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裏切りと反逆3

シエラ 「実際、どうやってここを出るんだ?他の女性達が噂をしていたが、ここのセキュリティは私達奴隷が首に装着している魔法石に反応して警報を鳴らせるらしいじゃないか。」 ソフィア 「その通りよ。噂をしていたその娘達は以前に奴隷が反逆した時の事を知っていたのね。それに、その首の魔法石を外すと、その外された魔法石と共に警報がなるようにもなっているわ。」 シエラ 「ならどうするんだ?私がお前と出た所で、警報が鳴ってはすぐに囲まれるぞ?」 ソフィア 「だからここの奴隷達に声を掛けて、一緒に反逆するメンバーを集めるのよ。」 シエラ 「成程。警報と共に沢山の奴隷達が一斉に反逆すれば、流石に相手もパニックになるな。」 ソフィア 「奴隷達が他の使用人達と戦闘している隙にあなたはマーラの所へ向かって。」 シエラ 「それなら確かに何とかなりそうだが、他の奴隷達に申し訳が立たないな…。囮に使うって事だろ?」 ソフィア 「マーラさえ捕まえれば、他の使用人達はもう逆らえないわ。囮になった奴隷達はその時助ければ良い。何より私は、マーラに裁きを与える為ならどんな事でもする人間よ。」 シエラ 「……そうだったな。実際、ここでこうしていてもマーラを捕らえ裁く事も出来ない。少しでも協力者を増やそう。幸い、ここには奴隷達が採掘した魔法石もあるからな。」 ソフィア 「でも、こんな採掘したばかりで加工もしていない魔法石じゃ能力なんて使えない筈でしょ?」  奴隷達が滅多に反逆しない理由は、それが理由でもあった。どんなに魔法石を採掘しようが、それを加工しなければ使用できない。これは奴隷達は勿論、マーラの使用人達もそう理解しているのだが、実はそうでは無いのだ。 シエラ 「そんな事は無い。低ランクの物なら採掘したばかりでも、誰でも使用できる。それに、高ランクの物でも、その魔法石に魔力を生むきっかけを与えてやるだけで使用できるようになるんだ。」 ソフィア 「どういう事?」 シエラ 「一応これは王国で定められた法で、騎士団のトップと加工職人しか知ってはならない機密事項でな。詳しくは言えないが、別の高ランク魔法石を使えば、私がこの場で使える様に出来る、という事だけ言っておこう。」  低ランクの魔法石がすぐに使えるのは、元々魔法石に宿っている少ない魔力でも力が使えるからである。  低ランクの魔法石は、①生み出せる魔力が少ない、②内蔵できる魔力が少ない、③力を使うのに消費される魔力が少ない、というのが特徴で、“採掘したばかり”、つまり“眠りから目覚めたばかり”の高ランクの魔法石は、①生み出せる魔力が少ない、②内蔵できる魔力が高い、③力を使うのに消費される魔力が高い、という特徴がある為力を発揮できないのだ。だが、“きっかけ”を与えると①の生み出せる魔力というのが高くなり強い力を使える様になるのである。  最初の状態だと、小さい魔力しか無く力を使うのに必要な魔力が足りていない為使用できない。だから“きっかけ”を与えないといけないのだが、その方法は別の魔法石に内蔵されている魔力を眠っている魔法石に注ぎ込む、というものである。「自分にはこれだけ魔力を貯められる力があるんだ」と魔法石自体が理解する事で、魔力を生み出す能力に目覚めるのである。だが、その注ぎ込むという行為が簡単に出来るものでは無く、魔法石から人体を通してまた魔法石に送るという経由方法を取らないと注ぎ込めず、その手法を代々伝えられてきた職人と、魔法石の扱いに特化したトップレベルの騎士団にしか行えない為、王国ではそれを悪用させない様に法を作りその技術を守って来たのである。 ソフィア 「何でも良いわ。私は魔法石の事なんてよく分からないし知るつもりも無いわ。でも、それなら確かにマーラも知らないのも無理は無いわね。」 シエラ 「マーラは普段ここで採掘をした魔法石をどうしているんだ?」 ソフィア 「同じ裏の人間、通称“加工屋”にいつも依頼していたわ。」 シエラ 「やはりそうか。これは良いアドバンテージになるな。マーラは奴隷達が採掘したばかりの魔法石を使って反逆してくるなんて思っていない訳だ。」 ソフィア 「そうね、これなら奇襲にもなるし優位に立てると思うけど、その“きっかけ”って何なの?それが加工するって事なら意味が無いわよ?」 シエラ 「それなら大丈夫だ。今私達が持つ高ランクの魔法石で十分に出来る。」 ソフィア 「そうなの?なら加工屋は別の魔法石を使って、目覚めさせた後で単純に形を綺麗にしていただけって事になるのかしら。」 シエラ 「実際に魔法石を加工する職人はいる。騎士も形が整った魔法石を装備した方が収まりが良いし戦いやすいからな。おそらくその加工屋も職人だろうが、ここのような裏で魔法石を使っている奴が職人に普通に依頼すれば怪しまれるからな。それを逆手に取り、加工屋とか言う奴はそういう相手から莫大な資金を稼ぐ目的で裏でも活動しているんだろう。」 ソフィア 「成程ね。でも、流石エリート女騎士様ね。そんな事まで出来るとは思わなかったわ。これなら本当に勝てるかも知れないわ。」 シエラ 「尤も、それは使用人であるお前が高ランクの魔法石を持っていて、私が目覚めたばかりの魔法石に“きっかけ”を与えられるから出来る反逆方法だがな。」 ソフィア 「そうね。これで私の裏切りにもしっかりと意味があったと感じるわ。…それじゃあ早速手分けして仲間を集めるわよ。」  シエラとソフィアは、採掘作業をする奴隷達に反逆作戦を伝え協力者を募った。当然、奴隷達は今の生活に満足している訳が無く、多くの者が今回の作戦に希望を持ち、賛同した。中にはそれが万が一失敗に終わり、体罰を受ける事になったらと怯え賛同しない者もいたが、それでもこの広い採掘場の殆どが協力者となり、その数は50人を超える程集まった。  メンバーが集まった所で、早速採掘した魔法石から使えそうな魔法石をピックアップし、シエラは次々と魔法石を目覚めさせていく。そして反逆作戦に参加する全ての奴隷達が目覚めた魔法石を手に取り、準備が整った。 ソフィア 「この正面の自動ドア。ここを通った時点で屋敷中に警報が鳴るわ。この警報は奴隷がその自動ドアを通るか、首の魔法石を外す以外に鳴らない。つまり、警報が鳴った時点で使用人は皆この地下室に一斉に集まるわ。だからその前に、先にメンバー全員が自動ドアと五重門を抜け、その先にある階段を登りきると、行き止まりになってるわ。だけど、その正面の壁を前に押すように力を加えるとそれがトリガーになって、壁の様に見える扉が横にスライドするわ。そこを抜ければ物置部屋に出られる。その部屋の先に、使用人達がいる部屋が並ぶ長い廊下に出るわ。使用人達が集まるまでにそこまで辿り着ければ、戦いやすくなる筈よ。」 シエラ 「私はその戦闘の最中、廊下を一気に突き進みマーラと直接戦闘する。」 ソフィア 「私は管理室に入り証拠データを取りに行った後シエラに合流する。良いわね。」  奴隷達に作戦を伝え、いよいよ反逆作戦を開始する。 ソフィア 「行くわよっ!」  反逆者達の戦闘が自動ドアを通り過ぎる。すると瞬く間に屋敷中に大きな警報が鳴り響いた。 使用人1 「なっ何!?警報…!?」 使用人2 「奴隷が脱走したって事ぉ?何なのよこんな時にぃ!」  部屋で休んでいた者やマーラに与えられた雑務をしていた使用人達が皆、その突然の警報に慌て、急いで魔法石を手に取り地下室へ向かう。しかし、それがこの作戦を成功させる理由の一つ。マーラから魔法石を渡せれているとは言え、普段から肌身離さず持っている使用人は多くない。ましてや自室で休んでいる者はより装備などしていないだろう。警報に気付き魔法石を装備してから地下室へ向かうまでの僅かなタイムラグ、一方地下室を出るまでの手段を事細かに聞いた反逆者達の脱出。どちらが先に屋敷と地下室を繋ぐ扉に辿り着けるか、それは言うまでも無かった。 使用人3 「そんなっ…!?何でここに…!」  使用人の一人がようやく準備を終わらせ廊下に出ると、正面の物置部屋の入り口から反逆する奴隷達が押し寄せていたのだ。 奴隷1 「フリーズブレス!!」  奴隷集団の先頭にいた一人が、使用人を見つけすぐに攻撃を開始する。氷の属性の魔法石を使い強力な冷気を放つと、使用人はその力に圧倒され後方へ吹き飛ばされる。しかも肌の露出が多い服を着せられていた事で、その冷気によって身体が一瞬にして冷えて、動けなくなってしまう。 使用人1 「高ランクの魔法石?何で奴隷が…!?」 使用人2 「っていうか、監視はどうしたのよぉ!今日の当番はソフィアとエミリーよねぇ!?」 使用人3 「そうよ!彼女達は何をやってるのよっ!」 ソフィア 「悪いけど、今回の首謀者は私よ。」 使用人1 「ソフィア…!?あんた、裏切ったの…!?」 シエラ 「というより、こいつは最初からお前らの仲間では無いという事だ。」  奴隷達の後に続いてきたソフィアとシエラは、圧倒される使用人達の横を通り過ぎ、長い廊下を突き進む。しかし、時間が経てば次々と準備を終えた使用人達もその場に合流してくる。 使用人4 「裏切り者を通す訳にはいかないわ!」 ソフィア 「あなたの相手をしている暇は無いわ。」 奴隷2 「私にお任せください!」  元メイドの敬語口調の奴隷女性がソフィアとシエラの前に出ると、魔法石を掲げ力を解放する。 奴隷2 「バーニングブラスター!!」 使用人4 「なっ!!?」  目の前に大きな炎の塊が現れると、それが一気に正面に向かって放射される。それを一早く察知した使用人は慌てて横の壁まで逃げた事で何とかその攻撃をかわせたが、屋敷の廊下は燃え盛る炎に包まれてしまった。 使用人4 「何なの…、この力…。」 奴隷2 「……強すぎませんか…?」 シエラ 「高ランクでも相当レベルの高い魔法石だったらしいな。」 ソフィア 「呑気な事言ってる場合?これじゃあ前に進めないし、データが焼けて残らなかったら何の意味も無いのよ。」 シエラ 「仕方ない。ただでさえ多くの魔法石を目覚めさせるのに力を使っているんだ。マーラと戦う前に魔法石の力を使いたくは無かったのだがな。」  シエラはソフィアに貰った武器の魔法石で剣を呼び出しそれを目の前に構えると、風の魔法石も同時に力を解放し―― シエラ 「ブラストウィンド!」  剣先から竜巻が横向きで出現し、それが燃え盛る廊下に吹き荒ぶと一瞬にして火の海が吹き飛ばされた。 ソフィア 「この魔法石、こんな力があったのね。」 シエラ 「魔法石は術者の力量を図ると言うからな。使い手が素人だと小さな力しか使えなかったり、先程の様に暴発する事がある。逆に言えば、私のような使い手ならこの程度は造作も無い。」 ソフィア 「あっそ。そんな事は良いから早く行くわよ。」 シエラ 「そんな事だと?失礼な奴だな。…まあ、先を急がねばならないのも事実だが。」  ドヤ顔しながら得意げに魔法石の説明と自分の力を自慢するシエラに対し、ソフィアはそれを軽くあしらいながらシエラに先を急がせる。そして未だ唖然としたまま腰を抜かしている使用人を気にもせず、さらに廊下を突き進み、ようやく突き当たったそこは、右に行けば様々な情報が全て残されている情報管理室。左へ行けばマーラの自室。二人はそこで一瞬立ち止まり、お互いの目的を改めて確認した。 ソフィア 「私は右に行ってマーラの犯罪履歴のデータを押収する。」 シエラ 「私は左だな。マーラを討つ。」 ソフィア 「…頼んだわよ。」 シエラ 「あぁ。データが手に入ったらすぐに加勢するわ。」  僅かな会話だけをして、二人はお互いの目的を達成する為、別々の道を進み再び走り出した。


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