美しき女スパイ、グレイス①
Added 2022-02-23 12:56:35 +0000 UTC私の名前はグレイス。今私はとある建物に潜入している。「潜入」という言葉で察しがつくだろうけど、私の職業は女スパイ、つまりこの建物に隠された“機密事項”を探りにやってきたと言う訳だ。 私はシャドウと呼ばれる人物からいつも依頼を受けてこのスパイ活動を行っている。私とシャドウの間で交わされた契約で、お互いにコードネームしか知らず、顔も性別も分からない。ちなみに私の「グレイス」という名もコードネームである。定期的に連絡が来るシャドウの依頼をその都度受けるかどうかは私の自由で、その依頼を受け、無事完了し報告する事で貰える報酬が生活の全てだ。命がけで潜入するため、潜入する前に最初に依頼料を貰い、任務の遂行に応じて更なる額が貰える。しかし当然、任務に失敗したと報告すれば依頼料しか貰えない。またお互いの事情や目的には一切詮索しない。つまり依頼する人間とされる人間という関係以外、何も互いを知らないのだ。だからお互い裏の世界でその身に何が起ころうが、助けも同情もしない。私が潜入先で捕まろうがシャドウには関係ないし、シャドウが色んな情報を得た結果、様々な裏の組織を敵に回そうが、私には関係ない。そういう契約なのだ。 今回もとある企業に隠された機密事項を記したファイルを盗めという依頼を受けただけで、この企業にどんな裏があるのか、どんな事をしているのか、全く知らないし興味も無い。とにかくその依頼を遂行し報酬を貰うだけ。 そんな信用して良いのかも分からない様な相手の依頼を受け、命の危険と常に隣り合わせの様な仕事を、何故行っているのか?そう疑問に思う人は多いだろう。実はその答えは至って簡単。 私がただスリルを求めているからだ。 グレイス 「ここが機密事項を保管している地下室ね。」 地下室まで難なく辿り着いた私は、そのピッキング技術で地下室の扉を開ける。そこは1台のパソコンが置かれたテーブルだけがある無機質な部屋だった。 グレイス 「分かり易く置いてあるわね。あとはこの中のデータを盗むだけ。」 私は手際よくパソコンからデータを押収していく。勿論そこに仕掛けられたトラップを全て解除した上で。自分で言うのもなんだけど、私の頭脳ならどんな問題も解決出来るし的確な判断も出来る。それに私の身のこなしと装備があれば回避出来ないトラップは無い。だから私は今まで捕まった事は無いし、一部の裏社会の人間からは“美しすぎる女スパイ”と噂されている程だ。だからこんなパソコンに仕掛けられたトラップぐらいどうって事無い。 グレイス 「よし、これで任務完了っと。後はここを脱出するだけなんだけど…。」 警備員 「見つけたぞ!愚かなスパイめ、そのパソコンを起動したら警備システムが作動するとも知らずに触ったな!」 やっと警備員の男が来たみたいね。私が警備システムに気付かない訳はない。それにミスしてシステムを解除し忘れた訳でもない。あえてそのシステムだけは放置して、警備員がここに来るのを待っていた。その理由も、私がスリルを味わいたいから。 さて、これでようやく面白くなって来たわ!このピンチこそ最高の瞬間で、逃げ切った時の爽快感とその間に味わうスリルが止められない。 グレイス 「遅かったじゃない。待ちくたびれたわ?」 警備員 「なっ、何…!?女だと!?」 暗い地下室で後ろ姿しか見てなかった男は、まさか潜入してきたスパイが女だとは思わなかった様だ。そして私が声を出し振り向いた所でようやく気が付いたらしい。 グレイス 「女じゃ駄目だったかしら?」 警備員 「ぐっ…!何て格好してやがる…!!」 案の定、この男も私の服装に顔を真っ赤にしながら狼狽えている様子。と言うのも、私はスリルを味わう目的も含め、露出度の多い衣装でスパイ活動を行っている。 上半身は大きめの襟が付いた、胸元だけを隠す程度しか布の無い服で、当然お腹は丸見えで、それに加えて自慢の大きな胸の谷間も大胆に晒すようなテザインとなっている。腕は装備品を隠すため肘から指先までを覆う布を着用しているけど、胸元しか隠さないテザインの服であるため袖は無く、肩や二の腕も当然素肌を晒している。 下半身はピチッとしたタイトスカートで、その丈も下着が見えそうな程短いデザインとなっていて、太もも露わになっている。ロングブーツにも装備を仕込んでいる為、膝から下は布で覆われている。それでも布面積の方が少ない、露出度の高い衣装である事に変わりはない。 そんな私を見た男は思わず動揺し目線を逸らそうとするが、その本能には逆らえずチラチラと私の姿を見てしまう。この視線も堪らず、よりスリリングな快感を味わいたいが為のコスチュームなのだ。 グレイス 「ふふ…、興奮しちゃった?」 警備員 「なっ、何を馬鹿げた事を…!」 グレイス 「誤魔化しても無駄よ?私の胸元見て興奮しちゃってる事ぐらい分かってるんだから♥」 そう言って、服を少し引っ張り胸元を更に見せつける。すると男は鼻の下を伸ばしながらも、何とかその本能を抑え込もうと目を逸らす。折角のサービスなんだから、見えおけば良いのに。 グレイス 「よそ見しちゃダメじゃない。」 警備員 「ぐが…!?」 私のスタイルに見惚れようが、目線を逸らそうが、そこで生まれたスキを突いて一気に間合いを詰めて、一撃で仕留める。これが私の技で、この服装も立派な戦術の一つでもある。 最初に駆け付けた警備員はあっさり倒しちゃったし、この企業のセキュリティはかなり甘くてつまらない。ここはこれ以上スリルを味わえる場では無いわね。 グレイス 「さて、さっさと帰って報酬を貰おうかしら。」 それから何度か警備員に鉢合わせたけど、紳士的な人が多いみたいで、私の姿を凝視する奴はいなかった。どちらかと言えば下心丸見えで見てくれた方が快感を味わえる分、今回は本当につまらない仕事だった。何のピンチも無く帰還した私は、隠れ家へと戻り任務の完了を報告する。 グレイス 「これがあの企業に隠された機密事項のデータよ。」 シャドウ 「ご苦労。報酬はすぐに振り込もう。」 グレイス 「えぇ。よろしく。」 シャドウ 「それから、早速だが次の依頼だ。次は裏組織“トゥーチャー”に潜入して貰いたい。」 グレイス 「トゥーチャーって確か…。」 シャドウ 「その名の通り、拷問について研究し、それを別の裏組織に提供し莫大な裏金を得ている企業だ。」 グレイス 「それで、そこの研究データを盗めって事?」 シャドウ 「あぁ。ただし、盗んでくるのは今までの研究データではない。聞いた話では、最近新たな拷問方法を見つけたらしく、その拷問の為に何度も人体実験を行っているらしい。」 グレイス 「新しい拷問に人体実験ねぇ。要するにその新しい拷問の実験データを取ってくれば良いのかしら?正直、どれが過去のデータで、どれが新しい拷問のデータなんて分からないけど。」 シャドウ 「ああ、だから新たなものと思わしきその拷問の方法を突き止めてほしい。」 グレイス 「どんな拷問を行っているのか、それが分かれば良いって事ね。了解。組織の場所や分かってる内部の情報を送って。」 シャドウ 「了解した。すぐに送る。では、健闘を祈る。」 拷問を研究する組織か。別に私は正義とか悪とか興味無いけど、裏組織ってのは相変わらず物騒ね。そんなに拷問しなきゃいけない人間がいるのだろうか?と思っていたが、そもそも私自身も拷問される側の人間である事に気付き、一人でついつい呆れてしまった。 シャドウからのメールが届き、裏組織トゥーチャーの場所を記した地図が送られてきた。どうやら新たな拷問の研究の為だけに用意された建物があるらしく、そこへ侵入すれば少なくとも新たな拷問と呼ばれるものの実態は掴めるだろう。残念な事に、盤石なセキュリティで内部情報は一切不明との事だった。まあ、分かりきった状態より、全く分からない方がスリリングで私好みではある。早速その日の夜、私は目的の建物へと潜入を開始した。