笑わないレースクイーン⑤
Added 2021-11-09 12:20:35 +0000 UTC大東都モーター工業のイベント当日。まずは開場前に7人のレースクイーンが集まった。那月と梨香以外の5人のレースクイーンは皆昨年の人気ランキング上位の女性達だった。ちなみに、梨香は昨年の人気ランキングで4位という好成績を残していた。つまり実質、那月以外はランキングで1位~6位が集まってるという訳だ。 そして、そこには当然那月の人気を恨む恵と、昨年6位となった恵を慕う若葉の姿も見られたのだ。そんな恵が、若葉と共に那月の元へとやって来たのだ。 恵 「あなたが噂の那月さん?」 那月 「噂の…?噂は分かりませんが、私が神楽那月です。よろしくお願い致します。」 恵 「始めまして。私は城岡恵です。」 那月 「あ、はい。存じております。4年連続で優勝したレースクイーン界のエースだとか。私なんかが声を掛けて貰えるなんて、光栄です。」 恵 「フフ…、ありがと。あなたこそ、笑わないレースクイーンだって、すごい噂になってるわよ?このイベントの主催者が、前回のレースの那月さんを見て採用したらしいじゃない。」 那月 「はい、ありがたい限りです。」 恵 「まあ今日はお互い楽しみましょ?」 那月 「はい、ありがとうございます。」 一緒にいた若葉は何も言わず恵の後ろに隠れるように立ち、そのまま恵と共にその場を去っていった。 梨香 「まさか1位の城岡恵が挨拶に来るなんてな。」 那月 「それだけ私が脚光を浴びた、と言う事みたいですね。嬉しいです。」 梨香 (ってか、もっと那月を恨んでるかと思ったけど、そうでもないのかな…?) 「まあ那月の人気を誰も注目しない訳ないよな。」 梨香は、恵がこの人気を勝ち取るまでどれだけ努力をしていたかを良く知っていた。お互いに売れない時代を経験しており、その中でついに優勝した恵を尊敬していた反面、周りのスタッフ達に厳しく当たったり、自分を認めない人間を憎んだりと、マイナスなイメージも持っている事も知っていた。その為、簡単に注目された那月を恨んでると思ったのだが、それを那月本人に言ってしまったら、那月を不安にさせたり、また謙虚になりこのチャンスを逃してしまうと考え、梨香はそれを伝えはしなかった。実際、恵が那月に対し恨みなど持っていなければ言う必要も無いと思った訳だ。 那月 「そう言えば、恵さんの後ろにいた方は?」 梨香 「彼女は朝日若葉、昨年6位にランクインした城岡恵の後輩だよ。城岡恵に憧れて同じ事務所に入って、レースクイーンのノウハウを覚えた事で、昨年ついにトップ10入りしたんだ。」 那月 「やっぱり凄いですね、恵さん。それより、梨香さんも実は凄い人だったんですね。」 梨香 「今更!?まあ言ってなかったこっちも悪いか。ってか4位じゃまだまだだけどな。いきなり後輩がライバルになるし。」 那月 「すみません。」 梨香 「いや、それが嬉しいんだよ!あ、そろそろリハーサルの時間だな。行こうか。」 那月は 「はい。」 本番直前のリハーサルでは、実際のイベントの流れや立ち位置、そこでの各々の動きなどが伝えられた。 主催者 「ここで皆さんにはこちらがプロデュースした衣装を着て貰った状態で、昨年のランキングの順番に登場して頂きますが、神楽那月さん。」 那月 「…?はい。」 主催者 「那月さんは恵さんの後、最後に登場して頂きます。」 恵 「!?」 那月 「え、最後?」 主催者 「はい、やはり今回のイベントで観客が1番楽しみにしてるのは那月さんの登場ですから!」 その言葉に、恵の怒りが更に膨れ上がった。何せ今回は、人気No.1の恵を最初にマシンと登場させた上で、他のレースクイーンらと新衣装で登場し、メインイベントである那月を引き立てるのが恵の仕事だと聞かされれば、プライドの高い恵が腹を立てるのも当然である。 だが、恵と彼女を慕う若葉以外の他のスタッフやレースクイーン達は、そんな大役を担う事になった那月を讃えていた。恵はその怒りと屈辱をグッと胸の内に抑え、拍手で那月を讃えるのだった。 若葉 「先輩!こんなの納得出来ないです!人気No.1の先輩があんな奴の引き立て役だなんて!!」 恵 「…えぇ、私も流石に怒りが抑えられないわ。どうにかして彼女に痛い目を合わせてやりたいわ。」 若葉 「ですね。でもだからって暴力を振るう訳にはいかないし、こっそり呼びつけて口で怒りをぶつけた所で、私の気も晴れません!」 恵 「何かしてやりたいわよね。……そう言えば、以前先代の社長に、ここの地下室を貰ったんだったわ。」 若葉 「地下室…?先代の社長って、恵さんが初優勝した次の年に勇退された方ですよね?」 恵 「えぇ、地下室の存在自体、今や私しか知る人はいないし、部屋に入るための暗証番号が変えられてなければ、そこを使う事が出来るわ。」 若葉 「は…!!もしやそこで監禁……!?先輩も中々悪い事企みますねぇ♥️」 恵 「それはそれで面白いけど、それだけじゃ面白くないわ。」 若葉 「どういう事っすか?」 恵 「その地下室、昔レースクイーンを鍛えるって名目で作られた、ちょっとした“お仕置きグッズ”が置いてあるのよ。」 若葉 「レースクイーンを鍛える為の、お仕置きグッズ…?何ですかそれ?」 恵 「それは後で分かるわ。この企業がプロデュースした衣装をお披露目した後のマシン展示会。その前に彼女と一緒に地下室へ行き、そこでたっぷり“お仕置き”してあげましょう♥️」 若葉 「うわぁ、悪い顔してるー!まぁ、私も楽しみなんですけどね?」 恵 「そうと決まれば、若葉。あなたこの後少し時間あるわよね?準備しておいて欲しい物があるの。」 若葉 「ふっふっふっ…!良いですよ、何でも言って下さい♥️」 イベントが開始され、恵が新作マシンと共に展示会に参加する中、他のレースクイーン達は少し自由時間が儲けられていた。その間、那月を地獄へと陥れる準備が、若葉によって着々と進められていた。 若葉のその準備が終わった頃、丁度他のレースクイーン達の集合時間となった。小さなステージの裏で、レースクイーン達は衣装に着替えていた。 梨香 「へぇ、今回の衣装は確かに攻めてるな!」 那月 「そうなんですか?」 梨香 「ジャケットの下がノースリーブだったり、チューブトップになってるのは当たり前だけど、そのジャケットまで袖が無いのは珍しいんだよ。それに、ショートパンツじゃなくてミニスカートって所もポイントなんだろうな。」 那月 「あぁ、そう言われると確かにそうかも知れませんね。ですが、それがどう攻めた衣装に繋がるんですか?」 梨香 「単純な話だよ。男性は女性の肌の露出が多い程嬉しいんだよ。“実際に穿いてる下着”は見えない様になってるけど、ミニスカートから下着がチラッと見えるのも男性は好きだからな。」 那月や梨香を含め、今回集められたレースクイーンが着る衣装は、大きな襟が付いたノースリーブジャケットに、胸元を隠す程度の布しか無いチューブトップ。更に太ももを大胆に晒すミニスカート、ロングブーツという物だ。そしてミニスカートの中にはインナーのスパッツの様な物が縫い付けられており、所謂“見せパン”の様になっている。それによりレースクイーンは自分の下着を見られる事なく恥ずかしさも軽減でき、パンチラを期待する男性ファンも喜べるデザインとなっている。そしてこの衣装は、7種類全てが同じデザインで、一部が色違いで統一された物となっているのだ。那月は緑を、梨香は赤をイメージした衣装を着ており、他には、青、黄色、紫、オレンジ、ピンクの物が存在し、各々他のレースクイーンがそれを着用しているのだ。 那月 「これでも、自分の下着でなくても、見えるの恥ずかしいですね。」 梨香 「いやいや、これは見せるものだと思えば良いんだよ。実際に隠しているのが下着で、これも見せるアイテムの1つな訳だから。」 那月 「そうですか。奥が深いですね。」 衣装に着替え少しすると、アナウンスが会場で流れ、いよいよステージに上がる時間となった。昨年の人気ランキング6位である若葉から始まり、1位の恵が登場した後、その6人に歓迎される様に最後の那月がポーズを取るという段取りとなっている。 そしてイベントが始まり、若葉がステージへと上がる。ポーズを決めた後、次の出番のレースクイーンがステージに向かう。 梨香 「那月が大トリかぁ!しっかりやって、かっこよさアピールするんだぞ?」 那月 「は、はい。ありがとうございます。頑張ります。」 そして梨香の番になり、大きな歓声と共にかっこ良くポーズを決める。次々にレースクイーンがステージに向かい、ついに裏には恵と那月だけが残った。 恵 「この衣装のお披露目が終わったら、自由時間になるでしょ?そこで少し、一緒にお茶でもしないかしら?あなたとも色々話したい事もあるし、ね?」 那月 「あ、良いんですか?ありがとうございます。是非お願いします。」 恵 「じゃあ、また後で声を掛けるわね。」 那月 「はい。」 そんな短い会話だけして、すぐに恵はステージへと向かって行った。それが恵の罠とも知らずに、那月は周りに認められた事に喜びを感じていた。そして、ついに那月の番がやって来た。 司会 「さあ、そして!最後に登場するのはぁ、期待の新星!!前代未聞の“笑わないレースクイーン”である、神楽那月さんの登場だぁぁああ!!!!」 観客の男性達の興奮が最高潮に達する中、ついにステージに那月が姿を表すと、今回の衣装に良く似合う那月が、一切笑顔を見せぬままステージの中央へと歩いていく。その姿に観客は更に熱狂する。 司会 「ご覧ください!このクールに歩く姿!!正に笑わないレースクイーンという新たなジャンルを築いた立ち振舞いは圧巻です!!」 ステージの中央に立った那月は、上から目線で男性達を見下ろしながらポーズを決めていく。その姿に観客はどんどん魅了され、那月のその立ち振舞いは、クールビューティだの、女神だの、那月様だのと様々なあだ名を付けられ崇められていた。 恵 (そうやって調子に乗っているのも今の内よ…!) 会場の男性達は皆那月に魅了され、今や全員が那月の大ファンだと言って良い。恵はその怒りを内に秘めながら、那月を地獄へと陥れるその瞬間を心待にしていた。 衣装のお披露目イベントが終了し、レースクイーンの写真撮影が始まったが、その会場の殆どが那月の写真を撮ろうと行列を作っていた。正確には、あまりの列に仕方なく別のレースクイーンに並ぶと言った感じで、観客は皆那月の写真を求めていたのだ。 その現状には流石に他のレースクイーンも少し屈辱を覚えるが、結局はファンの人気が全ての業界である。ファンが求めているものを持っている女性だけが生き残る世界であり、固定ファンを取られたのも、全ては自分の魅力が足りないから。そう考える以外にはどうしようもなく、もっと人気を得るために努力し今一度鍛練に励む。これこそが本来のライバル関係の構図なのだが、やはり恵と若葉はそうは思わなかった。プライドが高いが故に、自分が築き上げた不動の人気を、レースクイーンにとって大前提と言える“笑顔”を封印した事で壊された。恵はそれがどうしても許せなかったのだ。そして、恵を慕う若葉もまた、No.1の座をこんな形で奪う那月を認めない。 そして、写真撮影のイベントが終わり、レースクイーン達は着替え各々の控え室へと戻る中、那月は恵に声を掛けられ若葉を含め3人で、恵の控え室に向かうのだった。 恵 「これ、私のオススメの紅茶なの。どうぞ?」 那月 「あ、ありがとうございます。あの、この衣装、先に着替えた方が良かったのでは?」 恵 「そう、レースクイーンって、こういう露出の多い衣装をずっと着てなきゃいけないから、冬って結構冷えると思わない?」 那月 「え?あ、そうですね。確かに、きっとかなり寒いですよね。」 恵 「そんな時に、私はこれを飲むのよ?ただ香りと味が良いってだけじゃなくて、これは身体の芯から温まるのよ。だからあえてこの衣装のまま来て貰ったって訳。」 若葉 「恵先輩の紅茶は絶品ですから、是非飲んでください!」 那月 「なるほど。じゃあ、頂きます。」 身体が冷えてるからこそ、那月は着替えたかったのだが、その状態で飲むからこそ、紅茶の暖かみが伝わると言われると納得がいく。だから那月は何の躊躇いもなく、紅茶を一口飲んだのだ。 那月 「あ、本当だ。美味しいです、この紅茶。」 恵 「ホント?気に入って貰えて良かったわ。」 那月 「はい、それに身体も暖まりますし、……何か、ちょっと、つい眠たく、なります…ね。」 紅茶を飲み干した所で、身体が暖まった那月は、そのままソファーに座ったまま、眠ってしまったのだ。 恵 「ふふ…♥️ここまでは計画通りね。」 若葉 「はい!後はこの台車にのせて、地下室まで行ければ完璧っす!」 恵 「さ、急いで運ぶわよ。即効性のある睡眠薬だから、逆に起きるのも早いみたいだし。」 若葉 「人通りの少ない経路も把握済みですよ!すぐ台車用意しますね!」 恵が出した紅茶には、即効性のある睡眠薬が入れられていた。何の疑いも無かった那月は、眠らされてしまい、そのまま台車に乗せられてしまう。万が一他のスタッフに見られても誤魔化せる様に、眠らされた那月に大きな布を掛け、地下室へと運んでいく恵と若葉。 恵 「若葉、周りに誰もいないか確認して。」 若葉 「わかりましたー!」 そう言って急いで廊下を進み、曲がり角を確認した瞬間―― ??? 「あら?貴女は確か…、朝日若葉さん!」 若葉 「あっ!えっと、大村…、麻友美さん?でしたっけ?」 今回のイベントに呼ばれていたレースクイーンの1人で人気ランキング5位の、大村麻友美(おおむら まゆみ)とばったり出会ってしまったのだ。 若葉 (ヤバ!!早くこの場から去って貰わないと…!!) 「あ、えっ、えっと…、どうしてこんな所に!?」 麻友美 「実は、部屋から出たら道に迷ってしまって…!展示会場に行きたいんですけど、どちらから行けばよろしいですか?」 常にマイペースでおっとりしている麻友美は、単純に方向音痴だった為に、控え室から展示会場へ行く所で道に迷っていてのだ。 若葉 「あぁ!!確か展示会場は、こっちの道を真っ直ぐ行って、左に曲がってまた真っ直ぐ行って、今度は右に曲がれば、すぐに会場の扉があったと思います!」 麻友美 「まあ!ありがとうございます。助かりました!」 若葉 「はい!急いで行った方が良いですよ!どんどん混雑しちゃいますし!」 麻友美 「そうさせて頂きます。ありがとうございました。では、失礼しますね。」 若葉 「お気を付けて~!」 どうにか麻友美をやり過ごし、ホッと一息付く若葉だったが…… 若葉 「って、今教えた道から恵先輩が来ちゃうーーー!!!!やばいやばい!!!」 親切に教えた結果、その道は恵が那月を乗せた台車を運ぶ道であった。若葉は慌てて麻友美を追いかけ道を戻るが、そこにはすでに恵と麻友美が鉢合わせてしまっていた。 麻友美 「あら恵さん、お疲れ様です。展示会場は、この道を進んで、右に曲がればよろしいでしょうか?」 恵 「ごきげんよう、麻友美さん。そこで合ってますよ。私も後で行こうと思ってますから、お先にどうぞお楽しみ下さい。」 麻友美 「そうでしたか、ではお先に失礼しますね。ありがとうございました。」 恵は那月を乗せた台車をすぐ近くに隠しておき、麻友美をやり過ごしていたのだ。 若葉 「ふぇぇぇえ、危なかったですね!」 恵 「あんたが大声で騒いでたお陰で、逆に助かったわ。彼女には怪しまれてないし、問題無いわ。早く行きましょ。」 恵と若葉は、那月の存在を気付かれる事無く、地下室へと繋がる扉の前まで辿り着いた。恵だけが知る暗証番号を入力し、その扉を開けると地下まで続く長い階段となっていた。 恵 「ここからは台車ごと持って降りるわよ。」 若葉 「ハードですね…。」 地下室へ続く扉にロックを掛け、恵と若葉は台車も持ちながらゆっくりと階段を下りていく。階段を下りると、再び大きな扉があり、そこもまた違う暗証番号を入力する事でロックが解除される。地下室は防音となっている為、地下室の扉はかなり重く、分厚い物となっていた。大人の女性が二人掛りでどうにか扉を開け那月を部屋まで運んでいった。 若葉 「うわっ!何ですかこの部屋?明らかに普通じゃないですよね…?」 その殺風景で無機質な部屋の中央には、SMクラブで見られるような金属で出来たX字型の磔台が床に設置されていた。 恵 「うっふふ…♥️彼女をこれで拘束するのよ。」 若葉 「これは確かに閉じ込めるより怖いっすね!!」 恵 「勿論、拘束するだけじゃ終わらないわよ?寧ろこの拘束が無いと、彼女に“アレ”が出来ないじゃない。」 若葉 「ん?アレって、何の事ですか?」 恵 「話は後で。まずは眠ってる間に拘束しちゃいましょ?」 若葉 「了解でーす!」 台車から降ろされても眠ったままの那月は、恵と若葉によって、その異質な拘束台へと、磔にされてしまうのだった。
Comments
ありがとうございます。現在くすぐりシーンを執筆中です✨
こーじ
2021-11-10 07:53:37 +0000 UTCこういうの本当にワクワクしますねぇ。
ガリタル
2021-11-10 01:35:48 +0000 UTC