NokiMo
こーじ
こーじ

fanbox


ティックリー・アドベンチャー 4-1

アイナ「この作業がいつも大変なんだよなぁ…。でも、これも生活の為だし仕方ない!」  港街クッスとグリ山を繋ぐ道、そこには薬にもなる聖水が汲める川が流れている。港町に住む娘、アイナは日常生活の一部として今日も水を汲みに来ていた。 アイナ「でも不思議だよね~。この近辺に流れているクッス川だけが聖水だなんて。海に流れたらただの塩水だし、グリ山の方はただの淡水だし。“魔力”っていうのが影響してるのかな?」  アイナは魔力を持たない人間、つまり無能力者である。もちろんこの世界には多くの能力者が存在しているが、決してアイナの様な無能力者が珍しい訳では無い。だからこそレディナイツの様な能力者の騎士団が存在しているのだ。  魔力を持たないアイナにはよく分かってはいないが、この道には空気中に多くの魔力が含まれており、それが川に注ぎこまれている為“聖水”としての効能が強い川となっているのである。 アイナ「よしっ!こんなもんで良いかなっ!早く帰ってお薬作らなきゃ!」  この世界で最も大きな港町であるクッスは、能力者が海へ出る手段として船を求める町であり、多くの能力者が遠征の為に訪れる。そこでアイナはたった一人で薬草などの消耗品を売る店を切り盛りしている。こうして聖水を汲んできては店で調合しながら薬を売って生活しているのだ。  必要な分の聖水を汲み終えたアイナが港町に戻ろうと歩き出したその時だった。 ???『おっ、この娘で良いや~!!ねえねえそこの女の子~!』 アイナ「えっ…?ちょっ、えぇ!!?」  突然声を掛けられたアイナは、その声の主に驚きを隠せず思わず声を上げてしまった。 アイナ「き、黄色い手が…、しゃべってる!?」  そこにいたのは、空中を浮遊する6つの黄色い“手”だった。キャラクターが身に着けるような手袋のように手首から下は存在しない“手”だけが、自由に浮遊して自分にしゃべりかけて来たら、当然驚くのも無理はないだろう。 ???『私はジエルっていう天使なんだけど~、訳あって私の能力で作った“ネオマジックハンド”で別の所から声だけを伝えているの~!』 アイナ「天使…?の、ジエル…さん?」  ネオマジックハンドと呼ばれた黄色い手から発せられた声の主はジエルと名乗る天使と知ったアイナは、戸惑いながらも会話をする事にした。 アイナ「その、天使さんが何か御用ですか…?」 ジエル『うんっ!じゃあ早速失礼して~!』  その言葉と共に、突如6つの内の2つのネオマジックハンドがアイナに襲い掛かって来たのだ。 アイナ「きゃっ…!?」  急な攻撃に反応出来なかったアイナは、自らの両手首を2つのネオマジックハンドに掴まれてしまったのだ。 アイナ「やっやめて…!離してっ!」 ジエル『だいじょーぶ!痛い事しないから~!』 アイナ「ほ、ホントに…?」 ジエル『ホントホント~!』  痛い事はしないという言葉に少し安心してしまったアイナ。ネオマジックハンドは抵抗しなくなったアイナに再び話しかけ始めた。 ジエル『ねぇねぇ。いくつか聞きたいことがあるんだけど良いかな~?』 アイナ「あっはい、何でしょう…?」 ジエル『まずは名前から、あなたのお名前は何ですかぁ?』 アイナ「あっ、アイナって言います。」 (何かのアンケート調査なのかなぁ?) ジエル『じゃあアイナちゃん、突然だけど“くすぐり”は苦手?』 アイナ「へっ!?く…くすぐり、ですか…?…そう、ですね。くすぐったいのは苦手です。」 ジエル『そっか~!じゃ~あ~、アイナちゃんは、どこが一番苦手なのかな?』 アイナ「に、苦手…?くすぐったい所って事ですか?」 ジエル『そうそう!!』 アイナ(何でくすぐりの事ばっかり聞くんだろ?) 「う~ん、そうですねぇ…。くすぐったがりなんでどこも弱いんですけど、やっぱりワキとかですかね?」 ジエル『そうなんだ~!ミツキちゃんと一緒だね~!!それじゃあ~、ちょっとネオマジックハンド動かすね~?』 アイナ「わっとと…!ちょっ…、何を…!?」  アイナの両手首を掴んでいた2つのネオマジックハンドが上昇する様に動き始めると、それに合わせる様にアイナは両腕を持ち上げられてしまった。 アイナ「や、やめて下さい…!その、はっ、恥ずかしい…、です…。」 ジエル『何が恥ずかしいの~?』 アイナ「お腹、見えちゃうんです!腕、降ろさせてぇ…!」  丈が短めの白いTシャツを着ていたアイナは、両腕を持ち上げられる事によって服が僅かに引っ張られ、お腹がチラリと見えてしまっている事に恥ずかしさを覚え抵抗する。しかし、この時はまだアイナ自身も気付いてはいなかった。普通の女性であれば恥ずかしくて堪らない状況になっているという事に。そしてそれは、ジエルのある一言で気付かされる事となる。 ジエル『お腹?あぁ、確かにチラっと見えちゃってるけど~、私はもっと大事な所だと思ったよ~?』 アイナ「大事な所…!?胸…、じゃないし…大事な所って…?」 ジエル『いや~、アイナちゃんが今着てるその服、丈も短いけど…、“袖”もすごい短いじゃん?』 アイナ「袖…?……っ!?ちょっ!い、嫌ぁ…、やめてぇ!ワキ…、恥ずかしいからぁ…。」  ノースリーブに近い袖の短いTシャツは、腕を上げただけで腋が見えてしまうのである。ムダ毛など一切無くキレイに手入れをしていようが、素肌の腋を晒すと言うのは女性にとっては裸を見られる程の恥ずかしさなのだ。それは当然アイナにとっても同じであり、ネオマジックハンドによってバンザイを強いられたアイナは一層抵抗して腋を隠そうとする。 ジエル『ホントに腋見せるのが恥ずかしいんだね~!天使の私には尚更分かんない感覚だけど、ミツキちゃんもそんな素振り見せてなかったんだけどなぁ?』 アイナ「ミツキちゃん…?天使さんは、恥ずかしくないんですか…?」 (ミツキ…、さっきも天使さんが言ってた人の名前…。何か、どっかで聞いた事あるような…。) ジエル『もちろんだよ~!私は“ある事”をする為だけに生み出された天使だからね~!普通の女の子とは根本的に違うんだよね~!』 アイナ「…?ある事って…、何ですか…?生み出されたって…、どういう…?」 ジエル『生み出されたって事の方は魔力を知らないアイナちゃんには分からないかもね~!だから、“ある事”の方を教えてあげる!』 アイナ「あっ、はい…。一体何をする為に生み出されたんですか…?」 ジエル「女の子から“笑いのエネルギー”を吸収する為だよ!」 アイナ「わ、笑いの…、エネルギー…??」  あまりに聞き慣れない単語にアイナの脳内は疑問符だらけになっていた。 アイナ「って…、何ですか…?」 ジエル「すっごい簡単に言うと~、要は女の子から笑い声を引き出す事が私のお仕事なんだよ!エネルギーを吸収するのに特別な事する訳じゃ無いからね~!」 アイナ「じゃあ、私を笑わせるって…、事ですか?でもわざわざこんなポーズにさせて、どうやって笑わせるんですか…?」 ジエル「ありゃ…?まだ分かんなかった?じゃあ…、これでどうかな?」  ジエルは自らの声を届けているネオマジックハンド4つをアイナの目の前まで移動させると、その指を空気を掴むような動きを繰り返して見せた。 アイナ「なっ、何ですか…!?そんな指をワキワキ動かして……、って…もしかして…、くすぐって笑わせるんですか!?」 ジエル「確か~、全身弱いけど特に腋が苦手だったよね?」 アイナ「えっ…、嫌ぁ…!やめてぇぇえええ!!」  自分の運命を悟り、必死にもがいて抵抗するアイナ。しかし、ネオマジックハンドの拘束を無能力者が解ける訳など無く、ジエルは怯えるアイナに対して行動を開始した。 ジエル「ちらちら見えちゃってるお腹と~、いっちば~ん苦手な腋を~……、こちょこちょこちょこちょ~!!」 アイナ「あひゃはははははははははははははははやめっやめてぇぇぇええっへっへっへっへっへっへっ、く…、くす、くすぐったぁあい!!」 ジエル「おっ!ホントに良い反応だね~!でもミツキちゃんの方が敏感かな?」 アイナ「きゃははははははははははははワキだめぇぇぇえええっへへへへへへ!!ワキは嫌ぁぁぁあああっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」  全身くすぐったがりなアイナだが、特に苦手な腋は想像を遥かに超える程のくすぐったさだった。そもそも、バンザイした状態で拘束されて無防備に晒されている腋をくすぐられる、という経験をした事など当然無かった為、腋の敏感さを正確に分かっていなかったのだ。  改めて実感させられた弱点である腋を必死にガードしようと真上に伸ばされた腕に力を込めるアイナ。しかし、どんなにくすぐったくてもその腕はバンザイを維持したまま、腋をくすぐって欲しいと言わんばかりに晒し続けていた。 アイナ「もうやだぁぁあっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはワキくすぐったいぃぃいいっひひひひひひひひ、お腹もダメぇぇえええええ!!」 ジエル「まだ始めたばっかりだよ~?笑い死ぬ直前まではくすぐり続けるから覚悟してね~?」 アイナ「そんなの嫌ぁぁぁああはははははははははははくすぐったいっくすぐったぁぁあっはっはっはっはっはっはっはっはっは誰か助けてぇぇぇえええ!!」 ???「アイシクル!」  自分では打開する事が出来なかったくすぐったさから解放されたい一心で助けを求めた直後、アイナの願いは見事に叶ったのだった。自身をくすぐる4つのネオマジックハンドが一瞬で凍りつき、そのまま跡形も無く消滅したのだった。 ジエル「あらら、もうグリ山を下りて来てたんだね~。もっと楽しみたかったのに~!じゃあね~アイナちゃん!」  アイナをくすぐる手段を無くしたジエルは、アイナを捕らえていたネオマジックハンドと共に、別れを告げる声と共に消えて行った。両腕を動かせるようになったアイナは、息を荒くしながらその場に座り込んでしまった。 ???「おいっ!大丈夫か…!?」 アイナ「はひひ…、はひ…、だっ大丈夫…ですぅ…。助かり、ましたぁ…。」 ???「私はミツキ。レディナイツという騎士団のリーダーだ。」 アイナ「あっ…、そうか…。さっきからミツキさんって、聞いた事ある名前だと思ったら、レディナイツの…!」 ミツキ「知ってくれていたのか。それは嬉しいな。」 アイナ「勿論ですよ!あっ私…、この先の港町クッスに住んでるアイナです…。本当にありがとうございました…!」  ジエルからも何度か聞いたミツキという名。それは無能力者であるアイナでも良く知っている程、この世界では名の通った騎士団のリーダーの名前だと、本人から自己紹介されようやく気が付き、改めてその偉大な女性に救われた事に感謝した。 ミツキ「アイナ、だな?とりあえず大事に至らなくて良かった。それよりアイナ。今の“黄色い手”。そいつから私の知っているジエルという天使の声が聞こえた気がしたのだが、何か分かるか?」 アイナ「はい。自分を天使だって言ってたジエルさんが作ったネオマジックハンドっていうので、別の場所から話してる…、みたいな事を…。」 ミツキ「ネオ、マジックハンド…?奴がそう言っていたのか…?」 (確かに前のマジックハンドは色が白かった。少なくとも今までのマジックハンドとは違うのは間違い無いようだな…。) アイナ「はい…。そういえば、ジエルさんもミツキさんの事知ってる様な事言ってましたけど、ミツキさんはあの天使さんとお知り合いですか…?」 ミツキ「知り合い…、まあ知り合いと言うか――」 ???「ミツキー!どうだった?」 ???「大丈夫ですか?」  遠くから聞こえる2人の声。その言葉を聞くに2人はミツキの仲間であると予想し、それはつまりレディナイツのメンバー、アカネとライカであると推測できたアイナ。 ミツキ「あぁ、大丈夫だ。やはり魔力の正体はジエルだったようだ。」  ミツキが普通に会話しているのも2人が仲間であるという事を示していた。アイナは改めてホッと安心した。 ミツキ「アイナ。確か君は港町に住んでいると言っていたな?すまないが、ゆっくり休める宿屋等を教えては貰えないだろうか。」 アイナ「それだったら、私の家に来てください!お礼もしたいし、…いろいろ事情も聞きたくて…。」 ミツキ「本当か?それは助かる!…もちろん、君を巻き込んでしまったのは申し訳ないと思っている。ちゃんと奴の事も含め、いろいろ事情を話させて貰うよ。」 アイナ「じゃあすぐに行きましょう!案内しますね!」  アイナは、自分を救ってくれたミツキ達を自宅に招き入れる事にし、港町クッスへ向かった。


Related Creators