ティックリー・アドベンチャー 4-6
Added 2021-10-04 06:41:01 +0000 UTCアイナの体内で膨れ上がった“大きな力”が一気に放出されると、アイナ自身とミツキをくすぐるマジックハンドと動きを封じていたバインドリングが一瞬にして砕け散る。そしてその力の波動は使い魔達を襲い、キュバスとジエルを吹き飛ばしたのだ。 ジエル「ひゃわぁぁぁぁあああああ!?」 キュバス「きゃぁぁあああ!!……いっ、一体何なの…!?」 アイナが起こした力の波動により、ミツキとアイナはようやくくすぐりから解放され自由の身となった。しかし、“得体の知れない力”を自分でもよく分からないまま放ったアイナは、息を切らしその場でしゃがみ込んでしまっていた。 アイナ「…はぁ、…はぁ、……何が、起こったの…?」 ミツキ「助かったよアイナ。本当にあのままくすぐり殺されるかと思って焦ったが、何とか覚醒が間に合って本当に助かった。」 アイナ「か、覚…醒…?って…、何…?何の事…??」 ミツキ「アイナ、君は能力者だ。」 アイナ「えっ…?」 ミツキ「とりあえず、まずはこいつらを退ける事が先決だ!」 キュバス「……!?ジエル!!もう一度バインドリングを――」 ミツキ「もう遅い。」 ミツキは瞬時に武器を拾うと、一気に間合いを詰めてジエルを攻撃する。 ミツキ「スプラッシュ!」 ジエル「うぎゃぁぁあっ!?」 浄化の力を持つ水の能力。その水飛沫をもろに受けたジエルは浄化の力で一気に魔力を消費させられる。ミツキは拘束手段を持つジエルを先に攻撃する事で、使い魔達の反撃の手立てを失わせたのだ。 ジエル「うっ…、くぅ……!」 キュバス「ジエル…!しっかりして…!!」 ミツキ「諦めろ。そいつが今まで魔力を使いすぎていて疲れ切っている事は分かっている。もうまともに魔力は使えないだろう。」 ミツキのその発言の直後、ジエルを覆うように魔法陣が展開され、ジエルはその光に包まれた。 ジエル「キュバスちゃん…、ごめん……。」 力の無い言葉で謝罪しジエルはそのまま転移魔法によりその場から姿を消していった。 アイナ「ジエルさんが、消えた…?」 キュバス「……こうなってはもう私達の負けよ。今回は大人しく引き下がってあげるわ…!あくまで今回の目的は実験だったし。という訳でじゃ~ね~!またくすぐらせてね?ミ・ツ・キ・さんっ❤❤」 キュバスは捨て台詞を吐き、空中へふわりと舞い上がると、そのまま逃げるように倉庫から飛び出し、飛んで行ってしまった。 アイナ「………あっ!!い、良いの…!?逃げちゃったよ…!?」 ミツキ「あぁ、今回は奴らを追い詰める事より、私達の魔力を温存したかったから好都合だ。」 アイナ「あ、あの…。私……能力者だったの…?」 ミツキ「話しは後にしよう。ライカとアカネも心配だし、まずは町の状況の確認と合流をさせて欲しい。アイナ、立てるか?手を貸そうか…?」 アイナ「だ、大丈夫…!歩けるよ!」 ミツキ「そうか…。……本当にすまなかった…。」 ミツキが深刻な顔で小さく発した謝罪の言葉は、アイナにも聞こえていた。だが、アイナはあえて何も言わなかった。正確に言えば、そこには自分の思う所があり、どう返すのが正解か分からなかったのだ。 その後、ネオマジックハンドによる被害者も全員無事であった事を確認し、ミツキ達4人はアイナの家で合流した。 アイナ「それで!?私は能力者だったの!?何で覚醒したの!?そもそも覚醒って何!?」 アカネ「私も気になる!アイナが能力者だなんてさっきまで知らなかったし…!」 ミツキ「まずは覚醒の事から話そう。自覚のない能力者、つまり今回のアイナの様な“自分の事を無能力者だと思っていた能力者”が、その能力に気付き魔力を解放する事。それが覚醒だ。自覚の無い能力者の魔力は体内で眠っている所為で、ライカの様な“魔力を感知する能力に長けた者”でなければ気付けない程小さく、実際私もアイナの回復薬を飲むまで気付かなかった。 アカネ「じゃあ、あの回復薬そのものにに“魔力が注がれている”感覚って…!」 ミツキ「そのままの意味だ。極少量だが、無意識にアイナから注ぎ込まれた魔力が私達の魔力と触れた事で私達の体内で力が目覚め、“実際にアイナの魔力が注ぎ込まれた”と感じる事が出来たんだろう。最初からアイナが能力者だと気付いていたのはライカだけだ。」 アカネ「最初からって…、マジで!?」 ライカ「はい、マジです。ですが、本人は無能力者だと思っている様でしたし、突然それを告げてもアイナさん自身が一番困惑してしまいますから、あえて黙っていました。」 アイナ「そうだったんだ…。」 ミツキ「話しを戻すぞ?自覚の無い能力者が覚醒すると、本来その能力者が持っている筈の魔力が急激に体内で溢れ出し、“その一瞬だけ”爆発するような強い力が生まれるんだ。これがマジックハンドやバインドリングを消滅させ、使い魔達を吹き飛ばした魔力の波動の正体だ。」 アイナ「何でミツキさんは無事だったの…?」 ミツキ「アイナの能力にも関係しているが、一番はアイナが私の事を助けたいと強く願ってくれたからだろう。それが覚醒の理由でもあるだろうしな。」 アイナ「確かに、私の事ばっかり守ろうとしてくれたミツキさんを助けたくて、自分が能力者だったら…って思った瞬間、身体の中から何かが溢れ出すような感覚になったっけ…。でも、どうして私がそう思ったって分かるの?」 ミツキ「アイナの魔力の波動を受けた時、とても優しく暖かい魔力を感じたんだ。」 アイナ「……それで、分かるものなの?」 ミツキ「能力者とはそういうものなんだ。」 アカネ「それで?アイナの能力って一体何なの?」 ミツキ「強化系の能力だ。主に、自分の魔力を使って別の何かに“力を付与”したり、その物の“力を増幅”させたり“潜在能力”を高めたり出来る能力だ。」 ライカ「なるほど。つまり、回復薬はアイナさんの魔力でより強い回復力を“付与”された上にその回復能力が“増幅”し、アイナさん自身が“潜在能力”を高められ第六感のような閃きを得た、と僅かながらに魔力がしっかりと働いていた訳ですね?」 アイナ「じゃあ、ミツキさんだけ吹き飛ばさなかった理由は?」 ミツキ「私を守りたいという思いがアイナの魔力そのものに“守護する能力を付与”されたのだろう。」 アカネ「でも、使い魔達を吹き飛ばす程の魔力があったなんて凄いじゃん!!」 アイナ「ほ、ホント…!?それ、すごい事なの!?」 ミツキ「それなんだが、アイナ自身が“私を守る為に強い力が欲しい”と望んだ事で魔力の波動に“力が増幅”された事も理由の一つなのだが、正直それでもあそこまで強い波動になるとは思っていなかった。」 ライカ「……ですよね?いくら覚醒したばかりで魔力が不安定な状態とは言え、今のアイナさんからそんなに強い力は感じませんから、私もそこまで強い波動が起きたとは信じられません。」 アイナ「…私、全然魔力無いの…?」 ミツキ「今まで魔力の存在はもちろん、自分が能力者だと思っていなかった訳だし、魔力が少ないのは必然だ。それでもあれだけの波動を起こせた理由は……、奴らの“くすぐり”ではないかと思っている。」 アカネ「はい…?」 ライカ「くすぐられた事でアイナさんの力が増幅したと…?」 ミツキ「正確に言えば、奴らが集めている笑いのエネルギーだな。グリ山でアカネが起こした大爆発。あれもアカネが極限までくすぐられた結果起こったものであり、アカネ自身、力が膨れ上がるのを実感したんだろう?」 アカネ「うん…。どんどん魔力が力を蓄えるみたいに上昇して…って言うのかな?」 ミツキ「ティックラーも言ってみれば“特殊な力を持ったただの能力者”だ。そいつが笑いのエネルギーで力を蓄えているのと同様に、そのエネルギーを放出している側の私達にも、一時的にだが魔力をチャージさせて強い力を生み出す事が可能なのではないかと思っているんだ。」 ライカ「有り得ますね!どういう理由で私達から笑いのエネルギーが放出されているのかは分かりませんが、そのエネルギー源が魔力を増幅させているならば、私達もティックラーと同じように吸収する手段を得られればより強い魔力を得られる筈ですから。」 アカネ「って事は、あいつらが力を得ているのと同じで、私達もちょっとずつ強くなってるって事?」 ミツキ「だからこそアカネの魔力に変化が起きたと説明はできる。もちろんこれもまだ不確かな事だが、可能性としては十分に有り得ると思っている。」 アカネ「まあだからってくすぐられるのは嫌だけど、ただやられるだけじゃ無いって思うと何だか心強いというか、少し頑張れる気がするね。」 ライカ「そうですね。私達にも希望が見えてきましたね。」 ミツキ「正直これ以上強くなられると太刀打ち出来ないと思っていたからな。」 アイナ(敵は、もうレディナイツの皆でも手に負えない程強いんだ…。) アカネ「そういえばさ、アイナも自分で疑問に思ってたけど、どうしてアイナは能力者の自覚が無かったの?」 ライカ「それは能力者には意外とよくある例ですよ。両親が能力とは無縁の平凡な暮らしを求めた場合、必然的に生まれた子供は能力者であるという事など気付けません。」 ミツキ「魔力を持っているだけでそれを狙うハンターや魔物も多いからな。能力者と知らずに育つことで魔力を体内で眠らせる事が出来れば、そういった者達から狙われる事もなくなる。子供を産んだ能力者は能力を仕事にしていない限り、そのようにして能力者である事を隠そうとするのが今の時代のようだ。だからこそ覚醒という言葉が生まれたぐらいだらな。」 アイナ「それじゃあ…、両親が魔物に襲われたのって……。」 ミツキ「能力者の魔力を狙う魔物だったのだろう。能力者も魔力を使わなければ筋肉と同じで衰えるが、魔力を眠らせて誰にも気付かれない程の僅かな魔力になる事は無い。つまり、アイナを産んでから魔力を一切使わなかったとしても、その類の魔物には気付かれてしまうだろう。」 魔物の中には能力を持たない人間を餌にするものもいれば、魔力そのものを餌にする物もいる。そういう魔物は必ず魔力を感知する能力を持っており、ターゲットを自ら索敵し選んで襲ってくるのだ。アイナの両親はそういった魔物に狙われてしまったのだ。 ミツキ「アイナ。ここ最近は魔力を狙う魔物も減ってきているし、能力者を狙うハンターはライカ並みに魔力の感知に特化された力を持っている。そういう意味では能力者である事を自覚し覚醒していた方が自分の身を守れるし安全だ。だから私はアイナの覚醒を信じ、それを“切り札”として結果的には利用してしまった…。今回の件で、散々くすぐられ苦しい思いをさせてしまったのも、能力者に目覚めさせてしまったのも、全て私の所為だ。謝って済むものではないが…、本当にすまない。この罪を…、どうか償わせてくれ…。」 アイナ「償うって……?」 ミツキ「君が望む事なら何でも構わない。私が憎いなら殺しても構わない。」 アイナ「そんな!……私、ミツキさんに感謝してるんだよ!?」 ミツキ「…何……?か、感謝…?」 アイナ「私、悔しかったの。身を挺して助けようとしてくれたミツキを見て、私が足枷になってるんだって思った時、私自身が能力者だったらって望んだんだもん!それをミツキさんが覚醒させてくれたんだよ?」 ミツキ「いや、そもそもこんな事にならなければアイナが能力者である事を望む事も無かったんだ…。」 アイナ「…私、能力者に憧れてたの。自分の両親が魔物の被害にあった時、自分が能力者だったら、両親を守る事も出来たし、自分がそういう目に遭った時でも、両親が命を賭けて守ってくれたこの命を守れるのかなって…、ずっと思ってたから…。」 ミツキ「そうだったのか…。だが、私はどうしても何か君の力になりたい。君が望む事を叶えたいんだ。」 アイナ「…くすぐっても良いの?」 ミツキ「んぐっ…!……も、もちろん、君がそれを望むなら、いくらでもくすぐられよう…!」 アイナ「あっはは!!ミツキさん面白~い!!」 ミツキ「なっ、何…!?」 アイナ「冗談だってば、ホントに何もしてくれなくて大丈夫だよ……。」 ミツキ「……アイナ?」 アイナ「…ミツキさん、私を…、能力者として育てて欲しいの!!」 ミツキ「っ!?…も、もちろんだ!私に出来る事なら喜んでさせて貰おう…!」 アイナ「…でもね?ミツキさん達、すぐにまた旅に出るんでしょ?魔女を倒すために…。」 ライカ(……成る程、そういう事ですか。) ミツキ「……それは、そうだが…。」 ライカ「そうなるとアイナさんの修行に付き合うのは難しいですねぇ?」 アカネ「ライカ…?」 ミツキ「それでも、少しの間なら…!」 ライカ「いいえ、優先させなくてはならないのは魔女の討伐です。それに、私達は力を得た魔女にやられ、二度と戻ってくる事も出来ないかも知れません。」 アイナ「……!!」 アカネ「ちょっとライカ…?突然何言ってるの…?」 ライカ「私達に頼もしい仲間が増えれば話も別ですけどね?」 アイナ「………………。」 ミツキ「お前、何を言って……、っまさか…!」 ライカ「アイナさん、自分の思いをしっかり、言葉にして下さい。あなたがこれから、どうしたいのか。」 アイナ「ライカさん……。……私、皆と一緒に戦いたいですっ!!私を、連れてって下さい!!!」 アカネ「うえぇぇえええええ!?」 ライカ「ふふ…!だ、そうですよ、リーダー?」 ミツキ「なっ……!!だ、駄目に決まっているだろう!?アイナを連れて行くなんて危険すぎる!!」 ライカ「もちろん危険は伴いますし、戦う以上覚悟はして頂きます。ですが、私達も出来るだけ守るつもりですし、能力者としての修行も旅の中でしてあげたいと思っています。それに何より、アイナさんを覚醒させてしまったミツキには、アイナさんを近くで守り続けなければならない義務があると思いますよ?」 ミツキ「……し、しかし…!!」 アイナ「私、覚悟はできてます!出来る限り自分の身は自分で守ります!一緒に連れてって下さい!!お願いしますっ!!」 アカネ「私は賛成だよ!アイナの力はすっごい頼りになると思うよ!!」 ライカ「もちろん私もです!なにより、この先にもう町はありません。アイナさんの回復薬を作る技術があればそれだけ私達の力になります。」 ミツキ「……アイナ。私は命を賭けても君を守る覚悟はある。しかし、その私が命を落とした時、君は自分でその身を守るしかなくなってしまう。それに、敵はくすぐり以外の攻撃は殆どしてこない。相当危険な旅になる。その覚悟は…、出来ているのか?」 アイナ「うんっ!!甘くないのも分かってる!だけど、一緒に行きたい…!!」 ミツキ「…全く、これだからこのチームのリーダーは苦労が多いんだ…。」 アカネ「ごめんね~!」 ライカ「ではリーダー。改めて宣言して下さい?」 ミツキ「アイナ。私達と一緒に来い!!」 アイナ「ありがとっ!!必ず、役に立ってみせるから!!」 こうして、レディナイツに新たな仲間、強化系の能力を持つアイナが仲間になったのだ。そして、このアイナの力が今後の戦いにおいて最も重要な存在になるのであった。もちろん、そんな事を今のミツキ達は知りもしないのだが。