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正義のヒロイン、レイナの弱点①

魔族 「なっ……!?まさか…、この我が、こんな女ごときに…!」 レイナ 「女ごときで悪かったわね!」  彼女の名はレイナ。魔界からやってきた魔族に対抗する力を持つ“能力者”と呼ばれる存在だ。鮮やかなピンク色の髪をなびかせ凛々しく立つその姿は、魔族などまるで恐れてはいない強気な姿勢を醸し出していた。その強気な姿は服装にも表れており、上半身は長袖のジャケットの袖を捲り、腕がある程度隠れる程の長いグローブを付け肌の露出が抑えられているが、ジャケットの下に着用しているトップスは引き締まった腹部を大胆に露出する物。下半身もタイトなミニスカートを着用しており、太腿も晒し自らの抜群のスタイルを見せつけるような意思を感じられる服装となっている。勿論それらが醸し出す強気な見た目は、全て彼女の強気な性格をそのまま表現しており、正義感も強い彼女は今までに何体もの魔族を消滅させてきた若き強者である。  そんな彼女が戦う敵である魔族は、人間、特に女性の“苦しみ”を好み、それを吸収し力を得ている。その魔族に対抗できるのは能力者だけであり、レイナは正に今、その魔族と戦っていた。彼女と戦っている魔族は、大柄な魔王と言った風貌で、魔族の中でもトップクラスの実力者と言われていた。だがレイナも若き強者と呼ばれる能力者、その力は伊達ではない。 レイナ 「確かにあんたは今までの魔族の中じゃかなり力ありそうだったけど、所詮私の敵じゃないわ。残念だけど、これで終わりよっ…!」 魔族 「ぐわあぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああああああああ!!!!」  能力者の中でも彼女の力は群を抜いており、魔族が放つ魔力によるダメージを全て無力化する能力を持っている。どんなに強い魔族の攻撃だろうが、背後からの不意打ちを仕掛けられようが、彼女がその力で全身を包むバリアを展開しているだけで、ダメージは一切受けない。と言っても、それは魔力によるダメージだけで、殴る蹴ると言った物理攻撃は通用する。だがレイナは長い年月を掛け能力を応用する技術を生み出した。そしてその力で全身を包むバリアに、“物理的な痛み”などの痛覚を含め、生命に関わるあらゆる感覚を遮断、無効化するスキルを身に着けたのだ。  しかし防御に特化した能力では、自身がダメージを受けないだけで、逆に魔族を倒せるダメージも与えられない。だからレイナは更に応用を効かせ、その能力を“攻撃”に変換できる魔具と言われる武器を作り出した。拳銃の形をした魔具に力を注ぎ発砲、その放たれたエネルギー弾を魔族に打ち込む事で、ダメージを与えられるのだ。レイナの力は正に魔族だけに一方的にダメージを与えられる無敵の力なのである。そんなレイナの前にはトップクラスの魔族も打つ手がなく、あっさりと消滅させられてしまったのだ。 レイナ 「……ふぅ。最近この街はよく魔族が現れるわね。前は見た目からして雑魚って感じのしか出なかったのに、今みたいなデカいのが頻繁に来るようになったわね。」  レイナは知らないが、魔族は強い能力者の“苦しみ”をより好む。その為、強い能力者を見つけ出し、大体の居場所を特定するという索敵能力がある。つまり、腕に自信のある魔族ほどレイナの“苦しみ”を求め、レイナの住む街に姿を現すのだ。そしてレイナを狙う魔族がまた消滅した事で、レイナに目を付けた別の魔族がすぐ近くまでやって来ていた。 ??? 「彼をあっさり倒すとは…、中々やりますね。ですが、私が貴女の苦しみ、存分に頂きますよ。」 「きゃぁぁあああああ!!」 「うわぁああ!!?」  レイナが大柄な魔族を倒した次の日。またしても襲撃は始まった。新たにここへ来た魔族が街を襲い、レイナが現れるのを待っていた。ちなみに、魔族は基本的に人間を殺さない。人間から“苦しみ”を吸収しなければ力を得られず、力の無い魔族はやがて力を失い消滅してしまうのだが、その“苦しみ”という概念が魔族にとっては厄介で、本人を直接責めた上でその相手に“苦しみ”を与えないと意味がない。どういう事かと言うと、例えば強い能力者から力を得るために、その能力者にとって大切な人を殺し悲しませ、その能力者が“苦しみ”を感じたとしても、その“苦しみ”を吸収する事は出来ないというのだ。だから無駄な殺生をして力を使うぐらいなら、人間を軽く脅しそれを阻止するために能力者を待った方が効率が良いのだ。言わば街を襲撃するのは能力者を呼び出す合図の様なものである。 レイナ 「……!?また魔族!!?昨日倒してもう次が来るなんて。本当に懲りないわね…!」  すぐ近くで人々の悲鳴が聞こえ、レイナはすぐにその場へと駆けつけた。 レイナ 「魔族は一体どこに…?……って、もしかして、あいつ?」  逃げ惑う人々を掻き分け辿り着いた現場にいたのは、自分より少し背が低い、少女の様な魔族だった。いや、少女の様、と言うよりは少女そのものであった。また、その女性型の魔族はかなり露出度の高い大胆な服を着ており、胸元を隠すだけのチューブトップにショートパンツと言う、男性なら目のやり場に困る格好をしていた。あどけなく幼くも見える顔だが、レイナに引けを取らない程のスタイルで、思わずそれを強調し誘惑する類いの魔族なのかと疑う程であった。 ??? 「待っていましたよ。貴女が噂のレイナ、ですね?」 レイナ 「へぇ、魔族にも見た目まんま人間な奴もいるのね。今までは悪魔みたいなのしか見た事なかったけど。」 ??? 「私をあんな低俗な魔族と一緒にしないで下さい。」  何を基準に低俗かどうかを決めているのかレイナには理解も出来ず、それを特に気にする事も無かったが、どんな見た目でどんな力があろうが魔族は魔族。レイナはすぐに魔具の銃を手に取り、それを構える。 ??? 「随分せっかちなんですね。自己紹介もまだだと言うのに。」 レイナ 「自己紹介?」 ??? 「私の名前はティナ。これからよろしくお願いしますね、レイナ。」  ティナと名乗る魔族は、あまり表情を変えないまま一度だけ頭を下げて挨拶を交わす。自分の名前を知っている事にも驚いたが、今までの魔族と違い冷静な態度で振る舞う相手にレイナは警戒するも、その強気な姿勢で反応する。 レイナ 「何がよろしくよ。あんた、私と馴れ合いにでも来た訳?」 ティナ 「いいえ?貴女から“苦しみ”を頂に来たんですよ?だからその挨拶をしたんです。」 レイナ 「私も随分と舐められたものね。私の名前を知ってるって事は、あんたも私の事分かってるんでしょ?昨日の奴も言ってたわよ。最強の能力者である私の力が欲しくて来たってね。」 ティナ 「はい。勿論それを聞いて私も来ました。貴女程の能力者の苦しみなら、場合によってはそれだけでこの世界を自分の物に出来るだけの力が得られると噂になってましたよ。」 レイナ 「……成程ね。魔族がやたらと命懸けでこの街に来るのは、私から得られる強い力が欲しいからなのね。でも、だったら分かってると思うけど、あんたも今日で終わりよ!」  そう言って銃にエネルギーを込めそれを放つ。完全に隙を突いた一撃だったが、ティナはその銃弾をヒラリとかわした。 ティナ 「中々の攻撃スピードですね。流石です。」 レイナ 「ふんっ!あの程度で驚いて貰っちゃ困るわ。それこそ、ただのあいさつ程度の攻撃よ?でも、大抵の魔族ならあれで大ダメージを受ける事になるから?確かにあんたは今までの低俗な魔族とは違うのね。」 (回避に特化した魔族…?それとも、ただ小柄なだけ?)  見た目通りと言えばそれまでだが、小柄な魔族自体見た事が無かったレイナは、自分の攻撃をあっさり回避したティナに、より一層警戒する。 ティナ 「それはどうも。では、今度はこっちの番です。」  ティナは手を掲げドス黒いエネルギーの塊を作り出し、それをレイナに向かって放つ。そのエネルギーはレイナに直撃し、あたり一面には大きな爆発が起こった。普通ならこんな物を真正面から受けたらただでは済まないのだが―― レイナ 「意外にやるじゃない。こんな技まで持ってるなんてね。ま、私の力の前には無力だけど。」  当然レイナは傷一つ負ってはいなかった。彼女の能力で生み出されたバリアは、どんな魔族の攻撃も打ち消すのだから。 ティナ 「……成程。これは想像以上ですね。こちらの魔力が一切通用しないとは。」 レイナ 「私の能力までは噂にはなってなかったのね。まあ、私と戦う魔族は皆消滅してるし、この現場を見てる奴でもいない限り、私の能力なんて噂になりようがないものね。だから、大人しく消えなさい…!」  レイナは素早いティナに確実にダメージを与えるため、エネルギー弾を何発も連射する。が、ティナも負けじと応戦する。消費する力を最小限に抑えるべく、避けれるものは回避し、被弾しそうな銃弾は魔力球を作り出してぶつける事で相殺する。 ティナ 「確かにその力は厄介ですが、こちらの魔力を当てればその銃弾は魔力を消滅させるのにエネルギーを使い果たします。」 レイナ 「でも、あんたら魔族の攻撃は、私には絶対に届かない。それに、そうやってこっちの攻撃を防いでるだけじゃ、ただ力を失うだけなんじゃないのかしら?どちらにしたって自滅するだけよ?」 (こいつ、今までの魔族より頭が良い…。ちゃんと考えて行動してる…?)  冷静に、そして強気に振る舞うが、レイナはその違和感にすぐに気が付いた。今までレイナが戦ってきた魔族は自我や本能を剝き出しにして力任せに攻撃してきたが、彼女は違った。人間の様にしっかり考え相手を分析しながら戦ってくる。だが、どちらにしろ負けの無いレイナは、この時はただ面倒な相手程度にしか思っていなかった。  人間、能力者は力を使っても、食事をしたり、睡眠などして身体を休めれば消費した能力も回復するが、魔族は存在そのものが力であるが故に、人間から“苦しみ”を得ない限り、力を消費する一方なのだ。長い間魔族と戦い続けてきたレイナはそれを知っているからこそ、強気でいられるのである。 ティナ 「そうですね。ですが、私はあなたから苦しみを頂きに来たので、このままでは終わりませんよ?」  今度はティナの方が攻め込んだ。両手をかざし魔力を解放すると、そこから突風が起こりレイナに一直線に向かっていく。 レイナ 「何…?そんな風でどうしようって?」  その風でジャケットが吹き飛びそうになるのをどうにか抑え込みながら、余裕をアピールする。実際、その突風には魔力が込められている訳でも無く、レイナでなくてもダメージは無いだろう。だからこそ、レイナにもこの攻撃の意図が読めなかった。 ティナ 「なら、これがもっと強くなったら、どうですか?」  その突風を更に激しくすると、レイナは徐々に風に押され、ついにはその身体が浮いて吹き飛ばされてしまう。そして空高く飛ばされた所でティナが風を止めると、空中に飛ばされたレイナはそのまま重力に任せ落下してしまう。 ティナ 「これなら魔力を無力化する能力でも無意味ですよね?これで身体を痛めつければ、あなたから苦しみが得られます。」 レイナ 「私の事、ちょっと舐め過ぎよ!」  そのまま落下すると思われたレイナだったが、軽い身のこなしで綺麗に着地した。 レイナ 「私には痛みを防げるバリアがあるけど、それは痛い思いをしなくて済むだけじゃなくて、痛みを生む衝撃をゼロに出来るのよ。それに、能力を体内でコントロールすれば、空中で態勢を変える事ぐらい出来るし、高い所から着地するぐらい簡単にこなせるのよ。」  余裕を見せながら、今度は銃口に大きなエネルギーを溜め、それを一気に発砲した。まるで高圧洗浄機の様なもの凄い勢いでエネルギー弾がティナに向け発射された。 ティナ 「!!?………っくぅぅうう…!!!」  ティナも負けじと大きな魔力の盾を作り出し相殺を試みるが、魔力を無力化するエネルギーが留まる事なく発射され続け、ティナはどんどん魔力を消耗する。このままでは魔力が尽きるか、盾が破壊されダメージを受けると思い、盾でエネルギーを防いでいる間に高く飛び上がり、何とかレイナの攻撃を回避した。 レイナ 「今のは危なかったみたいねぇ。そんなんで、この私に苦しみなんて与えられるのかしら?」  そういって軽く複数の弾を発砲する。しかし空中に飛び上がったティナも冷静に対応し、レイナの軽いエネルギー弾も魔力の球で全て迎撃する。 ティナ 「確かに、かなり魔力を消費してしまいましたね。仕方ありません。今日は挨拶に来ただけですし、ここで失礼させて頂きます。次回の本当の戦いを迎える為に、ここで死ぬ訳にはいきませんから。」 レイナ 「何よ、本当の戦いって。私の実力を試しに来たとでも?」 ティナ 「はい。何の情報も無しにあなたから苦しみを得られるとは思ってませんので。」 レイナ 「あっそ。でも、残念だけどあんたに本当の戦いなんて無いわ。」 ティナ 「……?どういう意味ですか?」 レイナ 「文字通りの意味よ。私があんたをここで逃がすと思ってんの?」 ティナ 「それなら大丈夫です。私は逃げ足には自信があるので。それではまたお会いしましょう。」 レイナ 「逃がさないって言ってんでしょっ!?」  ティナに向け素早くエネルギー弾を発砲するが、それをあっさり避けた後、またレイナに一礼したティナはそのまま瞬時に姿を消し、その場から消え去ってしまった。 レイナ 「くっ…!テレポート…?私が魔族を逃がすなんて……!!……確かにあいつは今までの低俗な魔族とは違うみたいね。次は絶対に倒してやるんだから…!」  確かにティナは今までの魔族とは明らかに違った。初めて倒せずに逃がすという失態をした事で改めてそれを実感し、レイナは悔やみながらも次の対峙に備えるのだった。


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