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裏切りと反逆4

 先に目的地に辿り着いたのは右へ進んだソフィアだった。といっても、突き当りを右に曲がればすぐにある唯一の部屋が情報管理室である為、すぐに到着するのは当たり前だ。早速部屋に入ろうと試みるが、ドアは施錠されていた。勿論情報が全て管理されている部屋である為、使用人と言えど簡単には入れる筈も無い。 ソフィア 「前は鍵なんて掛かっていなかったけど、もしかして前は偶然カンナさんが施錠し忘れたって事…?」  たまたまマーラの隙を見つけここへ侵入しようと決意したタイミングで、偶然鍵が開いている事があるのか?と疑問を抱くソフィアだったが、今はそんな事を気にしている場合では無い。ここの鍵を管理しているのも当然マーラである為、鍵は入手できない。ならばと、ソフィアは重力の魔法石を発動し、正面に向かって重力の塊を発射する。高ランクの魔法石なだけあって、その力で扉を破る事に成功しソフィアは中へと入っていった。  ちなみに、カンナとは使用人のリーダーであり、マーラの秘書、いわば側近である。  部屋に入ると、書籍がいくつも陳列された棚が壁一面に広がっている。そしてその部屋の中央にあるデスクの上に置かれたパソコンに真っ先に向かったソフィアは、電源を入れた後、起動するまでの間に部屋中を物色し始めた。 ソフィア 「目的の証拠品は、人体実験の記録とその被害者リスト、使役している奴隷リスト、高ランクの魔法石の所持品リスト、そして裏組織と繋がっている記録とその裏組織リストね。」  パソコンが起動するまでの間に棚を物色し、何か新たな犯罪履歴が無いか探すソフィア。しかし、そのファイルの量はあまりにも膨大で、すぐに見つけ出す事など出来なかった。 ソフィア 「情報管理室って言うだけあって、基本的には表向きの宝石会社の情報が殆どね…。仕方ないか。」  無数にあるファイルを一つずつ探していくには時間が掛かり過ぎると判断したソフィアは、既に起動したパソコンの方へと移動した。 ソフィア 「……ログインの暗号?前にここに入った時はこんな画面無かった筈…。いや、そもそもパソコンを私が起動した記憶が無い…。すでに誰かが起動していた…?」  施錠されていない部屋、起動中のパソコン、あっさりと見つかった人体実験のデータ。今思い返すと、それは明らかに上手くいき過ぎていた事に気が付いた。 ソフィア 「これを起動できる人間が、私をその証拠データに辿り着く様に仕向けていたって事…?まるで私が初めからマーラの犯罪を暴くために使用人になった事を知っていたかのように、私を誘導してまんまとその通りに行動していたかのような…。」  そこまで感じ取った時、ソフィアはもう一つの、更にその先の罠にも気が付き、慌ててその場を離れようと椅子から立ち上がろうとした瞬間―― ??? 「気付くの早いですねー!でも、もう手遅れですよ?」  背後に立っていた人物が突如魔法石の力を解放し、ソフィアの辺り一面に濃い霧のような物が発生した。 ソフィア 「これはっ…!…う、…っく、急に、意識が……。」  その霧の正体は催眠ガス。睡眠作用のあるガスを一瞬にして部屋中に放射させ霧のように舞ったガスを浴びてしまったソフィアは、一気に意識が朦朧とし、その場で倒れ込んでしまった。そして、その魔法石を解放した人物によって、ソフィアは採掘場と別の地下室へと運び込まれてしまったのだった。  一方、シエラはマーラの部屋を求め、突き当りを左へ向かい廊下を走る。大きな屋敷の長い廊下。そこをひたすら進んだ先に、一際大きな扉の前で待ち構える一人の女性の姿がシエラの目に飛び込んできた。 シエラ 「…わざわざ出迎えてくれるとはな。探す手間が省けて助かったぞ、マーラ。」  待ち構えていた人物こそ、シエラの目的、この屋敷の持ち主にして宝石会社の社長であるマーラだったのだ。 マーラ 「私も待っていたのよ?王国のエリート女騎士さん❤」 シエラ 「私が反逆する事を知っていたかのような言い方だな。」 マーラ 「知っていた、というより、あなたが反逆するように仕向けた、が正解ね。」 シエラ 「仕向けた?……成程、ソフィアを使って私がここへ来るように誘導したという訳か。という事は、ソフィアはやはりお前側の人間だったか。」 マーラ 「いいえ?ソフィアさんは紛れも無くあなた側よ?それに、あなたはソフィアさんがきっかけで反逆をしたのではなく、あなたの反逆にソフィアさんが協力したんじゃなぁい?」 シエラ 「……そうだったな。だが、何故そこまで知っている?採掘現場に盗聴器でも隠していたのか?」 マーラ 「それも不正解。そんな事しなくてもあなた達の行動は手に取る様に分かるわ。何せ、全部こっちが仕組んだシナリオだもの❤」 シエラ 「不思議な事を言うな。全てシナリオ通りだと言うのなら、私が反逆する事も、ソフィアがお前を裏切る事も分かっていたと言う事になる。それなら、何故ソフィアを使用人として雇っている?何故わざわざ反逆する私を奴隷にした?奴隷にして、反逆させて、何をしようと言うんだ?」 マーラ 「それは“会場”で語らせて貰うわぁ❤」 シエラ 「会場?何の事かは分からないが、残念ながらお前のシナリオはここまでだ。私達反逆者が多くの高ランク魔法石を所持している事は知らないだろう?」  そう言ってシエラは、ソフィアから貰った風と武器の魔法石とは別に、数個の魔法石をマーラに見せつけた。万が一に備え、目覚めさせた魔法石の一部を所持していたのだ。 マーラ 「それが唯一の想定外なのよねぇ。予定では他の使用人さん達があっさり捕らえる予定だったんだけど、何故加工前の魔法石が使えるのかしら?」  裏で取引している加工屋に魔法石の話をしても、それは条約にはない事だといつもはぐらかされており、マーラは魔法石をいつも高い金額で加工してもらっている。当然裏の加工屋からすれば、魔法石の力が目覚めるきっかけの事をマーラが知ってしまったら、自分の仕事が無くなるから黙っているのだ。加工屋との間で交わされた条約も「互いの仕事内容は教えない」「魔法石を加工、使用できるようにし、その数に応じて支払額を決め、金銭のやり取りをする」としている。 シエラ 「それをお前に教えるつもりは無い。それに、ここでお前を取り締まり王国の法で裁く以上、教える必要も無い…!」  所持していた魔法石の内、ソフィアに貰った二つを解放し、風の刃を纏った剣を装備したシエラが、一気にマーラの懐へ飛び込む。 シエラ 「スラスト…!!」  剣を振り、纏っている風の刃を使いマーラを斬りつける。が、その刃はマーラには届かなかった。 マーラ 「どお?私の召喚スピードも中々でしょ❤」  召喚系の魔法石を素早く発動し、グラスウォールという防御に特化した透明の壁型の魔物を召喚していたのだ。防御に特化した魔物なだけあり、シエラの鋭い攻撃もあっさり防いでしまった。 シエラ 「確かに技術はあるようだ。あの一撃で終わると思っていたんだがな。…だが、その程度の魔物を出現させたぐらいでいい気になるな。悪いが、早急にこの戦いを終わらせて、お前に裁きを与えてやる!」  魔法石により強い力を解放させると、シエラの周りから強力な風が吹き荒れ始める。やがてそれは無数の風の刃となり、屋敷の壁を次々と切り裂き壊していく。 シエラ 「スラッシュストーム!!」  大きな風の刃を無数に飛ばしマーラを切り裂こうと技を発動した瞬間だった。 シエラ 「んぐっ…!?う、うあぁぁぁあああああああああああああああああ!!??」  突如首を抑えながら叫び声を上げるシエラ。その痛みはシエラが装備していた首の魔法石、奴隷が全員装備させられているピッケルを出すだけの魔法石が生み出していた。その苦痛によりシエラが解放した魔法石は力を失い、辺りを切り裂く風の刃は全て消滅し風も止んでしまった。 シエラ 「な、何をした…!?」  倒れ込みながらも必死に力を込め立ち上がろうとするシエラだが、その激痛は身体の力も奪い、思うように動かせず立ち上がる事も出来なかった。 マーラ 「奴隷の制御をしただけよぉ?私がその気になれば、いつどこでも奴隷をこうして身動きできなくさせる事ぐらい容易なの❤この魔法石があればね?」  そう言いながら一つの魔法石をシエラに見せつけた。どんな高ランクの魔法石よりも輝きが強く異彩を放っていたそれは、普通の魔法石でない事が見るだけで理解できた。 シエラ 「な、何だ…、それは…!?そんな力…聞いたことも、無いぞ…?」 (いや、1つだけ可能性があるが…。まさか、そんな事は…。だが、この力はまるで…!)  その力に覚えはあったが、そんな筈が無いと自分の考えを否定したシエラ。だが、他の魔法石を経由し遠隔でダメージを与える上に、力を奪う能力の魔法石の存在など他に知らないシエラは、困惑し身の危険を感じずにはいられなかった。 マーラ 「それこそ、あなたが知る必要は無いわ❤」  その後マーラは召喚系の魔法石を再び使い、新たな巨大魔物を呼び出した。 シエラ 「なっ…なんだそいつは?スライム…か?」  体が全て水分で出来たゼリー状の魔物スライム。しかし、その体は低級魔物の代表であるスライムとは正反対の巨体で、マーラの身長を遥かに超える程だった。 マーラ 「人造魔物、テンタクルスライムよ?さ、動けない騎士様を運びなさぁい❤」  人造魔物とは、その名の通り魔物に魔法石を与え元の能力と別に力を得た、所謂“変種”である。しかも、合成の魔法石という高ランクの力を使い、スライムと触手の魔物テンタクルを合成した上で肉体強化の力を得た為に、巨大化したのである。  マーラの合図と同時に、その体から何本もの触手のような物を伸ばしたテンタクルスライムは、動けないシエラの手足に触手を絡ませ、そのままシエラを持ち上げる。 シエラ 「やめろっ…!放せっ!放せぇぇえええ!!」  必死に抵抗するシエラだが、肉体強化の力を得たテンタクルスライムの触手は強靭な拘束力を持ち、まるで身動きが取れない。それでも何とかしようと必死にもがきながら声を上げるシエラ。 マーラ 「耳障りねぇ。会場に着くまでそのまま眠ってて貰おうかしら?」  するとマーラは再び奴隷を制御する為の魔法石の力を解放した。 シエラ 「んあっ…、ぐあぁぁぁあああああ!!」  その力によりシエラは悲痛の叫び声を上げる。だが、ただでさえテンタクルスライムに四肢を縛られ身動きが取れない状態な上に、奴隷を制御する魔法石がシエラの力を奪っている為、抵抗は全くできずシエラはその痛みを和らげる事も叶わない。 シエラ 「あ…、あぁ……。………………。」  やがて、その大きなダメージによりシエラは失神してしまった。それを確認したマーラは不敵な笑みを浮かべるのだった。 マーラ 「これでようやく静かになったわね。それじゃあ、“会場”へ向かいましょうか❤」  意識を失い、抵抗する術も無いシエラは、そのまま“会場”と呼ばれる場所へと連れていかれてしまったのだ。


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