノースリーブの服からは大胆にワキが見えるし、トップスが少し引っ張られて裾からおへそが見える絶妙な丈。実は黒のノースリーブを選んだのにも理由があり、黒い服は肌の色が映え、腹チラしているのが良く分かる。だから、イタズラ好きな麻希に肌見せを気付かれやすくして、不意に突っついたりしてくすぐってくれるかも知れない。  ボトムスはデニム生地のタイトめなミニスカートだから、太ももや膝は勿論、室内なら足の裏も常に晒されている状態だ。これだけ無防備なら、麻希はきっとイタズラしてくるに違いない。我ながら完璧な作戦だ。少し服は高かったけど、くすぐられる為ならこれも必要経費だ。  これら一式を買い私はすぐに家に帰った。今度は実際に麻希のイタズラ心を刺激し、私をくすぐろうとする様に仕向ける方法を考える。  一番シンプルで確実なのは、ゲームの罰ゲームとしてくすぐりを提案する事。だけど私がくすぐりに強いと思われてる時点で、麻希はその提案には絶対に賛成しない。自分だけ苦手だったら不公平になるからそれは当然なんだけど。  そもそも、私って本当にくすぐりが効かないのかしら…?それが本当なら私のこの計画は完全に無意味になってしまう。でも自分で自分をくすぐっても効果無いって聞くし、可能なら、自分がくすぐりに強いのかどうかも分からない今の状態のままくすぐられたい。我慢出来ない程の笑いを誘発する“くすぐったい”という感覚がどんなものなのか、自分はどこがどう弱くてどれ程くすぐったいと感じるのか、そんな心境の中でくすぐられてみたい。だから、羽根や筆なんかで私の感度を確かめたくはない。  寧ろ、私がくすぐりに強いと思われているなら、本当にどこもくすぐったくないのか実験する、なんてシチュエーションにもなるかも知れない。でもやっぱり「くすぐって欲しい」なんて自分からは恥ずかしくて言えないから、くすぐりたくなる様にアピールするしかない。  室内に入れば足の裏は常に露出してるから、見られる機会はそこそこあると思う。お腹もチラチラ見える絶妙な丈で、普段の私にしてはかなり責めた服だから、麻希なら絶対に何かしらのアクションは起こすだろう。ノースリーブを着るのも初めてだから、ワキの話とか麻希から出たら、実際に見せてくすぐられアピールとかも出来るかも知れない。腕も上げれば自然とお腹も見えるし、服装の話を振られたらこの流れでアピールしていこう。  でも、もし麻希が私の服に興味を示さなかったら…?そうなったら、やっぱり何かしらの理由をつけて自分から腕を上げてアピールするしかない…。そもそも、腕を上げる場面って、日常にどれ程あるだろうか。  髪を結ぶ時?はそもそもショートヘアの私には無縁。  電車の吊り革に捕まる時?は二人で電車を使って出掛けなきゃいけないし、これも多分無理。  何か高い所にある物を取る?これがまだ一番現実的な気もするけど……、いや、友人の部屋で高い物を取るなんて事あり得ないわね…。  それこそ、ゲームの罰ゲームで腕を上げるシチュエーションを作る?でもそれ、どんな罰ゲーム…?ラジオ体操とか腕上げる運動あるけど、罰ゲームっぽく無いし。麻希の家にぶら下がり健康器具とかあれば良いけど…、まあ期待はしない方が良いわね…。  他に何か……、そうだ…!疲れた時に腕をぐぐ〜って上げるやつ。正式名称はよく分からないけど、あの"伸び"なら一番自然に腕を上げる事が出来る。ゲームでちょっと疲れたって言って、隣で伸びをすればきっと麻希は仕掛けてくれる。これは期待出来る。  明日、いよいよくすぐって貰えるかも知れないと思うと、今から胸がドキドキして興奮が冷めやらない。胸が高鳴るというのはこういう状態の事なのだろう。とにかく楽しみで仕方ない。私は高まる期待と緊張感で、その夜は中々眠れなかった。


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